2017-10

続・益川中佐の嫁探し 2〈解決編〉 - 2016.04.13 Wed

呉海兵団の教員室で、宇賀神辰子兵曹長は浮かない顔つきでいたーー

 

その理由はこうである。

その日出勤してきた宇賀神兵曹長に、同僚の教員・宮田上等兵曹がそっとささやいたのだった、「見ましたよ宇賀神兵曹長、こないだ海軍工廠の男性士官と肩を組んで民家に入って行かれましたよね」と。

ぎょっとして宮田兵曹の顔を見つめた宇賀神兵曹長に宮田兵曹は

「図星ですね!どんな関係の方なんですかそのかた?」

と身を寄せて聞いてくる。宇賀神兵曹長はちょっと待ってよと言いながら宮田兵曹のほうに体を向けると

「あれはね、」

とあの日の一部始終を話してやった。聞き終えると宮田上等兵曹は

「なんだ、特別な間柄ではなかったんですね。ざーんねん」

と言って笑った。しかし宇賀神兵曹長は相変わらず浮かぬ顔でいる。さすがに心配になった宮田兵曹は

「どうされました宇賀神兵曹長?」

と尋ねると彼女は

「実はね、私には全くその気がないのにあの男性士官が私の帰宅時間に門の外で待っているんだよね。それで『お茶のみに行きましょう』とかうるさくって」

と言った後、ため息をついた。宮田兵曹は「そりゃ困ったことですね」と言って

「宇賀神兵曹長きちんと言ったんですか?私はあなたに興味はないって。その士官、結構いい歳なんでしょう?やさしくされて勘違いしたんでしょう、早いところ兵曹長のお気持ちを伝えないと…まずいですよ」

と言ったので宇賀神兵曹長はなんだか気味が悪くなってきた。

「そうか。きちんと言わないといけないよね。わかった宮田兵曹、ありがとう」

宇賀神兵曹長はそういって(今度あの士官にあったらきちんと言おう)と心に決めた。

 

しかし当の益川中佐は一人で盛り上がり同僚たちに

「いよいよ私も独身におさらば出来るかもしれません。私の天女を見つけたんですから。私どんどんアタックして彼女をものにしたいと思ってます」

と公言してはばからない。

その自信にあふれた物言いに、鈴木中佐が

「益川中佐、君はいいかもしれないが相手の女性はどう思ってるかわからないだろう?まだじっくり話もしないうちからどんどんアタックなんかかけられたら迷惑かもしれないよ?女性はあまり性急にされるといやになるって聞いたことがあるから気を付けないと」

と忠告した。しかし先を焦る益川中佐はあまり聞いてはいなかったようでーー

 

益川中佐は勤務が早く終わったような日には海兵団の門の周辺で宇賀神兵曹長を待つようになった。宇賀神兵曹長から話を聞いていた同僚たちはこっそり見張に立って

「宇賀神さん、いるいる!!裏口から出てください」

とか

「今日も居ってよ、兵曹長を自動車でお送りしたほうがええね…兵曹長ちいとの間後ろの座席でちいそうなっていてつかあさい」

などと懸命に〈逢わないための努力〉をしている。一方では〈逢うための努力〉をし、もう一方では〈わないための努力〉に血道を上げるという光景が展開されていた。しびれを切らした益川中佐はとうとうある雨の日、昼休みに海兵団の前に立った。折あしく、所用で玄関から出てきた宇賀神兵曹長と宮田兵曹が出くわしてしまった。益川中佐はとてもうれしそうに微笑みながら

「宇賀神兵曹長!逢いたかった…」

と言って駆け寄った。そして「どこかでお茶でも」と誘ったが宇賀神兵曹長は「今から用事を済ませないといけないので」と断ったが中佐は

「それなら少しだけお話をさせてください、ほんの数分でいいんです」

と懇願した。宮田兵曹が「…宇賀神兵曹長」と声をかけたのへ、兵曹長は

「宮田さん。私ちょっとこちらの中佐とお話してまいりますので、先に行っていてください。すぐ追いつきますから」

と言った。その瞳には気迫がみなぎっていて、宮田兵曹はうなずくと「では先に参ります」というと歩き出した。残された二人はそこから少し離れた倉庫の陰に場所を移した。

そこで益川中佐は姿勢をしゃんと正すと

「男らしくはっきり言います。初めてあなたにあった日からあなたのことが忘れられません、―あなたを好きになってしまいました。どうかこの私と交際してくださいませんか、そして結婚を前提に」

と急き込んで話した。宇賀神兵曹長は

「ちょ、ちょっと待ってください!私はそんな気はありませんから」

と慌てて言った。しかし益川中佐はもう、前後の見境が付かなくなったか、宇賀神兵曹長の手をつかみ

「お願いです、どうか私と結婚を前提に付き合ってください、どうか、どうか…私はあなたが大好きです。そして私の子供、双子を産んでください~!」

ともう一度言って、あろうことか抱きつこうとしてしまった。

と。

益川中佐の体は宙を舞った。彼はまるで夢でも見ているような気持だったが背中から地面に叩きつけられたその痛みで我に返った。

そして痛みに唸る中佐に、宇賀神兵曹長の怒号がたたきつけられた。

「いい気になるな、なに勘違いしてるのよ!―この、…この変態おやじ!」

 

益川中佐の目の前は真っ暗になった…

 

海軍工廠では、益川中佐が泥だらけになって泣きながら帰ってきたのに大変驚いた。

江崎少将以下が益川中佐を取り囲み、口々に「どうした中佐、なにがあった?」と尋ねたが益川中佐は泣くばかり。

やっと落ち着かせて話を聞いたが、さすがに同情はされず鈴木中佐に

「だから言ったじゃないの、そんな性急にしたらダメだって。しかも女性に抱きつくなんて変態呼ばわりされても仕方がないですよ。益川さん焦りすぎ!焦ってい事ないよ、縁を待つしかないと私は思うよ?しかし何てことするんだか、もしその兵曹長嬢が訴えてきたらどうします?」

と言われ、益川中佐はまた泣き出しながら

「考えてなかった…もうそうなったら平謝りに謝って、だめなら腹を切る!」

と言ったのだった。

 

幸い、宇賀神兵曹長は訴えてくることもなかったが益川中佐はあの時「変態おやじ」と言われたことにざっくり傷ついて、それから半月程は

「もう女なんかいらない、私は一生一人で生きる!」

と言っていたがほとぼりが冷めるとまた、「結婚したいなあ~」と言っているそうである。

益川中佐の嫁探し、道はたいへん険しそうである――

 

            ・・・・・・・・・・・・・・・

とんでもない結果になっちゃいました。益川中佐焦りすぎました。自分一人で盛り上がったらいけませんね、しかも待ち伏せなんてストーカーか!?

いつの日か彼にも素敵な花嫁が来るように皆さん祈ってあげてくださいませ。

 

郷ひろみ「お嫁サンバ」でも聴いて頑張ろう益川中佐!


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● COMMENT ●

河内山宗俊さんへ

河内山宗俊さんこんばんは
普通なら裁判沙汰、訴えられてもおかしくないですが、相手の准士官嬢がそれこそ大人の対応をしてくれたから助かっちゃいましたね(;´Д`)。
山中大佐と自分が同じに、と思っちゃあいけませんや益川さん。
てなわけで益川中佐の嫁探しはさらに難航が予想されますw!
独身を楽しむくらいの余裕がほしいですね~w。

ponch さんへ

ponchさんこんばんは
ハイ、やっちゃいましたw。
飛んでもハップンなことをしでかした益川中佐、いくらなんでも急ぎすぎってもんですよね。突然「双子を産んでなんて言われたら誰だって「この変態野郎」くらい言っちゃいますってww。

これで少し、熱を冷まして落ち着いてくれることを祈りたいものですw。

やっちまったなぁ、ういっすという展開で。
さすがにいきなり抱きつくのはまずいがなwとりあえず裁判沙汰にならなかっただけでもよかったとしかいえないわ。それに、山中夫妻は陰ながらお互いを思い合っての結果だったわけで、たまたま双子を授かっただけのこと。

焦る益川さんの気持ちはわからぬでもないが、「○○は人生の墓場」なんて言うこともあるがな。まあ隣の芝生は青いってやつなのさ。独身じゃなきゃたのしめんこともあるで。

あちゃーとうとうやっちまいましたかー( つ∀`;)
2ちゃんでいうところの勘助になっちゃいましたねー。
どんな天女でもいきなり双子生んでほしいなんていわれたら、
すっ飛んで逃げちゃいますよねぇ(^-^;)
まさにテンプレ通りの展開といいますか。

益川中佐もこれに懲りて、少しは頭を冷やしてくれるといいですね。

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは
ホントにやっちまいました、益川中佐!
〉『勘助』
なるほどw!
結婚とは何かを益川中佐はもう一度自分に問い直してほしいものです(;´Д`)。まったくもう、自分勝手に盛り上がって挙句に変態おやじ呼ばわりされて悲しくないか?ですねww。

そうです、彼にはもうしばらく独り身でいていただきましょうw。結婚はもうちょっとお預け♡

こんばんは。
うわぁ……やっちゃいましたねぇ……ひとりで盛り上がりすぎ! 「勘助」といヤツですな……目的が「結婚」そのもので、心はどこか遠くにいってしまっている……それじゃ相手のことなど考えられないですよね。 まぁ当分ひとりで頑張ってもらいましょう(笑)


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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