2017-10

副長「洗礼」を受ける 1 - 2016.06.12 Sun

すっかり女ばかりの『大和』になじんだ佐藤副長であったがどうも最近挙動不審なところがある――

 

乗り組み将兵嬢たちもすっかり佐藤副長になじんで、艦長ほかの幹部たちもほっと胸をなでおろしているこの頃である。佐藤副長はハッシー・デ・ラ・マツコ、トメキチ、そしてニャマトとも心を通じ合わせ早くも三匹は副長の腰ぎんちゃくのようになり、松岡中尉を「あなたたたたちは私の大事なお友達なんですから副長に鞍替えしたらいけませんよ、あなたたたたち熱くなりすぎです!」と嘆く場面さえあった。

副長はそんな松岡中尉に「すまないねえ松岡中尉。でもこの子たちとてもいいこなんでね、甲板士官の役割もできそうなくらいだよ。藤村少尉と組ませたいくらいだわ」と言ってさらに松岡を慌てさせることもあった。

 

そんな、佐藤副長であるがどうもここ数日その挙動がおかしい。

周囲をきょろきょろと見まわして今まで以上の速足で廊下を駆け抜けラッタルを駆け上る。そして目的の場所についても常に背後を気にしているようだ。

さすがのマツコたちも

「変ねえ佐藤さん。何をあんなに気にしてるのかしら」

と言って佐藤副長に聞き出そうとするが「いや…何でもないよ。君たちの見間違いじゃないかな」と笑っているだけ。

マツコたちはそれでも

「何か変よね。追っかけられてるみたいな気がしない?」

と言っては首をひねる。

副長の挙動不審には多くの乗り組み将兵嬢もそろそろ気が付き始めている。

機銃の長妻兵曹も、後ろを振り返りあるいは頭上を気にしながら行く佐藤副長を見て

「副長絶対へんじゃわ。あん人がここに来てからあがいな行動せんかったのに、なんでここにきて突然に?こりゃなんかあるんじゃわ…もしかしたらまたこの艦内に妖怪が出たんかいな!」

と言って周囲の兵隊嬢たちは軽い恐慌に陥ったが、辻本上水が工作科の水木しげこ二等兵曹のもとに走り

「水木兵曹、艦内に南方妖怪なんぞの類はおらんかね?」

と聞きに行き、工作科の居住区で何やらしていた水木兵曹は

「なんぞ用かい?――あなた今の駄洒落解りましたか?妖怪と用かい。わかったでしょう、ワハハハ」

と笑ったあとまじめな顔になり

「うーん。今のところまったくと言っていいほど気配はないですが。何か不審なものでも来ましたかね?もし変なもの見たりしても手出しちゃいけませんよ。憑りつかれますからねえ~ヘヘヘ」

と気味悪く笑い、辻本上水はなんだかぞっとしながら

「そうですか。ならいいんです。いや別におかしなものなんぞ見とりませんけえ安心してつかあさい。はい、何かおかしなものを見たら必ず水木兵曹にご相談したしますけえ」

と急いでその場を走り去ってきた。

皆が首をひねる事態に、だんだんとなってきた…

 

その佐藤副長、きょうも何者かに追われるようにして第一艦橋から防空指揮所までやってきた。ちょうど居合わせた桜本兵曹が

「副長!」

と敬礼したのへ佐藤副長も丁寧な返礼をした後、周囲をきょろきょろしている。桜本兵曹はかすかに不審そうな表情になって

「どうかなさいましたか?」

と尋ねた。その表情を見て取った佐藤副長は慌てて背筋を伸ばし威厳を保つとエヘンと咳払いをした後

「どうもしないよ…いやだなあ。私が何か不審そうに見えるかね?」

と言ってワハハと笑ったがその笑いはどこからどう聞いても作り笑いで本当のものではない。桜本兵曹はさらに佐藤副長を見つめた。

ぎょっとして佐藤副長は

「そう見えるならばだ。私は久しぶりの『大和』がどこか前とは変わっていまいかとみているだけなんだよ。…兵曹には私が妙な雰囲気に見えますか?」

といよいよ落ち着いて見えるように答えた。

「見えます」

と桜本兵曹は即答し、佐藤副長は(いかん!この子に見抜かれた)と焦った。佐藤副長はいよいよ焦る。桜本兵曹は

「副長、うちら下士官兵の分際で…とお思いでしょうが副長の心配や悩みはうちら『大和』乗組員すべてのものじゃと思うてます。なんぞあったら早う、誰かにお話ししてつかあさい。願います」

と心底心配そうに語り、副長は感激した。そして

「ありがとう。ええと…桜本兵曹。大丈夫心配ないよ、何かあったらきちんと艦長にご相談するからね。ありがとう心配してくれて」

と言ってそこを辞した。副長に敬礼しながら桜本兵曹は(なんか…やっぱし変じゃ。なんぞ起こらんか心配じゃわ)と思う。

 

それから間もなくのある晩。

副長はいつも通りの巡検を終え、最上甲板で掌長たちとの明日の打ち合わせを済ませた後散開を命じた。皆がそれぞれの場所に戻り、副長も(さ、急いで部屋に戻らないと)と思い急ぎ足で露天甲板から立ち去ろうとした。その時ちらと見上げたトレーラーの夜空には全天、細かい宝石をまき散らしたような星々がきらめいて副長は足をとめ、それに見とれた。

(またこの素晴らしい夜空を見られるとは)

そう思って彼女の瞳は星空に吸い寄せられ、見つめる瞳に星を宿す。

その時。

副長の両肩を背後からがしっとつかんだものがいた。その力ものすごく、

「ギャッ」

副長が叫びをあげた。抗おうとする間もなく、副長は何物かによって艦内に引きずり込まれていったのであった。叫ぼうとした口をしっかり塞がれて…

  (次回に続きます)

 

               ・・・・・・・・・・・・・

一体何が起きた、女だらけの『大和』艦内!佐藤副長に誰かが危害を加えようとでもいうのでしょうか。彼女が挙動不審だった理由が次回明らかになりますが艦内に引きずり込まれた佐藤さん…果たして無事なのでしょうか??

 

「海軍兵徴募」のポスターです。昨年だったか発売の雑誌の付録についていました。

これを見て「行くぞ!」と応募した少年たちも多かったことでしょうね。彼らはその後どうしたでしょうか…

DSCN1719.jpg
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● COMMENT ●

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは
「洗礼」と言えばやはりクリスチャンになるための儀式を想いますよね。わたしの従弟の一人がクリスチャンです。だから結婚式は横浜の教会でしたがなかなか荘厳な式でよかったなあ~と思い出しております。

さて!今回誰が登場するのでしょう。そして期待のあの人は??
さあ続きへgo!!


matsuyamaさんへ

matsuyamaさんこんばんは
お返事遅くなってごめんなさい

『大和』、山中副長が艦を降り、オトメチャンの従姉が乗ってきたりと変化を始めています。この先どんな風になりますか、ご期待ください。
変わらないのが松岡の熱さだけでしょうか。だいぶみんなは慣れたようですがさて本音は?というところでしょうか。
佐藤副長いったいだれに???


いよいよ入梅ですが関東は水不足が懸念されています。山沿いの雨が少ないようです(-_-;)。

こんにちは。
「洗礼」という言葉にクリスチャンになるの(´・ω・`)?なんて思ったおバカさんな私です……!( TДT)
でもでも、もし登場するのが皆さんが推測されているあの方なら……きっとハチャメチャになるでしょうね。でもそれがまた楽しみです(≧∇≦)

大和乗組員の顔ぶれも大分変わったようですね。
あれだけ大人数の乗組員ですから、仕方ないですよね。
そんな中で松岡中尉、相変わらず熱く語らってるんですか。
大和の中では特異な存在でしたけどね。
佐藤副長、何者かに拉致されたんですか。
読者を引き込むテクニックはいつも上手ですね。

入梅しましたね。喜べるような季節ではないですが、食中毒等にはお気をつけてご自愛ください。

ponch さんへ

ponchさんおはようございます
えー、まず、「あのひと」について…この物語には〈エガチャン〉という変態?が時折出てきます。彼は艦内に忍び込んだりあるいはトレーラー水島などでハチャメチャするオトコで女海軍将兵の嫌われ者なのであります!

そして佐藤副長にはいったい何が?果たしてこのエガチャンが関与しているのかいないのか?
意外な展開?になりそうですのでご期待くださいませね~~♡

ポスターいいですよね~。
ホント軍隊と警察に萌えはいらん!ですね。私はどっちかというとマッチョな兄ちゃんのポスターがいいなあと思いますねえ♡
そうだ、ponchさんにぜひ描いていただきたいなあ!

うわっ佐藤さん大丈夫なんですか。次回どうなっちゃうんでしょう。
あの人って誰なんでしょう。途中から読みはじめたので、あの人が誰なのかわからないんですけど、やっぱり前の話を見直した方がいいでしょうか。

海軍募集のポスターカッコいいですね。
正直最近の萌えキャラのポスターよりも、海軍のポスターや戦国自衛隊の劇画描いてる森秀樹の描いたポスターの方がよっぽどいいと思います。
軍隊にも警察にも萌えはいらないです。

河内山宗俊さんへ

河内山宗俊さんこんばんは
さあいったい誰が!!??
意外な人が副長を…そしてその目的は…!?
ワクワクドキドキしながら次回をお待ちください♪

そういえば最近〈あの人〉の登場がなかったなあ~と思いました。そろそろ…出るかもw。

この海域で妖怪騒ぎといえば、あの方でしょうか?
数々の迷惑をかけている彼?佐藤さん前には遭遇しなかったのでしようか?まあ、彼だとしても、他の面々はある意味ベテランですから、きっちり退治していただけるかな?


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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