ショートストーリー 〈益川クンの嫁探し〉

呉海軍工廠の期待の星の山中大佐・繁木少佐が南方に行ってからおよそひと月が過ぎようとしているそんな中、呉に残った中の一人益川中佐はため息をつくことが多くなった。同僚たちが心配して「益川さんどうしたんだろう、具合が悪いのだろうか」とささやきあい、鈴木中佐が代表して彼にそっと聞くことにした。

昼食後の休憩時間に、ぼんやりとして研究棟の屋上でタバコを吸っている益川中佐に近づいて行った鈴木中佐は

「どうしました益川さん、最近元気ないねえ」

といきなり言った。益川中佐はその視線を鈴木中佐に向けると「いいですねえ、山中大佐と繁木少佐。素敵な奥様がいるのに南方の空母で女性将兵に囲まれて。そういうのなんて言うんでしたっけ…えと…ああそうだ、ハーレムとかいうんですよね」と言ったので鈴木中佐は驚いた。驚いたまま

「何言ってんです?あのお二人は女遊びするために南方まで行ったんじゃないんですよ?〈松岡式防御装置〉の実戦配備のために行ったんですから。どうしたんです益川さん、そんなこと言うなんて変でしょうが」

というと益川中佐は深いため息をついて

「いやね、当初私が南方に行くはずだったんです。で、そしたらもしかしたら女性の将兵と出会いがあるかもしれないって思っていたんです。山中大佐もそうなるといいねと言ってくださいました。でも結果はあの通りで…私はがっかりです。ああ、私はいつまで独身をかこってなきゃいけないんでしょうね」

と最後は半泣き状態になってしまった。

そうでしたか、と鈴木中佐は言って

「それなら益川さん。呉停泊中の艦艇が今も何隻もいますからその中からお探しになればよい!呉の街に行けばそれらの艦艇の将兵嬢がたくさんいますよ。その中から気に入った人を見つけなさればいいですよ」

とアドバイス。すると益川中尉の顔が歓喜に輝き

「そうか!その手があったね鈴木さんありがとう。今呉にいるのは〈日向〉に〈長門〉、それからあと何が居たっけな?まあいい、私は今日から町に行って私のマドンナを探してきます!ありがとう、鈴木中佐」

というと鈴木中佐の両手を握って何度も振り、そして踊るような足取りで去っていった。

ポカーンとしてそれを見送る鈴木中佐…

 

さあその日から仕事がひけると益川中佐は呉の街中をウキウキして歩いた。そちこちに〈日向〉〈長門〉やその他の艦艇の乗組員嬢たちがいて目移りがする。

(あの子もいいなあ。あ、まてよあの子も素敵だなあ…家庭を持ったら尽くしてくれそうだな。お、あの子も有望だ)

などと思いながら歩く。

そして将兵嬢たちからは「あ、男性の海軍士官だ。海軍工廠の技術士官かあ、そんな人と結婚したらいいだろうなあ」というささやきが聞こえ益川中佐は気分が良い。だが、それをささやく将兵嬢たちは正直、益川中佐の趣味とはやや違う。

少しだけがっかりしながらも(縁がなかったということで。まあもしかしたら、ってこともあるかもだけど私も選びたいからね。出来たら山中大佐の奥様のような人がいいな、あの方は天女だ。ああ言う人が私は好きだね)と思いつつさらに歩く。

益川中佐は歩いて疲れたし、このまま家に帰っても独り者故夕飯もないので「ここで食ってゆこう」と一軒の食堂に入った。まだ宵の口なのでそれほど混雑してはいない。

案内された席に座るとすぐ「どうぞ」とお茶が出され、益川中佐はありがとう、と言ってから品書きを見て「定食を願います」と言って、そっと店の中を見廻した。

下士官嬢たちのグループが数組いる。益川中佐はそれとなく彼女たちを観察してみた。

下士官であろうと、兵学校出身の士官であろうが構わない。自分が気に入って相手も自分を気に入ってくれればそんなことは全く関係ない。

だが、(ちょっと私の趣味とは違うなあ、残念だ)と思い肩を落とす益川中佐。やがて運ばれてきた定食に「いただきます」と手を合わせ、箸をつける。

旨いなあ、こんな食事を作ってくれる人が早くできたらいいのになあ。

そんな風に思いつつ箸を口に運んでいると食堂の扉ががらりと開いて数名の海軍士官嬢たちが入ってきた。どうやら特務士官嬢たちのようで若いが洗練された身のこなしに益川中佐は目を瞠った。

その特務士官嬢たちは益川中佐の席の横の座席に案内されて、刺身定食や丼物を注文した。

さりげなく観察している益川中佐に全く気を払わないところも、中佐の気に入った。

時に、男性海軍士官を意識しすぎてふるまう将兵嬢がいてそういうのは益川中佐の気に入るタイプではない。

だが目の前に、いや、横にいる特務士官嬢たちはあくまで冷静、いや、こちらを意識していないというのが気に入った。

そこで益川中佐は全身の神経を彼女たちに集中して、観察に没頭した。

彼女らの会話はおもに最近の帝国海軍の戦況や艦内のあれこれで、彼女たちが分隊士クラスなのが分かった。

(さすが、特務士官は艦の中心的存在だと聞いたがその通りだな。嫁さんにするなら特務士官嬢がいいかな)

益川中佐の心は躍った。胸の鼓動が高鳴るのを覚えていた、彼女たちの中の一人はもろ、中佐のタイプであったから。

(この後さりげなく話しかけよう)

そう決意して益川中佐は茶を一口飲んだ。

その時。

思いもよらない会話が耳に飛び込んできて、中佐はびっくりして彼女たちを見つめることになった。

彼女たちは言ったのだ。

「さあーてと!腹もくちくなったし、朝日町に繰り出すぞ!」

「今度は男を腹いっぱい!」

益川中佐はびっくりして彼女たちを見た、「今度は男を腹いっぱい」と言った士官こそ、中佐が声をかけようかと思っていた士官嬢であった。

士官嬢たちは勘定を済ますと、我先にと朝日町目指して走っていった。

食堂に一人取り残された益川中佐、泣きそうな顔になって

「そんな…そんなあ。なんで私はこうも女性に縁がないんだろう?私はもしかして一生、結婚できないのだろうか?そんなの、そんなの嫌だあ」

というなりテーブルにうち付して泣き始めてしまったのだった。

 

益川中佐の嫁さん探しは、難航必至である――

 

            ・・・・・・・・・・・・

ショートストーリー第二弾でございます。

山中大佐・繁木少佐の同僚の益川中佐はまだ独身。早くお嫁さんがほしいのです。それで南方行きを希望していたのにおじゃんになり…鈴木中佐の助言で呉の街に繰り出したのですが残念なことに。

でも負けるな益川中佐、きっといいご縁があるから!





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まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
こと結婚に関しては焦ってはならない、と私は己の経験から申しあげますw。本当にせいてはことを仕損じます。益川君しんぼうせえ!です。

雨の天長節。両陛下の戦没者慰霊のご旅行にきっと泉下の英霊がたはお喜びだと思います。以前サイパンにいらしたとき、両陛下の周囲に多くの御霊が集まっていたととある霊能者が言ったとか。陛下のお心通じています。
今の若い日本人、そしてこれからの日本人に伝えてゆきたいお話です。両陛下の戦争に対するお考えも一緒に。

私の心をお汲み取りいただきありがとうございます!いつも祝祭日に国旗を掲げるときはこの上ない誇りーー日本人としてのーーを感じながら掲げております!

気温が上がったり下がったり、どうぞお風邪など召しませんように!!

森須もりんさんへ

森須もりんさんこんばんは!
益川君のがっかり物語でした(-_-;)…
ほんとにこればかりはご縁の話で、ない時はないんですよね。気の毒なくらいです、あれってどういうわけなんでしょうね?神様も不公平をなさります。

呉に何度も行ってらっしゃるんですか!あの町は私の今まで行った中でもトップクラスで好きな街です。
昔…どんなだったのかなあと私も思います^^。

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
新沼謙治さん、私10代のころからあの素朴さが好きです。嫁に来ないか~なんて言われたらもうもう…w。しかしもう遅いかwww.

益川さん一人で盛り上がって一人で盛り下がっています。
理想が高いとは思えませんから(;´Д`)、気長に頑張ってほしいものです。彼の嫁探しの話は今後新展開がありますのでお楽しみに♡

雨になりました、お風邪など召しませんように!

ponch さんへ

ponch さんこんばんは!
女だらけ、ではありますがなかなか数が多すぎて見つからないというのが真相かもしれません。
益川君、がんばってよい伴侶を見つけてほしいものです^^。

こんにちは。
縁というのはささやかなきっかけも大きく左右するものですが焦ってはなりませんね。急いてはことを仕損じる。良き人の出現まで我慢を(笑)

雨の天皇誕生日になりました。陛下も82歳。ご宸襟を煩わせてはなりませんが、来年には両陛下お揃いでフィリピンに慰霊の旅とか。英霊はさぞかしお喜びでしょう。日本の今の若い人たち、その有り難さは分からないでしょうね。

ご自宅の玄関にはためく日章旗。その景色も見張り員さんの心意気も、大分からも心眼でよく見えていますよ。

こんにちは

ああー!お気の毒。

縁のある人は、いっぱいあるのに、
縁のない人は、からっきしない。

かなり気の毒。

呉・・・私も数回、行ってます。
呉の昔を想像しました。

♪嫁に~来ないか~
新沼謙治さんの歌が聞こえそうな気がする……そして残念ながら空振りな予感(笑) 自分だけ盛り上がっても仕方ないですしね、気長によい方を見つけてほしいです~!

女だらけでもお嫁さん探しには苦労してるんですね。
益川くん頑張ってp(^-^)q

河内山宗俊さんへ

河内山宗俊さんこんばんは!
そうですね、焦りは何事にも禁物ですね。特に嫁探し婿探しには。一生の問題ですからね~、焦って小泉兵曹みたいなのをもらったらちょいと困りますからねw。

次ちゃんクラスをもらおうなんてちょっとむつかしすぎます。山中大佐はとても運が良かったのですからね^^。

そしてしっかり者もほどほどにしないといけませんね。ああ、やはり前途多難だw。

益川さん焦らずともよいですってwあんまり焦ると小泉さんのような百戦錬磨?にひっかかっちまうって。益川さんごのみの女性が海軍士官嬢にどれほどいるかわ謎ですが。次ちゃんクラスをと思うのは余程の幸運の持ち主でないとなぁ。あまりしっかり者過ぎると、職場と家庭の区別がなくなる危険性もありますし。
プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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