南の島の花嫁さん 1

その日、高田佳子海軍上等兵曹とその許婚の佐野基樹は緊張の面持ちで港に立っていた――

 

「あ、あれがそうじゃないでしょうか」

高田兵曹が爪先立ってさらに軍帽の庇を持ち上げるようにして光る海の沖を見つめると佐野も伸び上がるようにして沖を見つめ

「ああそうだ!あれですよ、<南洋新興>の船は!」

と興奮したような声を出して高田兵曹を見つめ、二人は互いを見つめあってほほ笑んだ。

<南洋新興>の持ち船・<新興丸>には高田兵曹の養母・瑞枝が乗ってきている。高田兵曹と佐野基樹の結婚式をこのトレーラーで挙げるため、佐野が「<新興丸>という船に乗れるように手配をしておきますので」と言って、瑞枝は<新興丸>に乗ってはるばるトレーラー水島まで来たというわけである。

「おかあさん、船酔いしとらんじゃろうか…」

と初めての船旅をしてくる母を想って心配そうにつぶやく高田兵曹の背中にそっと手を回した佐野は

<新興丸>には医師が乗っていますから平気だと思うんですが…、早く接岸しないかなあ。お母さまに早くご挨拶したいですよ」

と言った。

二人はしばらくのあいだ、<新興丸>の様子を見つめていたがやがて船が接岸したのを見るや、船のほうへと走り寄って行った。

 

船が港につながれ、船員が数名降りてくると佐野は彼らに何か話しかけた、すると船員たちは丁寧に佐野に頭を下げ、そして高田兵曹にも頭を下げた。高田兵曹は敬礼してそれに応える。一人の船員が舷梯を駆け上がっていき佐野は

「もう少し待っててください、お母さまが下りてらっしゃいますよ」

と言った。おかあさん、と高田兵曹はつぶやいて船の上を見上げる。

数十分ほどして舷梯から高田の母と、それに伴って一人の男性が下りてきた。船長である。

佐野は船長の原崎に駆け寄ると今回の礼を述べた。原崎船長は微笑んで

「お役に立ててよかったです。支店長、ご結婚なさるんですね。おめでとうございます。いろいろとお話を高田さんから聞かせていただきました」

と言った。佐野の影に恥ずかし気にたたずんでいた高田兵曹に、瑞枝が「よっちゃん」と声をかけると兵曹は佐野の後ろから出てきてさっと敬礼し

「母上、遠いところはるばるありがとうございます!」

と言った。二種軍装の凛々しい兵曹姿に瑞枝の瞳が濡れた。そして「よっちゃん…立派になりましたね。そして今度は本当におめでとう」と言って兵曹に頭を下げた。

「おかあさん…」

と高田兵曹は瑞枝の肩に手をかけると頭を挙げさせた。そして

「おかあさん、こちらが佐野さんです」

と改めて紹介した。佐野は瑞枝に自己紹介をして、瑞枝は「船の手配までしてくださって本当にありがとうございました。<南洋新興>の皆さんには大変お世話になりましたので佐野さんからもどうぞ皆さん委はよろしくお伝えくださいね」

と言った。

船旅の途中、<南洋新興>の社員たちが何名も同乗していたが彼らは瑞枝がさみしく思ったり手持無沙汰にならないようあれこれ心を砕いてくれたのだという。

だから、「全然退屈しない素敵な船旅でしたわ」と瑞枝は嬉しそうだった。出航して二日ほどは船酔いに苦しんだが船医にねんごろに介抱してもらいそのあとはすっかり船にも慣れて快適だったと瑞枝は言った。

「それは良かった。船酔いで苦しんではいまいかと、佳子さんと心配していたんですよ」

佐野はそういうと

「では、お母さま。<>に参りますか!」

と瑞枝の大きな荷物を持ち上げた。原崎船長や船員たち、そして降りてきた<南洋新興>の社員たちに何度も礼を言って三人は高田兵曹の<>に向かって行った。

道々、瑞枝は

「よっちゃん、家ってなんなの?」

と尋ね兵曹はちょっと苦笑いしながら説明してやった。以前ここに住んで小さな事業をしていた日本人家族に気に入られた高田(当時は野田)は、彼らが内地に帰国する際家を「もうトレーラーに戻らないからあなたに使ってほしい」ともらったことなどを話した。さすがに「ごみ屋敷」だった過去は話せなかったが。

「たくさんの部屋があるので自分用の部屋以外は上陸の兵隊や下士官に貸すときがあります」

そう兵曹が言うと瑞枝は

「そうだったの、そうね、よっちゃんいいことするわね。お話に聞くと結構皆さんやりくり大変のようだから」

と言った。安い給料の兵隊嬢たちを瑞枝は思った。佐野が

「佳子さんは部屋賃など一切取らないで貸してくれると評判ですよ。空いてるときはいつでも借りられるとみんな喜んでいますよ」

と嬉しそうに話す。自分の許嫁を皆がほめるのがうれしいのだろう。

 

やがて三人は家に着いた。その大きな構えに瑞枝は「まあ、なんて立派なお屋敷なんでしょう!」と声を上げていた。兵曹が

「さあおかあさんどうぞ」

と玄関の扉を開けて瑞枝と佐野を招じ入れた。きれいに整えられた玄関から、三人は高田兵曹の私室へと入って行った…

 

 

「なあ。高田兵曹の結婚式、どんとな式になるんじゃろ」

そういったのは小泉兵曹、彼女は午後の課業が終わった後の自由時間に機銃座に入り込んで長妻兵曹と乾燥芋をかじっていた。長妻兵曹は

「どんとな式になるかはうちもまだ知らんが、この暑い中でするんじゃけえいろいろ考えとってんじゃないかねえ?それにしてもうち、楽しみじゃわ」

と言い、乾燥芋をかみちぎった。

小泉兵曹も芋を噛みながら

「ほうじゃ、ほういやあ長妻さん。許嫁の何とかいう人とはもう会うたんか?」

と尋ねると長妻兵曹は

「何とかいう、でのうて毛塚少尉じゃわ。…ううん、まだ逢ってはおらん」

と言った。小泉兵曹はその横顔を見つめて

「さみしい無いね?」

というと長妻兵曹は意外にもほほ笑んで

「さみしいないで。同じ艦に乗っとるし、そのうち上陸日を合わせてくれるいうて平野少尉や砲術長から聞いとってなけえ。うちらは海軍軍人として恥ずかしゅうないように生きよういうて約束しとってなけえね」

と言った。その潔さに小泉兵曹は感動さえ覚えた。ほうね、と言って

「早う逢えるその日が来るとええね」

と戦友を励ましてやった。

「それにしても、」

と長妻兵曹は周囲を見回しながら

「男性技術士官たちはあれこれ大変そうなねえ。ちっとも行き会わん。ほいであの一番年上みとうなおじさん士官、こないだちらっと見たがなんやらあん人、おなごに飢えとってじゃないかねえ」

と言った。

おじさん士官いうて確か益川中佐とか言うたあん人?へ?おなごに飢えとる?と小泉兵曹が素っ頓狂な声を出すと長妻兵曹は手にした乾燥芋を口にくわえて

「でかい声出したらいけん!そんとなこと聞かれたら大ごとなけえの」

と注意した。じゃがの、と長妻兵曹は芋を噛んで飲み下してから

「なんかのう、こう行合う兵隊や下士官を見る目ぇが物欲しげに見えていけんのよ。もしかしてあんおじさん士官、まだ独身かのう?」

と腕を組んで考え込む。

まさか、と小泉兵曹は笑ったがそれがドンピシャだとは思いもよらないのであった。

 

そんなころ、<大和>工作科の水木兵曹たちは大忙しであった。

「急がんと、今週末には式じゃけえの」

そういいながら仮縫いの済んだ式服をミシンがけしたり、小物を制作する水木兵曹たち。彼女たちは黒多砲術長そして平野少尉から「高田兵曹の結婚式の式服をどうか作ってほしい!」と言って「これを参考にしてほしい」と一冊の雑誌を手渡されていた。

それは黒多砲術長の同期の友人が、とある島での戦闘でアメリカ軍の捕虜からもらったという<ブライダル雑誌>。そこにはチャペルで挙式のブロンド美女が純白のウエディングドレスに身を包んでほほ笑んでいる。

「はあ~、アメリカさんはこげえな服で結婚するんですねえ。でも日本でも大きなホテルで結婚式を挙げると着せてもらえるいうて聞きましたが」

水木兵曹たちはその雑誌に群がって大騒ぎ。ほんなら、と水木兵曹が

「アメリカさんに負けんようなドレスを作って帝国海軍ここにあり、をみせつけてやらんといけんのう!さあみんな、帝国海軍と高田兵曹のために頑張ろうや」

と言って…ドレス政策は始まりいよいよ佳境を迎えていたのだった。

 

その、高田兵曹の挙式はもうあと数日に迫っているーー

   (次回に続きます)

 

            ・・・・・・・・・・・・・・

高田兵曹の結婚式ももうすぐ!そして兵曹の養母の瑞枝さんがトレーラーにやってきました。佐野さんとも仲良くやって行けそうで何よりです。

しかし長妻兵曹、益川中佐の心を見抜いているようです。なかなか男性を見る眼のある長妻さんに見抜かれた益川中佐この後どうなりましょうか、いろいろと目の離せない展開になる…かも???

次回をお楽しみに!

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吉報、そして男性士官たち 2

その男性士官は、梨賀艦長と佐藤副長におずおずと言ったーー

 

「この艦に、長妻昭子一等兵曹はおりますか?」

へ、長妻兵曹?と梨賀艦長は思わず変な顔をしてしまったので慌ててしかつめらしい顔になるともう一度

「長妻昭子一等兵曹ですか、…確かに彼女はこの大和に居りますが…その、あなたはどうして彼女をご存じなのでしょう」

と尋ねた。佐藤副長も興味を覚えたのか男性士官の顔を見つめている。

すると男性士官がほほをぱっと赤く染めるなり

「梨賀艦長、ご存じなかったのですね。長妻昭子一等兵曹は私の許嫁です」

と言い、梨賀艦長は「ああ!あなたが」と大きな声を上げていた。そういえば機銃分隊の分隊長にそんな話を聞いたことがあったのを思い出していた。

佐藤副長が

「それならお会いしたいでしょう…艦長、長妻兵曹と会わせてあげたらいかがでしょう」

というと梨賀艦長はうなずいたものの

「しかし、ほかの将兵の手前あまり堂々とというのもどうかと思う」

とやや苦衷のにじんだ声音で言った。許嫁同士を合わせてやりたい、しかし多くの将兵嬢たちがそれをどう思うか。それを考えると手放しで喜んでやるわけにもいかないのである。

すると男性士官――毛塚技術少尉――は大きくうなずいて

「その辺のことはよくわかります。多分彼女もそう思っていることでしょう、ただ、私がここに来た、大和に乗っているということだけ伝えてくだされば結構です。広い艦内ですがそのうち会えることができるでしょう。互いに帝国海軍軍人ですからその辺はよくわかっております。艦内では互いに節操をもって接することを御誓い申し上げます」

と言った。その潔さに梨賀艦長は大きくうなずき

「わかりました。では機銃分隊の分隊長に、長妻兵曹にあなたの乗艦を伝えさせます。―そのうち上陸日を合わせて水島の街なかでお会いになればよいですよ」

と言った。毛塚少尉は頬をほんのり赤く染めてうなずき

「ありがとうございます、梨賀艦長」

と言った。

 

さてそんな少尉の居る反面、益川中佐はどこか浮かないような顔つきでいる。

(私はここで天女を見つけられるのだろうか)

そんな思いがどうも心を支配して今一つ仕事に熱が入らない。しかしそんなことではいけない、そもそも嫁探しのためにトレーラーくんだりまで来たのではない。

益川中佐は、案内の佐奈田航海長とともに甲板を歩きながらあちこちを見て歩く。機銃座、砲塔…そのどこを重点的に「松岡式防御兵器」を設置すべきか、益川中佐は悩みながら見て歩く。

佐奈田航海長が

「なんといっても<大和>は巨大ですから装備を備えるにも大ごとですね。お察しします」

と、益川中佐のやや、思い悩んだような顔を見て言った。ありがとうございます、と言って益川中佐は佐奈田航海長を見つめた。見つめられて佐奈田航海長は面はゆげな表情になり、その顔を見た益川中佐は(もしかして彼女が私の天女ではないだろうか?)と期待感を持ってしまったのも事実。

が、その期待も夜になって佐奈田航海長が黒多砲術長と交わしていた会話、

「航海長、明日は上陸ですね?またあの見世に行くんですか~」

「もちろん行くに決まってるわよ、もうずいぶんご無沙汰してるからもうたまらんたまらん~」

「いいですねえ馴染みがいる人は。私もそういう馴染みがほしいですよ。それにしても航海長、いつからその人と馴染みなんです?」

――という会話を聞いてしまって打ち破られてしまったのだった。

(だめだ…士官は遊び慣れているのか遊郭になじみがいるんだな…。まてよ、しかし山中大佐の奥様にはそんな話は聞かない、聞いていない。うーん…ということは人それぞれなんだろうか。ああもう難しい世界だ)

益川中佐は私室に当てられた士官室の前で考え込んでいた。そこに

「益川中佐、」

と声がかけられ、見ると白衣をひっかけた日野原軍医長が首から掛けた聴診器を揺らして歩いてきて、益川中佐は敬礼した。日野原軍医長は大佐である。

軍医長は返礼してから

「益川中佐は山中大佐と同じ職場と伺いました。もう御聞きでしょうか…山中中佐のご出産の報を?」

というと益川中佐の顔色が歓喜に輝き

「なんと!ご出産されたのですね、それであのあの、どちらがお生まれになったのでしょうか?」

と急き込んで尋ね、日野原軍医長の白衣の襟を掴まんばかりになった。軍医長はそれでも穏やかにほほ笑んで

「女の子さんお二人ですよ。この報せは海軍省、そして陛下にも伝わったそうです。陛下からは将来の海軍軍人の誕生を寿がれ、お言葉を賜った上にベビー服などを賜ったと聞いています」

と教えた。ああ、なんて素晴らしいと益川中佐は涙を流さんばかりに感激し天を仰いでうれし涙で瞳を濡らす。そして

「山中中佐のお子さんですからきっと大きくなられたらお綺麗になることでしょう、ああなんて素晴らしい、天女が三人になる…」

と言った。

軍医長は(益川中佐は、山中副長に非常にあこがれているのだな)と確信した。確かに山中次子中佐は男性ならずともあこがれる人格の持ち主である。いろいろな人にあこがれられて

(人徳ですよ、山中さん)

と心の中で彼女に呼びかける日野原軍医長である。

 

と。

どこかで「ギャーッ!!」と将兵嬢の大きな悲鳴が聞こえてきた。何事か、と軍医長と益川中佐が声のほうに行くとそこは厠の入り口で、困ったような顔の男性士官が主計科の兵曹嬢に

「ここは女の厠ですよ!いきなり入ってくるなんかこまりますっ!」

と叱られているのだった。

ああしまった、と軍医長は思った。女性ばかりの艦内、厠も風呂も男性がつかえる仕様になっていなかった。話を聞いたときに早く手を打っておくべきだった、と思いながらやはりすっ飛んできた副長と運用科の科長に

「厠は囲いを作るなどできないだろうか。風呂は長官室の風呂を使ってもらうようにしたらどうだろうか」

と提案し、佐藤副長はうなずいて

「林田運用長、厠については緊急に工事を行ってもらいたい。風呂については私から伝えておきます」

と言って、男性士官が集められ、風呂は長官室のものを使うことと厠は順次囲いを作って男性士官用に分けておくことを約束した。それまでは

「大変申し訳ないことですがほかの将兵嬢たちがいないところを見計らって使用していただきたい」

となり、全艦の将兵嬢たちには

「男性士官が厠にいても騒がないこと。その際には男性士官の用が済むまで厠の外で待機しているように」

と達示が出た。

それを伝え聞いた桜本兵曹は双眼鏡のレンズを拭き拭き、

「はあ難儀なねえ。女ばっかのところに男の人が来んさるとそんとな苦労があるんじゃねえ。まあ、上手いことやってつかあさいや」

と他人事のようにつぶやき小泉兵曹は

「いっくらなんでも厠で鉢合わせは嫌じゃわあ…アレの時なんぞに顔が合うたらやっぱし恥ずかしいわい」

と言ってほほを染めた。

桜本兵曹は

「そんなん、厠に男の士官がおったら別の厠に走って行けば済むことなわ。うちはそがいなん気にせんで」

と言い、小泉兵曹は(ああ、オトメチャンには男性士官との恋の機会はなさそうじゃな…。どうか前の手ひどい恋を忘れてええ出会いがあるとええんじゃが)と一人気をもんでいる…。

 

そして運用科の迅速な対応で、艦内すべての厠に囲いが作られ<男性士官用>の厠が出来、男性士官たちはほっとして厠を使うことができるようになった。

 

そんな折、長妻兵曹は平野ヒラ女少尉から

「やっぱりあなたの許嫁の男性でしたよ、あの方。よかったね、…でも艦内でみだらな行為はご法度だから、上陸日を合わせて楽しむといいよ。ああ~うらやましい」

とほほ笑まれた。長妻兵曹は

「やっぱりですか!…はい解っております、神聖なる艦内でみだらな行為は決して致しません。約束します」

とこれも嬉しそうにほほ笑みながら応えた。平野少尉は何度も「よかったね、よかったね」と言って長妻兵曹の肩をポンポンたたいて祝意を表した。そして

「そういえば副砲分隊の野田…じゃなかった高田兵曹の結婚式がもうすぐじゃなかったかな?長妻兵曹も出席するんだよね」

と言って長妻兵曹は

「はい。確か来週の末になったと聞いとります。<大和>の中でずっと一緒に暮らしてきた仲ですけえ、居わってやりたい思います」

と言って少尉は「私の分も祝ってあげてきてね」というとじゃあ、またあとでと言って歩み去った。

長妻兵曹は、この<大和>に祝い事が次々来るのがうれしかった。前副長の出産、野田の結婚式そして自分の許嫁との再会。

大きな作戦もなくこれら嬉しい知らせを見聞きできるのは(ほんまに幸せなことじゃ。あとは…オトメチャンが幸せになってくれんとうちは困るのう)と思う長妻兵曹であった。

 

益川中佐以下の男性技術士官たちが最上甲板で、<大和>幹部たちと<松岡式防御兵器>の設置に関してあれこれ話し合っているそのはるか上、防空指揮所では桜本兵曹が一心に双眼鏡を除いて周囲の警戒に当たっているーー

 

            ・・・・・・・・・・・・・

お久しぶりです!お盆休みも終わってなんだかがっくりの私ですw。

さあ、いよいよ新章突入の『女だらけの大和』です。男性士官たちが入ってきていろいろ艦内も変化を遂げようとしています。気になるのは益川中佐の「嫁探し」ですがこれはどうなりますか…。

次回は高田佳子兵曹の結婚式です、ご期待ください!

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日々雑感 八月六日 

炎暑の昨今皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。

今日は72年目の広島原爆の日です。ああもう、72年もたってしまったのかと感慨深くしていらっしゃる方も多いのではないかと思います。

私も今まで、広島・長崎の原子爆弾に関する書物を読んできましたが半世紀以上たって久しいことになんだか最近では恐怖に似た思いを持つようになっています。

体験者が少なくなり、やがてあの惨禍を語ってくれる人が居なくなったときあの二つの原子爆弾で亡くなった多くの人たちが忘れ去られてしまうのではないかという思いです。

人は、忘れられたとき「二度死ぬ」と言います。

そんなことがあってはならない。

その思いを強く感じる今日この頃です。

 

日本を取り巻く世界情勢はだんだん厳しくなっていると思います。そんな中我々はどう日本を守ってゆけばいいのか、これも考えねばならない懸案事項です。しかも早急に。

先の大戦で戦死なさった多くの将兵の皆さんはこの日本の未来を憂いておられました、ご英霊の皆さんが心やすらかに鎮まれるように、彼らの後を引き継いでこの日本に生きている我々は日本をしっかり守らねばなりません。

あの戦争で亡くなった将兵の皆さんをともすれば「犬死」「無駄死に」という人もいますが、決してそんなことはありません。もし、無駄死にだとしたらそれは後世を生きる我々がそうさせているのではないかと思うのです。

周辺国の言いなりになって国のために戦って亡くなった人たちをまるで悪党呼ばわりするような国になり果てては、英霊は鎮まれません。

 

今朝、靖国神社に参拝してまいりました。

久しぶりの参拝でした。が、拝殿前に手を合わす人の中に、缶ジュースを口にくわえたまま手を合す人が居てそりゃないだろ、缶を置いてから手を合わせなさい…と言いたくなりました。

ご祭神の中には、炎熱の中水を求めて亡くなった方たちも数多くいらっしゃいます。そんなご祭神の前で…、私は悲しいというよりあきれ、怒りさえ覚えてしまいました。
DVC00081.jpg

 

今日は一冊の本を遊就館の売店で求めてきました。

<いつまでも、いつまでもお元気で  特攻隊員たちが遺した最後の言葉  知覧特攻平和会館編>
いつまでもいつまでもお元気で

陸軍の特攻で亡くなった方たちの故郷へあてた手紙が美しい風景写真とともに紹介されています。18,19くらいのまだ若い人たちがどんな思いでこの言葉をしたためたのかと思うとき、涙を禁じ得ません。どこかで見かけたらぜひ手に取ってみてください。

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吉報、そして男性士官たち 1

トレーラー停泊中の<大和>に、吉報とともに男性士官もやってきたーー

 

「梨賀艦長、佐藤副長―!」

という大声とともに第一艦橋に駆け込んできたのは普段は落ち着いている山口通信長。彼女は手にした電信用紙をわしづかみにして駆け込んできたのだ。ちょうど艦橋にいて窓外の風景に目を細めていた艦長と副長はその剣幕にびっくりして

「どうしました山口大佐!」

と叫んでいた。山口通信長はハアハアと息を荒げて、海図台の上に電信用紙をどんと置くとそのしわを丁寧に手のひらで延ばし、梨賀艦長と佐藤副長の顔を交互に見ると満面の笑みを浮かべ

「やった。やりましたよ艦長副長。山中中佐ご出産です、双子のお嬢さんだそうです!」

と言って、艦長と副長は「えっ!」と大声を上げるなり次の瞬間二人抱き合うようにして「よかったよかった。やったよ山中さんおめでとうー」とわめき始め、その大声が二の開いた伝声管から各所に伝わり、そして人づてに伝わり、「山中副長がご出産なさった、女の子の双子じゃそうな」と艦内大騒ぎになってしまった。

ハシビロコウのハッシー・デ・ラ・マツコに小犬のトメキチそして仔猫のニャマトも

「山中さんおめでとうー!私たちの足跡のついた岩田帯が役に立ったのね」

と大騒ぎして感涙にむせんだ。

 

その知らせを聞いて、防空指揮所にいた桜本兵曹、小泉兵曹麻生分隊士たちも手を取り合って喜んだ。「山中副長、きっとええおかあさんになるで、うちが保証するわ」と麻生分隊士が言えば小泉兵曹も

「ほりゃあ間違いないですのう。ほいでええ旦那様が付いておられますけえええご家庭を作られるでしょうねえ」

といい桜本兵曹も

「赤ちゃんのお顔、拝みたいものですのう」

と言って皆ウフフウフフと笑いあった。なんだかわからないが幸せ感が全身に充満してくるのを感じていた。そこに例の熱い女・松岡修子海軍中尉がやってくるなり

「皆さん聞きましたか、山中副長熱くなって双子の女の子を御安産だそうです。さあみんなも熱くなれよー、バンブー!」

と最後だけはよくわけのわからないことを言って手にしたラケットを振り回して走り去っていった。

「いつものことながら…」

と麻生分隊士が言うとそのあとを引き取るように桜本兵曹が

「ようわからんお人ですな」

と言って小泉兵曹は大笑いし次いで二人も大笑いした。やはり、幸せの気分が全身にみなぎっていた。

 

そんな、幸せ感が充満している<大和>に、とうとう呉海軍工廠からの男性技術士官たちがやってきた。みんなが大騒ぎした翌々日、内火艇に乗った男性士官たちはやってきた。

乗組員たちは当直などを除いて舷梯に立ち並びまるで山本大将でもお迎えするような雰囲気で、

「こりゃあまるで登舷礼みとうなね。まあこの艦に男性が集団で来るなん、ふつうあり得んことなけえねえ」

と誰がが言うとその周辺の何人かがうなずいた。乗組員の中には(この機会にぜひ男性士官と親密になって結婚に持ってゆきたい)と思うものも少なからずいる。何やら艦内には落ち着かない雰囲気がみなぎり始めている。

やがて内火艇が接舷し、男性士官五名が舷梯を上がってやってきた。その姿が舷門を通ったとき、乗組員嬢たちのあいだから声にならない感激が噴出したのを、舷門前で待っていた梨賀艦長たち幹部には感じ取れていた。

(どうか面倒ごとを起こさないでね)

とは、梨賀艦長以下すべての幹部たちの率直な感想である。

最初の男性士官―益川中佐―が姿を見せたとき、大半の兵隊・下士官嬢は(なんだ、オッサンじゃないか。ありゃ絶対妻帯者じゃな…ありゃいかんわい)とか(あがいなオッサン、恋の相手にはならんわい。もっと若いのおらんのかいな)などと大変失礼なことを想っている。

そしてすべての男性士官が艦長の前に居並んだ、その姿を見ていた長妻兵曹は思わず「えっ…」と小さく声を上げていた。

「どうしたんじゃね?」

と平野ヒラ女少尉が前を向いてまじめな顔のまま尋ねると長妻兵曹はこれも前を向いたまま

「あの中の、左から二番目の男性士官は、うちの婚約者によう似とってです。でも遠いけえようわからんなあ」

と言い、平野少尉は一瞬長妻兵曹のほうに顔を向けた。そして

「本当に婚約者か?本当なら後で紹介してくれる?」

と言った。長妻兵曹は憮然とした表情で

「紹介するんはええですけど、横取りせんでつかあさいね」

と語調も厳しくささやいた。平野少尉は慌てて

「そんな私は人の恋人を横取りなんかしませんよ、失礼な」

と言ってこれも憮然とした顔つきになってしまった。

航海科の小泉兵曹は防空指揮所で彼らを見たが

「はあ…うちの好みの人はおらんわい」

とあっさりあきらめ、桜本兵曹は「ほうね、ほりゃあ残念なねえ」と無機質な声で答えた。オトメチャンはもう「男性はこりごりじゃ、うちは男性なんぞと付き合いとうないわ。一生独り身で居った方が気楽でええ」と常々周囲に漏らしていた。それほど紅林の裏切り行為は彼女の心に大きな傷を残していたのであった。

松岡中尉が

「まああの人たちはわが帝国海軍の中でも数少ない男性士官、しかもエリートでしょうから小泉さんは相手にしてもらえないでしょうね」

というと小泉兵曹は松岡中尉をきっとにらんで

「分隊長、それはどういう意味でしょうかのう!」

と声を荒らげ、慌てた桜本兵曹や石川兵曹たちに寄ってたかって口をふさがれる始末。麻生分隊士が

「申し訳ありません松岡分隊長、彼女は」

と言いかけたのへ松岡中尉は「まあまあ、落ち着いて」と言ってから

「いや私もちょっと言葉が過ぎましたね、いくら本当のことでも言っていいことと悪いことがありますからね。ごめんね小泉さん」

と全く謝罪も反省もないことをべらべらしゃべった挙句

「では私は下へ行きますからね、ごきげんよう」

とラケットを担いで去ってしまった。その後姿を悪鬼の形相でにらみつけ小泉兵曹は

「ふんだ!このあほんだら!」

と悪態をついてそっぽを向いた。その子供っぽさに桜本兵曹も石川兵曹も、麻生分隊士までが下を向いて笑ってしまったのだった。

 

男性の技術士官一行は梨賀艦長、佐藤副長に案内され「まずはお部屋をご案内しましょう」と士官室二つをあてがわれた。梨賀艦長と佐藤副長は申し訳なさげに

「御二方とお三方でお使いいただくのでかなり窮屈な思いをさせてしまって申し訳ございません、数日中にはお一人ずつのお部屋を作っておきます」

と言い、益川中佐はそれこそ慌てて

「いやいやとんでもないことであります、われわれは居候の身ですから二つの部屋で十分であります。お心に感謝いたします」

と言い四人の男性士官たちも同意した。

副長は

「何か不都合がございましたら遠慮なくお申し出ください」

とほほ笑んだ。その副長に一人の若い士官がおずおずと、「あの…おうかがいしたいことがございます」と言って、梨賀艦長も佐藤副長も少なからず驚くことになるのであったーー

   (次回に続きます)

 

             ・・・・・・・・・・・・・・

山中中佐安産の報に喜びを隠せない<大和>将兵嬢たちです。そしていよいよお待ちかね?の男性士官の登場です。さて若い男性士官は何を副長に聞きたかったのでしょうか、次回をお楽しみに。

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プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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