2017-10

魅せられて二兎を追う 3 - 2016.05.27 Fri

オトメチャンののどが「ひえっ」と鳴ったーー

 

長妻兵曹は「ここ、ここに目え押し付けてみい」と押し入れの壁にオトメチャンの頭を押し付けた。細い細い隙間があって、でもしかし向こうの様子がよく見える隙間である。

その向こうで…小泉兵曹があられもない格好で見世の男性にまたがっているのが見えた。小泉兵曹は普段とは全く違う表情と声音で男性と戯れている。

「長妻兵曹、あれ、ほんまに小泉兵曹なん?」

とオトメチャンは小さな声で尋ねた。もうのどがカラカラになって咳が出そうなのを我慢している。

長妻兵曹はああ、と言って「ほうじゃ。おなごでも男でも〈あの時〉は全く違う人間になるんじゃ。――オトメチャン、あんたじゃってほうじゃ」と続け、オトメチャンは「うちも…か」と複雑な表情になった。長妻兵曹もオトメチャンの横に窮屈な格好で座り込んで小泉兵曹の痴態を見つめる。

オトメチャンは(ほいでもうち、いやじゃわ…人のこんなところじーっと見るなん)と居心地悪い思いでいっぱいである。

だんだん小泉兵曹と相方の男性の行為は激しさを増し、小泉兵曹は彼の下になると大きく足を広げ卑猥な言葉を叫びながら彼を迎え入れた。男性は小泉の乳房に顔をうずめその先を執拗にしかし、やさしく舐る。小泉兵曹の喘ぎが一層激しくなり、男性の動きがせわしくなった。見ているオトメチャンはもう恥ずかしくてたまらなくなってしまい押し入れから出ようとしたときその手を長妻兵曹がしっかりつかみ

「見とけ!あんたも許嫁のおんなるんじゃろう?ならしっかり見とけ。男と女はこげえなことするんじゃ、知らんで結婚したらあんた困るで」

とささやいた。ほいでも、と言いかけたオトメチャンに長妻兵曹は壁に顔を押し当てたまま

「ええから。知って損はないで。知っといたらその時あわてんで済む」

とだけ言った。その向こうから小泉の官能の叫びが伝わってくる…

 

二人の愛の行為は一時間半ほど続いてやがて終わった。長妻兵曹は「あん人、なかなかええな。どうねオトメチャン、見ていて優しい思わんかった?」とオトメチャンに尋ねた、がオトメチャンは暗い仲にも分かるほどほほを染めている。

優しく体を離した男性に小泉兵曹は

「ありがとう、きょうもえかったわ…ほいでうち、帰艦までにちいと眠りたいけえ。ほいで済まんが女将を呼んでくれかのう」

と言って男性は「わかりました。ではまたそのうちね、おやすみなさい」というと浴衣をひっかけ小泉に接吻してから出て行った。小泉兵曹は掛け布団にくるまっていたがやがて女将が部屋を訪ねてきたのへ何やらささやき、女将はうなずくとふすまを閉めていった。

「なんじゃろう」とオトメチャンが独り言つとまもなく小泉の部屋に誰かが来た。長妻兵曹は「飯か?いやそがいなことは…」と言ったそのすぐあと、入ってきたのは先ほどとは別の男性だった。

「なんねあん人は…まさか小泉の野郎」と長妻兵曹がごく小さくだったが叫び声をあげオトメチャンは「なんです?まさかなんですのん?」と長妻の顔を見た。

長妻兵曹は「まさかはまさかじゃ。ええから早う見てみいや」と壁に顔を押し付けたままいう。オトメチャンがしかたなく壁の隙間に目を当てると。

「ひえっ!」

もう一度オトメチャンの喉が鳴った。小泉兵曹はその男性とまた抱き合っているではないか。今度の男性は先ほどの人より筋肉質でたくましい。ゆえにか、その行為もさらに激しい。二人の肉体が打ち合う音が強く弱く響き、小泉はさっきよりも激しく悶えている。そして今度は言葉もないようである、ただ喘ぎ声だけが響いてくる。

「えらい激しいのう、あがいにすさまじいんは見たことも聞いたこともないで。むろん、したこともじゃ」

と長妻兵曹はつぶやき、オトメチャンはもう恥ずかしくて身の置き所がない。

(早う終わらんかなあ…うちこげえなものずっと見とるんは苦痛じゃわ)

しかも狭い場所での〈検分〉のためか足がしびれてき始めた。眼も疲れてきた。(はあ難儀じゃわ。戦闘やら航海で見張しとるほうがずうっと楽じゃわ)

そして音をたてないように姿勢を変えながらの約二時間。

小泉兵曹が背中をそらし、「いけ―ン…うち、もういけんわあ~」と叫び、男性は「もういけんですか?もういけんのか?―ほんならこれでどうじゃ!」というなり大きく小泉兵曹を一突きした。小泉兵曹はなんともいえない声を上げてぐったりとして男性もうめき声をあげると彼女に重なってー終わった。

長妻とオトメチャンの見つめる先には二人重なったままでハアハアと大きく息をついている小泉と男性の姿が。

小泉は男性の背中にもう一度手を回すと「ありがとう…えかったわあ。うちもう、壊れてしまいそうじゃった」と言って笑った。男性も「そげえに良かったですか?うれしいなあ、そげえに言ってもらえると男冥利に尽きる、言うもんですわい」と笑った。

そのあと男性は「ほいじゃあおやすみなさい。ゆっくり眠ってつかあさいね」というとそっと部屋を出て行った。

 

長妻兵曹は押し入れから這い出しながら

「えらいものを見てしもうたな。小泉のやつあがいに絶倫じゃったとは。おなごの絶倫、見たことがなかったけえ勉強になったわい」

と言って後に続くオトメチャンを見るとこれがすっかり魂を抜かれたような顔になってへたり込んでいる。長妻兵曹はさすがに心配になって

「おいオトメチャン、大丈夫ね?」

と声をかけその両肩をつかんで揺すった。オトメチャンは我に返ったようにはっとした顔になると

「うち…えらいもんを見てしまいましたな」

と言った。長妻がうなずくとオトメチャンは少し考え込むような顔になったあと

「小泉は…うちが思うに二人の男の人を天秤にかけとるんじゃないでしょうかねえ。言うてうちは男の人との経験がないけえなんともいえんのですが、長妻兵曹も見た通りあの二人の男の人、全然別の感じでしたよねえ。じゃけえ小泉、そのどっちがええか迷うとるんではないかと」

と言った。長妻兵曹は目を大きく見開いて

「オトメチャンの観察眼は鋭いのう!いやあ、まったく経験がない言うてもオトメチャンには物事をじっくり観察して見極める眼ぇがあるとうちは見た!すごいでオトメチャン!」

と言ってオトメチャンを抱きしめた。

オトメチャンは「ほうでしょうか」と照れていたが

突然真顔になって長妻兵曹を見つめると

「ほいでも長妻兵曹、そんとなまったく艦のこととも関係ないことでいらついて軍務がおろそかになるなん帝国海軍軍人の風上にも置けませんね。なんとかせんといけんでしょう」

と言った。責任感にあふれた海軍下士官嬢に立ち返っているのに長妻兵曹は感動さえ覚えた。長妻兵曹は「ほうじゃな。ほんならオトメチャン、艦に帰ったらこのことをそっと分隊士にお話しせえ。そのうえで分隊士の意見を伺ごうて必要だとなったら分隊長にもお話して何とかしてもらわんといけんで?人にやつ当たったりぼっとして自分の班員の怠惰を見逃すなん、班長としてあり得んけえの。下手こいたら配置換えじゃ、いや配置換えならまだええ、艦を下ろされるかも知らんで?」

と言って二人はうなずき合った。

 

そんな話を艦の仲間が隣の部屋でしているとも知らない小泉兵曹は激しいまぐわいの余韻の残る布団の中で(ああ…うちはどうしたらええん?やさしい人とええことしながらも強いあん人にも魅かれとる。うちはどっちの人を愛したらええんじゃろう…ああ運命言うんは残酷じゃ。どうしてあの二人と出会ってしもうたんじゃろう…ああ)と悩んでいるのであった。

 

そして長妻兵曹とオトメチャンはその晩は、見世に泊まるだけの金を持っていなかったので料理の代金だけ払うと、下士官集会所の一室で眠ったのだった――

    (次回に続きます)

 

               ・・・・・・・・・・・・

オトメチャンにとっては衝撃の時間でした。しかも二回も見せられてしまって。彼女の心に与えた影響が心配ですがしかし彼女はしっかりした海軍下士官ですね。見るべきところを間違うことなく見ていました。

さあこの後どうなりますかご期待ください!

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● COMMENT ●

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは
なんだかすごい話になっちゃいましたw。押し入れで覗くというシチュエーションが何か好きでw。
オトメチャンには気の毒なほどショックなシーンの連続でしたね。しかし彼女もそろそろ「女」になるときが近いかもしれませんので多少は知っておいていいかもしれません。
小泉兵曹、二人の男性と♡で最高の気分でしょうか。しかし二股となると…

ここのところぜんそくの咳が激しくどうしようもありません。でも何とか過ごしております^^!ありがとうございます♪

河内山宗俊さんへ

河内山宗俊さんこんばんは
小泉さんのそのすごい行為、いったいどんなだったのでしょう~興味津々ですね。しかしそんなに激しい行為を二回もできるなんか彼女もまさに絶倫です。
本当の被害者はオトメチャンですね。彼女には目の毒以上のものでした。そしてこれをどううまくまとめるかが問題ですがさてうまくいくのかしら???

その昔は通い婚なんてのもあったらしいですね、なんだか信じられないような話です。

ponchさんへ

ponchさんこんばんは
ぜひこのシーンを絵にしていただきたいですね!!
私も実は浮世絵の春画の類は好きですよ~♡ いわゆるエロ写真にはない滑稽さとかアクロバティックな体位なんかがあって素晴らしいなあと思いますね。
そしてなぜかあの部分が異常に拡大されていてその細密さに感心します。

小泉兵曹、こんなことしていていいのでしょうか(;´Д`)。この先が怖いw。
この世界の女性たちは開放的です。と言っても人それぞれですが^^。

これはすごい!!! 見張り員さん上手です!!!
オトメチャン、きっと衝撃的だったでしょうね。本人の実技ではなかったのが幸いであったかも(笑)
しかししっかり者のオトメチャンのことですから男に溺れることもないはずだと。
ふたりの男に時間差で責められる小泉さん。羨ましいやら欲深に呆れるやら。
大和の女性は閨でも逞しいようですね。

天候が不順ですがお体は大丈夫ですか。無理をなさらぬようお過ごし下さい。

全く正反対のタイプを文字通りの二股している小泉さん。
まさか、となりの押し入れの隙間からあちらの様子を監視されているとは、お釈迦様でも気がつくめぇといったところ。特に2人目の場合は歴戦の強者、長妻さんをして「見たこともしたこともない」と言わしめるのは、突撃隊長の面目躍如?

いきなりこのような物を見せられてしまったオトメちゃん、これがきっかけで男性不信にならなければよいのですが?それはそれとしてこの一件をどのように麻生さんに報告するのか?皆が丸く収まる妙案が出るとよいのですが。

明治以降こそ比較的不倫やら何やらに厳しくなっていますが、それ以前はむしろ現在よりもおおらかだった訳なので、特に平安時代などはね。

これは思わず絵に描きたくなるような・・・いえ衝撃的な場面ですねー(;゜∀゜)
春画好きで自分でもそのような場面を好き好んで描いてる自分ではありますが、人様の描いた濡れ場(?)を見るとドキドキしてしてしまいました。
自分が描くエロは現実にはあり得ないシチュエーションを描いてますが、女だらけの話は現実にもありそうでより生々しく感じます。
衝撃的な場面なのに何故か笑いを誘うシチュエーションが、浮世絵の春画を彷彿とさせるのですが、見張り員さんは春画とか興味あります?

話が脱線してしまいましたが、小泉さん文字通りふたまたかけてましたがこれからどーなっちゃうんですかねー(^-^;)
こういってはなんですが、この時代の女にしては自由奔放だなと思いましたが、この世界では女が奔放で男が慎ましかったりするんでしょうか。


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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