お直しいたします 1|女だらけの戦艦大和・総員配置良し!

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お直しいたします 1

2016.09.03(08:24) 1126

『大和』工作科の水木兵曹は、着るものを作らせてもなかなかの腕前を持っているーー

 

かつて『大和』のマスコット犬・トメキチの衣服を作ったのは水木兵曹でこれは艦内総員の喝さいを受けたのだった。それは小さな水兵服で、きちんと帽子までつくってありペンネントまで巻いてありこれにはトメキチの(本来の)飼い主である桜本兵曹が

「なんて細かい仕事を!工作科の水木水兵長(当時)は大した人じゃわ」

と感心したことがあった。そのあと、仔猫のニャマトの水兵服も作り、飼い主の岩井中尉・松本少尉を感動させてもいる。

尤もこの水木兵曹には別の顔もあって、艦内に妖気が漂うとそれを祓うこともできる。かつて桜本兵曹(当時は見張兵曹)が艦内に紛れ込んできた南方妖怪に取りつかれたとき水木は、見張兵曹に妖怪を取りつかせて元の場所に戻す、というやや荒療治を行ったこともありまた、かぼちゃのお化けが出たときもこれを退散させている。

それを聞かされていた山中副長の夫・山中新矢海軍技術大佐は水木兵曹を『『大和』の陰陽師」と認識しているらしいが。

そんな二つの顔を持ちながら、きょうも水木しげこ工作二等兵曹は任務に励んでいる。

 

ある夜、水木兵曹は最上甲板で機銃分隊の平野ヒラ女少尉が一人ぼやいているのを聞きつけそっとそばに寄って行った。

平野少尉は、着ている防暑服の上着の仕立てが悪いのをぼやいているのだった、「全くこんなズドンとした格好じゃ色気もくそもない。あの仕立て屋はだめだ…今度内地に帰ったら別の仕立て屋を探さないといけない」。

ほう、と関心を持った水木兵曹は平野少尉に近づき「工作科の水木しげこ二等兵曹であります」と申告した。

平野少尉はこの兵曹の「妖怪祓い」としての実績を知っていたので「ああ、水木兵曹!なになに、また何か妖気を感じるの?」と興味津々で尋ねた。水木兵曹は

「いやいや。妖気ではありませんが、平野少尉のその防暑服…もしよければこの私がちいとお直しいたしますが?」

と言ってポケットからメジャーを出して見せた。すると平野少尉の顔が歓喜に輝き

「ほんと?ほんとにできるの?嬉しいなあ、じゃあ悪いけどお願いしていい?」

と言って水木兵曹ははいとうなずき少尉の防暑服をまず脱がせて採寸し、少尉の体の寸法も測った。

その採寸結果を小さな手帳に描きこむ兵曹の手元を見つめて平野少尉は

「どのくらいで出来上がる?時間がかかるものかな?」

と尋ねたのへ水木兵曹は手帳を閉じると

「この程度のお直しなら、そうですねえ…今夜中に仕上げますよ。明日の朝にはお届けします」

といい平野少尉は「いや、私が受け取りに行くから。工作科の部屋に行けばいい?」と言って日付が変わって一時間ほどしたら受け取りに行くことに約束をした。

「では私はこれで。急ぎ仕上げますから待っていてください」

水木兵曹は平野少尉の防暑服を抱え敬礼し、少尉が「願います」と返礼した後さっと走り去った。少尉は

上は襦袢一つで「ではしばらく待つとするか」と言ってこれも艦内に入っていった。

工作科作業室に戻った水木兵曹は裁縫道具を取り出すと「さ~て。やるか!」と掛け声をかけると少尉の防暑服を作業台に広げ、横の縫い目をほどき始めた。

 

巡検も終わり、当直に立つもの、私用を足すもの、眠りにつくものなどそれぞれになるこの時間。平野少尉はうずうずして落ち着かなかった。腕時計を頻繁に見ては立ったり座ったり忙しい。同室の熊沢少尉が「平野さんどうしたの?妙に落ち着かないねえ…腹具合でも悪いかね?」

と心配して聞いたのへ

「そんなことないそんなことないよ。いやなんでもない、てかちょっと実験中なんだ」

と思い付きを口走った。熊沢少尉は「え!なんの実験なの?機銃に関することかなあ、ねえ教えてよ」と身を乗り出した。ちょっと困った平野少尉は「どうしようかな~」と迷うふりをしながら言い訳を考える。やっと

「あのね。人間どのくらい小便を我慢できるかを実験中なんだよね。そうだねえ、こうかれこれ7時間我慢してるかな」

と言った時、熊沢少尉の顔が引きつり「そ、そんなことをしてるの?体に悪いよ、やめなよ」と言い平野少尉は

「心配ありがとう、でも私もそろそろ限界だからやめる。厠行ってこようっと」

というと立ち上がり部屋を出た。

ふーっと息をついた平野少尉は(はあ、あせったあ。水木兵曹に服を直してもらう話をしたらみんな兵曹のところに殺到しちゃうかもしれないし、そしたら彼女が気の毒だ。これは、私と水木兵曹だけの内緒の秘密!)と思って一人ニヤついた。

そして平野少尉は、工作科の作業室に向かって小走りに行ったのだった。

 

果たして作業室では水木兵曹が少尉の訪いを今か今かと待っていたところだった。少尉の姿を見た兵曹は「さあ平野少尉、着てみてつかあさい」

と防暑服を差し出した。もうできていたんだ、ありがとう仕事が早いねえとびっくりする少尉、渡された服に手を通しボタンをとめると…

「わあ、すごい、すごいよ水木さん!こんなに素敵に腰のあたりがなってて…!ありがとう水木さん、ほんとにありがとう~」

平野少尉は我知らず大きな声を出していた、そのくらい彼女は感激していた。今まで寸胴にしか見えなかった、いや事実寸胴だった防暑服には少尉の体の線に合わせた「くびれ」が付いていて、鏡に映した姿は「かっこいい~」!

平野少尉は水木兵曹に何度も何度もお礼を言って「あとで何か持ってくるよ、本当にありがとう!では、ごきげんよう」と部屋をウキウキした足取りで出て行った。

「やれやれ…ほいでもえかったわ。確かにあのままじゃ格好悪うて気の毒じゃ。あの程度の直しならうちのは朝飯前なけえね、うふふ」

水木兵曹はそう独り言ちて笑うと、作業台の上を片付け、居住区へと戻っていったのだった――

  (次回に続きます)

 

           ・・・・・・・・・・・・・・・・

妖怪祓いで有名?な『大和』の水木工作兵曹のお話です。

実際、士官は衣服の費用は自分持ちだったので結構やりくるが大変だったと聞いています。ゆえに同じ服でも微妙に仕立て方が違ったり色具合も違っていたようです。

平野少尉の防暑服、どれほど格好悪いんだか?しかしよくなってホッとしましたが…。この後水木兵曹に災難が???

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コメント
鍵コメY様こんにちは
いつも楽しみにしてくださりありがとうございます。こんな妙な世界ですが喜んでいただけるととてもうれしいです、張り合いがあります!
愛の交歓場面は男性読者様に人気があるようでw、描く方も気合が入ります!あまり戦闘シーンはないのです、この物語は戦闘よりも人間関係などに重きを置いております。でも時折ヘンな戦闘もあります。どうぞ今後も楽しんで読んでくださいますようお願いいたします。
そしてお申し越しの件、了解です!よろしくお願いいたします♡
【2016/09/04 17:13】 | 見張り員 #- | [edit]
河内山宗俊さんこんにちは
裁縫って出来たほうが絶対得ですよね。しかし水木兵曹のように出来すぎると…大ごとになりそうな感じがしますねw。なんでもほどほどがいいのでしょうが…さてどうなりますか次回をお楽しみに!
妖怪退治はあれで結構体力と精神力を使うのだと水木兵曹は私に言いました、ゆえに裁縫のほうがましだとも。でももしたくさんの依頼があればハテどうなりますか??
お楽しみに^^。
【2016/09/04 17:08】 | 見張り員 #- | [edit]
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【2016/09/04 13:58】 | # | [edit]
裁縫の素養のある方は、どこでも頼られますな。しかし、この噂が広まるとなれば、依頼殺到で水木さんの身体がいくつあっても足りない?
妖怪退治よりは簡単な事かも知れないけど、五月雨式に対応するのはキツいですよね。
【2016/09/04 09:04】 | 河内山宗俊 #jYbOzkUY | [edit]
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