「女だらけの戦艦大和」・新人登場1

「女だらけの戦艦大和」は、そろそろ内地からトレーラーに戻る時が来ている――

 

「今回は内地にいる時間が長かったからえかったのう、桜も十分堪能できたし、ほんまにえかったわ」

皆はそう言っていつ出航命令が来てもよいように心の整理に努める。と言ってもえらいさんたちの動向に特に変わったところもないから、「まだあと二、三週間は大丈夫じゃろ」と言っているが。

そんな中。

明日にも、新しい乗組員が一人入ってくることになったという噂が艦内を駆け巡る。

「どこの配置でしょうねえ?ほいでどがいな人なんでしょうねえ」

十三分隊の見張兵曹は興味あるような、それでいて少し不安げないい方で麻生分隊士に聞いてみた。麻生分隊士は、

「ほうじゃのう、いうても俺らもなんも聞いちゃおらんが。まあなあ、松岡中尉みとうな人でなけりゃええわ」

というとワハハと笑った。確かに火の玉を飲んだようなせわしい、暑苦しい兵隊や士官はもうごめんであると言うのが皆の総意である。

「まあ、松岡中尉も悪気のある人じゃないがいかんせん、うっとうしいところがあるんが玉に傷じゃ。あれさえなけりゃあええ人なんじゃろうがねえ。ほいでも気遣いもあるけえ、一概に鬱陶しいだの暑苦しいだのとは言えん所もあるんじゃ。・・・・難しいお人じゃ、あの人は」

麻生分隊士はそう言って複雑な表情をした。見張兵曹もうなずく。今までえらい目にもあった気がするが反面、黒メガネをもらったりお年玉をもらったりと恩義もたくさんある。

「うちは、分隊長を本気で悪く言う人を知りませんけえ、やはり松岡分隊長はなんだかんだ言うて好かれとると思います」

見張兵曹はそう言って、麻生分隊士も同意した。まさにその通りで、浜口機関長も「あいつは鬱陶しい、ここに来たら絞め殺す!」と物騒なことを言うがいざ顔を合わすと二人で組み合っては笑っている。

最初「馬が合わん」と嫌っている感じだった石場兵曹でさえこのところでは一目置いているようで分隊長の言うことに従順になっている。

「妙な魅力があるんよ、あの人には」

不意に後ろから声がかかって振り向けば、小泉兵曹が立っていた。麻生分隊士が「妙な魅力、ね?」と言うと小泉兵曹はうなずいて、

「そうであります。妙な魅力、であります。なんというかこう、嫌いじゃあと思うてもなんか気になってたまらん。見とうないわ、こがいな人は、と思うてもついつい見てしまう。それが妙な魅力じゃと思います」

と言い、見張兵曹はふーんと感心している。麻生分隊士も感心して、

「小泉兵曹はなかなかの心理学者じゃね。そうじゃ、小泉兵曹は戦争が終わったらそういう勉強したらええよ。きっと大成する」

と言い小泉兵曹は嬉しそうに笑った。見張兵曹は、「小泉兵曹は頭がええんじゃねえ。うらやましいわ。うちは頭がようないから」という。小泉兵曹は「ほいでもオトメチャンは心が優しいけえ、ええ嫁さんになるで。オトメチャンをもろうた人は旦那冥利に尽きるわ」とこれもうらやましげに言う。

麻生分隊士がエヘン、と咳払いして

「オトメチャンをもらうんは俺じゃ。オトメチャンはだれにも渡さんけえね!」

ときっぱり言い、小泉兵曹は「あ、そうでしたね」と笑った。見張兵曹は真っ赤にほほを染めた。

「それより、」と小泉兵曹は思いついたように言った、「問題は明日来るいう新しい兵隊だか士官ですね」。

「ほうじゃ、まあどがいな奴だろうと構わん。松岡分隊長みとうに大和(ここ)の色に染めてやったらええんじゃわ」

皆は分隊士のその言葉に大いにうなずいていたが・・・・ここの色に松岡中尉を染めてやった、

と思っている自分たちこそ実は松岡分隊長の色に染められていることにまだ気が付いていない・・・。

 

松岡中尉もその話を耳に入れて、

「なんですって、新しい乗組員が。うーん、熱くなれる人なら私は大歓迎ですよ。尤も、熱くない人でも私は絶対、熱くしてあげます。さあみんな、新しい人に負けないよう・・・熱くなれよ、バンブー!」

と部下たちを督励しに来た。皆は今日はなんだかとても熱くなって「バンブー!」と片手を天に突き上げて唱和した。松岡中尉はそれを満足げに見まわして、

「いいねいいねえ~。その調子でやればどんな奴が来ようと、どんな敵が来ようと怖いものはない!諦めんなよ!」

と怒鳴るとラケットを振り振り、去って行った。松岡中尉はひそかに新しい乗組員のことを探り出そうと思っている。

だがそのたくらみも、梨賀艦長の各分隊長集合の命令により崩れた。梨賀艦長は野村副長とともに、明日来る新入りのことを各分隊長に伝達するため呼んだのだった。

松岡中尉は(何だもうすこし秘密にしてくれたらよかったのに。ひそかに探る楽しみがなくなってしまったじゃないか)とがっかりしながらも、大勢の分隊長たちと艦長室にしかつめらしい顔で入る。

そこで副長が、一体どこの所属になるのかと固唾をのむ分隊長たちに

「明日来る人、航海科の所属になるからよろしくね」

と言って松岡分隊長の肩をたたいた。その他大勢の分隊長たちは、残念そうな半面、ほっとしたような表情を浮かべている。

松岡分隊長は、「は!航海科に?」と一瞬素っ頓狂な声を出したが、あわてて咳払いをして喉を滑らかにした。

「航海科のどの配置になりますか?まさかァ・・・私を追い出して後釜に、なんて嫌なことをお考えじゃあないでしょうねえ」

しかし梨賀艦長は笑って「そうじゃないよ、航海士付でしばらくしてもらうことになる。だから皆よろしくね」と言いその日は解散。

 

そして次の日、艦長副長参謀長、それから各科科長、分隊長分隊士・・・が居並ぶ中。新任の士官がさっそうと『大和』に着任してきた。

「おお・・・」

と皆の間から声なき声が漏れた。皆の前に立った士官はすらりと背が高く、髪の色はほんのり栗色。さわやかな笑顔で、荷物を足下に置くと敬礼し、

「ただ今『大和』に着任いたしました、海軍少尉・樽美酒 ゆう(たるびしゅ ゆう)であります。どうぞよろしくお願いいたします!」

と自己紹介した。松岡中尉は彼女の持ち物の中に<グローブ>があるのを目ざとく見つけていた。副長が、「樽美酒少尉は野球が好きだそうだ。ああ、松岡中尉、君はテニスだったね。種類こそ違うが同じ球技好きな同士、よろしく頼むよ」と言って、樽美酒少尉を松岡中尉の前に押し出した。

樽美酒少尉は笑顔で右手を松岡中尉に差し出し、「よろしくお願いいたします。樽美酒少尉です」とあいさつ。皆が見守る中松岡中尉はその手をがっと握って、

「松岡中尉だ、よろしく!さあ、今日からあなたも『大和』の一員です。一緒に熱くなりましょう。あなたは野球をなさるのですか?私はテニスをしますよ、運動好きな同士仲良くしましょう」

と言った。

さわやかにしかし、少し恥ずかしげに皆の視線と拍手を受ける樽美酒少尉に、春の風が吹き抜けた――

         ・・・・・・・・・・・・・

『大和』に新人登場です。春は新人が巷に増える季節ですね。新社会人になったみんな、世の中は決して甘くはないが、自分の人生だ!熱くなって切り開けよー!

樽美酒 ゆう少尉・・・どこかで聞いた名前ですがどうぞよろしくお願いいたします。そして実はもう一人・・・。

 

ダルビッシュ有さんです。かっこいいな。



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matsuyama さんへ

matsuyama さんこんにちは!
満を持して、という感じでもないですが出してみました、樽美酒少尉。
ダル君はなんだか気になる人物でしたから出してみたく、「海」か「陸」か悩みましたが「海」に来てもらおうとこうなりましたw。
さあ、彼じゃない彼女がこれからどう活躍してゆきますか、見守ってやってくださいませ!!

オスカーさんへ

オスカーさんこんにちは!
さあ、新しい乗組員が来ましたよ~。
見た目もなんだか素敵そうだし、使えるかも・・とくれば見逃すはずがない女だらけの世界です(危険だ!)。
マツコのお眼鏡にかなうかどうか・・・(たぶんOKかな)、強力にして強烈なガードマンになってもらいましょうかww!

NoTitle

樽美酒少尉ですか。ハハハッ、ユニークですね。思わず声を出して笑っちゃいました。
見張り員さん発想が面白いですね。時の人を取り込んでストーリーを作るなんて、普通の人にはできないです。
樽美酒少尉には若さとその実力を発揮して、敵陣をなぎ倒してほしいですね。そして1日も早く航海科に慣れ、皆と一緒になって盛り上げてもらいたいですね。

こんにちは。有望な新人で何より(笑)『美少年』の一升瓶よりピンクのドンペリを抱えて飲み比べ大会をしそうな感じですね。アチコチからアツい視線が向けられそうです。米軍にも目をつけられたら困りますから、マツコをボディーガードにして下さい!!ますます楽しみです♪

美紗さんへ

美紗さんこんにちは!
どっちかというと武骨者が多かった「女だらけ~」もこれで少しはすっきりした空気になれれば・・・!
ご期待くださいませ(^v^)

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんにちは!
ダルビッシュ選手のことを考えていたらふいに思いついたのが「樽美酒」少尉です^^。どんな名前にしようか…と仕事中にもかかわらず悩んで出たのがこれです。
しょっちゅうこんなことばっかり考えている困りものです・・・(^_^;)
さあ!松岡中尉のと闘争心に火がつくか!
ご期待ください^^。

美形が!

楽しみが増えましたー(*´∀`*)

NoTitle

樽美酒!!
もうこれだけで今夜は十分です(笑)
見張り員さんの技量の広さに脱帽ですわ。
まさか野球とテニスのバトルなんてことは……。なんだか面白そうな展開が期待されますが。
プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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