2017-10

「女だらけの戦艦大和」 ・ てんぷら狂想曲<弐> - 2009.11.03 Tue

「女だらけの戦艦大和」の烹炊所では、夕飯に向けての<てんぷら>作りに大わらわである―――

 

烹炊員の時田一水と西一水は懸命にかぼちゃを切っている。そして切り終えたかぼちゃの入った籠を衣をつけるための配置に持ってゆく。

もうみんな汗みずくである。さっき昼ご飯を出したばっかりというのに、もう夕飯の用意とは。これはてんぷらならではの苦労である。

だって2500人からの兵員の食事の用意、しかも一般家庭でもそれなりに時間がかかるてんぷら、である。切って、衣をつけて、揚げて、、、みんな、メリケン粉の化け物のようになって、ついでに油でちょっぴりやけどもしながら作るのだ。

夕食は午後5時―――時間はあんまりないぞ、がんばれ烹炊員諸君!!

 

そして、てんぷらが出来上がり、食事の配ぜんの用意もでき、各分隊の食事番が食缶を運んできた。

いいにおいのする食缶に「おお!!今夜はてんぷらだぜ~~ぃ!」と皆大騒ぎ。やはり大好きなんだね、てんぷら。

そして、、、烹炊員たちの汗と涙の結晶のてんぷらが、皆に配ぜんされた。

あちこちの分隊で、「いただきま~~す」の声が聞こえ、見張兵曹の班も皆が席について、見張兵曹が「いただきます」と号令。班員が「いただきます!!」と、てんぷらに箸をつけた時、それは起こった。

向こうの居住区から「きゃーーーー!!!」という時ならぬ声が響いてきた。「な、、なんだ?」と見張兵曹は思わず腰を浮かしかけた、その時、隣の班の小泉兵曹が「オトメチャン!!見てみて!!」と叫ぶ。

ハッとした見張兵曹が、テーブルを見るとなんと、「かぼちゃの天ぷら」がぐるぐると宙を舞っている。

亀井一水も、酒井上水も、、、みな若い兵は真っ青になってそれを見ている。

ほかのサツマイモだの、鯵だの隠元だの、、というてんぷらはおとなしいのになんでこのカボチャは、、、?? 見張兵曹は目の前で起こってることがにわかには信じ難かったが、じっと見詰めた。

やがて、その<カボ天>は各部屋で一つに集まって、部屋を出て行く。

「追ええーーーっ!!」と、機関科の松本兵曹長が怒鳴る声がして、見張兵曹も「うちも追うよ、さあ!!」と、分隊に声をかけた。小泉兵曹も立ちあがって、班員に発破をかける。

皆、どこの分隊員もドタドタと、<カボ天>の後を追う。

途中、麻生分隊士の部屋にいたらしいトメキチが、すさまじい形相で吠えながら、分隊士を引っ張って走ってくるのに出くわした。

「アレ、、分隊士?」という見張兵曹に麻生分隊士は「なんだか知んねえけど、いきなりトメキチが俺をくわえて走り出しやがって、、いったい何があったんだ?え?」と、当惑したように言う。

「実はですねえ」と、見張兵曹は走りながら説明した。麻生分隊士は「・・・へえ。なんだか知んねえけど面白そうだな、どうなるか見てやろうぜ!」と笑った。どこまでも楽天的な人だ。

そして。

<カボ天>の大集団と、兵員の大集団は最上甲板に出た。

<カボ天>の大集団は、艦首に近いところで相変わらずぐるぐる回ってる。そこに主計科の福島大尉がすっ飛んできた。

「いったいなんなん!?―――って、わああ!!!」福島大尉、普段の素敵な感じとは全く違う大声で叫んだ。

「これ、、、うちで作ったてんぷら??…いったい何があったってゆうの???」ヘタヘタと、その場にへたり込む。

「妖怪、ですな」

と、見張兵曹には聞き覚えのある声が。振り返れば、そこには工作科の水木水兵長がいた。

「妖怪!?」と、その場の全員が声をそろえて問い返した。水木水兵長は落ち着き払って

「はい。妖怪であります。――-これは先だって、そう、麻生分隊士と見張兵曹が農園に作業に上陸なさった際に連れて来たと思われますが? 心当たり、ございますよね?」

と、麻生分隊士と見張兵曹を見て言った。ちょっと意味深な笑いだ。

農園の作業!!―――麻生分隊士と、見張兵曹の脳裏にあの日の事が鮮明に浮かんできた。あの日、酒井上水を伴ってほかの分隊と農園作業で上陸した際、、、かぼちゃ畑の隅で二人は<イケないこと>をしたのだった。――というか見張兵曹が一方的に分隊士から<された>のだが?

その時、デカイかぼちゃのお化けが出たのだ。

「心当たり、、、ある、、、」

分隊士は蚊の鳴くような声で言った。見張兵曹は真っ赤になってうつむいてしまった。それを見て、みんなは(またこの二人、やらしいことしたんだな、、、それでこの化け物を引っ張ってくる羽目になったんだな)と確信した。

ともあれ。

水木水兵長は「まあ、、厄介なものを引っ張り込みましたね。・・・いいでしょう、こいつをもとに帰しましょう」と言ってくれたのでほっとする一同。

見張兵曹だけは、また憑かれるのではないかと恐れて麻生分隊士の後ろに隠れた。だが、今回は水木水兵長は「さあ、、、下がってください」と言って、<カボ天>集団に向かい合った。

そして、<カボ天>集団は一つにまとまりーーーいつか麻生分隊士と見張兵曹を驚かしたあのでかいかぼちゃお化けの姿になった。

「で、、でたああーーーー!!」「ぎゃああーーーー!!」

すっごい叫びが甲板上に満ちて、その声は艦長の部屋や参謀たちのいる部屋にまで届いたのだ。

「ねえ、どーしたのお?艦長落ち着いてご飯食えない~」と、艦長が副長、森上参謀とともに最上甲板に上がってきた。しかし艦長は、かぼちゃのお化けを見るなり卒倒するし、森上参謀は手を叩いて大笑いするし、副長は「カメラ!!どこだ、早くよこせ!!」とうれしそうに騒いでる。

その周りをトメキチが興奮して走り回り、時々卒倒した艦長の顔をなめる。

「行きますよぉぉぉぉ!」―――と水木水兵長が叫んだ。

皆がかたずをのんで見守る中、水兵長は大声で

「いたずらするか、ごちそうか!!??」

と言って、かぼちゃをビシッと指さした。

とたんに。

かぼちゃは急に狼狽したようになって小さくなったと思ったら、シュン、、と音を立てて消えた。そのあと、小さな光が島のほうに流れ星のごとくに飛んでゆくのが、見えた。

「・・・・はい。終わりました」 と、こともなげに水木水兵長は言った。一瞬の間の後、湧きあがる歓声と拍手。

「どうしてあんな風にしたの?」と言った見張兵曹に、水木水兵長は「何かの本で読んだんですよ、むかし。今の時期もしもかぼちゃのお化けが出たらああ言うといいんですって」と笑った。見張兵曹は、水木水兵長の博識に感心した。

 

そのあと。皆は食事に戻ったが、てんぷらは冷えてるし、かぼちゃがなくなった分だけ量も減ってるしで、なんだかやりきれない夕食になった。で、その怒りの矛先はなぜか見張兵曹に向けられ、、、彼女はまた松本兵曹長にぶん殴られる羽目になったのである。

まあ、、、もっとも、、、麻生分隊士がその晩遅く、とっても優しく慰めてくれたからいいとしよう。

肝心の艦長は皆の前に醜態をさらして落ち込んだが、トメキチが介抱??してくれたのに感激してその夜はトメキチと一緒にベッドに寝たそうである。

カメラにお化けを収めた!と喜悦満面だった副長は、出来上がった写真にお化けどころかピンボケのわけわかんない物しか映っていないのにショックを受けてる。

それを見て、森上参謀はまた手を叩いて笑っていた。

 

しかし、、一番ショックを受けていたのはだれあろう、主計科烹炊班の時田一水と、西一水である。

彼女らは、それからしばらくの間はかぼちゃを見ると悪寒がして手が震えるという、いわゆる<トラウマ>症状に苦しんでいたのだから―――。

 

            ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ハロウィンは終わった、というのに。

思い出したように出てきたかぼちゃのお化け、でした。もともとは、『大和農園』で麻生分隊士が見張兵曹を襲った時、出現したものでしたね。元凶は、麻生分隊士にあり!!!(爆)



にほんブログ村 その他日記ブログ 妄想へ
にほんブログ村
関連記事

● COMMENT ●

森須もりんさんへ

森須もりんさんこんにちは
かぼちゃと言えば今やハロウインということで書いた話でした。帝国海軍とハロウィンというまさにミスマッチなお話w。
きっとあの頃の海軍さんたちも何らかの楽しみを見出していたことでしょうね、その辺の実話も掘り起こして行きたいものだと思っております。

実際には艦内ではなかったですが基地内に心霊現象??みたいなのがあったという話もありましたね!

かぼちゃでこんな楽しいストーリーができるのですね。
そっかー、ハロウィンがベースなのですね。
ほんとのミスマッチで面白い。

もしかしたら、当時も、なにか面白いこと
考えてつかの間の楽しみをもっていたかもしれませんね。

艦内に妖怪あらわる・・・なんてことなかったのかなあ。

matsuyama さんへ

ハロウィンネタでした(笑)。
あんまりハロウィンってよくしらなかったんですが、ハロウィンと「大和」のミスマッチもいいかなって思いまして。

お化けカボチャは、そうです、写真には写らないんですね、ハハハ!

松ちゃんさんへ

こんばんは
そうです、、カボチャはお怒りであります(笑)。神聖な畑であんなみだらなことは、、、やっぱりいけません、が、青空の下で、、、はまた格別なものがあるんでしょうね。

ええ!!松ちゃんさん方のカボチャさんは、ご最期を遂げられたのですか、、、やはりこのところの温かさはよくなかったですか、、、。
また来年、楽しみにしていますね。

NoTitle

そうか、カボチャのお化けはハロウィンだったんだ。
最近ハロウィンも日本に浸透してきたみたいですね。
子供たちにとっては楽しい行事ですものね。
お化けだから写真にも写らないんでしょう、きっと。

カボチャのオバケ

見はりんさん、こんにちは。 カボチャのお化け農園を汚したので相当怒っているのですね・・・うちのハロウインカボチャはあったかかったせいもあり腐って3日で台から転げ落ちちゃいました。 お化けがとりついてない根性なしでした、あはっ!


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://haitiyoshi.blog73.fc2.com/tb.php/109-31e05e40
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

「女だらけの戦艦大和」 ・ 機銃体験会始末記 «  | BLOG TOP |  » 「女だらけの戦艦大和」 ・ てんぷら狂想曲<1>

プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

最新記事

最新コメント

フリーエリア

無料アクセス解析
無料アクセス解析
現在の閲覧者数:
Web小説 ブログランキングへ
小説家志望 ブログランキングへ ブログランキングならblogram
夢占い 夢ココロ占い (キーワードをスペース区切りで入力してください。)

カテゴリ

未分類 (21)
大和 (486)
武蔵 (66)
大和と武蔵 (41)
海軍航空隊 (28)
麻生分隊士 (3)
オトメチャン (39)
連合艦隊・帝国海軍 (155)
ふたり (69)
駆逐艦 (10)
ハワイ (8)
帝国陸海軍 (23)
私の日常 (112)
家族 (22)
潜水艦 (3)
海軍きゃんきゃん (24)
トメキチとマツコ (2)
ものがたり (8)
妄想 (5)
北辺艦隊 (1)
想い (14)
ショートストーリー (4)
アラカルト (0)
エトセトラ (5)
海軍工廠の人々 (5)
戦友 (10)

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

FC2ブログランキング

FC2 Blog Ranking

FC2Blog Ranking

最新トラックバック

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

RSSリンクの表示

Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QRコード