2017-10

青空 1 - 2016.09.25 Sun

『女だらけの戦艦大和』はここ、常夏のトレーラー諸島で今日も訓練に励んでいるーー

 

「三日後、巡洋艦・駆逐艦・潜水艦部隊それに航空部隊との大掛かりな訓練を行う。場所はーー」

その日の朝、佐藤副長は各科長、掌長そして森上参謀長の集まった幕僚室でそういって海図を広げた。皆がそれを覗き込み副長が細かく説明をするのを梨賀艦長は少し離れたところから見ている。

(佐藤副長、皆に溶け込んだね。すっかり『大和』副長だ)

そう満足げに軽くうなずいた艦長、ふとある科長を見て(どうしたんだろう、彼女。なんだか最近変な様子だが)と不審に思った。が、それを当人にストレートに切り出すのもどうかと思い、(しばらく様子を見よう)と思ったのである。

「…でよろしいですね、梨賀艦長」

いきなり副長に水を向けられて軽く慌てた梨賀艦長であったが、海図の広がった長机に寄っていき海図を一瞥してから視線を上げ、皆を見回すと

「では当日はよろしく、あと中二日ほどしかないがそれまで兵器の点検、補充を念入りに願います」

といい皆は「わかりました!」と返事をし散会した。

各科長と掌長は駆け足で部屋を出て行った、副長と森上参謀長は艦長を振り返り部屋を出ようとしたのへ梨賀艦長は

「森上さん佐藤さん、ちょっと私の部屋に来てくれないかな?話したいことがある」

と言って副長は「はい、参りましょう」といい森上参謀長は

「なんだい改まって話とは?」

と言ったが艦長は「まあいいから、私の部屋に来てほしい」とやや硬い表情で言うと歩き出す。佐藤副長はけげんな表情で森上参謀長を見上げ、小首をかしげてから皆の出た部屋のドアを閉め、二人の後を追い小走りに行く…

 

さてそんなころ。

最上甲板の艦首に近い場所で、桜本兵曹が各部署の見張り員たちを集めて「対空見張」の講習をしている。敵機の識別表などを用いて「この機影はアベンジャー、ではこの機影は?」などとやりそのあと詳しい識別法を伝授している。これは麻生中尉から「やってみんか?オトメチャンもそろそろ人にものを教える立場じゃけえ、今度の訓練はええ機会じゃ」と勧められたものである。

当初「そんとなことうちはようできません。同じ配置のものにならできますが、ほかの部署の人に教えるなんうちにはまだ早すぎますけえ、ほかにええ人居りませんか?」と必死で断った桜本オトメチャンであったが、その日の夜居住区で話を聞いた石川兵曹に

「桜本兵曹は適任じゃけえ麻生分隊士はそういうてお願いされたんと違いますか?そんとな機会はなかなかありませんけえ、ぜひうちは桜本兵曹に講習をしていただきたいです。兵曹のお話はわかりやすうてええと思いますよ?じゃけえ、ぜひほかの見張り員たちにも話してやってつかあさい」

と言われ、

「ほうかね?ほんならお受けしようかいな」

と言ったのであった。

それを聞いていた小泉兵曹は座っていた部屋の隅から立ち上がって二人のそばに来てしゃがむと

「ほう~、えらい出世じゃのう。麻生分隊士から直々に講習のお願いかいね。さすが海軍一の見張りの達人は違うのう。それにしてもみんな桜本しか目に入らんのかね?見張ならうちもできるいうんにのう!」

と言って最後は語気を荒げた。

他の航海科の面々が黙ってこちらを見つめている。桜本兵曹は同期のそんな激しい、理不尽な言葉に黙って打たれているだけである。石川兵曹が、小泉兵曹のあまりな言い分に憤慨したのか、シュ―ッと息を吐くと

「小泉兵曹はそういわれますが、桜本兵曹の見張技術はおっしゃる通りの海軍一です。ほいじゃけ、麻生分隊士は『やってくれ』言われたんでしょう?ほんなら何も文句つけることなんかないじゃないですか」

と言い放った。本来なら飯の数も違えば階級も一つ上の兵曹に口答えなぞ許されるものでは決してなかったが石川兵曹はもう我慢の限界だったのだ。

いつのころからか小泉兵曹は、桜本兵曹に対し敵対心のようなものを持ち始めている。そう感じていた。

たぶんその大もとは(桜本兵曹に許婚ができたからじゃな。自分に許婚ができんけえやっかんどる)のだと石川兵曹は見抜いていた。それにしても激しい激しすぎる、と石川兵曹は心酔する桜本兵曹のために憤っていた。

「なんね貴様、もう一遍言うてみんか!」

小泉兵曹の怒号が響き、石川兵曹は小泉兵曹に胸ぐらをつかまれて引き起こされた。桜本兵曹は慌てて立ち上がり「やめんか小泉、乱暴はいけん!」と石川兵曹を取り戻そうとしたが、小泉兵曹は憎々し気に石川兵曹をにらみつけると

「やかましいわい、貴様は黙っとれや!こいつは大体生意気なんじゃ、今夜はうちがこいつをたたきのめす!」

というなりその頬をぶん殴っていた。あっ!と叫び声を上げて吹っ飛ぶ石川兵曹は、壁にぶつかって止まった。その場の皆が「石川兵曹!」「石川さん、大丈夫か」と口々に叫んで彼女を抱き起した。桜本兵曹は怒りと驚きで真っ青になって

「小泉、貴様やってええことといけんことがあろうが、うちに言いたいことがあるんなら何でうちを殴らんのだ、なんで石川兵曹を殴るんじゃ、貴様ちいと変じゃで?」

と怒鳴って小泉兵曹の胸ぐらをつかんで揺すった。

すると小泉兵曹は桜本兵曹の両手をつかんでねじりあげた、「痛い!」と叫んだ桜本兵曹。皆が「桜本兵曹!」「オトメチャン!」と駆け寄り、谷垣兵曹が

「小泉兵曹ええ加減にせえ、人をやっかむくらいならもっと貴様自身練磨してオトメチャンを超えてみいや!それもせん癖になにいうとる、だいたいな、貴様の班は最近だれとる言うて有名じゃで?ちいとは考えんか、この阿呆!」

というなり小泉の手をオトメチャンから離させ逆に小泉兵曹の手をねじりあげた。谷垣兵曹の馬鹿力で腕を捩じ上げられた小泉兵曹は痛い痛い、もう勘弁してつかあさいと叫んだあと慌てて逃げだしていった。谷垣兵曹やほかの兵隊嬢たちが

「桜本兵曹に石川兵曹、大丈夫か?」「腕、痛う無いですか?」「石川兵曹頭を打ちやせんかったか?」

などと心配するのへ、桜本・石川の二人は「ありがとう、平気じゃ」と答えた。

そこに繁木航海長が入ってきて、

「何かあったのかな?今、小泉兵曹がえらく怖い顔して出て行ったんだが」

と言って外を指さした。谷垣兵曹が実はこれこれこうで、と説明し繁木航海長は

「そんなことが…でもちょっと前にもいざこざがあったと聞いたけど、小泉兵曹は何にそんなヒリヒリしてるのかねえ。あまり過激にならないうちに手を打った方がいいなあ…後で彼女を呼ぼうか」

と言うとその場に座った。皆も繁木航海長を囲むように座り、繁木航海長の顔を見つめた。航海長は「麻生分隊士と松岡分隊長を呼んでくれないかな?こういうことは皆そろってきいたほうがいいから」といい、酒井上水が二人を呼びに走った。

その間、オトメチャンはやや気になる光景を目にしていた…(繁木航海長、どうしたんじゃろう?今までこげえなことなかったのに)…

そこへ、松岡中尉と麻生分隊士が走ってやってきたーー

  (次回に続きます)

 

           ・・・・・・・・・・・・・・・・・

梨賀艦長が見た科長のおかしな具合はいったい誰のこと?そしてオトメチャンが見た繁木航海長の気になる様子とは?

そして何より、小泉兵曹のオトメチャンと石川兵曹への暴力の根源はやはりあの事なのでしょうか?気になる次回をお楽しみに。

 

海兵団の怖ーい〈罰直〉の映画を見つけました…正直こんなにぶっ叩かれたらたまりませんしテーブル支えなんて腕がたまらんぜ…なんていったらほら!麻生分隊士が精神注入棒をもってふっとんできたああああ!!!!

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● COMMENT ●

森須もりんさんへ

森須もりんさんこんばんは
どうぞゆっくり読んでくださいませ^^、うれしいです!

女の嫉妬、とでもいうんでしょうか。怖いですよねやはり女は怖い。
でも今まで恵まれた生活をしていた小泉さん、自分の思い通りにならないことが「結婚」で、正直自分より格下だと思っていたオトメチャンに先に幸せが来たのが気に入らない。
ショックでもあるのですね。しかし――。

罰直。怖いですよ、一番やばいのは「タヌキ汁」というのでこれは対象者の手足を縛って吊るし、滅多打ちにするものだそうで死者が出たとかでないとか…ぞっとしますね(◎_◎;)。

スローペースで読んでいるので、まだ、この項のコメントですいません。

こういう状態のことは、いろいろなところでありますね。

小泉兵曹は、オトメチャンに許婚ができたことが
大きな衝撃なのでしょうね。
女性にとっては大きなことかもしれません。

実際によくあることなので、次回が興味しんしんです。

〈罰直〉こわいです。ほんとにこわい。


オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは
小泉さんまずいですね。本当に何か取りついているのかもしれないです、「嫉妬」という名の魔物かも。
目が離せない展開になりそうですぞ(-_-;)。

昨日今日と暑いですね(◎_◎;)。本当にもういや~~という感じです。オスカーさんもどうぞ御身大切になさってくださいませね。秋風が待たれますね。

こんばんは。
小泉さん、もう自分の感情がコントロール出来なくなっているような……昔だったら何か悪いものがとりついているのでお祓いを……とかになりそうなくらい、行動がヤバいですね。どうなるのかドキドキ……気になることは他にもたくさん……じらしますなぁ(笑)
今日もムシムシした1日でしたね。さわやかな秋風がはやく吹きますように。

おっちゃんさんへ

おっちゃんさんこんばんは
なんと、自衛隊にいらしたんですね!!
同期の桜、なんていうようにやはり同期って大事なんですよね。特に自衛隊のような組織においては大事な存在なのでしょう。対等に話ができるという部分が大事ですね。

さあ小泉兵曹と桜本オトメチャンの関係、修復できるといいのですが…次回以降をお楽しみに!

河内山宗俊さんへ

河内山宗俊さんこんばんは
繁木さんはもう…確定でしょうねw、でも後一人ちょっと意外な人?に異変が起きました…(-_-;)。
小泉兵曹は、オトメチャンに許婚ができたり任務の面で先を行かれていらいらしているようです。今まで大店のお嬢さんで思い通りに来たので、自分より格下だと思っていた彼女が目立つのが嫌なようです。さてこのあのまた騒動があるかも。
またまた艦内に不協和音が響くのは必至なようです…

こんばんは

同期なのに仲がよくないのは悲しいですね。私が自衛隊にいた時、同期は大切な存在でした。部隊で唯一対等に話ができるのが同期でしたので。
小泉兵曹と桜本兵曹のわだかまりが解けるといいですが・・・。

繁木さんはほぼ間違いなくご懐妊だとして、様子のおかしい方がもう一人?うーん誰だ?

やれやれ、小泉さんにも困ったもんですね。同期が活躍中となると何かと妬ましいものですが、ちょっと最近別の意味で目立ちすぎです。オトメちゃんと彼女の間には出自では大きな差があり、普通ならばまず出会うことのない組み合わせ。一緒に悪さをしていた当時は、特にわだかまりもなかったのですが。

佐藤副長あたりが調停に乗り出す展開となりそうです。実際似たような経験をお持ちですからね。ただ、小泉さんが素直に言うことを聞くとは思えないですし、絶対に口にしてはいかんことを口走る可能性も。


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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