各種講義開催中!

艦内では各配置の指揮官などによる「講義」が行われる場合がたびたびあるーー

 

今日は機銃の平野ヒラ女少尉の肝いりで、機銃員ー特にまだ経験の浅い兵隊嬢ーたちを集めて講義が開かれている。今日のトレーラー水島は曇りの天気なので日差しもそれほど強くないので露天甲板に集まった皆は海からの風に吹かれて気分よく平野少尉の講義を受ける。

少尉の補助に長妻兵曹と増添兵曹がしかつめらしい顔でそばに立ち、給弾箱を素早く装填して見せたり射手席・旋回手席に座って平野少尉の号令に合わせて機銃発射の様子を再現し、一等水兵嬢たちは

「下士官ともなると動きが素早いのうー。うちらまだまだじゃねえ、早うああならんといけんわい」

と言って二人の動きに見入っている。

平野少尉はそれを見て満足げにうなずいた後おもむろに機銃砲身に手をかけ、いつもの「エッチな」たとえを持ち出し、水兵嬢たちの度肝を抜く。

曰く、

「機銃も長時間発射すれば砲身が赤くなり熱を帯びて曲がってしまうことがある。そうだな?長妻兵曹、増添兵曹?」

それに二人は(ほれきたで!少尉のあのしょうもないたとえ話)と顔を見合わせてにやっとする。二人は「はい、ぐったりしてしまいます」と答える。平野少尉はうんうん、とうなずいて

「撃って撃ちまくって、撃ちおわった後はさすがの砲身もぐったりだ、これをどう考える?」

というと、ここぞとばかりに長妻・増添は声を張り上げて

「ハイーッ、〈イッちゃう〉のであります!」

と言うのである。

水兵嬢たちはどういう顔をしていいのかわからずあいまいな笑みを浮かべて「…はあ、ほうですか」というだけである。

その様子を離れた場所の機銃座から見ていた辻本上水は「まーた始まりよった、平野少尉とあの二人のしょうもないスケベえなたとえ話。まあ、機銃の連中は一階はあの話を聞かなきゃ一人前とは言えんもんなあ」と独り言ちながら砲身にブラシを入れてごしごししている。

 

また、前檣楼トップの防空指揮所では今日は気象班の数名が天辰中尉の「雲の流れの見極め方」講義を受けている。

天辰中尉は「つまりこのトレーラーにおいては特に南から天気が急変する場合が多く、南から黒雲が沸いた場合長時間大雨が降ったり雷が鳴る場合が多い。スコールの場合とは雲の形状が違うので要注意である。ではあの雲をあなたはどう見る?」などと言って長い棒で上空を指しながら話をする。

指し示された雲を双眼鏡で検分した兵曹長は

「うーん…。あの程度ですと、風の方向を含めて水島には降雨無し、だと思います」

と答え、天辰中尉は「よい答えです。あなたの予報、当たりますよ。あの雲の流れだとここには降りません、そもそも今日は安定した曇天ですから。この曇天の原因はー」とさらに話を続け、気象班の皆は指揮所をぐるぐる回って全天を観察。そのあと

「では前甲板に行って気象ゾンデを見ます、―お邪魔しました」

と言って一行は指揮所を後にしていった。

その様子を見ていた酒井水兵長は

「気象班、結構大変な配置じゃねえ。うちはぼんやりじゃけえ、務まらんわい。―いうてここもぼんやりじゃ務まらんわねえ」

とひとり呟いてくすくす笑っている。

 

そして第一主砲前では麻生分隊士と桜本兵曹、そして復帰なった小泉兵曹が各配置の見張担当を集めて講義の真っ最中である。

今回は分隊士中心の講座で、桜本と小泉は仲良くその手伝いをしている。分隊士の

「この艦影は何だ。わかるもの?」

という声に小泉兵曹は素早く一枚の厚紙を皆に提示する。そこにはある艦のシルエットが黒く浮き出ている。

ハイハイ、ハイと手がいくつも上がる中分隊士は「ではそこの彼女」と言われた水兵嬢は自信満々で

「我が帝国海軍の〈高雄〉であります」

と言って分隊士は「その通り。前檣楼部分に特徴がある」と言ってレクチャーする。ついで「これがわかるもの」と言って今度は桜本兵曹が掲げた紙に書かれたのは飛行機の機影である。これもすぐに手が上がり「アベンジャーです」「正解!」

そして「ではこれは何だ」と出されたのは何やら不思議な形の影である。数瞬皆がざわめき誰かが「うーん…あ、伊号800潜水艦でしょうか」と言ったが麻生分隊士は笑って

「残念。これは〈トレーラー水島〉の島影である。島の形を覚えておくのも見張としては大事なことであるからトレーラー環礁及び西太平洋の要所要所の島の形を印刷したものを配布する。いずれ試験を行いたいと思うからしっかり覚えておくように。しかし艦影や敵機に関してはそれぞれよくわかっているようで何より、安心した。ではこれにて散開」

と言って皆はそれぞれの場所に帰ってゆく。

その後姿を見送りながら小泉兵曹は、前とは違って何かつきものが落ちたようなさっぱりした表情で資料をかたずけながら

「思い出しますのう、昔うちらが麻生分隊士のこの講義を受けたときのこと」

と言ってオトメチャンを見て笑った。オトメチャンも「ああ、あれなあ。あんときはみんなで笑うたもんじゃ」と言って思い出し笑いをした。

麻生分隊士が「ハテ?そがいに面白いこと、あったかいな?」と首を傾げた。小泉兵曹が

「分隊士が『この艦影を解るもの!』いうて出した艦影にうちが自信満々で手ぇあげて、分隊士が『小泉上水、言うてみい』言われたんへうちが立ち上がって『こげえなもん解らんで見張り員は務まりません、答えは〈オバマ級戦艦〉であります!』いうたら分隊士真っ赤になって怒って『貴様偉そうに言うな、アホンダラ!不正解、これは帝国海軍の〈長門〉じゃ。もう一遍顔洗うて出直して来い』言われたんをうち、そのまんま受け取って『はいでは顔を洗うてきます』言うてすたすた行ってしもうて…。みんな最初はポカーンとしてそのあと大笑いでしたなあ」

と思い出話を披露し、麻生分隊士も「ああ、あの時のことか!ありゃ正直参ったで?とんでもないおなごが『大和』に乗ってきよった、思うて」と言って三人は笑った。

 

その晩、巡検後…

ひそかにとある場所―第一主砲砲塔の上―で秘密の講義が開かれようとしていた。出席者は数名、桜本兵曹に他分隊の三名の水兵長そしてなぜか航海士の樽美酒少尉である。桜本兵曹は「樽美酒少尉、この集まりはいったいなんでありましょうかのう?誰がうちらを集めたんでしょう」と少尉に尋ね、三人の水兵長たちも不安そうに少尉を見つめた。樽美酒少尉は首をかしげて

「私もよくわからないのよ、ただ『集まってほしい』って伝言が来ただけだから」

と言ってこれも不安そうに皆を見回した。曇りで月の出ない夜、なんか不気味さが増してくる。

と、誰かが砲塔の上にラッタルを使って登ってくる音がし一同緊張した。「誰じゃろう」と小さくオトメチャンが言った途端、

「皆さまお待たせしました~」

と聞き覚えのある声が。はっとしたオトメチャンが見上げたその人こそ…

棗佐和子主計特務大尉、であった。皆が一斉に立ち上がり敬礼するのへ棗大尉は満面の笑みで手にした紙の束をかかえなおし、「そんなのいいから座ってちょうだい?楽~に座ってほしいの。話の内容が内容だから正座してると疲れちゃうわよ」と言ってその場に胡坐をかいて皆も倣う。

樽美酒少尉が「これはどういう集まりでしょうか、何か…主計関係の集まりだとしたら、私たちちょっと畑違いではないかと思うのですが」というのへ棗大尉は

「あら!やーだ、主計の関係じゃないわよう、ここにお集まりの皆さまはいわゆる<おぼこちゃん>でしょう~?だから私おぼこちゃんのための性教育講座を開設いたしました!というわけで、ハイこの資料を見て頂戴」

と分厚い資料を皆に手渡し、<おぼこちゃん>たちにとってはそれはそれは恥ずかしい講座は始まったのであった。しかもこの講義、「来週も致しますからね、この資料はなくさないように。―ええか絶対出席せえや!バックレたら草の根分けても探し出すで、ええなあ!」と恫喝され、さぼることなど不可能なのであった。

桜本兵曹、(ひやあ、こがいな恥ずかしい講義うちよう受けんわ…ほいでも出席せんとなにされるかわからんけえ出るしかないなあ)と困り切っているーー

 

         ・・・・・・・・・・・・・・・

よく、飛行兵たちが機影や艦影を識別する訓練をしていたという話は聞きますが、果たしてほかの部署ではどうだったか??でもこんなのがあったらと思って書いてみました。

棗大尉の性教育講座はちょっと聞いてみたいかな、ウフフ。彼女のことですから過激な内容だったかもしれませんね、オトメチャンや樽美酒少尉の恥ずかしがる顔が浮かぶようです…。

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ponch さんへ

ponchさんこんにちは
ちょっと受けてみたい気がする講義でしょw。
実技があったら~なんて思ったりしてねww、そしたらもう満員御礼状態になること請け合いですね。
この物語の時代設定だと「富国強兵」だから女将兵にしっかりその手の教育を施さないとだめかもしれません。ただのおぼこじゃいかんのよアナタ、って。

私の学生時代、そのあたりの性教育は受けた記憶がないですね!保健の時間はせいぜい妊娠出産の仕組み程度でした。やんちゃな連中は実戦を行って痛い目に遭った人もいたようですが…。今となれば「きちんと教えないからだよね」と言えますが…ね。

うーんこれは熱い軍事教練ですねー。
ありがた迷惑・・・もとい一度は受けてみたい講座かなぁ・・・男女のモデルがいたら受けてみたいかも・・・(;´д`)
軍事教練と性教育講座は一見何の関係も無さそうですが、富国強兵で生めよ増やせよの時代には一応軍事教練の一環・・・なのかなぁ・・・(;´д`)

そういえば、自分が保健体育で性教育の授業受けたのは高校生になってからでしたね。
つまり義務教育ではまともな性教育は受けてなかったわけですが、こんな状態だから日本は少子化が進んでるんじゃないかと思いました(´・ω・`)

オスカーさんへ

オスカーさんおはようございます
石鹸まみれではしゃぐ小泉さんの姿、想像するとほんと可愛いですよね。なんかアニメのワンシーンに使えそうな気がします。
そして夏目さんですがもうこれは彼女のライフワークかもしれません。きっと懇切丁寧な親身の指導なのかもしれません。オトメチャンには特に役に立つかもしれませんねw。

マツコたちちょっとご無沙汰でしたね、そろそろ「活躍させなさいよ!」とマツコの声が聞こえてきそうです。

河内山宗俊さんへ

河内山宗俊さんおはようございます
この講義だけはご勘弁…いやありがたい??人によって違う感想でしょうがオトメチャン樽美酒さんには前者の方でしょうね(;´Д`)。
棗さんはおぼこちゃんを見極める眼は鋭いですから多分、これで出席率100%でしょう。ほかの人たちは・・・・ですねw。

え!冗談で書いたんですが本当にこういう対応に出る若い人っているんですか!ひゃあ…まさに素直なのか応用が利かないか迷うところですね。
ふへ~~驚いたw。

こんにちは。
まだ純でかわいかった小泉さんの姿が……! そして棗さん~! まぁ必要な知識ですからね(教え方が気になりますが)、いつか棗さんに感謝する日がくるでしょう(笑)
マツコたちにもまた会いたいです~出番はいつかしら?

最終の秘密講義、これは出席者の方が面食らいますね。これで出席率100%だとすると、ほかの乗務員は皆強者ということで?

小泉さんのエピソードは、最近の若者にたま~にあることらしいです。素直というか応用が利かないというかw
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見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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