2017-09

魅せられて二兎を追う 5 - 2016.06.01 Wed

桜本兵曹は三人の士官と一人の下士官嬢の前で恥ずかしいことを話さねばばらなかったーー

 

「で?小泉兵曹の不機嫌と怠惰の原因は何だ」

繁木航海長は威厳をもって言った、松岡中尉、麻生特務中尉、そして石川二等兵曹が固唾をのんでオトメチャンの顔を見つめる。

とーオトメチャンの頬が見る見るうちに真っ赤に染まったではないか。そしてハアッと深い吐息をつくと下を向いてしまった。

「どうしたんじゃ、なにがあったんじゃね」と心配げに問いかける麻生分隊士。「どうしたんですか特年兵君。早く言ったんさい?」とせっつく松岡中尉。「桜本兵曹、そんとに赤うなって…どうなさったがです?」と石川兵曹。繁木航海長は「なんだったの?言いにくいことでも〈事務的〉に言えばどうかしら、話せるんじゃないかしら」と今度は優しく問いかける。

桜本オトメチャンは意を決して「お話いたします…」というと目を閉じて、昨晩長妻兵曹と一緒に見たことを〈事務的に〉話し始めたー

 

…長妻兵曹と一緒にうちは、押し入れに入ってそこの壁の隙間から隣の部屋の小泉兵曹を除くことになった。当初覗きなんぞいやじゃったがこれも任務じゃ思うて壁の隙間に目をそっと当てるとなんと壁の向こうでは小泉兵曹が男性に抱きついて二人で布団の上をごろごろ転がっとる最中じゃった。見ているうちに小泉兵曹が男性の上になって、彼にまたがるような格好になり小泉は着ていた浴衣を自分から脱いだ。全裸になった彼女は、自分の股間を相手にこすりつけるような妙な格好をし始め、そして男性が両手を小泉兵曹の胸に伸ばし、そこを激しくもみしだき小泉は何とも言えん声を上げ始め、やがて二人して激しく動き始めた。そのうち男性が小泉を下にするとこれまた何とも言えん妙な動きをして二人は吠えるような声を出してまるで機関車の車輪のように激しく動いた。ほいでしばらくそうしていたが男性が突然「うおっ」と叫ぶと小泉の上にぐったりとしてしもうたのでうちはあの男性が死んでしもうたんではないかと心配になった、が男性は生きとって二人は「えかった、えかった」となにがそんとにえかったのかうちにはちいともわからんがそういっとった。そのあと男性が出て行き、女将がやってきたのへ小泉は何かささやいて、ほしたらまた今度は別の男性が来た。その男性は前の人よりずっと体も大きい、今度は小泉をいきなり下にして前の人よりすごい動きをして小泉はひーひー言うとった、ほいで男性は自分の○○を小泉に咥えさせ…

 

そこまでオトメチャンが〈事務的〉に語ったのを繁木航海長が

「も、もういいオトメチャン。ようわかりました」

とおしとどめた。繁木航海長の頬は羞恥で真っ赤に染まっている。麻生分隊士、石川兵曹の頬も真っ赤に染まっている。オトメチャンははあ~~ッと長いため息をついた後、突然

「うち、恥ずかしいーっ」

と叫ぶなりその場にうち伏して「わーっ、わああ!!」と叫んでいる。無理もない、いくら事務的にとはいえオトメチャンはまだ処女である。麻生分隊士が「オトメチャン、可哀そうに」と言ってその背中をやさしくなでる。

石川兵曹がほほを紅くしたままふっと松岡中尉を見ると、これが全く恥じらいも感じてないのかラケットを肩に担いで鼻をほじっている。石川兵曹の視線に気が付いた松岡中尉は

「なにを見てるんです石川さん。しかもあなた顔が真っ赤じゃないですか?熱でもあるんじゃない?日野原軍医長に診ていただいたほうがいいねえ」

と頓珍漢なことを言って繁木航海長も麻生分隊士もずっこける。

繁木航海長が艦内帽をかぶりなおして

「松岡中尉、あなた桜本兵曹の話を聞いてなかったの?」

とあきれたように言った。その横でまだオトメチャンは恥ずかしい恥ずかしいとうめいている。松岡中尉は相変わらず鼻をほじりながら

「申し訳ありませんが私、そういう方面のお話には興味がないんです。ハイ。というわけで特年兵君、あなた小泉さんに関してどう思いました?どうでもいい閨房の秘儀なんか話さなくっていいですからその次、大事なことを言ってくださいよ」

と言って繁木航海長も麻生分隊士も「まあ…そうだが。桜本兵曹あなたの見解を話してくれないか」と気まずそうな顔で言う。桜本兵曹は恥ずかしい話をしなくていいと悟ると顔を上げ

「うち、あまり男とおなごのことはようわからんのですが、うちの直感で思うたことを言わせてもらいます。小泉は、あの二人の男の人の間で、なんといったらええのか、そう、どっちを取ったらええのか悩んどるような気がしてなりません」

と言った。

「は!」

と繁木航海長以下が一斉に声を上げた。まさか、そんなくだらないことで小泉兵曹は怠惰に投げやりに不機嫌に勤務をしていたのか。麻生分隊士の顔が今度は怒りで赤くなってきた。

「そ、そげえなことで大事な軍務をええ加減にこなすなん、あいつ許せん。航海長に分隊長、うちはあいつを許せません。この話、副長から艦長にお話ししていただきましょう。ほいで厳正なる対処をお願いしましょう!示しがつかんですけえ」

分隊士はそういって皆の顔を等分に見た。航海長はうなずいて

「そうですね、さすがにこれは…。男にうつつを抜かして勤務を怠り、あまつさえ部下にまで怠慢を伝染させるなど海軍軍人としてあるまじきことだ。―麻生中尉、亀井上水はその後どんな具合だね?」

といい麻生分隊士は

「亀井上水はたいへん反省しております。あれからはまじめに勤務をしております」

と答え航海長は「では亀井上水への処分は口頭での厳重注意にとどめてもらえるよう私から副長にお願いしておこう。では私は早速副長にこの件お話してくる」と言って防暑服の裾をキチンと軍袴の中に入れ込んでからその場を走り去る。

その後姿を見送っていたオトメチャンは「…えらいことになった。うち、小泉にとんでもないことをしてしもうたんじゃろか。こっそり覗き見したりしてえかったんじゃろか。ほいでもしも、禁固室へ入れられたら大ごとじゃ」と不安そうな顔でつぶやいた。麻生分隊士が聞きつけて

「この場合は仕方がなかったんじゃ、あれしかなかったんじゃけえ気にするな。すべては艦のため。艦の名誉と皆の名誉のためじゃ」

とその肩をたたいて元気つけた。が、オトメチャンの心のうちは複雑であった。海兵団からの友人に対する裏切りではないかとか、反面いい加減な勤務をしさらにそれを部下にもさせているような軍人としてあってはならない態度に対する怒りがないまぜになっている。

これでもしも、長年の友人との友情がだめになってしまったらと思うと怖いような悲しいような感情があるが(ほいでもうちは海軍軍人じゃ。いけんもんはいけんのじゃ)と心を奮い立たした。

 

繁木航海長から話を聞いた佐藤副長は腰が抜けるほどの衝撃を受けてしばらくの間何も言えずに繁木航海長の顔をぽかんと見つめているだけだった。頭の血が一気にどこかに抜けてしまったような感じさえして副長の顔はしばらく真っ白になっていた。繁木航海長が心配して

「副長、佐藤副長。大丈夫ですか」

と尋ね、やっと我に返ったのは最初に衝撃を受けてから十分以上たってからだった。佐藤副長は艦内帽を取って頭のてっぺんを数回たたいてから

「大丈夫、…大丈夫だと思う。うん、大丈夫。繁木さんこれは由々しき問題だね、艦長にご報告して小泉兵曹を呼んで話を聞こう、処分はそれからだ」

と言って繁木航海長とともに艦長室に艦長を訪ねた。

梨賀艦長は艦長室に森上参謀長といて紅茶を喫している最中だったが尋常ならざる雰囲気の副長と航海長の訪いに

「どうしたいったい?」

とけげんな表情だったが副長からの報告と繁木航海長の話を聞いて「えっ…」と絶句してしまった。参謀長が

「小泉兵曹の男好きは海軍一だと思っていたしそれはそれで別にいいとは思っていたよ、だが軍務に支障をきたすようならこれはまずいなあ」

といい梨賀艦長は

「なんていうことだ」

と苦虫を噛み潰したような顔でつぶやく。繁木航海長が

「すべての責は私にあります。どうか私にも処分を願います」

と切羽詰まったような顔で艦長に願い出たが艦長は優しい微笑みで「航海長の責任ではないし、ほかのだれの責任も私は問わない。今回の話は小泉兵曹一人の責任だ」と言ったが航海長は

「いえ!上に立つものの責任は重大です。かといって分隊長・分隊士にはどうか寛大なご処置を。お咎めは私一人に!」

と言ってきかない。艦長は

「わかったわかった。ともかくも小泉兵曹を呼んで話を聞こうじゃないか。すべてはそれからだね」

というと、〈艦長従兵〉の桜本兵曹に「小泉兵曹を呼びなさい。それから松岡中尉と麻生中尉も呼びなさい」と命じた。

 

桜本兵曹に伴われて小泉兵曹が艦長室にやってきた。小泉兵曹は艦長室に、艦長・参謀長・繁木航海長に松岡分隊長、そして麻生分隊士がいるのにさすがに驚いた。桜本兵曹が出てゆこうとするのを、艦長は「桜本兵曹もここにいて話を聞いてほしい。兵曹の配置で起こったことだから」と押しとどめ桜本兵曹は部屋の隅に立った。

ややうつむき加減に立っている小泉兵曹に梨賀艦長は穏やかな口調で

「どうしてここに呼ばれたか、わかっているかな?」

と尋ねた。果たして小泉兵曹は「はい」と小さく答えた。繁木航海長が「声が小さい!」と怒鳴ったので小泉兵曹はびっくりして飛び上がり「はい!」と大きな声でもう一度答えた。

艦長が航海長にそんなに怒鳴らなくていいから、とたしなめたあと

「小泉兵曹は、どうして最近勤務を怠けているんだね?班長として部下を何名も持っている君がそんなことではいけないというのはわかっているだろう?それがどうして」

と小泉兵曹をまっすぐ見ていった。小泉兵曹は苦しげな表情をしてこぶしをぐっと握ると下を向いた。

沈黙がその場を支配した。

一五分ほどにわたる沈黙を破ったのは松岡分隊長であったがその言葉に小泉兵曹はついにーー。

   (次回に続きます)

 

             ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

恥ずかしい話をさせられたオトメチャンでしたが、果たしてその話が大切なものだったのか?は別にしてもいよいよ始まった小泉兵曹本人への聞き取りです。そして松岡分隊長の言葉に彼女はどうなったのでしょう、ご期待ください。

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● COMMENT ●

ponchさんへ

ponchさんこんばんは
お返事遅くなってごめんなさい!

オトメチャンにはまさに苦行の羞恥プレイとなりました(-_-;)。これで彼女がほんとに大人になるかと言えばそうではない気がしますねw。
松岡中尉、どsですw。やばいぞw。

勤務に差し支えるほど男ののめりこむ小泉さん、彼女こそ本当は早く結婚したほうがいいんじゃないかなあと思いますが。


コメント投稿ができなくて参りました(-_-;)…たま~にありますねこういうこと。しかたがないのかな?でも焦ったわ~。

おぼこのオトメチャンにはとんだ羞恥プレイになってしまいましたねー(^-^;)
松岡さんて不感症かと思いきやドSだったんですか。小泉さんの二股に松岡さんが首を突っ込んだら乱・・・いえ三つ巴が四つ巴にならないか心配になってしまいます(^-^;)
プライベートで何人の男を股にかけても自由だとは思いますが、勤務に差し支えるのはよくないですよねー(^-^;)

そーいえば、昨日はどこのブログもコメント投稿できませんでしたねー(^-^;)

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは
オトメチャン可哀そうなことをしてしまいましたがこれも大人の階段の一つだよ==ってw。でもしかし、できたら見たくなかった小泉の痴態。
小泉は二人の間で揺れていますが所詮は一緒にはなれないさだめですから、あとは彼女がどう割り切るかですね。ああなんとむつかしい問題なんでしょう…タメイキ。

河内山宗俊さんへ

河内山宗俊さんこんばんは
やっと返信できました。

松岡のどsぶりはすごいですからねw。変なこと言わないようにしてほしいものです。
オトメチャンは悩んでいますがやっぱりここは正義を通さないといけませんね。時には厳しいのも友情の一つですからね。さてどうなりますかご期待ください!

こんにちは。
オトメちゃん、なんという羞恥プレイ!(笑) 前に読んだ本の「茄子可の痴情絵」(もちろん正しくはナスカの地上絵です)を思い出してしまいました……!
しかし本人がふたりの間で決めかねていても、お相手のふたりはやはり商売でありますし……ハッキリした気持ちはわからないですね。そして身体だけ満足したらいいのかとそのあたりが気になります。

松岡さんはご商売の方が根をあげるほどの、ドSな攻めを求める方ですから、どちらか一人をまわせということを言い出しそうな気がします。

さて、海兵団時代からの友人を売ってしまったのではと気に病むオトメちゃん。友情も大切ですが、あくまで小泉さんが自ら引き起こしたこと。反面教師にするぐらいの気持ちで割り切ってしまった方がよいかなと。 


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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