「女だらけの戦艦大和」・健康診断1

「女だらけの戦艦大和」では<健康診断>が始まろうとしていた――

 

この<健康診断>は平時に置いて適宜行われるもので内容は軍医による問診・聴診・触診、そして一番大事な性病検査他がある。狭い艦内、万が一にも性病何ぞ持ち込まれたらひとたまりもない。であるから海軍当局もこの病気の予防には必死である。もしも性病にかかれば治るまで病院に隔離されて昇進にもかかわるし第一体裁が悪いのでおおごと。

最も「女だらけの海軍」で不名誉な性病に罹ったものは今のところ皆無だがでも万が一を考え検査だけはしっかり行う。

そのやり方だが、艦内においては医務室または最上甲板で診察をするのだが最上甲板で行う場合は天幕を張りさらにその下を四~五等分に個別に区切りその中で各種診察・検査を行うのである。性病検査は結構<恥ずかしい>姿勢を強いられるので、特に新兵さんには苦痛の種だが・・・

新兵でなくても苦痛なものがここに一人――

 

オトメチャンこと見張トメ二等兵曹である。

見張兵曹は麻生分隊士から皆への通達として、「今週末<健康診断>があるから前日には皆、体をきれいにしておくように」という言葉があった時(またかあ、いやじゃなあ)と心底嫌そうな顔になった。

それを小泉兵曹が見て「オトメチャンずいぶんいやそうじゃね。そんなに健康診断が嫌かねえ」と聞いた。見張兵曹はうーんと唸って、「あの検査があるじゃろ。うちはあの検査が死ぬほどいやじゃ、はずかしうてならん」と言った。

小泉兵曹は「ああ、性病の検査ね。痔の検査も兼ねとる言うあれか!確かにまあ、オトメチャンならいやじゃろうねえ。あの恰好はのう」と言って変な含み笑いをした。そんな小泉兵曹をちょっと睨むような目つきをしてオトメチャンは見た。小泉兵曹は構わずに、「ほいでもな、なんも考えんとあの台の上にゴロンと仰向けになって足を開いたらすぐ終わるで、あんまり気にせんことじゃね」と言って笑って行ってしまった。

見張兵曹はその後ろ姿を見送りながら、「じゃけえ、そのかっこがいやじゃというんよ。あんな恥ずかしい格好、うちはようせんよ・・・」と小さく言った。

過去にも数回、健康診断は受けて性病検査も受けてはいるがあの体勢だけは我慢ならない。それに検査を始めると軍医は必ず「おう、見張兵曹は心配いらんな。まだ乙女じゃからね」と言って笑う。その笑いもなんだか人を小馬鹿にしたように感じられていやだし。

(乙女じゃいけんのじゃろうか。・・・待てよ、うちはもう先に分隊士と・・・じゃ。今回はもうあがいなこと言われんで済みそうじゃな。あの恰好だけ我慢できれば)

見張兵曹はそう思って腹をきめることにした。

 

この検査、外地にいる海軍嬢たちもそれぞれ訓練の合間に受ける。

とある南方基地航空隊の搭乗員たちは軍医から「明日は健康診断だ!みなそのつもりで」と言われ、「来たー!またあそこでかね」と大笑いかつ辟易の表情である。この島の基地航空隊では「誰も来ないし見もしないから」という理由で健康診断その他を椰子の木の陰で行うのだった。

誰も来ないし見もしない、というのはそこに現地民の集落がないからで、だれかが検査中は他の搭乗員たちがしっかりのぞき見をする。だから「せめてなんか布くらい張れよなあ」という話になるのだが軍医長は「え?なんでそんなことすんの?いいじゃん見られたって、女同士じゃん?」と意に介さない。

搭乗員嬢たちはそれでも、持ち前のさっぱりした気性から「まあ仕方ないか。見たきゃ見ればいいし。見られて減るもんじゃないしね」と言って笑い合う。

潜水艦部隊では基地に帰ってする。中には勘違いした兵がいて「ええ!?艦の上でするんですか!いやだなあ万が一偵察機とか飛んできたら撮影されちゃうじゃないですか!」と言って総員大爆笑になったこともあった。

その兵の艦長はそれを聞いて「ならうちの波〇〇一潜だけは艦の上で検査をしようかなあ!」と言い乗りやすい乗員たちの喝さいを受けることになったがそれはあくまで冗談。

 

「女だらけの武蔵」でも<健康診断>の準備が忙しい。

北野特務少尉の音頭で、秋川上等兵曹や春山兵曹たち衛生兵は最上甲板に天幕を張ったり衛生器材をそろえたり余念がない。村上軍医長が各分隊員の分厚いカルテをめくって確認作業を始める。

秋川兵曹は暑い最上甲板で春山兵曹や数名の衛生兵と天幕を張っている。そしてその下を五等分に区切っている。

「このくらいでいいですか、秋川兵曹」

と春山兵曹は秋川兵曹を見かえって仕切りの衝立の位置を調節しながら言った。秋川兵曹は「ああ、そこでいいよ。・・・おおい、佐倉一水と浜地一水、このあたりに診察台を置いてくれ」と指示をする。北野少尉が「台はしっかり設置してくれよ、乗ったとたんにガタンじゃ困るからね」と言い佐倉一水と浜地一水は「はい!」と返事をして確認。

その日もくれる前にはすべての準備が整い、医務科の皆は「明日はよろしく」と言い合う。春山兵曹は夕食前の「手を洗え」の号令に手洗いに走りながら「秋川兵曹、今年もみんな何事もなく終われればいいですね」という、その兵曹に秋川兵曹は「それが一番だね。どこもそう願っているだろうが今年も武蔵は<健康優良艦>の称号をもらいたいもんだ」と答える。

<健康優良艦>とは一人の病人やその疑いのある兵員、性病患者を出さない艦艇や航空隊などに与えられる称号である。

<武蔵>はもう竣工以来もらっているから外せない。春山兵曹は笑いながら「大丈夫ですよ。だって<武蔵>ですもん!」と言って手を洗う。

 

『大和』では。

いよいよ明日に迫った<健康診断>を前に総員が入浴である。浴室に入りきらない兵たちは最上甲板にこしらえた風呂に入って垢を落とす。この風呂に入るのは階級が下の兵たち、皆そう毎日は入れないし入湯上陸もそうそうできない兵ばかりであるからその喜びようは尋常ではない。湯に浸かりながら「ああ、ええ気分じゃあ!」「これなら毎日健康診断でもええね!」と言い合っている。

そんな下級兵を見ながら甲板士官は(ああ、入浴もままならん兵は気の毒だな)と少し可哀そうな気分でいる。そんな兵たちの騒ぎをトップから見下ろすハッシー・デ・ラ・マツコはトメキチに、

「ちょっと見てよあれ!あの女たち恥ずかしげもなく素っ裸でいるわよ。何してんのかしらねえ寒くないのかしらねえ」

と感心している。トメキチは湯の匂いをさっきから感じていたので落ち着いて

「お風呂ですよおばさん。なんだか明日あるみたいだからきれいにしてるんじゃないかしら。大きなお風呂だからきっと寒くもないんだと思うなあ」

と答える。ふーん、そうなのとマツコは言ってなおもその光景を見つめている。

 

ともあれ、それぞれの健康診断の日はそこまで来ているのだった――

 

     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

健康診断です。本物の海軍・陸軍でも行っていたそうです。

海軍では特に性病は恐ろしい病気で、あっという間の感染を防ぐため上陸の際は「ハート美人(コンドームの名称)」と、殺菌クリームの携帯が義務だったようです。これがないとたとえ十六歳の年少兵であろうが四十五歳の補充兵であろうが上陸できなかったと言います。

また、艦上での性病検査は実際あったそうでまずは痔の検査として軍医の前でお尻を見せる。そのあとは真打ちの性病検査で男性の大事なものを軍医が持ってそれをグイッ!と前にしごくんだそうです。もしも膿でも出たらアウト。上陸止めになってとても痛い治療を施されるそうです。淋病の場合など薬剤をつけたガラス棒を尿道に突っ込まれて死にそうになったとか。

男性ならその痛さ、少しは想像できますでしょうか???

なお、<健康優良艦>は私の創作ですのであしからず・・・。

 

帝国海軍衛生科上等兵曹階級章。桜が赤いのが衛生科。
海軍衛生科階級章



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かなやのぶ太さんへ

かなやのぶ太さんこんばんは!
「突撃一番」ですよ~~~~ウホウホウホww。
やはり子宮がん検診とか乳がん検診って大事ですよね。特に子宮は自分で見えないところだけに、やはり検診はしたほうがいいですね(って自分のことですね・・・)。
でもあの格好はやはり抵抗ありますから、それを克服すれば!
医師は何とも思ってらっしゃらないと思うんですよね、機械的に済ませますよ結構。妊娠中ドキドキしながら検診を受けたことがありましたが。
甲板上での検査はいやだあ~~ww。
マツコが見たらなんていうかなあ。ウワァ!!

と、「突撃一番」ってやつですよね?(どきどき)
私も勝手な思い込みが先行して、先日市からきた子宮がん検査なるものに行っていません。絶対行くべきだと友達には言われたのですけれど、オトメチャンいわくの「仰向けの……」がどうしても…^^;
相手はお医者さんですもの、そんなのには慣れっこだと思うんですけれどね。
それにしても甲板で検査だったら嫌ですねえ。
シャワーは気持ちがよさそうなのでOKとして、マツコの悲嘆の声が上から聞こえてきそうです。

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
全くいったい何を書くかと思えば!・・・ってやつですね(^_^;)。
そうそう!「ハート美人」て今もあるらしいんですよ、商品名としてはいい名前かもしれないですよね~。ほかの「突撃一番」という勇壮な名前のゴムもあったそうですよ^^。
あの診察台は本当に嫌でした。ですから今もがん検診に行くのをためらうおおきな要因でもありますが、この年になって何を言ってやがんだい、と思う頭もあり・・・(-_-;)
ア、アンダーヘアに香水!?ツルリン!?
ゴクッ・・・なんかみたいようなそうでないような。
艦内で流行ったら、と思うと・・・ウヒョ!ですね^^。

おはようございます。朝から刺激的!!(笑)「ハート美人」ネーミングが素晴らしい♪ しかし、あの診察台は…イヤですよね。看護師のヒソヒソ声なんかカーテン越しに聴こえたら本当にイヤー!!
全然関係ないですが、レズの方々はアンダーヘアに香水をつけるとかつるりんとさせるとか聞いた記憶が…艦内でそんなことが流行ったらちょっと問題ですね(笑)

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
女だらけの大和・武蔵の艦上を飛んでみたい・・・と思うのは健全な男性の証拠であります(と軍医長)。
実際どんなふうでしょうね、想像したらもうたまりませんね~ウフウフ❤
そうなんですよ、淋病の治療ではこういう荒っぽいやり方をしたそうですよ。ぞーっとしますね、女でも。そんなところに棒を突っ込むなんざ尋常じゃないですが「いい思いをしたんだから!」としかられつつ治療をしてもらったそうです。
武勇伝もほどほどに、ということでしょうか。
今夜の夢に出ませんようお祈りいたしますっ!!

ありがとうございます。興味津々で読み終えました。考えただけでも想像しただけでも男の身としてはドキドキしてしまいます。こんな光景が繰り広げられる艦上。マツコさん、いやカラスにでもなって終日、旋回しておきたい気分です。
男も大変でしたか。尿道にガラス棒を突っ込む!! 信じられません。
一生、使い物にならなくなるよぉぉ。
プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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