2017-09

横須賀の花嫁・仮谷航海長 4<はじまり> 解決編 - 2016.08.18 Thu

仮谷航海長は、夫となった鍛冶屋健吾中佐に布団の敷かれた部屋に押し込まれるような形になったーー

 

「あ、あのっ!」

と実子は声を上げたが健吾はまじめな顔で黙ったまま、実子を抱きしめ布団の上に押し込むようにした。布団の上に腰を落とし、健吾の馬鹿力であおむけに倒された実子はいよいよその時が来たのだと覚悟を決めた。

が、その前にすることがある。実子は「健吾さん…あの、少しだけ、少しだけ待っていただけませんか」と小さな声で言うと健吾はふっと手の力を緩めた。そこで実子は起き上がり布団の上から畳に降りるとその場に三つ指ついて

「旦那様…今日からどうぞよろしくお願いいたします。ふつつかな、何もできない私ですがどうぞ末永くよろしくお願い申し上げます」

と初夜の挨拶をした。すると健吾は相好を崩して

「おお…私としたことが」

とこれも布団から降りると正座をして

「こちらこそよろしくお願いします。今回は私が急ぎすぎてあなたには迷惑をかけてしまいました。でも私のところに嫁いできてくれてありがとう。長い人生一緒に歩いてゆこうね」

というと頭を下げ、実子ももう一度頭を深く下げた。

挨拶が終わると、健吾は待ちかねたように実子にとびかかるとその体を布団の上に押し倒した。そして抱きしめた。実子の全身に緊張が走った。

その時。

健吾の腹がぐぅーっと鳴った。はっとした顔になった健吾に、実子がその胸の下から「あの、どうなさいました?」と尋ねた、すると健吾は「―腹が…減ってしまいました」と言って思わず二人は笑った。

実子は「女将さんがおにぎりを用意してくださっていますからいただきましょう」といい、健吾は身を起こすと実子をやさしく抱き起し、元の部屋に戻った。

大きな木箱の中に握り飯がいくつも入っていて、茶の入った水筒も用意されていて二人は手を合わせてそれをいただいた。

「美味い」「美味しい」

二人は小さく声に出して顔を見合わせてほほ笑みあった。披露宴でも食事は出たものの、招待客の対応に追われたり、実子は着慣れない和服の帯で締めつけられてそれほど食べられなかったので女将のこの心つくしは大変うれしいものだった。

夢中で食べて、やっと人心地ついた二人は茶を飲んでほっと息をついた。互いに微笑みあったそのあと、健吾は突然まじめな顔になると

「実子さん。わたしの…わたしの妻になってください」

と言った、実子はハテ、もう私はあなたの妻になったのにと思ったその瞬間、健吾は彼女を抱き上げると次の間に入り、布団の上に実子を横たえるとしっかり抱きしめた。

実子の、「その時」が来たーー

 

健吾はまじめな顔で実子の寝間着のひもを解いた。実子は恥ずかしくてたまらない。彼女は今までそういう経験がないのだ。(女海軍は『百戦錬磨』だと思われてるんだろうなあ…私そんなじゃないんだけど)と実子は困っている、そんな彼女の寝間着の前が広げられた。胸から腹、下帯をつけた下半身まであらわになった。

実子は恥ずかしさから横を向いてしまった。その実子の顔をやさしくこちらに向けると健吾はそっと口づけた。やがて彼の唇は、実子のそれから離れた。そして実子の肩から下へ降りてきた。

かすかにふるえる実子の胸のその先を、そっと健吾の唇が挟んだ。あ、と実子が声を上げたのを合図のように、健吾は実子を「妻」にするため動き始めたーー

 

どのくらい時間がたったのか、あるいはまだ経っていないのか。よくわからなかったが実子はしっとり汗に全身を湿らせて妻となる痛みに耐えていた。

話には聞いていたものの、これほどの痛みと恥ずかしさを伴うものだとは思っていなかった実子、(そういえば先に結婚なさった『大和』の繁木航海長と山中副長も、こんな思いをなさったのかなあ)と頭の隅でちらりと思った。

そんなことを想いつつ必死に耐えているうち、健吾が

「実子さん…もうあなたは私の妻ですよ」

とささやき、今度は激しく動き始めた。これが妻になるということなのね、と実子は実感しながらうなずいた。そしてうわごとのように「はい…はい」と言って健吾の肩を抱きしめた。

 

「それ」が済んだ。

二人は息を弾ませて、互いを見つめあっている。健吾が優しく実子の頬を撫でながら

「痛かった?ごめんね、乱暴にしてしまって…」

と謝ると実子はそっとかぶりを振って「平気です。私…」と言って言葉を切った。健吾が心配げに実子を見つめたのへ

「私、あなたの妻になれて…うれしい」

というとその胸に顔をうずめた。健吾は感激に全身を浸らせて、実子を思い切り抱きしめたーー

 

初夜が明け、二人は何か気恥ずかし気に朝食をとった。

実子は「御代りを」と夫の茶碗をお盆に受け、お櫃からご飯をよそった。その初々しい新妻ぶりに健吾はいたく感激して(抱きしめたい)と思う心を必死で押さえている。

夫婦は互いを見てほほ笑みあった。

今日から長い休暇に入った航海長は(休暇のあいだに私は健吾さんにできる限りのことをして差し上げよう)と決意していた。

今日から一週間で互いの郷を訪問しあい、互いの親たちと心をさらに通じさせようと計画している。きょうだいたちとも仲良くなっておきたい。

二人の嬉しい計画がもう始まろうとしている。

 

今始まったばかりの夫婦。その前途には希望があふれているーー

 

          ・・・・・・・・・・・・・・・・・

仮谷航海長の結婚物語でした。

健吾さんなんだか天然なんだか何だかw。でも誠実な人みたいで良かったですね航海長!そして無事「妻」となった航海長、この先もしっかり妻として務めていってね!

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● COMMENT ●

森須もりんさんへ

森須もりんさんこんばんは
初めての夜を何とか過ごせた二人でした^^。こういう話は時としてとてもいやらしくなってしまうので描き方に気を付けて描きました。

そう、私も戦前の新婚さんのほうが気持ちはずっと熱くていたのではないかなあと思いました。なんせあの時代、デートだって離れて歩き、映画一つ見るのも幾席か話して座るのが当たり前みたいな時代だったそうですから、やっと二人になれた時は嬉しかったと思いますね♡

着物、いわゆる寝間着もこういう状況ではとっても色っぽくって好きです~♡

No title

順調なお二人ですね。

ちょっとドキドキしながら読ませていただきました。

今の時代より、戦前のほうが
新婚さんというのは、
さらに気持ちはホットなのではないでしょうか。

やっぱり着物って(寝間着は着物って言わないのかなあ)色っぽいですよねえ。

鍵コメ様へ

鍵コメ様こんばんは!
本当にいろいろお大変だったですね。
お忙しいなかのご訪問とコメントありがとうございます!

すべてが良い方へ向かいますように心からお祈りいたしております。どうかお体にはお気をつけてくださいませね。
心の中に「Z旗」を掲げて一層奮励努力!ですね^^。

女だらけの海軍将兵嬢たちも応援しておりますから百人力ですよ!ファイト―!!

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

ponchさんへ

ponchさんこんばんは
名実ともに夫婦になれました鍛冶屋健吾中佐と仮谷航海長。百戦錬磨の女海軍ですがこっちの方はまだまだ未経験だったようで(;'∀')。
初めての時…たいがいはかなり痛いようです。時間もかかるようですが・・・・ってなんだか恥ずかしい話ですねw。

この二人きっと幸せになります!

No title

ふたりはめでたく夫婦になったわけですね。
文章からも実子さんの初々しさが感じ取れます。
はじめてってそんなに痛いもんですかねー。
自分には今ひとつピンときませんでしたが。
くどいですが、明治生まれの祖母には自分の意思で結婚相手を選ぶ自由すら無かったので、このふたりには幸せになってほしいと思います。

安田さんへ

安田さんこんばんは
いつもご訪問いただきありがとうございます、そしてコメントをうれしく拝読しました^^。

みんなそれぞれの「あの時」を思い出してらっしゃるようですね^^、初めてのあの時…胸の高鳴りを忘れられないものですよね。
過ぎてみると懐かしい思い出ですね^^。

No title

いつもワクワクしながら読ませていただいております。今回の記事なんだか遠い昔を思い出してしまいました。と言っても私の場合はこんなあらたまった儀式ではなかった。まぁ今流でしたけど。きっと昔からあったと思うのですが済ませてから結婚です。

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは
ウフフ―!私もご多分に漏れずおやぢ成分が多量に検出中ですのでw、どうもにやけてしまいますわいw。

初々しい二人。ちょっと男性のほうが天然っぽいけどこの先たくさんの幸せをつかんでいってほしいものですね^^。
たくさんの野戦…あんなことやこんなことを経験して猛者になってゆくのでしょうねww!

なんと停電があったのですか、こちらは停電こそしませんでしたが突然の豪雨と雷にビビりました。今夜は地震があったし(-_-;)…静かな夜であってほしいです…。

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは
何とか終わりましたw。
初めての時は何が何だかわからないうちに終わってしまいますがそれでも愛する人と一緒になれた喜びはひとしおですね。実子航海長もやっと、幸せを一つ手に入れました。

礼儀を重んじるということがないがしろにされてなんだかいやな世の中になりました。人と人が付きあってゆっくには礼儀は大事ですがどうもわかってくれないのかわかろうとしないのか…困った世の中になりました。

おにぎり、愛情のこもったおにぎりはとてもおいしいですね♡

河内山宗俊さんへ

河内山宗俊さんこんばんは
男性は走り出したら止まらない…!よく聞くお話ですよね、うむ、やはりそうなんだと納得。しかしそうすると鍛冶屋健吾氏はその点まだうぶいのでしょうかそれとも??

休暇中は思い切り楽しんでほしい新夫婦です。

おはようございます。
>始めてしまったら止まらないのが男の性
河内山宗俊さまのコメントに「だよねぇ~」なんてうなづいてしまうおやぢなワタクシ(笑) ほほえましいふたりの姿が浮かんできて、うふふ~となってしまいました。先人たちの偉業(?)を身を持って感じた若奥さま(笑)にはたくさんの夜戦を体験して、さらに未知なる世界にすすんでほしいです( 〃▽〃)
昨日は2回ほど短い停電がありビックリしました。今日は雷は大丈夫かしら?

No title

ふう、終わりましたね。
せっかちも何も実子さんにとっては初めてのことだったので何が何だかのはず。それでも夫婦になれた喜びはカラダの喜びよりもうんと大きなはず。
礼儀を重んじる昔の人って本当に立派ですね。相手を尊敬することの大切さを見る思いです。

おにぎりも優しさのカタチかもしれませんね。

普通だったら?というか
始めてしまったら止まらないのが男の性、
少なくともおいらは止まらなかったなw
単においらが野獣なだけ?

ま、休暇中だけでもほんわかとした時間が流れていくならば、それはそれで良いことなのです。


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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