2017-10

「女だらけの戦艦大和」・『海軍きゃんきゃん』取材班来る!3 - 2012.11.06 Tue

「海軍きゃんきゃん」取材班は、やっとグアムの地を踏んでグアム駐在の「陸戦隊」を取材に出かけた――

 

殘間中尉は歩きながらグアムと地図を広げた。来たことがないところだから迷わないように、との「影の編集長」・山本長官からの餞別の品である。それを広げつつ、周囲の地形と見比べながら歩く殘間中尉に、写真班の写野(うつしの)兵曹が

「殘間中尉、よそ見してたら危ないですよ」

と声をかける。殘間中尉はうんうんと生返事をしながら地図と地形を見ているが、

「ねえ、袴田兵曹。いったいこの<大宮湾>はどっちになるんだろうねえ?あっちかしらそれともこのむこうかしら?」

と、今回記録係拝命の袴田兵曹に地図を突き出して尋ねる。はあ、どっちってどういうことです?と袴田兵曹は地図を受け取って見入った。

そして半ば馬鹿にしたような顔つきで中尉を見ると、

「殘間中尉。大宮湾はさっき我々が船を降りたところがそうです。そして陸戦隊の本部があるのが大宮湾に突き出たあの半島みたいなところです。我々はあなたのせいで反対側に歩いてきちゃったじゃないですか!私だってこんなところ知らないんですから、しっかりしてくださいよ。殘間中尉は地図の読み方が変ですよ。どうしたらそんなふうに読めるんだか、私には理解できません!」

と最後の方は語気荒く言った。袴田兵曹、ご機(ご機嫌のこと)悪い。ちなみに「海軍きゃんきゃん」編集部はあまり階級にうるさくない。ここはまさに実力主義の場なので階級などあってないようなもの。東京で留守を預かる「編集長」の階級は二等兵曹。

殘間中尉は部下にそう言われてしょんぼりと肩を落としたが、もと来た道を歩きだす。美しい大宮湾(実際に戦前はグアム島を<大宮島>と呼んでいました)を右手に見ながら歩く。

「その先が<須磨>というところでその先にあるようですよ。さあ、急ぎましょう」

袴田兵曹が言うと筑紫少尉も写野兵曹も、三谷兵曹・小林兵曹・そして武田水兵長も急に走り出した。

「待ってよう~」殘間中尉の声がグアムの青空に響いた。

 

さて。

陸戦隊司令部に着いてぞろぞろと一行が入ろうとすると、門の前に立つ衛兵の一人が待ったをかけた。

銃剣を持ちなおして、「どこへ行くんです!?許可なしでは入れませんよ」と問い詰める。衛兵所からもう一人出てきて胡散臭げに一行を見る、その目つきに殘間中尉は腰が引けた。他の連中もすっかり引いている。無理もない、彼女たちは艦隊勤務も何もないまま『海きゃん』編集部で働いているのだから・・・第一線の将兵の迫力にすっかり気圧されている。

「あなたたちはどこの所属か?いかなる用があってここにいらしたのか?」

衛兵の下士官はなんだか威張っている。――と殘間中尉は思った。待てよ、この女より私の方が階級が上だというのに私がビビってどうする。私が威張らなくて誰が威張るんだ。

殘間中尉は胸を張って、

「私たちは『海軍きゃんきゃん』編集部のものである。このたび山本いそ聯合艦隊司令長官の命により南方基地への取材をしに来た!このグアム陸戦隊の取材をしたい。司令官はいらっしゃるか?」

と威張っていった。三谷兵曹がそっと「殘間中尉、ガラにもなく威張ってやんの。だせえ」と小声で言って皆がプスッとわらった。無理もない、普段から威張ったことがあまりないのだから。

すると。

衛兵の態度が180度変化した。胡散臭そうに見ていた衛兵でさえまるで化学反応でも起こしたように愛想のよい笑みを浮かべ、『海きゃん』一行は目を瞠った。衛兵たちは円満な笑みをたたえたまま

「なんと、あの『海きゃん』の編集の方ですか!それはどうも遠いところからご苦労様でした。さっそく司令に連絡いたしますからどうぞ・・・」

と建物へいざなった。一人が建物の中へ走り込んでいった。

一行が建物の前に来るか来ないかという時、司令部の建物の中からドドドドド・・・とすさまじい音が響いてきた。

「なっ、なんだ!?

写野兵曹が恐怖の声をあげる。殘間中尉は筑紫少尉の背中に隠れた。筑紫少尉が「殘間中尉、あなたが先頭でしょ!指揮官先頭、これが我が海軍の伝統ですっ!」と怒って中尉を前に押し出す。

「いやだあ、怖いよう。私別に指揮官じゃないし」と殘間中尉が泣きそうになった時、司令部の建物の玄関扉が蹴破られるようにぶっ飛んだ。ガラスがはじけ飛んだ。

「うわっ!」とその場に伏せる一行、そこにドドドッとすさまじい音をさせて飛び出してきたのは陸戦隊司令官以下、副長や分隊長や隊員嬢たちであった。

彼女たちは口々に「ギャーーーッ!」と叫びながら『海きゃん』一行目指して突進してきた。さすが百戦錬磨の陸戦隊隊員嬢たちである。迫力が違う。殘間中尉以下はもうすっかり固まっている。

彼女たちは一行を取り囲むと、

「ようこそ、グアムへ!」「ようこそ<グアム陸戦隊>へ!」

などと叫び、司令官が陸戦隊員嬢たちをかきわけつつ前に進み出て、

「お疲れ様でした!長い旅だったでしょう。さあどうぞ、中にお入りください」

と言ってまず、手近にいた小林兵曹を引き起こした。その場の陸戦隊員嬢も腰を地面に落したままの『海きゃん』一行を抱えあげたままで「さあどうぞ、さあごゆるりと!」と言いながら中へと入ってゆくのだった。

 

司令官の橋元中佐は気さくな人柄で、『海きゃん』一行を司令官室でもてなしてくれた。室内の書棚には『海軍きゃんきゃん』がずらっとその背表紙を並べているのが目に入った。

「はじめまして、私がここの部隊の司令官で橋元(はしもと)と言います。ハシゲン、じゃないですよ~」

とくだらない冗談を言って、必死で皆を和ませてくれてるようである。殘間中尉がウヘヘとそれに笑い、橋元中佐は満足げにうなずいた。

殘間中尉は今回の取材の目的等を簡潔に話し、「ご協力いただけますでしょうか」と恐る恐る尋ねると橋元中佐はこれ以上ないくらいの笑顔で

「いいですとも!なんで断る道理がありますか?では明日からしっかり取材をお願いしますよ。それでは皆さんのお世話係として一人つけますから彼女になんでもお申し付けください」

といい田森上等兵曹を紹介した。なぜか黒メガネをかけている。そして、

「田森兵曹、ではみなさんを頼んだぞ」

というと兵曹はその頬を二―っと横に広げるとそれはでっかい声で言い放った。

「いいともーー!」

『海きゃん』一行は呆気にとられて田森上等兵曹を見つめる。

 

そして翌日。

『海きゃん』一行はものすごい大声で目を覚ました――

     (次回に続きます)

 

           ・・・・・・・・・・・・

 

わけのわからん展開になりそうです。

『海きゃん』一行はまともに取材ができるんでしょうか??次回をご期待下さい。 
グアムタモン湾  
グアム。戦前は<大宮島>と呼称されていました。


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● COMMENT ●

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんおはようございます。
こんな荒っぽい歓迎・・・受けたらさぞ怖いことだと思いつつ書きました。
さあこの陸戦隊嬢たち、一筋縄ではいかないかもです。
「海きゃん」一行はどうなるのでしょうか・・・
「大宮島」の由来を調べていますがなかなかわかりません(-_-;) どういった理由なのか?適当だったら嫌だなあと思いつつ今日もまだ見ぬ「グアム」に思いをはせます・・・

いなばさんへ

いなばさんおはようございます。
お元気でしたか、安心しました^^。
すさまじい勢いの「グアム陸戦隊」嬢たち。このあとも驚きの展開が?
太田中将。
シャン陸でならし、そして沖縄で散った提督も11人の子持ちだったと聞いて「やるなあ」と思いましたね^^。
ホリエカニコさんの漫画でしょうか?違うかな?
ホリエさんの漫画での太田中将は陸軍さんに子供扱いされてますが…(-_-;)
田森さん、どんな人物だか要注意ですぞw。

ウダモさんへ

ウダモさんおはようございます。
普段威張らないやつが威張るとホント滑稽だしこいつ薄いやつだなあって思っちゃいますね^^。
「大宮島」の由来をいろいろ調べてますがなかなかわかりませんね(-_-;) まさか思い付きじゃないかしらと疑っちゃいます。
ウダモさんの見識の深さにはいつも驚かされます、私も結構考えが浅い方なのでウダモさんのような考えの深く洞察の鋭い方は憧れでありますよ!!
さあ、グアム取材。波乱の幕開けになりましょうか!?

元気ですね。すごい闊達な歓迎ぶりで……。
これからどんな展開が始まるのでしょうか。それに驚くばかりの大声とは!!
グアムが大宮島と呼ばれていたとは知りませんでした。由来を調べてみたくなりました。

こんばんは。
お久しぶりです。
破竹の勢いのでの、陸戦隊の歓迎に笑いました。 上海特別陸戦隊と言えば、太田 實中将ですねぇ。←ある漫画には、子煩悩なキャラで登場している位。ついに、タモさん登場!?。(笑)

中尉どの……w

普段、威張っていない人が威張ると、なんだか滑稽ですw
大宮湾ですか!
なぜにその名前になったのでしょ??
てゆか、見張り員さんの資料の数がきっとハンパないのは予想してましたけど、マニアでないと書けない細かいところとか、やっぱり資料だけで書こうとしている人とは違うなぁと思います。
私もけっこう資料集めて書く方なんですけど、構想に2年とか平気で使っちゃうから、なかなか書きだせないですorz
しかもブログとかゲームとか、寄り道しまくってるしw
やっぱり、こうしてどんどん書ける人が羨ましい!
書かなきゃダメですよねホント。
グアム取材が始まってからのドタバタが楽しみです(笑)


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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