女だらけの戦艦大和・総員配置良し!

女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?

少尉たちの無謀な挑戦 1

「指揮官だからってえばるんじゃねえよなあ。まったく嫌になる」…そんなささやきが平野少尉の耳に聞こえてきたーー

 

その日、午後の課業を終えた機銃の平野少尉は海兵同期で副砲分隊の大久保少尉とシールド無しの高角砲内に入り込んで羊羹を食べていた。真夏の日差しの照り付ける中、二人は目深にかぶった艦内帽の下の目を細めながら羊羹をひたすら食べていた。

「美味いねえ」「うんさすが間宮羊羹だね、コクが違う」

そんなことを言いながら二人は羊羹をぱくつく。

と。

彼女たちの居る場所のすぐ下の機銃座から下士官嬢たちらしい話声が風に乗って吹き上がってきた。

「…こないだうちらの指揮官の北沢少尉に『厠に行ってもええでしょうか』言うたんじゃ。ちょうど訓練も終わりになるときじゃったけえええか思うての。ほしたらあのくそ少尉、『いかん!訓練はまだ終わっていない!小便なら我慢せえ』いうんじゃわ。そんとなこと言うてもうちもあの時は五時間も小便したいんを我慢しとってなけえね…ちっとでも動いたらもう漏れるいうんにあの少尉!」

一人の下士官嬢が憤りながら語るともう一人が

「うちの指揮官もほうじゃわ、『貴様ら精神がたるんどってなけえ小便ばかりしとうなるんじゃ、もっと気ぃ引き締めていかんか。緊張感が足りん』いうて怒るんよ。そのくせな、あのあほ少尉てめえが小便しとうなると訓練中でも『あ、厠厠~』いうて消えるんじゃ。あいつのほうこそ緊張感も何もないで?まったくええ加減な女じゃわい」

と怒り、最初の下士官嬢も

「うちのもじゃわ!ひとには『我慢せえ』いうときながらてめえはさっさと厠に行きよる。ほんとにええ加減じゃわ。じゃけえ兵学校出のエリートいうんは好かんわい」

「ほうよ、人の心がないんじゃわ連中には」

とぶうぶう怒る。

しばらくの間怒っていた下士官嬢たちはやがてそこを去って、平野少尉と大久保少尉は言葉もなく羊羹を握ったままその場に座っていた。

やがて、平野少尉が

「そんな風に私たち、思われてるんだね」

とポツリ言った。大久保少尉も

「ああ…心外だ。私は彼女たちにそんな無理強いをしたことはないんだが…いったい誰だね彼女たちの指揮官は。心当たりあるかね?私は機銃のほうの指揮官がだれかはわからんけど」

と言って苦々しげな顔になった。平野少尉がその平べったい顔を空に向けていたが「ああ。多分石井少尉と稲垣少尉だよ。大体わかる」と言い大久保少尉も「ああ、あの連中ならさもありなん」と言った。

しかし。

「このままじゃ困るなあ。士官と下士官のあいだに軋轢があっては事があったとき支障をきたす…何かいい方法がないかなあ」

平野少尉は考え込んだ。大久保少尉は

「まあ慌てて考えても事を仕損じる。ここはじっくり考えようや。なんならほかの指揮官連中にもあたってみようじゃないか。何かいい方法を思いつくやつがいるかもよ」

と言ってその日は二人別れた。

 

数日後、巡検後。

星空の下の最上甲板に各分隊から来た二十名からの少尉嬢たちが集まった。その中心は機銃の平野少尉と副砲の大久保少尉で、多くの少尉嬢たちは平野少尉の

「下士官嬢に厠に行くななどと無理な要求をして我々兵学校出身者の評判を落とすものがいる。どうしたものか、意見を聞きたい」

という呼びかけに応じて集まったものである。少尉嬢たちはその場に車座になるとあれこれ知恵を出し合った。

が、なかなかいい意見が出ない。一人の少尉嬢―宮本―がはーっと息を吐いて

「なんだかなあ。どうして我々と下士官嬢たちは分かり合えないんだろう。特務士官の少尉たちならその辺の機微がわかるんじゃないだろうか?――そういやここには特務士官がいないではないか、これだから兵学校出身は…っていわれるんじゃなくて?」

とやや厳しい瞳を皆に向けた。皆は「それもそうだが…」と黙ってしまった。宮本少尉は

「だからと言って特務士官を巻き込むのもどうかと思うが…ここは我々で何とかすべきだと思うけどね。―そうだ!我々指揮官クラスの少尉はこれから一週間、始業から夕食が済むまで厠に行かないように努力するんだ!そしたら下士官兵たちも納得してはくれないだろうか?そして我々の側も人の苦しみがわかろうというものだ、そうしたらもう無理なことを言わないだろう言えないだろう?どうだろうか」

と提案をした。

うーむ、と防暑服の腕を組んで考え込んでいた少尉嬢たちだったが平野少尉が決然顔を上げると

「宮本少尉、その案私はいいと思う。下士官に『厠に行くな』と言っておきながら自分はしれっとして厠に行くなんぞ士官の道にもとる。厠に行けなかった下士官嬢の苦しみを味わうのだ!そうだそうだ、われわれも一週間厠に行かなければいいのだーっ」

と叫んでその場の少尉嬢連中はその勢いに気おされてつい拍手してしまった。

「決まりだね」

宮本少尉が静かに言い、平野少尉は

「うん。…そうだただし急性腹症やアレの時はこの限りにあらずだ。しかーし!それを良いことにずるをしたものはさらにきつい罰則を与える。――これでいいよね」

と補足をし大久保少尉は「いいんじゃない?何でもやってみることが大事さね」と笑っている。

その集まりを、通りかかった藤村少尉「なにしておるか?――って何だエンガワ少尉、みんなしてあつまって何してるんだよ」と裸足で歩いてきたが大久保少尉に

「実はかくかくしかじか」

と話を聞き「ふーんそうなの。まあ頑張ってね」とその場を去ろうとしたが平野少尉に「まてーニワトリ少尉!」ととっつかまり

「貴様も少尉の端くれなら参加するんだ!いいな明日の始業時から夕食の終わりまで厠に行かないこと!明日から一週間だ。ただし急性腹症およびアレの際はこの限りではない。だからといって嘘をついて厠に行けば…わかってるな?」

とすごんでみせ、藤村少尉も泣く泣く参加の羽目と相成った。

 

さてその翌朝、目覚めると同時に士官用厠には少尉連中の長い列ができた。中尉や大尉、あるいはそれ以上の士官たちは

「なんだなんだ?一体どうしたというんだね今朝は」

と不審がったが少尉たちは「いや別に何もありませんが?たまたまでしょう」と笑ってやり過ごした。この件は「ほかの士官、中尉大尉や科長たちには内緒だぞ」ということになってもいたので誰も本当のことは話せない。

「話してしまったらやめろと言われるに決まってる」からだ。

 

ともあれ、少尉たちの挑戦はその幕を切って落としたーー

 

 (次回に続きます)

 

                 ・・・・・・・・・・・

下士官嬢の不満をそのままにしておけばきっとどこかで軋轢が生じる。というわけで平野ヒラ女少尉と大久保少尉は考えたようですが、宮本少尉そんな提案していいのでしょうか??

どんなことがさて、起きるでしょうか。次回をお楽しみに!

 

 

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大和 | コメント:8 | トラックバック:0 |
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コメント

森須もりんさんこんばんは
ああなんて鮮烈な思い出なんでしょう…しかし普通男が女性に先に譲るでしょうにねえ(◎_◎;)…
女の方がそれの我慢は利きにくいんですからね(# ゚Д゚)!

別れてよかったかも!

それにしてもトイレを我慢するって尋常ではない苦しみですよね…(-_-;)。

2017-02-22 Wed 21:25 | URL | 見張り員 [ 編集 ]
トイレを我慢するほど、つらいものはないですね。

思い出があります。
学生時代に、ボーイフレンドと歩いていて
どちらもトイレに行きたくなりました。
だけどトイレがない。

悲壮に探して探して、公園のトイレをみつけました。
そのとき、トイレは一つしかなかったのです。
すると、その彼は、先にはいったのです。
私は、仕方なく外で、待ちました。

その後、いろいろな理由で別れましたが
あのトイレの件は、強烈な思い出です。
2017-02-20 Mon 18:03 | URL | 森須もりん [ 編集 ]
まろゆーろさんこんばんは
お返事が遅くなりまして申し訳ありません、ごめんなさい。

私も今を去ること20数年前、東名高速を走行中尿意に襲われました。だんだん無口になり、笑顔が消え、必死な表情に変わり、膝を爪を立てて握りしめ…必死で我慢すること数十分、いや一時間少々。あれは地獄でした。
そのことを思い返しながら書いていたらなんだか腎臓のあたりが痛んできましたw。
東九州自動車道…いつか通ることがあったら気をつけます…ガクブル…

なんと「なんだかなあ」は従弟様の御口癖でしたかw。でもほんと最近「なんだかなあ」って言いたくなることが多いです
。つらいこと多すぎてやんなりますw。

「間宮羊羹」本当のものは「間宮の洗濯板」と呼ばれるほどの大きさだったとか。甘いものに飢えている将兵たちには垂涎ものだったでしょうね。そういえば羊羹一切れで数時間の漂流に耐えられるとか。一本あれば一晩は大丈夫とか…。だから戦闘前に皆ポケットに羊羹を入れていたんだなあと納得したことがありました。

先日の大雪には参りました。あの寒さはこの時期には残酷でしたねww。
にいさまもどうぞ御身大切になさってくださいますように^^。
2016-11-28 Mon 23:13 | URL | 見張り員 [ 編集 ]
トイレに行けない事態ほど不安で恐怖なものはありませんね。
高速道路でもよおして次のPAやSAまで距離が長かったら最悪です。かく言う大分県と宮崎県を走る東九州自動車道には延々とPA、SAが無くて死に物狂いの思いをしたことがありました。鬼門です(笑)
これから先、彼女たちはどうのようになるのでしょう。喫緊の予感が凄すぎてこちらまで目を白黒しそうです。

「なんだかなぁ」、従弟の口ぐせです!! 二人そろって「なんだかなぁ」の時の我が家はメルトダウン寸前の雰囲気なんですよ。
間宮羊羹は美味しいです!! 至福のお茶タイムに抜群の相棒かと。

厳しい天気が行きつ戻りつですね。健康管理には十分にご配慮くださいね。
2016-11-26 Sat 17:45 | URL | まろゆーろ [ 編集 ]
河内山宗俊さんこんばんは
膀胱炎。今まで何回かやりましたがあれはつらいですね(-_-;)。
少尉嬢たち、ちょっと走りすぎではないかと思いますね。しかも一週間も(-_-;)。大ごとにならなきゃいいんですが。
そこへ行くと男性はラクでいいですよね。
>虹の橋
まさにそれですねw。ああうらやましい。
2016-11-24 Thu 20:22 | URL | 見張り員 [ 編集 ]
こんばんは
先ほど鍵コメ様のブログコメント欄にかきこみました、そのようにお願いいたします!お手数おかけしてごめんなさい!!
2016-11-24 Thu 20:19 | URL | 見張り員 [ 編集 ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2016-11-24 Thu 19:17 | | [ 編集 ]
かえって膀胱炎などの不調を誘発しそうです。
どんな人間でも自然の摂理にはかなわないので、むしろ自由にさせてあげたほうが。
男子ならば隙を見て甲板からふり落とされないよう注意の上で、虹の橋を架けてしまえば良いのですが、そういう簡単な話じゃないですものね。
2016-11-24 Thu 11:09 | URL | 河内山宗俊 [ 編集 ]

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