2017-09

KEMUNPASSU退治される。 - 2015.11.08 Sun

「女だらけの大和」以下八隻の艦隊は沖縄を後にしてトレーラーを目指すーー

 

次に停泊予定はグアム島である。グアムで簡単な補給をした後一気にトレーラーを目指そうという算段である。駆逐艦はそう一度に長い距離を走れないので島を伝いながらの航海である。

グアムまであと二日ほどの位置に来た夕方のこと、水中測的員が

「妙です。この至近に何かいます」

と言ってきた。水測士が「いったいなんだ?まさか…」と聴音してみたところ…

「敵潜水艦!」

との声で艦内は色めき立った。即座に発光信号が放たれ、艦隊は第一警戒序列に。梨賀艦長・山中副長以下幹部は第一艦橋に集合し「合戦準備」となる。艦内に緊張感が走り、それぞれ持ち場についた。駆逐艦無花果でも巡洋艦でも

「どこのどいつだ、用があるなら堂々と来やがれってんだ!」

と毒づきながら魚雷発射管や爆雷装填台、発射台に走る兵員嬢たち。夕闇が海面上を這い出し、不気味さがいよいよ増している。

が、彼女たち帝国海軍将兵嬢の瞳は鋭く海面を、そしてその下にいるであろう敵潜水艦を射抜くかのように見つめている。

『大和』艦上の砲員たちも配置にしっかりと着いて、

「もし敵潜が浮上して来たら砲撃だ。確実に撃沈できるようしっかり見張れ!」

と大声にならないように檄を飛ばした。高角砲の配置の高田兵曹は

「今回は出番なしかな…。しかしなんでこげえな場所に敵の潜水艦が居るんじゃろう?」

と不審そうにつぶやいた。その通り太平洋のほとんどの海域・空域はすでに帝国海軍の支配下にあり、敵の潜水艦など這い出る隙間もないはずなのだが。

 

この敵潜水艦、イギリスのものであったが実は故障していてコンパスが狂いまくっていたのだ。オーストラリアの南・アデレードから出港した潜水艦・ケムンパスはニュージーランド沖を東に行き、そのあと南米沖から大西洋を経て母国に帰艦するはずであった。

が。

どうしたわけか羅針盤が狂いしかも舵さえおかしくなってしまった。

艦長のクリスチャン・デアール大佐は錯乱せんばかりに舞い上がってしまい、乗組員は落ち着かせるのに骨を折り…そんなことをしているうちになぜかどうしてか、グアム近海にまで潜水艦・ケムンパスは流れてきてしまったのだった。

副長のコニー・フランソワ少佐は

「艦長、この辺は何かまずいにおいがするでやんす…あたしたち、日本海軍のうようよしてる海域に踏み込んじまったんじゃないかしら…早いところどうにかしてここを脱出しましょうよ」

とその顔を青くしながら言ったものだ。

「しかしだからと言って…舵さえおかしくなってしまった今どうしたらいいのだ?へたに救難信号を打てば鵜の目鷹の目の日本海軍が発見して我々、撃沈されるのは必至でしょう…ああどうしたらいいの!」

デアール艦長は泣かんばかりである。

そこに、

「シッ!静かにして…至近に数隻の艦艇がある模様です」

と聴音員からの報告が入る。一斉に口をふさぐ乗組員たち。クリスチャン・デアール大佐は艦長の威厳をもって静かな声で

「何とか静かにやり過ごそう。こっちが手を出さなきゃ向こうも行ってしまうだろう。それを祈るしかない。相手をやり過ごしたら、もう背に腹は代えられない、救難信号を打とう。そしてもう一度潜航して助けをまとう。いいね?」

と言い皆は頷いた。

 

そんなころ、『大和』をはじめとする艦艇は機関を停止し敵潜の様子をうかがう。

黒多砲術長が

「連中こうしていたら浮上してきますよ。そしたらそこを一斉に砲撃しましょう。潜航したら駆逐艦の爆雷攻撃で沈めてやりましょう」

と言ってうれしそうに笑っている。その場にいる艦長も副長も、皆嬉しそうな微笑みを浮かべている。もし、この笑顔を〈ケムンパス〉の乗員のイギリス嬢たちが見たら絶対「悪魔の微笑」と称したに違いない笑み。

 

〈ケムンパス〉は、長い時間潜航している。聴音員が

「敵艦感度無し。――どうやら連中、あきらめて行ってしまったようですね。外はもう真っ暗ですからあきらめたのでしょう。もしかしたら単なる輸送船団だったのかもしれませんし」

と言ってほっと安堵の空気が艦内に流れた。

艦長は、浮上を命じた――

 

『大和』防空指揮所。

麻生分隊士がしずかにしかし、しっかりとした口調で

「しっかり見張れ。敵は海中にあり。浮上してくるやもしれん、しっかり見張れ」

とげきを飛ばし、普段熱い女の松岡中尉でさえ今回はラケットを伝令所において、胸から下げていた双眼鏡でもって周囲を睥睨している。

静かな緊張感に包まれている艦のうちそと…。

第一艦橋を暗闇が支配し、艦長・副長らの艦内帽の後ろに付けた蛍光板の「カ」(艦長)、「フ」(副長)の青白い文字が夢のように浮かんでいる。

 

駆逐艦・<無花果>でも菅直子艦長が緊張の面持ちで暗い海を見つめている。

敵潜を発見次第砲撃せよとの通達であるから無花果でもその時を待っている。巡洋艦・御手柄でもその時を皆が舌なめずりしながら待っている。

無理もない、最近海戦らしい海戦がなかったのだから。久しぶりにやれる、と皆はにやにやしながらその時を今や遅しと待っているのだった。

 

桜本兵曹の見つめる双眼鏡の中の海面が揺らいだ。

はっと彼女は息をのんで「分隊士、敵潜浮上のようです」と報告、分隊士と松岡分隊長が急いで双眼鏡で検分すると暗い海面に潜水艦が浮上するときの波が湧きたっている。

「艦長、敵潜浮上します!」

麻生分隊士が艦橋に通じる伝声管に叫び、艦長は「砲戦準備」を命じる。砲術長がそれを受けて各砲台長に砲戦準備を発する。

そして駆逐艦・巡洋艦も一斉に照準を合わせる…

 

〈ケムンパス〉は潜望鏡を上げて浮上してきた。ザザー、と海水がその体から流れ落ちる。

「大丈夫、何も」いないわ、と言いかけた艦長の声が途切れた。そして次の瞬間クリスチャン・デアール艦長は大声の大慌てで

「潜航、潜航!!敵がそこにいるッ、急ぎ潜航!」

と叫んだ。へ?とぽかんとしている乗組員嬢。

そしてさらに次の瞬間。

ドカーン!

ものすごい衝撃が〈ケムンパス〉を襲った。

「やられる、連中闇に紛れていやがった、きたねえ奴らだ!早く潜航しろーっ」

艦長の叫びを消し去るような砲撃音がさらに二つ三つ。〈ケムンパス〉は激しく動揺させれ、潜航もままならない。

やっと、船体が隠れた、と思ったその時。『大和』からの砲弾が〈ケムンパス〉の司令塔の一部を薙ぎ払った。その上駆逐艦・巡洋艦から無茶苦茶に投げ込まれる爆雷が次々さく裂し〈ケムンパス〉は浸水をはじめ、乗組員嬢たちは命からがら艦の外へと脱出し、駆逐艦や巡洋艦に収容されたのだった。

 

この後、グアムの捕虜収容所に収容された〈ケムンパス〉乗組員たち。デアール艦長は

「ひどすぎる。日本海軍はまるでニンジャだわ。あんな暗闇でも正確に砲撃してくるなんて、やっぱり日本人の中にはニンジャの血が流れてるに違いないわ。それにしても不運だったわが〈ケムンパス〉。コンパスはくるうは、舵は故障するは…。神様から見放されてしまったのかしら」

と一人嘆いていた。

それを隣に聞きながら副長のコニー少佐は

「確かに不運でやんしたがね、人生は泣き笑いでやんすよ、艦長。だけど皆全員生きてられたってのは幸運でしたよ。捕虜になっても生きてられたらラッキーだと思わなきゃいけません。それよかここには紅茶はないのかしら?」

とこともなげに言って、世話係の兵曹は

「へえ~、彼女たちは捕虜になっても恥だとか思わないんだね。なんか妙に楽しそうじゃない?…不可解だね。私にはその神経がわからないわ」

と言ったという。

 

梨賀艦長は、そんな砲戦の後副長からの戦闘報告を受け、艦隊への被害なし・『大和』乗員の人的被害も無しに深くうなずいた後

「突然の事態にも落ち着いて対応できたのは普段の訓練のたまものだね。副長、あなたから皆に褒美をやりなさい」

と言い副長は

「ではグアムにつきましたら酒を許しましょう」

と言って二人は微笑みあった。

 

『大和』以下の艦隊はそれから二日の後、グアムに到着したーー

 

             ・・・・・・・・・・・・・・

 

久しぶりの戦闘でした。あまりに久々なので「こんなのありえないじゃん!」と言わないでつかあさいw。

それにしても外国の艦艇の名前とか人の名を考えるのはむつかしいですね(;´Д`)




関連記事

● COMMENT ●

森須もりんさんへ

森須もりんさんこんばんは!
なかなか私外国人の名前を付けるのが下手で…でもそうおっしゃってくださるととっても嬉しいです💛

日本人である私、もし戦時中捕虜になりそうになったら?と考えました。当時の教育を受けているならやはり、自決の道を選ぶのかもしれませんね(-_-;)。
囚われの身を恥と思うというのは武士の時代からの日本人の美徳なのでしょうね。

紅茶は?というのがいかにも英国人風でしょw。
英国人=紅茶という図式が私の頭にあってw、「とっても好き」とおっしゃってくださってうれしいです♪

外国人の名前が、絶妙ですね。
さすが!です。

そうですね、捕虜になることが恥と思わない外国の人ですものね。

紅茶の有無を案じるあたりが、リアルで

私は、とっても好き。

柴犬ケイさんへ

柴犬ケイさんこんばんは!
コメントありがとうございます^^。
最近の東シナ海などでの中国の動きは何かきな臭さを感じて嫌な気がしますね。
しかし日本の海上自衛隊の能力は決して他の軍隊と比して劣ってはいませんから安心ですね。
やはり『抑止力としての軍備』は必要ではないかと痛感します。
東シナ海に眠る軍艦大和、この状態をどう見ているのかな?と思いますね。

モミジ、元気です!そうそう、9月ごろモミジのお乳の状態が変で「まさか、がん?」と病院に行ったら何と〈偽妊娠〉だったのですよこれが!驚きでしたw。

また同素よろしくお願いいたします^^。

まろゆーろさんへ

まろゆーろさんこんばんは!
いやあ~喜んでいただけてうれしいったらありません💛ケムンパスの艦名は、イギリス海軍艦艇を検索しているうちに思いつきました。そういえば昔、「もーれつあ太郎」の中のワンシーンで、ケムンパスが夜中、屋根に上って「ケムーンパスパスパス…」と言って仲間を呼ぶシーンがありましてそれがいまだに記憶に鮮明です。
そういえばカエルの「べし」というのもいましたよねww。懐かしいキャラクターです。

そしてグアム。何が起きるやら??ご期待くださいませね。

本当に天候気温が不順で困ります、いよいよ胃腸がおかしくなってきました。困ったものです。若様はお元気でしょうか、気になっています。

河内山宗俊さんへ

河内山宗俊さんこんばんは!
日本海軍の得意技夜戦。夜目の利く見張を多数養成してみたりいろいろやってましたね。
八木アンテナ。優秀だったそうですが向こうさんも持ってたとは。
日本海軍は何より人の使い方が下手だったような気がしてなりません。

オスカーさんへ

オスカーさんこんばんは!
おお、キングギドラがww!でもケムンパスの末端肥大のような感じですね、キングギドラww。

「歴史群像」の新聞の記事は私も読んだところです。時代の新旧問わず人の考えることって同じようなものなんだなと思いました。彼がもし今を生きていたらきっとそう、「艦これ」にはまっていることでしょうね。その彼はあの戦争を生き抜いたのでしょうか、それとも…。考えるととっても切ないですね。

sukunahikona さんへ

sukunahikona さんこんばんは!
外国艦艇と人の名前はできたら避けたいのですが物語の性質上、まったく避けて通れるものではなく、苦心しておりますw。
ケムンパス、無情の弾幕wで撃沈しました(;´Д`)、副官の「で、やんす」の叫びは永遠の謎…大英帝国ではやりの言葉かもしれませんねw。

こんにちは♪

見張り員さん     こんにちは♪

いつもありがとうございます♪
潜水艦など尖閣諸島でも海上自衛隊の警戒・監視能力が
注目されていますね。
他国の潜水艦を追い詰めるP3C哨戒機と最新のP1哨戒機の
部隊は世界一の対潜能力と恐れられているそうです。
中国による国際法無視が続くなか実力に期待されていて
軍艦大和で思い出しました。
モミジちゃんはお元気でしょうか?
またお邪魔させていただきます。

異人たちのそれぞれの名前にひとり腹を揺らしながら読み、さらに懐かしのケムンパスとは。もう参った、参ったのグッジョブ見張り員さんです。
あのとぼけた声の「ケムンパシでやんす」が一気に頭のなかを駆け巡りました。
ケムンパスと大和!! この名前のギャップこそ見張り員さんの大和に対する並々ならない思い入れであることを感じました。
それにしても……、どこからそんなアイデアが浮かんでくるのでしょう。

もう間もなくグアムですね。途中でこれだけの悲喜劇の展開があったのでグアムでさぞかしであろうと期待しています。

昨日は汗ばむくらいの陽気でした。東京は如何でしたか。
こんな不順な時候です。くれぐれも無理なさらぬようにして下さい。

欧米艦船に電探が標準装備となる以前は、夜戦は帝国海軍の十八番。もっとも電探の最重要部品であるアンテナは、八木アンテナだったという歴史の皮肉も。
新しい技術の導入に積極的な欧米。ともすれば旧来の技術に頼る日本。どちらがよいとは一概に言えませんが。

こんばんは。
久しぶりの舶来べっぴんさんたち! ケムンパスが何かはわかっているのに、キングギドラの画で海中をのたうち回る姿が浮かんでしまいました(笑)
話はかわりますが、「歴史群像」12月号に<日本海軍のミニコミ紙 艦内新聞を読む>の記事があり、長門新聞のところに……《投稿者が配属されていた機関を擬人化し、「機関缶子」と名前を付けている。》……笑いながら同時に切なくなりました。現代に生まれ変わって「艦これ」を楽しんでいてくれたら…なんて考えてしまいました。

外国の艦艇の名前、人名を考えるのはさぞ、さぞ難しいでしょう。そして浮上するケムンパスに無情の弾幕が降り注ぐ!しかしなぜ、副官のみが「De,yansu!」と絶望の叫びを発したのか・・・・ああ、偉大なる戦笑の神よ!大英帝国バンザイ!!


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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