2017-10

「女だらけの戦艦大和」 ・ 「大和ばっかり(泣)!!」 - 2010.01.13 Wed

「女だらけの戦艦大和」だけが帝国海軍の<ヒロイン>ではない、「女だらけのーーー」がいるのだ。

 

ここ、常夏の島には大きな戦艦が二隻いる。一隻は言わずと知れた『大和』。ではもう一隻は?

 

「武蔵、だよ!忘れんじゃねえよ!」と第一艦橋にあってゴ機悪いのは何を隠そう、「軍艦武蔵」艦長猪田艦長である。艦長はこのところマジで斜めだ。

周りにいた見張り員だとか伝令がびっくりしている。

加東副長が「どうしたんです?最近艦長ちょっと変ですよ?」と、熱い紅茶の入ったカップを差し出しながら言った。

艦長はむっとした表情のまま、カップをつかんだ。が、「あっつい!!もう!熱いんだよ、くそぅ!」と口汚く罵った。

加東副長は大変驚いた。この艦長はいつも物静かで、こんな風に怒鳴ったり罵ったりなんか一回もしたことはなかった。

なのに。紅茶のカップが熱い、と怒るなんて。

「どうなさったんです?いつもの艦長らしくありませんね」加東副長は、猪田艦長と対峙するような格好になって訊いてみた。

すると、猪田艦長はそのスリムな体を椅子から起こし、「だって、、、。みんな<大和><大和>って、大和ばっかりじゃん!<武蔵>だっているんだよ、なのにみんな<武蔵>の存在忘れやがって、、、、」と悔しげに言った。

はあ、そういうことか。副長は合点した。その思いは、ひとり猪田艦長だけでなく<武蔵>の乗組員なら皆が一度は感じていたことである。

<大和>不在の時、内地から来た輸送船に「おおおーーーい、<大和>、かっこいい~~」「頑張って、<大和>~~」と黄色い歓声を浴びたことがある。

その時猪田艦長も、加東副長も防空指揮所にいたのだがその場にいた見張り員が「くっ、、、悔しい!これは<武蔵>だって言うのに、、、」と悔し涙にくれたのを見ていた。

また、上陸の際現地の店に行った際「ヘイタイさん、<やまと>のヘイタイサンね!オヤスクシトキマス!」と言われたり、、まあこの時はちょっとだけいい思いはしたのだが、あんまり<いい気分>ではなかった。

(<大和>じゃねえよ、<武蔵>だよ!)乗組員は悲しかった。

 

「あんまりだ」猪田艦長は紅茶を一口すすって、つぶやいた。すると、航海科の見張り員の小椋兵曹がそっと艦長に近づいて「あの、猪田艦長?」とおずおずと話しかけた。

「なんだ?」と猪田艦長は悲しげに兵曹を見た。

すると、兵曹は「わが<武蔵>と<大和>の違いがなさすぎるであります。我が<武蔵>のほうが最初に電探をつけて区別できたのを<大和>が後からマネして、分からなくなったであります。

ここは何か、はっきり区別できる何かをしたらよいのではないでしょうか」と言った。

猪田艦長の顔が明るくなった。「そうだ、、!それだよ、加東副長何かいいこと考えてよ!」

急なことで副長はさらに驚いた。「・・・いいこと、、でありますか。しかし私は、、、」

すると猪田艦長は「ならみんなにアイディアもらえばいい。総員集めて」と言って副長はあわてて「総員最上甲板!」とマイクに向かって叫んでいた。

 

武蔵の最上甲板に全乗組員が集まった。

猪田艦長がやおら立ち上がり「<武蔵>をもっとアピールしないと、われわれはすっかり忘れられている。我々は<大和>ではない、<武蔵>である。そこで諸君に決定的に<大和>と区別できるようないい案を求めたい」と言って、<武蔵>乗組員は大興奮した。

「そうよね、いつだって<大和><大和>。武蔵ここにあり、を見せてやろうよ!」武蔵乗組員の黄色い声が四方に響いて広がった。

 

その様子を、洋上訓練に出てゆく<大和>の防空指揮所で、見張兵曹や小泉兵曹が見ていた。「なんだあ、<武蔵>でなんかやってるよ?」

それを聞きつけた梨賀艦長は「あ~、きっと猪田艦長の<お説教>だよ。あの人大好きなんだよね、みんな集めて説教すんの」と笑った。

見張り員たちは(ああ、<大和>でよかったーー)と思った、このクソ暑い中、最上甲板で説教ではたまったものではない。そう思いながら<大和>は洋上訓練に、駆逐艦を引き連れ出てゆく。

 

さて、武蔵艦上。

いろいろな案が出てきた。猪田艦長と加東副長は検討に入る。

「艦長、これは?海しか行けない<大和>に対し<武蔵>は空を飛ぶ!――っていうのは」

「現実離れしすぎ。大体どのくらいの発動機がいると思ってんの?却下」

「では、、菊花紋章の下あたりに、新型の砲口を作る。ここから新型の砲弾が飛び出て敵を撃滅」

「そんなの<予算>が下りるか!さっきのもそうだけど漫画の読み過ぎでしょうが。もっとまじめにやれよ」

「では、、<黒っぽくてダサイ大和>に対し、わが<武蔵>は色を変えてもっと素敵に」

「・・・色、ね。うん、それいいかも。どこをどうするんだか、この案の発案者呼んでよ」

 

発案者は、やっぱりというべきか、艦橋にいて艦長に進言したあの小椋兵曹である。小椋兵曹は普段、潮田兵曹と一緒にいるのだがこのところ、けんかしたのか別々にいることが多い。なんでも「あいつがいるとうっとうしい」と分隊長に申し出て、潮田兵曹と別の配置にしてもらったとか。

そのせいかちょっとこのところ不安定なのだ、気持ちが。それでこんなことをつい口走っちゃったのだが、、、今、後悔していた。

よくよく考えたら、<武蔵>に色を塗るなんて。なんという馬鹿なことを思いついちゃったんだろう。しかもそれに艦長がノリノリになってる。

(でも、ここまできたら。いつも忘れられる<武蔵>のためだ、これも御奉公と思って)

小椋兵曹は意を決すると、猪田艦長と加東副長に自分の案を話し出した――――

 

それから数時間が経ってーーー。

「よーしっ。これでいけばだれも<武蔵>と<大和>を間違えたりせんよ。どうだあ、見たか<大和>!」

猪田艦長は、最上甲板に立って副長とともに気炎を上げた。そのそばで、小椋兵曹は(やっぱ、、、よかったのかなあ)と不安に駆られていた。

 

さらに時間が経って、夕刻前に<大和>ほかが洋上訓練から戻ってきた。

「あれ、、、なあに!?」防空指揮所の見張兵曹が叫んだ。麻生分隊士が「どうした?オトメチャン」と寄ってきた。

「分隊士、、、あれ、、、」双眼鏡から目を離して麻生少尉を見て見張兵曹は、前方を指さした。「なんでしょうねえ、、あれ」

梨賀艦長、野村副長、森上参謀長までが集まってきて「うわあ!なにあれ!」と叫んだ。騒ぎを聞きつけた多くの<大和>乗組員が最上甲板や前牆楼の見晴らしのきくところに集まってきた。

「・・・なに。あれ」

気まずささえ感じる沈黙が、<大和>全艦を支配した。

なんと、<大和>の行く手にはすっかり塗装を変更した<武蔵?>がいた。

<武蔵?>は、トップの射撃指揮所のあたりがピンク、下の艦橋が一段ずつ黄色・紫・赤・緑・・・のセンスのない配色で塗られ、測距儀に至っては金色に光り輝いている。

しかも、、(畏れ多いことに)菊花紋章には電飾が施されている。

その変わり果てた<武蔵?>の横を、<大和>は妙な静けさに包まれながらブイに向かって進む。<武蔵?>の横を通り過ぎる時、見張兵曹と麻生少尉は同じ高さの防空指揮所にいる下士官が「見たか!やれるもんならやってみやがれ!・・・ばーーーか!」と見張兵曹に向かって叫んだのをはっきり聞いた。<武蔵?>の艦上で、兵員たちがまるで勝どきのような声をあげている。

見張兵曹は情けなさそうに「あんなこと、、、頼まれたっていやですよね」とつぶやいた。

艦長が「ホント。大体陛下からお預かりしたものにあんなことしたら、猪田艦長ただじゃ済まんよ」と心配そうに言った。

 

そのあと。

流石に「それはないよ。第一不敬ですっ、不忠ですっ、国賊ですっ!」と艦隊司令からクレームがついて、猪田艦長以下泣き泣き塗装を落とす羽目になった。

そして直接の<犯人>として、また<大和>乗員への暴言で小椋兵曹は一週間上陸止めになって、しかも食事は半分にされたとか。それを聞いて潮田兵曹は(あいつとコンビ解消したのは正解だった)とほっとしたとかしないとか。

しかし、この日から<武蔵>はこの島の原住民の間で一大アイドルになったという。なぜなら、艦橋を様々な色で塗り分けたのが、彼らの信仰にマッチしていたらしい。

以来この島限定で<武蔵>は「アア!神様ノお船ノヘイタイさんねーー!!サービス、サービス!」と歓待されたとか。何が幸いするかわからないが。

 

――――これでよかったのか、<武蔵>の諸君。

 

            ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「軍艦武蔵」。

<大和>と同型でありながら、なぜかスル―されやすい<武蔵>    。なんででしょう、あんまりですよね。艦長悲しい。

<大和>でも<武蔵>でも、そのほかの艦でもお国に尽くす誠には変わりはないですよね。

<武蔵>にもっと目を向けてください。そのために良い御本が出ています。お勧めは、「新潮文庫 <軍艦武蔵>上・下 手塚正己著 」です。上巻だけでも600ページを越す大作ですが、艦内の人間模様などが知ることができ、興味深いものがあります。

ぜひ!


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● COMMENT ●

雪風さんへ

猪田艦長は、GFの佐官部門の美少女No,1です。
梨賀艦長はそれが悔しい、、、のでした(笑)。

猪田艦長は絶対美少女だよね
ミス連合艦隊でTOPになりそう

松ちゃんさんへ

キョー!!!
「大和」は大きく「大和型」と解釈してちょ!!
「武蔵」ちゃんも可愛い艦なんだからぁ~~~。
もう、松ちゃんのいけず。

縄張り・・・

だってここの管理人さん”戦艦大和は心の支え”とか何とか言って大和のことしか書かないのですもの・・・武蔵は禁句、『 帰れ! 』って怒られちゃいますよね! うひょ~


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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