2016年08月|女だらけの戦艦大和・総員配置良し!

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オトメチャンのあの袋

2016.08.30(23:42) 1125

―桜本兵曹は、主計科長から「アレを見つけたらすぐに連絡するように」と厳命されていた――

 

桜本兵曹は双眼鏡を湾口から水平線に向け、こちらへ向かう艦艇を鑑別していた。アレは「全海軍将兵のあこがれの艦艇じゃけえねえ。どこへ行っても引っ張りだこじゃ。ほいで…アレが来たらうちは久々にしたいことがあるわい」と思いながら。

アレ=「給糧艦間宮」である。

昨日石多主計長が防空指揮所に、桜本兵曹を直々に訪ねてきて

「桜本兵曹の素晴らしい見張眼に頼るしかない。出遅れては『大和』の恥になる。だからどこの艦よりいの一番に『間宮』を発見して教えてほしい」

と言って桜本兵曹の肩に手を置いて頼んだのだ。

桜本兵曹は頬を染めて

「はいっ。桜本兵曹、命に代えてもいの一番に「間宮」を発見いたします」

と宣言した。石多主計長は満足そうにうなずくと

「頼みますよ。『間宮』は早ければ今日中に、遅くとも明後日までに水島に入港予定と聞いているからそう待つこともないとは思うが…兵曹には面倒かけてすまないが、ほかに頼める者はいないのでね」

と言っていよいよ桜本兵曹は緊張した。

主計長が出てゆくと兵曹は双眼鏡に取りつき見張を始めた。食事もとらず指揮所に立っている。

『間宮』はじめ、帝国海軍の給糧艦の艦影はすっかり頭に入っている兵曹である、見逃しも見落としもあり得ない。あってはいけない。

(早う来い、『間宮』。今回も何かええ物持って来とるんじゃろう?早う来い。早う)

心の中で念仏のように繰り返す桜本兵曹である――

 

翌日の昼食時間も、桜本兵曹は姿を現さなかった。小泉兵曹が「桜本はどこ行ったんじゃ?」と尋ねると石川兵曹が

「主計長に頼まれてずうっと指揮所で見張をしとってです。飯はいらん、言うとられましたが昨日からですけえ…心配です」

と言った。皆が「どんとな任務なんじゃろう、飯もいらんいうて体がもたんで?後で握り飯を持って行かんといけんね」とざわつきだしたのを小泉兵曹が

「やかましいわい!」と一喝した後、

「またあの野郎、一人で手柄たてようとしとってなあね。主計長も何であがいなおなごに物を頼むんじゃろう、見張りならこのうちだってしっかりできるいうんに」

とぶつぶつ文句を言った。

それを聞きつけた亀井上水は

「そんとなことよう言うわい。小泉兵曹なんぞ桜本兵曹の足元にも及ばんくせに。よう言うわい。主計長者じゃてその辺ようわかっとるけえ信用おける桜本兵曹に頼んだんじゃろうが…ねえ?」

と小声で、独り言のように酒井水兵長にささやいた。酒井水兵長がそっとうなずいたとき。

小泉兵曹の鋭い視線が亀井上水を射抜いた。いきなり亀井上水の胸ぐらをひっつかむなり

「聞こえたぞ亀井、貴様いったい誰の味方じゃ!貴様はうちの班の人間じゃろうが、そがあに桜本がええなら配置換えしてやるけえきちんと言えや!」

と怒鳴り、次の瞬間その頬を思いっきりぶん殴っていた。

亀井上水は椅子から転げ落ちて、あわてて酒井水兵長が助け起こした。皆が批判的な視線を小泉兵曹に投げると小泉兵曹はさらに

「なんねその目は!貴様らふざけよって…ええか貴様今夜甲板整列じゃ」

と怒鳴った其の時、「なにを騒ぎよんね」と石場兵曹長が入ってきた。石場兵曹長は准士官室で食事を終えて航海科の居住区に来たのだった、彼女にとって古巣であるから。

「あ、石場兵曹長」と石川兵曹が立ち上がり事の顛末を話した。石場兵曹長の<暗黒のひとえまぶた>が重々しく降り、兵曹長は

「小泉さん」

と呼びかけた。上官にはさすがに逆らえないと見たか小泉兵曹は「はい」と言って石場兵曹長の前に立った。石場兵曹長は

「なにを貴様はそげえにカリカリしとってかね?最近貴様は変じゃで。やたらと桜本兵曹に突っかかるような気がしてならんが、貴様と桜本兵曹になんぞあったんか?あったなら言え、話を聞いてやるけえ。ほいで下のものからそんとなこと言われるなんぞ貴様の気がぬけとるええ証拠じゃな。よう我が身を振り返れ」

と腕組みして言った、そのまぶたは重く降りたままである。小泉兵曹は、はあ、と返事をしたが石場兵曹長は

「はあ、やないわい。きちんとせえや。人のことをあれこれする前に貴様自身をあれこれせえや。貴様…そんとなことばかりしとると、この先の昇進にかかわるで!」

と言って小泉の胸をどんと突くと「貴様今夜巡検後うちのところへ来るか?ああ!?かわいがってあげましょうかのう!」と怒鳴って踵を返して出て行った。小泉兵曹はさすがに身を震わして「いやじゃ…石場兵曹長のとこへなんぞ一人ではよう行けんで」と言って、その場の皆は下を向いてこっそり笑った。

 

そんなことが起きているのも知らず桜本兵曹オトメチャンは指揮所で双眼鏡をのぞいている。彼女の居る前檣楼のずっと下では主計科の下士官兵嬢たちが数名交代で集まっていざという時すぐカッターを漕ぎ出せるよう待機している。彼女たちは時折指揮所を見上げては「まだ報せはないねえ」「まだかのう、『間宮』。いの一番に乗り込んであれこれ買い付けんとな」などと話している。

下でそんな話をしているとき、指揮所に石川兵曹が入ってきて「班長、」と声をかけた。桜本兵曹は双眼鏡から目を離さないままで

「おう、石川兵曹ね。どうしたんね」

と尋ねた。班長のそばに立って石川兵曹は

「握り飯をお持ちしました…班長昼飯を食うとらんでしょう?じゃけえお持ちしました」

と言って桜本兵曹の左腕を軽く叩いて手を出すよう促した。桜本兵曹はそれを解っているから左手を伸ばした、その手に石川兵曹は握り飯を持たせた。

「ありがとう。すまんねえ。こげえなことさせてしもうて…ほいでも主計長直々のお願いなけえしっかりやらんとね」

桜本兵曹はそういって石川兵曹に礼を言うと双眼鏡を見ながら器用に握り飯を食べた。石川兵曹はそのそばに立ったまま周囲を見た。今日もトレーラー環礁はどこまでも青く澄んでいる。そして空の青さもまた素晴らしいほどにどこまでも澄んでいる。その二つの青さに石川兵曹が見とれている間に桜本兵曹は握り飯を食べ終えた。

「ごちそうさま、石川兵曹ありがとうな」

双眼鏡から目を離さず桜本兵曹は礼を言い、石川二等兵曹は「とんでもないことです。私は班長のお役に立ててうれしいです」と言ってほほ笑んだ。

その次の瞬間、桜本兵曹は手近の伝声管に

「主計長、『間宮』入港、『間宮』入港ーっ」

と叫び、足元に置いてあった手旗の赤を手にすると下にいる主計課員嬢に向けてそれを振りながら

「『間宮』が来たでえー、主計長にお知らせしたけえ準備せえやあ!」

と怒鳴った。石川兵曹が囲いに手をかけて下を見ると主計嬢たちが「ありがとー!行ってくるけえねー」とこちらに叫び返しているのが見えた。

その彼女たちに手を振ってから体をひっこめた桜本兵曹は

「ほい、これで任務完了じゃ…でなあ、石川兵曹。うちはちいと外すけえあと頼むわ。もうちいとしたら酒井水兵長が来るけえ」

と言ってから右舷を見て「ありゃ…まだ誰も来とらん。小泉のやつまたたるんどってなねえ。も一度分隊士に相談せんといけんねえ」と独り言ちた。その時亀井上水が慌ててやってきて、桜本兵曹たちがいるのに気が付くと

「すみません。遅うなってしもうて…気を付けます」

と謝り、桜本兵曹は「気ぃつける言うて…前にもそがいに言うとったじゃないね?ええ加減きちんとせんとえらいことなるで?また小泉がなんか言うとるんか?」といさめた。亀井上水は頭を下げて「ごめんなさい。ほいでも今日のはうちらの班長は関係ありませんけえ、きょうはうちが時間を待ちごうてただけですけえ」と言ったので桜本兵曹は

「そうか…ほんならホントに気ぃ付けえや」

と言って指揮所を出て行った。

そのころには、主計長を先頭に主計科嬢たちはランチやカッターに乗り込んで『間宮』を目指して『大和』を離れていた…

 

主計科嬢たちが、ランチやカッターそしてたくさんの荷物を積んだ団平船に分乗して『間宮』から帰ってきた。石多主計長は甲板にいた桜本兵曹に「今回もいの一番に『間宮』に斬り込めたよ!今日はいい品物がたくさんあってね。むろん、ヨウカンもね。団平船にたくさん載せてきたよ。載せきらない分は明日、小型船が持ってくるように手配した…オトメチャンありがとうね」と言って兵曹の方をやさしく叩いて礼を言った。

桜本兵曹は「いえそんな…うちでお役に立つならどんとなことでも致しますけえ」と言っていったんその場を離れた。

(さて。このあとじゃ)

桜本兵曹の瞳の奥がきらり、光った…。

 

主計科嬢たちが団平船から荷物を下ろすのを手すきの乗組員嬢たちも手伝った。主計倉庫や冷蔵庫などへ運ぶ途中、要所要所に主計科下士官嬢たちが立って見張りをしている。これはいわゆる<ギンバイ>行為をさせないように見張っているのである。

目を光らす主計科下士官嬢に気後れして、なかなかギンバイできないものも多い中――

 

「桜本兵曹、その袋は何でありますかのう?」

分厚い布で作ったきんちゃく袋をぶらーんぶらーんと重そうに振りながら歩く桜本兵曹に、酒井水兵長が尋ねた。すると桜本兵曹は怖い顔を作って見せると酒井水兵長を引き寄せ

「ええか。このことはだれにも言うちゃいけんで。誰かに言うたりしたらバッター制裁じゃ済まんけえな。ええな」

と軽く脅してから「これじゃ」と言ってそっと袋の口を開けて中を見せた。

「うわ!」

と小さく叫んだ酒井水兵長に「しっ、大声出したらいけん」と注意してから桜本兵曹は「わかったじゃろ?そういうことじゃ」というと袋の口を閉めて、また袋をぶらぶらさせながら去っていった。

「さすがじゃなあ、桜本兵曹。話には聞いとったがやっぱしあの人は名手じゃな。うん。うちも教えてほしいもんじゃ。それにしてもでかい袋じゃなあ」

酒井水兵長は独り言ちて感心している。

酒井は何に関心をしたのか。それは桜本兵曹のあの袋の中身である。中身は、きょう主計科が仕入れて艦内に収納したばかりの『間宮』より買い付けた<羊羹>一棹…しかも大きい…に、<パイン>、それに<キャラメル>が五箱、さらに<牛缶>が三缶。

そう、桜本兵曹は<ギンバイの名手>として実は艦内に名をはせている一人であった。彼女の持っていた袋は通称・ギンバイ袋。ある程度年季の入った下士官嬢たちが半ば公然と持っている袋である。

桜本兵曹は主計科嬢たちが運び込んだ品物を、誰も気が付かないうちにさらりとギンバイしていたのであった。

これにはあの小泉兵曹も

「あれだけはうちはオトメチャンにかなわん。昔は一緒にギンバイしとったがいつのまにかあいつ、一人で腕を上げよった。うちも頑張らんといけんわい」

とお手上げ状態である。

 

今夜も当直明けにひとり暗い甲板で波の音を聞き、夜空の星を眺めつつ羊羹をかじるオトメチャンの姿があったーー

 

             ・・・・・・・・・・・・・・・

なんと。

桜本オトメチャンは単なる手弱女ではなかったのです!ギンバイの名手だったとは(;'')…。見張眼のすごさでも一目置かれているオトメチャン。こういうことでも階級が下の兵隊嬢たちのあこがれとなっているような???

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SQUALL 愛の嵐3 解決編

2016.08.26(23:29) 1124

激しいスコールの中、佐野のかすかにふるえる手が高田兵曹の軍装のボタンにかかったーー

 

再び稲妻がまぶしく一閃し、激しい雷鳴が響き渡った。それを合図のように佐野は高田兵曹の濡れた軍装を一気に脱がせてしまった。雨水を含んで重くなった二種軍装の上下が床にドスッと音を立てて落ちた。その向こうに兵曹の軍帽が落ちている。

乳当てと下帯だけになった高田佳子兵曹を片手で抱きしめながら佐野は自分も濡れた服を脱いだ、時折右手と左手を入れ替えて、しかしそのどちらかの手はしっかり佳子を抱きしめて離さない。

やっと佐野は自分の濡れた服をすべて脱ぎ去ると、激しい雨音と雷鳴を背後にして佳子を床に寝かせた。佳子兵曹は胸の鼓動が高鳴るのを感じ、目を閉じている。佐野はあおむけに寝かせた佳子の乳当てをそっと取った。豊かな乳房が締め付けを解かれて佐野の目の前にやさしく揺蕩う。それを見たとたん佐野は

「佳子さん」

と叫ぶように言うと下帯のひもに手をかけ一気に解いた。佳子がアッと思う間もなく彼女の両足は開かされ、その間に佐野の腰が入る。佐野の熱い両手が彼女の乳房をつかみ、その先をもみつぶす。佳子が悲鳴に似た声を上げ、するとその声に刺激されたかのように佐野は夢中で彼女を抱きしめると

「いいね?―佳子」

とささやいた。佳子がうなずくと、佐野はよしこ、佳子と連呼しながら彼女の中に突き進んできた。佳子はその激しさと快感に声を上げて佐野はさらに進む。

スコールの激しさに誘発されたかの如く、二人は互いを貪欲に求め合った。佐野は佳子の奥へ奥へと突き進み、その豊かな乳房をもみしだきその先を噛むように舐った。

佳子は喘ぎながら彼の腰を両足で挟むようにして彼を自分の奥へといざなう。もっと奥へ、もっとその先へ…二人は互いをむさぼるようにして愛を確かめ合う。

屋根を打つ激しい雨の音も、鳴り響く雷鳴ももう二人には聞こえない。今や二人が嵐そのものである。

二人は汗を滴らせ、絡み合う。スコールの激しさに呼応するように二人の行為も激しさを増した。

佐野は佳子を押さえつけ攻め立てながら

「結婚…してくれますね」

と言った。ハアハアと息遣いが激しい。その佐野を見上げ佳子は潤んだ瞳で

「はい…妻にしてください」

と答え、すると佐野は「ありがとう…早く、一日も早く夫婦になりましょう」というなり彼女を突き上げた。

ああーっ、と佳子が叫び佐野は佳子に締め付けられてーー終わった。

 

終わったあと二人は天井を見つめたまま寝ていた。佐野は佳子に腕枕して、片手は彼女の胸に当てている。疲れませんか、という佳子に佐野は「平気ですよ。―-とても素敵だった」といい佳子は頬を染めた。そして少し悲し気に佐野を見つめると

「私も。でも佐野さん、ごめんなさい。私…初めてじゃなくて」

と告白した。が、佐野は微笑んで佳子の豊かな乳房を撫でながら

「私だって初めてじゃないですからおあいこです。そんなこと問題じゃあない。私はあなたをこの先ずっと愛してゆきます、なにがあろうと。だからあなたも私をずっと愛してくださいね」

といい、佳子に口づけをした。

佳子の全身に幸せが走り抜け、佐野の背中に手を回し抱きしめた。すると佐野のうちにさらに佳子への愛情が沸き上がり、彼はもう一度佳子の中へ入っていったのだった。

 

長い嵐がやっとすぎ去り、二人は行為の後始末をした後濡れた衣服を乾かすべく服を広げて干した。

なかなか乾きそうもないがその時間さえ愛し合う二人には大事な時間である。

高田兵曹は

「今日は佐野さんはどちらにお泊まりんさるんですか?」

と尋ねた。佐野は「特に決めてないです、安い宿を見つけて泊まるつもりです」と言ったので兵曹は「ほんならうちの〈家〉に泊まりませんか?部屋はいくつもありますけえ」と言って佐野を驚かせた。そこで兵曹は佐野に詳しい話をし、

「それなら申し訳ないが泊めてください」

と佐野は喜んだ。

 

二人は服があらかた乾いたころを見計らって、衣服を身に着け使ったものを仕舞うと小屋を出た。ここに来る前と今では(うちはどこかちごうてしまったんじゃないじゃろうか)と思う高田兵曹であった。正直な話、今まで何度か男性と枕を交わしたことがあったが、単にたまった欲情を処理するためのもので愛情などなかった行為であった。

しかし今日の行為は愛情の裏打ちのあるもの。

今までのそれとは全く異質なものである。

「佐野さん。ありがとうございます、うちあなたにずっとついていきます」

小屋の外で兵曹はそういい、佐野は答える代わりに兵曹を力いっぱい抱きしめそしてくちづけた。その二人をトレーラーの夕日がまぶしく照らした。

 

二人は町の銭湯に寄って体を綺麗にして、夜のとばりがすっかり降りてから家に帰った。

仲間たちはもうそれぞれの部屋に引き上げて眠ったのか家の中は静かである。高田兵曹は佐野を二階の部屋に案内した。佐野に寝間着を渡してから兵曹は別の部屋で寝間着に着替えた。そして部屋に戻ると佐野は「今夜はここで二人ゆっくり過ごしましょう。私は明日も休みですから」といい兵曹は恥ずかし気にうなずいた。

薄い布団を延べ、二人はその上に座って小さな声で話をした。兵曹は

「早速休暇が終わったら結婚許可願を出します。受理されましたらお知らせしますけえ。佐野さんはまだしばらくトレーラにいらっしゃるのでしょう?」

と言い佐野はうなずいた、「小泉商店との話し合いがまだありますから当分居ります…だから佳子さんが上陸するときには教えてくださいね、待っていますから」。

高田兵曹が「うれしい」というと佐野は彼女をいきなり抱きしめた。佐野は兵曹の寝間着のひもを解き、その素肌をあらわにした。

「綺麗だ」

そういって佐野は、兵曹の体に手を這わせ始める。最初はかすかだった兵曹の喘ぎが高まると佐野は、彼女の中に自分を突き入れ…二人はまたも荒れ狂う「愛の嵐」にその身を投じたのだった。

翌朝、一階の部屋から出てきた『大和』の仲間、機関科の堤、石丸の両兵曹は顔を合わせるなり「昨夜二階はえらい大嵐じゃったねえ!高田兵曹いよいよ…かいね!」と言って笑いあったのを、高田兵曹は知らない――

 

            ・・・・・・・・・・・・・・・

スコールの中で始まった秘め事。

二人の愛は固く結ばれました。さあ二人が夫婦として新しい人生を歩き始める日ももうそこまで来ています!

 

『SQUALL』松田聖子 大好きなアルバムの中から『SQUALL』。これを聞いてこの話を思いつきました。


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SQUALL 愛の嵐 2

2016.08.24(23:01) 1123

高田兵曹と佐野は互いに小走りに駆け寄ったーー

 

「佐野さん、お久しぶりです。今日はありがとうございます」

と高田兵曹は言って敬礼した。第二種軍装も凛々しい高田の敬礼を嬉しそうに受けた佐野基樹は頭を深々と下げ、そして顔を上げると

「今日という日をずっと待っていました。会いたかった…高田さん」

と言って、敬礼の手を下ろした高田兵曹の両手をしっかり握った。手を握られて恥ずかしげにうつむいた高田兵曹をいとおしげに見つめた佐野に彼女は気を取り直して

「さあ佐野さん、こちらのお席にどうぞ」

と席にいざなった。ありがとう、こんないい席をと佐野は感激しながらまず、高田兵曹の椅子を引いて「どうぞ。欧米ではレディーファースト、というんだそうですよ」と言って微笑み、高田兵曹はどぎまぎしながら「ではお言葉に甘えまして」と言って座った。佐野が正面に座り、ウエイターがメニューを持ってきた。二人は腹が減っていたので幾品か注文した。

ウエイターが去ると佐野は

「前にグアムで出会った時よりずっときれいになりましたね。それに凛々しい…私はうれしいですよ高田さん」

と言ってほほを紅く染めた。高田兵曹は恥ずかしくてたまらない、それでも佐野を見つめて

「ありがとう佐野さん。私あれからずっと佐野さんのこと考えていました。で、きょうはきちんとお答えしたいと思いまして」

と言ってその頬が緊張を帯びた。佐野も緊張の表情を見せた。高田兵曹は一息大きく深呼吸するとまっすぐに佐野を見つめて、言った

「佐野さん。こんな私でもお嫁さんにしてくださいますか」

と――。

みるみるうちに佐野の瞳に涙があふれ、やがて頬を伝わって落ちた。佐野は

「ありがとう高田さん。わたしは歳ばかり食って至らないところばかりの男ですが、そんな男でもよかったらぜひ嫁に来てください」

と感激に身を震わしながら言った。

そのうち注文の料理が並び、二人は箸をとった。佐野が「まるで夫婦になったみたいですね…というかもう夫婦みたいなものかな」と言って高田は一層恥ずかしくなって下を向いてしまった。

が、はっと顔を上げると佐野を見つめて

「佐野さん。その…あの…、うちらの結婚なんですがその…うちらはええんですがその、佐野さんのご両親様はどが委に思うてらっしゃるんじゃろうとうちは心配なんですが」

と言った。これこそ高田兵曹の唯一の心配事であった。

すると佐野は笑いだして

「いやだなあ高田さん、私はもういい歳のおっさんですよ?自分のことは自分で決めます。それにね、私にはもう両親はいません。三年前に相次いで病気で亡くなりました。私の係累は兄だけです。その兄に話をしましたが喜んでくれましたよ」

と言った。兵曹は少し安心したような顔になったがやはりどこか不安そうである。佐野は箸をおくと

「高田さんの心配事はよくわかっています。でもそんなこと私はまったく気にしていません。兄にも話しましたが兄も気にしていませんよ。だから高田さんは何も気にしないで嫁に来て下さればいいんですよ」

としっかり言い切った。

「はい…」

と高田兵曹は言って泣き出した。うれしかった。自分が親と信じていた人たちの子供ではないと知ったあの時から彼女は自分を恥じていた。口には出さないし、友人などに対しては強い時分を見せてきたが内心では自分の生まれを恥じ、こんな自分が佐野の妻になってよいものかと呻吟してきた。やはり自分はアノ時の女衒の男に従って外地に行き、体を売って生きるべきだったのかもしれないとも考えた。

しかしその思いを払しょくしてくれた佐野の言葉に、今本当に前を向いて生きる力が彼女の中に湧き出てきたのだ。

「ありがとうございます佐野さん。私あなたに一生ついてゆきますけえ」

そういう高田兵曹に佐野は優しく微笑み「私はあなたを一生、離しませんからね。幸せにします」と誓った。

 

二人は<ニッポン>で十分腹ごしらえをした後、「うちがトレーラー水島をご案内します」と高田兵曹が言って、トレーラーは初めての佐野にあれこれレクチャーをした。

海軍将兵嬢たちの憩いの場の丘へも案内した。ゆっくり上り、頂上に着いたときの佐野の喜びように高田兵曹はうれしくなった。佐野は彼には珍しく有頂天になって

「ほらあれ、あれは『大和』でしょう?それからあっちにいるのは何だろう、巡洋艦ですか?そして向こうに見えるのは海軍工廠ですね、とすると『小泉商店トレーラー工場』はどっちになるんだったっけかな?」

とあちこち指さして高田兵曹に話しかける。

兵曹は微笑みながらその様子を見つめた。この人がこんなにはしゃぐのを私は初めて見た、そんな自分を見せてくれるなんて、うれしいことだと思った。

ならばうちも本当のうちを見せんならんね。

そう思って高田兵曹がふっと微笑んだとき。

「あ、向こうに雲が沸いてきましたね」

と佐野が指さしたほうを見れば、スコールでも来るのだろうか。雨雲がこちらへ向かって広がるのがわかった。

「こりゃいけんわい。ああ、せっかくこの後海に行こう思うたんにねえ―-佐野さん、こりゃスコールが来ますけえどこぞで雨宿りしましょう」

高田兵曹のやや緊張した声に佐野もうなずいて「ではどこがいいでしょうか…高田さん心当たりはありますか」と尋ねる。兵曹のあの家には遠すぎる、となると、

「この丘を下ったところに『大和農園』があります。そこに雨宿りできるようなところがある言うて聞いたことがありますけえ行きましょう。今はだれも農園には来とらんですけえ、邪魔されることはない思いますよ」

高田兵曹は最後にそう付け加えていたずらっぽく笑った。佐野も笑った。

そして二人は「急げー、最大戦速―っ」と叫びながら笑いながら丘を巻く道を駆け下りて行った。

 

農園まで行き着かぬうちに二人は雨に降りこめられた。途中行きかう海軍将兵嬢の中には『大和』の乗員もいたはずだが互いにそれどころではなく、繁華街の通りを歩く人々はみな、算を乱してなじみの店―喫茶店や食堂―に駆け込むのであった。

高田兵曹と佐野は大通りを抜けて、『大和農園』と書かれた門柱のあいだを走り抜け、農園内の休憩小屋に飛び込んだ時はもう、二人は全身ずぶ濡れ状態であった。

「いやはや、話には聞いてましたがすごいものですね、スコール」

佐野が感心したように言ってハンカチを取り出し高田兵曹の肩を拭いたがそのハンカチさえもうびっしょり。兵曹はありがとう佐野さん、と言って小屋の隅の扉を開けた。そこにはいくらかのタオルの類が入っている。それを二つ三つ取り出した兵曹はその一つで佐野の雨に濡れた首筋をそっと拭こうとした。

するといきなり、佐野が兵曹を抱きしめてきた。はっとして身を固くした兵曹の耳に、佐野が熱くささやいたーー

「私は…あなたがほしい」と。

高田兵曹は佐野の背中に両手を回し、彼の胸にその頬をつけた。

稲妻が一閃し、それを合図に周囲が一層暗くなった。雨粒が屋根に派手な音を立ててぶつかり、二人の息遣いさえ聞こえないほど。

佐野のかすかにふるえる右手が…兵曹の二種軍装のボタンをはずし始めたーー

  (次回に続きます)

 

              ・・・・・・・・・・・・・・・・

楽しいデートが雨に邪魔されて…と思ったらなんとなんと。

さあ高田兵曹と佐野基樹さん、この後どうなる?胸の高鳴りを押さえられない次回をお楽しみに!


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SQUALL 愛の嵐 1

2016.08.22(23:41) 1122

トレーラー水島では『大和』防空指揮所の桜本兵曹が「スコール近し!」と双眼鏡を見つつ叫び、艦内に「スコール浴び方用意!」の号令がかけられた。一斉に在艦の将兵嬢たちが裸で飛び出してきて降り出した雨を全身に浴びる――

 

女だらけの『大和』ほかの艦艇で多くの将兵嬢たちが天然のシャワーを浴びているころ、一週間の休暇を貰って上陸していたのは高田佳子兵曹である。彼女はかつての「蝙蝠事件」で休養しそれが明けてから長い休暇を貰っていなかった。否、取らなかったのである。入湯上陸で一晩ほどの上陸を数回していたくらいである。それが今回上司の生方中尉に

「そろそろ休暇を取りなさい。もう気にしなくていいから」

と言われ休暇をとることにした。ちょうど、恋仲の佐野基樹から〈トレーラーに来ています。今度広島の『小泉商店』さんとわが『南洋新興』は合弁会社を立ち上げることになり、トレーラーの工場を拝見しにまいります。出来ましたらお会いしたいです〉という手紙をもらっていたのでちょうどよい機会でもあった。

佐野のことはもう、生方中尉に話してあったので中尉はわがことのように喜んでくれて

「そう!そりゃよかった。佐野さんはトレーラーは初めてなんでしょう?なら水島の名所を案内してあげたらいいよ」

と言ってくれた。最近生方中尉のご機(機嫌のこと)が良いのは、縁談がまとまりそうだからであるのを高田兵曹は知っていた。高田兵曹ははい、と言ってからそっと「生方中尉もおめでたごとがお近いようですね」とささやくと果たして生方中尉は顔を真っ赤に染めて

「ありゃー!いやだわあ~高田兵曹ったら!」

と言って高田兵曹の背中と言わず肩と言わずバンバンひっぱたいて喜びを現した。高田兵曹は「あたた…。えかったですねえ生方中尉、どうか幸せになってつかあさい」と痛がりながらも喜んだ。生方中尉は「お互いにね」と言ってウフフ、ウフフと気味の悪い笑いをしながら高田兵曹を見送ってくれたのだった。

 

上陸した高田兵曹はまず、以前に日本人家族から預かった民家に向かった。いつぞや野田(当時)兵曹はここで腹を壊し動けなくなって生方中尉と医務科の名淵大尉に救われたことがあった。その時は「ごみ屋敷」と言われるほど汚かったが友人たちの手を借りて何とかきれいにした。そして先月高田兵曹宛てにこの民家の持ち主から手紙が来て、もうトレーラーに戻ることがないので家は自由にしてほしい、売るもよしあなたが使うもよし、とあった。

高田兵曹は家が大きすぎるので近い将来ここを「俱楽部」として使ってもらおうと思っている。誰か現地の人をここに住まわせて寮母として働いてもらってもいい。いろいろと彼女は考えているようである。

その民家に高田兵曹は来て、玄関の鍵を開けた。久々なので家の中に空気を通すつもりである。

兵曹は海に面した側の大きな窓を思い切り開けた。抜けるような青空、涼しい海風が家の中を吹き渡った。

深呼吸して、一人ほほ笑む高田兵曹の脳裏に、佐野基樹の笑顔が浮かんだ。

(明日、逢える)

兵曹の心は弾んだ。佐野はもうトレーラにきてはいるが「小泉商店」の工場視察が忙しく、明日明後日の二日間が休みなので逢えると嬉しそうな文字で手紙に書いていた。

兵曹はその場に座ると懐から佐野の手紙を取り出し、便箋を見つめた。几帳面な佐野の文字、その文字がまるで弾むように書かれている。

(うれしいんですね…私もうれしい。佐野さん、あなたに逢えるんが)

高田兵曹は微笑むと、手紙を元の通りに懐に仕舞った。一人ほほ笑んでいると、家の横の道を通りかかった『大和』の機関科の兵曹嬢二人が

「あれ?高田さんかね!ここ高田さんちかね?」

と声をかけてきたので「ほうよ、あがりんさい」と言って二人を家に招じ入れたのだった。

機関科の兵曹嬢たちもいつかの休暇をもらったばかりであったが、「どこへ泊まろうか考えとってじゃ。いつもの宿はいっぱい言うて泊まれそうもないけえのう」というので高田兵曹は

「ほんならここに泊まってあちこち行ったらええ。ここはうちがもろうた家じゃけえ好きにつこうてええよ。うちは明日明後日、ちいと逢う人がおってなけえ、戻るんは遅うなるかも知らん。どこでもあいとる部屋、つこうてくれて構わんけえね」

と言って機関科兵曹嬢の一人―堤兵曹―は「ありゃ!ええ人と逢うんかね?」と言って高田兵曹は頬を染めてうなずいた。

もう一人、石丸兵曹は「ええねえー、ほんなら夜はじゃませんように静かに帰って来んといけんねー」と言って三人は笑った。

その晩は三人で楽しく語り合い、翌日の午前中高田兵曹が出かける前堤兵曹は「高田さんはどこの部屋を使うんかね?教えてといてくれんかね、もしもかちあったら気まずいけえね。高田さんの家なけえ、ええ部屋とってや」と笑って言ったので「ほうじゃね、ほんなら…」と高田兵曹は海側の二階の一室を「ほんならうちはここを使うわ」と決めた。

そのあと高田兵曹は、佐野との約束の場所へと歩き出した。

約束の場所は、まだトレーラーをよく知らない佐野でもわかるようにと、「水島大通り」のレストラン、<ニッポン>にした。高田兵曹は佐野より早く着いて待っている必要があるので急ぎ足になって<ニッポン>に急いだ。

 

<ニッポン>に着くとまだ佐野は来ていなく、高田兵曹は「あとから一人来ますけえ。出来たら静かに食事のできる場所を願います」と言ってウエイターは快く奥まった場所を案内してくれた。ほかからの視線を遮る大きな衝立があり、個室のような雰囲気を醸していて兵曹は気に入った。

高田兵曹は衝立のそばに立って、佐野の訪いを待った。

ほどなく、佐野がレストランのドアを開けて入ってきた。すぐに高田兵曹は

「佐野さん。こちらです!」

と声をかけ、佐野は「高田さん!」と嬉しそうな笑顔でこちらに大股に歩み寄ってきた。

「佐野さん…!」

高田兵曹の顔にも喜びがあふれたーー  

  (次回に続きます)

 

           ・・・・・・・・・・・・・・

横須賀『武蔵』の後はトレーラー『大和』のお話です。高田兵曹のお相手・佐野基樹さんがトレーラーにやってきました。いろいろあった高田兵曹にいよいよ幸せが舞い降りてきます…次回をお楽しみに!
『南洋新興』は実在の<南洋興発>をモデルにしました。


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横須賀の花嫁・仮谷航海長 4<はじまり> 解決編

2016.08.18(10:27) 1121

仮谷航海長は、夫となった鍛冶屋健吾中佐に布団の敷かれた部屋に押し込まれるような形になったーー

 

「あ、あのっ!」

と実子は声を上げたが健吾はまじめな顔で黙ったまま、実子を抱きしめ布団の上に押し込むようにした。布団の上に腰を落とし、健吾の馬鹿力であおむけに倒された実子はいよいよその時が来たのだと覚悟を決めた。

が、その前にすることがある。実子は「健吾さん…あの、少しだけ、少しだけ待っていただけませんか」と小さな声で言うと健吾はふっと手の力を緩めた。そこで実子は起き上がり布団の上から畳に降りるとその場に三つ指ついて

「旦那様…今日からどうぞよろしくお願いいたします。ふつつかな、何もできない私ですがどうぞ末永くよろしくお願い申し上げます」

と初夜の挨拶をした。すると健吾は相好を崩して

「おお…私としたことが」

とこれも布団から降りると正座をして

「こちらこそよろしくお願いします。今回は私が急ぎすぎてあなたには迷惑をかけてしまいました。でも私のところに嫁いできてくれてありがとう。長い人生一緒に歩いてゆこうね」

というと頭を下げ、実子ももう一度頭を深く下げた。

挨拶が終わると、健吾は待ちかねたように実子にとびかかるとその体を布団の上に押し倒した。そして抱きしめた。実子の全身に緊張が走った。

その時。

健吾の腹がぐぅーっと鳴った。はっとした顔になった健吾に、実子がその胸の下から「あの、どうなさいました?」と尋ねた、すると健吾は「―腹が…減ってしまいました」と言って思わず二人は笑った。

実子は「女将さんがおにぎりを用意してくださっていますからいただきましょう」といい、健吾は身を起こすと実子をやさしく抱き起し、元の部屋に戻った。

大きな木箱の中に握り飯がいくつも入っていて、茶の入った水筒も用意されていて二人は手を合わせてそれをいただいた。

「美味い」「美味しい」

二人は小さく声に出して顔を見合わせてほほ笑みあった。披露宴でも食事は出たものの、招待客の対応に追われたり、実子は着慣れない和服の帯で締めつけられてそれほど食べられなかったので女将のこの心つくしは大変うれしいものだった。

夢中で食べて、やっと人心地ついた二人は茶を飲んでほっと息をついた。互いに微笑みあったそのあと、健吾は突然まじめな顔になると

「実子さん。わたしの…わたしの妻になってください」

と言った、実子はハテ、もう私はあなたの妻になったのにと思ったその瞬間、健吾は彼女を抱き上げると次の間に入り、布団の上に実子を横たえるとしっかり抱きしめた。

実子の、「その時」が来たーー

 

健吾はまじめな顔で実子の寝間着のひもを解いた。実子は恥ずかしくてたまらない。彼女は今までそういう経験がないのだ。(女海軍は『百戦錬磨』だと思われてるんだろうなあ…私そんなじゃないんだけど)と実子は困っている、そんな彼女の寝間着の前が広げられた。胸から腹、下帯をつけた下半身まであらわになった。

実子は恥ずかしさから横を向いてしまった。その実子の顔をやさしくこちらに向けると健吾はそっと口づけた。やがて彼の唇は、実子のそれから離れた。そして実子の肩から下へ降りてきた。

かすかにふるえる実子の胸のその先を、そっと健吾の唇が挟んだ。あ、と実子が声を上げたのを合図のように、健吾は実子を「妻」にするため動き始めたーー

 

どのくらい時間がたったのか、あるいはまだ経っていないのか。よくわからなかったが実子はしっとり汗に全身を湿らせて妻となる痛みに耐えていた。

話には聞いていたものの、これほどの痛みと恥ずかしさを伴うものだとは思っていなかった実子、(そういえば先に結婚なさった『大和』の繁木航海長と山中副長も、こんな思いをなさったのかなあ)と頭の隅でちらりと思った。

そんなことを想いつつ必死に耐えているうち、健吾が

「実子さん…もうあなたは私の妻ですよ」

とささやき、今度は激しく動き始めた。これが妻になるということなのね、と実子は実感しながらうなずいた。そしてうわごとのように「はい…はい」と言って健吾の肩を抱きしめた。

 

「それ」が済んだ。

二人は息を弾ませて、互いを見つめあっている。健吾が優しく実子の頬を撫でながら

「痛かった?ごめんね、乱暴にしてしまって…」

と謝ると実子はそっとかぶりを振って「平気です。私…」と言って言葉を切った。健吾が心配げに実子を見つめたのへ

「私、あなたの妻になれて…うれしい」

というとその胸に顔をうずめた。健吾は感激に全身を浸らせて、実子を思い切り抱きしめたーー

 

初夜が明け、二人は何か気恥ずかし気に朝食をとった。

実子は「御代りを」と夫の茶碗をお盆に受け、お櫃からご飯をよそった。その初々しい新妻ぶりに健吾はいたく感激して(抱きしめたい)と思う心を必死で押さえている。

夫婦は互いを見てほほ笑みあった。

今日から長い休暇に入った航海長は(休暇のあいだに私は健吾さんにできる限りのことをして差し上げよう)と決意していた。

今日から一週間で互いの郷を訪問しあい、互いの親たちと心をさらに通じさせようと計画している。きょうだいたちとも仲良くなっておきたい。

二人の嬉しい計画がもう始まろうとしている。

 

今始まったばかりの夫婦。その前途には希望があふれているーー

 

          ・・・・・・・・・・・・・・・・・

仮谷航海長の結婚物語でした。

健吾さんなんだか天然なんだか何だかw。でも誠実な人みたいで良かったですね航海長!そして無事「妻」となった航海長、この先もしっかり妻として務めていってね!


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