2017-10

「女だらけの戦艦大和」 ・ 梨賀艦長の憂鬱<弐> - 2009.12.07 Mon

「女だらけの戦艦大和」では、艦長が――――

 

その日の夕飯から、艦長は食事を完全に拒否してしまった。しかも艦長室から一歩も出ようとしなくなっていた。

「艦長立てこもり!ストライキ!1人でご飯は嫌だっ!」と言ってトメキチを抱いて部屋から出ないで徹底抗戦の構えである。

驚いたのは参謀長や副長である。昨日や今日、乗艦してきた水兵の我がままなら一発ケツバットでもかませばおさまるだろうが、艦長が。

「艦長、どうなさったんです!?ここを開けてくださいよ」という副長の声も無視。参謀長の「梨賀、何大人げないことやってんだよ。ここ開けろ!」という怒鳴り声も無視。

鍵をドアにギッチリかけて、しかもいつの間に持ってきたのか銃剣道の際に使う木刀だの、竹刀だの、ラッタルの手すりを外して来たのやら、あらゆる「武器」になりそうなものを部屋に持ち込んでいる。

「来るなら来いッ!こっちの要求をのむまで出てやんない!」

艦長は意固地になってしまっている。艦長は、自分の要求を紙に書いて、ドアの下の隙間からそっと差し出した。

「これはなんだ?」と参謀長がそれを発見して読んだ。

その紙には艦長が<個食>でわびしく、食事を取る気にもなれないことが連綿とつづられている。

「そうか、そうだったのか」と森上参謀長はやっと納得した。確かに自分は副長と食べるから、艦長のさみしさなど考えも及ばなかった。

「梨賀、よくわかった。分かったからここを開けて出てこいよ。で、飯食わんか?もう何日もまともに食ってないだろう」

参謀長はドアを叩いて艦長に言った。が、艦長は「出てかない。開けない。参謀長信用できない」とドアの向こうで言っている。

信用できない、と言われて参謀長はちょっとがっくり来た。兵学校からのウン十年、心通わしたんじゃなかったのか?

「じゃあ、どうしたらいいんだよ!」ちょっとイラついて声を荒げる参謀長。すると、艦長は「そんなに食ってほしいか。出てきてほしいか」という。

「食ってほしいし、出てきてほしいよ。艦長がこんなじゃ示しがつかん、、、」とぶつぶつ言う参謀長に、艦長「オトメチャンを連れてきな」と言った。

「は!オトメチャン!?」参謀長は頓狂な声を出した。「なんでオトメチャンなんだ?」

「私はねえ、あの子が好きなの!ここに呼んで来て。オトメチャンとちょっとお話したら立てこもり止めてやる!」艦長は駄々こねた。

「・・・わかったよ」参謀長は、見張兵曹を呼びに自ら防空指揮所に行った。兵曹は麻生分隊士と指揮所にいて、双眼鏡の点検中だ。

「見張兵曹、ちょっと艦長室まで来てくれないか」と参謀長が呼びかけると、麻生分隊士は参謀長に不審の目を向けた。参謀長はあわてて「おれの用事じゃない!艦長がちょっと、、、大変なんだよ、で、兵曹をご指名だ」と言った。兵曹は分隊士を見た。分隊士は「艦長ご指名なら、仕方あるまいね」と兵曹を艦長室に行かせた。しかし、目線はしっかり参謀長にまとわりついていたが。

 

「艦長。見張兵曹参りました」参謀長は艦長室のドアをノックした。

「ホントに?オトメチャンの声聞かせて」と艦長の声、参謀長につつかれて見張兵曹は「13分隊航海科、見張兵曹であります」と答えた。

「じゃ、オトメチャンだけ入っていいよ。後のやつは絶対入れないよ。もし入ったらやっつける!」艦長は脅した。

「大丈夫ですったら。オトメチャンだけですよ」と副長が困り切って言った。

「オトメチャン、入って」と、ドアが細く開いた。見張兵曹がのぞくとその時だけドアが大きく開いて兵曹がさっと入り、すぐにバタンと閉まった。

見張兵曹は艦長室に入った。これで二回目くらいだが、なんて豪華なんだろうか。そう思って見回していると、トメキチが気づいて飛んできた。

「トメキチ!」と抱きとめる見張兵曹を見て、艦長は「さ、ここに座って」と、椅子を出した。自分ももう一つ椅子を出して座りながら「ごめんね、オトメチャン。でも艦長、ちょっとオトメチャンとお話ししたくってさ」と言った。

兵曹はトメキチを抱いて座った。「嬉しいでありますが、私でいいのでありますか?」と兵曹は心配げに言った。「副長や参謀長ではだめなのでありますか?」というと艦長は涙をボロボロと流して「だめなの、あいつらじゃ。1人になったことのないやつなんか信用なんない!」

兵曹はびっくりしたが、少しづつ艦長の悩みを聞きだした。そして、こんな豪華な部屋で、調度品に囲まれていても幸せじゃないのか、と悲しくなった。

「艦長、、おさみしかったんですね。確かに一人っきりで毎回食事は悲しいであります、自分にも経験があります」兵曹は言った。彼女は子供の時分、家族とは一緒に食卓を囲んだことがなかった。

父親が航海から帰っていれば、一緒に出来た。しかし父親不在の時は「お前はあっちで食え」と、追い出され雨でも雪でも、外で飯椀を抱えて食べていた。1人で空を見ながら食べる飯は、しょっぱかった。―――それは涙の味だった。

自分のそんな経験を、兵曹は艦長にポツリポツリと話した。艦長はあらためて見張兵曹の不遇な子供時代に驚愕を覚えた。

「そうだったの、、、。オトメチャン、苦労したんだね。そこへ行ったら私のこんな思いなんか、、」艦長は言いかけたが、兵曹は椅子から立ち上がると「いえ。私は仕方ないんであります。<不義の子供>ですから。しかし、艦長は違います。艦長が悲しい思いやさみしい思いをされているということは、大和の乗員が悲しい思いをしているということであります。艦長と我々は一心同体でなければなりません」と艦長の目を見つめて言った。

その言葉が、荒れかけた艦長の心の琴線に触れた。トメキチも、艦長を優しい目で見ている。

「オトメチャン、、、」艦長は椅子から立ち上がると、見張兵曹を抱きしめた。「ありがとう、艦長味方なんかいないと思ってた。参謀長や副長に怒っていたけど、自分からもっと言えばよかったんだよね。これからそうするね、、」

「艦長、元気をだしてーーー」と言いかけた見張兵曹を艦長は固く抱きしめた。

「あ、、あの、艦長?」と当惑する兵曹を壁に押し付けて艦長は「オトメチャン、、艦長の従兵になってくれないか」と囁いた。「オトメチャンは忙しいのはわかってる。普段の事はほかの人間でもいいけど、、、艦長を<慰めて>くれる従兵になってほしいの」

・・・・え? 何だって、<慰める>ってどういうことをすればいいの?

兵曹が聞こうとした時、艦長は「こういうこと、、、」と言って兵曹に足払いを掛けてその場にぶったおした。不意の事で、頭を打って軽い脳震盪状態になっている兵曹に艦長は口づけた。

「艦長だって、オトメチャンが大好きなんだから」と言って、兵曹の服を脱がした。「麻生少尉だけのものにしたくないんだから。艦長だって、、、」

見張兵曹が正気に戻るとなんと、裸にされているし、艦長の下になってるではないか。「いやあああ!!」と思わず叫んでしまった。トメキチがびっくりしてギャンギャン吠えだした。

外で待機していた副長・参謀長が驚いて「どうしたんだ!何があった!」とドアをドンドン叩いた。

兵曹は「艦長、、、私は艦長を御慰めしたいですがこんな形での御慰めは、、、ちょっと、、、」と暴れた。

艦長は「だめ。うん、て言わなきゃ一生ここから出ない」と脅す。見張兵曹は困ってしまった。泣きそうになって「艦長・・・」とつぶやいた。見る間に、兵曹の瞳に涙が盛り上がって流れた。艦長は驚いた。

「私はどうしたらよいのでありますか?分隊士・参謀長・艦長、、、お三方のお相手は到底できません」と泣いた。

!!参謀長も!―――艦長は内心驚いたが、兵曹の苦悩を思った。確かに麻生少尉だけでも大変だろうに、あの参謀長やこの私も相手じゃ、、、。しかしいつの間に参謀長が、、??

艦長は、兵曹から身を離すと脱がした服を着せてやった。「ごめんね。艦長ホントに身勝手だった。こんなことしなくっていいから時々お話ししようね」

そう言って「艦長、もうここから出る」と言って、ドアのかぎを開けた。

副長・参謀長が入ってきた。参謀長は、もしかして艦長はオトメチャンを―――と思っていたのだが兵曹はちゃんと服を着ている。思い過ごしだったか、と「一体どうしたんです、えらい騒ぎして」というと、兵曹が「ごめんなさい。私がトメキチを踏みそうになったものでありまして」と言い訳した。

そして艦長は「参謀長も副長も、ごめんね。艦長ちょっと大人げなかったよね」と謝った。参謀長は「梨賀の気持ち、よくわかったよ。明日から一緒に食おうよ」と言い、副長も賛成した。

そしてこのなんだかやっぱり良く分かんない事件は、解決に至ったのである。

 

しかし、、そのあと艦長室に来た参謀長が椅子の下に落ちていたオトメチャンの下着を発見、艦長と言いあいになったのはーーー秘中の秘。

さらに下着のない見張兵曹を見て、艦長に大いなる不審を持ってしまった麻生分隊士もいる――― 一体どうなってんだ、この人たち。

 

             ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

1人は嫌ですよね。人間は1人じゃ生きられないものでしょう、やはり。どんなに強がっていてもやがてさみしくなる。

特にご飯はだれかと食っていたい。

えらい人でも、そうでなくってもその思いは同じ。

 

しかし艦長、火種を残しちゃダメじゃん!


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● COMMENT ●

matsuyamaさんへ

こんばんは

実際問題として、従兵の基準は「眉目秀麗」な美少年タイプが多かったそうです。やっかみも買ったようですよ。

このお話では、見張兵曹を従兵にというのは無理な話なんですね、麻生分隊士が「うん」とはいいませんもの。

艦長は、やっぱり<おとな>です!

松ちゃんさんへ

こんばんは

ワハハ!!なんか、松ちゃんさまのコメントで「裏話」が作れそうですね(爆)。

あの下着は、、艦長が放り投げたものがイスの下に入っちゃった、と思ってください(笑)。

NoTitle

一兵曹が艦長の従兵になるってことはかなり重責ですよね。しかも見張兵曹にはれっきとした麻生分隊士との強い絆があるし。立て篭もり事件を起こした艦長にしては、その辺のところ妙に分別のいい判断でしたね。

出た! 下着マスク・・・

見はりんさん、こんにちは。 見張兵曹が艦長室に下着を忘れたのは艦長のスケベ心を一層あおる為、わざと忘れたものと思われます。 艦長が見張兵曹の下着を頭からスッポリ被って食堂に現れたりしたらヘンタイなこと、イヤ!タイヘンなことになりますぞ~


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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