2016-04

ありがとう - 2016.04.27 Wed

ちょうどで先週の今日二〇日。その前日、ちょっと出血があって。
久々に尋ねた婦人科で、ちょっとショックな診断。
もしかしたら…子宮体癌かも?
超音波診断画像に映った私の子宮にふつうはあまりないはずのものが。内膜が厚くなっていて、更年期の私には「がん」の可能性があると言われ、とても怖かった。
で、痛い検査をしてもらって検査結果は一週間後にということで、待つこと一週間。

情けない話ですが二〇日の夜からすっかり食欲がうせてしまったのです。
「食べたくない」
口にするのは水分だけ。
そして頭の中をめぐるいろんな悲観的な考え。

ガンだったとして、どのくらい進んでいるんだろう?
手術をしたとしてどのくらい生きられるのだろう?
完治するのだろうか?
だめだったら、いろんなものをきちんと始末つけないと…

そしてネットで子宮がんのサイトを見てばかりいました。でもそうすると面白いほど今の自分に当てはまってしまう。
「いや参った…これは絶対十中八九ガンだなあ」
この先どうなるんだろう?

そんなことを先週から今週思い続けていました。
で、きょうの結果は「シロ」!
病院の先生は優しい微笑みで「よかったですね、がんはなかったですよ」とおっしゃってくださった。
要するに加齢現象の一つで、気になっていた内膜からの出血ではなく別の部分の軽い炎症からのものだったようで、がんは「陰性」。
ほっとしました。
そしたらお腹がすいてきました。先週はほとんどご飯がのどを通りませんでした。

一九日の記事を書いた後、ブログのお友達からいただいた激励のお言葉。うれしくて寂しくて一人でこっそり泣いたっけ・・・・
そしてコメント欄に入れてくださる皆さんのお言葉、ただただうれしくて・・・・

まろゆーろさん
オスカーさん
河内山宗俊さん
ponchさん

本当にありがとうございました。
皆さんのお励ましあって私はここまで来られました。
時には不安に圧倒されそうになりながらも、この物語を書けたのも皆さんのおかげです。
ほんとうにありがとう!
皆さんに良いことがたくさんありますように!!



今日ラジオから聞こえてきた歌、「ありがとう」という歌詞が印象的でしたので。
いきものがかり「ありがとう」
本当に本当に、ありがとう!!


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山中副長恋し 3 - 2016.04.26 Tue

佐藤副長がハッシー・デ・ラ・マツコを蹴り殺したという話はあっという間に艦内に広がっていった――

 

「まさか、なんで佐藤副長がハシビロを?

防空指揮所でその話を聞いた桜本兵曹・オトメチャンは呆然としてつぶやき立ち尽くした。たまたま居住区にいてその騒ぎをじかに聞きつけた石川二等兵曹は桜本一等兵曹に

「ようわからんのですが、なんでもハシビロたちが佐藤副長に近寄ったらなんぞわめいて副長がハシビロのお腹を蹴って殺したんじゃそうです。そんとなことをする人には見えんかったですが、人というものは見かけによらんですねえ」

と言って悲しげに腕を組んだ後「こげえなことが山中副長のお耳にはいったら、山中副長はさぞお悲しみになりましょうなあ」と言ってうつむいた。

桜本兵曹は「ほうじゃねえ、こんな話がお耳に入らんよう祈るしかないな。そうでなくても大事なお体じゃけえのう、何とかええように済んだらええが…。しかしほんまにハシビロを蹴り殺したんか?佐藤副長は」と言って「ちいと下へ行ってくるけえ」というと石川兵曹をその場に残して〈事件現場〉に足を運んだ。

 

オトメチャンが〈事件現場〉に到着すると、そこではまだ佐藤副長が床に付して泣いている。そしてマツコも床にあおむけに倒れ、そのマツコにトメキチとニャマトが取りすがって泣いている。そしてその横では畑軍医大尉が一所懸命にマツコを蘇生させている。そのそばに麻生中尉がいるのに気が付いたオトメチャンはそっと人垣をかき分けて、

「分隊士…」

と麻生分隊士に寄ると声をかけた。ああオトメチャンと返事をした麻生分隊士にオトメチャンは

「ハシビロの容態はどがいなです?」

と小声でささやいた。麻生分隊士が何か言おうとしたその時、廊下の向こうから大声―まるで地鳴りのようなーがとどろいてきてその場に皆はびくっとして身を固くした。

果たしてその大声の主は松岡修子海軍中尉で彼女はラケットを今までにないほどぶん回しながら

「誰だだれだ!!私の鳥くんを蹴り殺したというのはだれですっ!これこの場に出頭しなさいッ!私がこのラケットで成敗してくれるわ!!

と怒鳴っているのだ。その顔はこれまた今まで見たことがないくらい怒っていて仁王様か阿修羅像か、そんな様相である。

その松岡中尉を繁木航海長が「待て、落ち着いてちょうだい松岡中尉」と後ろから抱きかかえた。松岡中尉は顔だけ後ろに向けて悪鬼のような顔で繁木航海長をにらみつけ

「これが落ち着いていられるかってんです!私の大事な、大事な鳥くんが…鳥くんがあああ!」

というなりこんどは大泣きし始めた。その場にうち伏して泣く松岡中尉に、繁木航海長が

「まだ死んだと決まっていない、いま畑大尉が診察してくださっている。落ち着いて待て」

と言ってその背中をさすった。

その場に集まった艦長以下多数の士官准士官下士官兵たちは、畑大尉の様子をじっと見入っている。畑大尉はマツコの胸に聴診器を当てたり胸をマッサージしていたが、「おーい、鳥くん。目を覚ましなさい」と呼びかけた。

皆がマツコに注目した…と、マツコがその目を開けた。皆がおおっ、とどよめいた。マツコはあおむけに寝たまましばらく天井を見上げていたがトメキチとニャマトが「マツコサン、大丈夫?どこも痛くないの?」という声にやっと我を取り戻し、視線を二人に向けた。そしてさらに周囲を見回した後

「アタシどうしちゃったのかしら…。なんだかみんな、大勢集まってるじゃない?何があったの?

と訳が分からないといった様子である。そこでトメキチが、佐藤副長に蹴られてこうなったのだと教えてやった。

マツコは「…そうだったわね…」というと体を起こした。松岡中尉が顔を上げて

「鳥くん!!生きていたんだね~~」

とマツコに抱きついて泣く。その松岡中尉の頭を大きな翼で抱え込んでマツコは

「アタシの松岡~~、泣いてくれるのね」

と感激したがよく見れば周囲の士官も下士官兵も、皆泣いている。そして口々に「ハシビロ、生きとってじゃ」「えかったわあ」などと語り合っている。

マツコの目に、涙が浮かんだ。(みんなアタシを心配してくれてるのね)

そしてさらによく見れば佐藤副長が、その場にうち伏してどうしようどうしよう、私は殺生をしてしまったと言って号泣している。そしてその横に藤村少尉が立って、とても怖い顔で佐藤副長をにらみつけている。

藤村少尉は、マツコが起き上がったのも気が付かぬか、ずっと佐藤副長をにらんでいる。そして

「私は弱いものにこういう残酷なことをするあなたが許せません。か弱い鳥を蹴り殺してうれしいですか楽しいですか!」

と大音声を発した。皆がそちらを一斉に見つめた。藤村少尉はぶるぶる震える両手を握りしめ

「中佐のあなたにこんなことを言えばわたしは軍法会議にかけられそれ相当の処分をされるでしょう、そんなの私は怖くありません。私は、私は」

とそこまで言うと急速に顔色を白くしたと思った次の瞬間、その場に昏倒していた。

「藤村君!」「藤村少尉―」

皆が叫んで駆け寄り、日野原軍医長は藤村少尉を担ぎ上げると「畑君、ハシビロのことは頼みましたよ」というと一散に医務室へと走り出していった。

繁木航海長のほか数名がそのあとをついて走ってゆく。

 

その場に残った一人の梨賀艦長は、まだ伏して泣いている佐藤副長のもとに膝をつくとそっとその肩に手をかけ

「佐藤中佐。私の部屋にいらっしゃい…藤村少尉が気を取り戻したら一緒に話をしよう」

と言って彼女を引き起こした。佐藤副長は艦長の言いつけなので、素直に立ち上がり歩いてゆく。ハシビロのマツコはもう平気なのか、「艦長…佐藤さんをどうするつもりなのかしら。アタシ気になるわ…行くわよ、トメキチニャマト」というと歩き出す。松岡中尉がその後姿を見て、畑大尉に「平気なんでしょうか私のハシビロは!?歩いたりして…お腹を蹴られたと聞きましたが」と心配そうに尋ねている。

畑軍医大尉は「いや、蹴られたと言ってもそれほど強くなかったようだね。ただハシビロは突然のことで驚いて気を失っただけだろう。だから、大丈夫!」と言って松岡中尉は安心した。そして

「それにしても佐藤副長はどうなさったんでしょうねえ。藤村少尉、とても怖い顔でにらんでましたが、どっちも熱くなりすぎですよ。適度に熱くならなくちゃいけませんよ!」

と言って、畑軍医大尉は「ほう、熱血の松岡中尉もそんな風に思うときがあるんだねえ」と言って笑った。それを少し離れてみていた麻生中尉と桜本兵曹たちにも、微笑みがこぼれた。

 

佐藤副長は、梨賀艦長の部屋に入り艦長手ずから淹れた紅茶を飲んだ。興奮が徐々に覚めると、さらに(とんでもないことをしてしまった)という思いがわが身をぎりぎりと責めてくる。

そして『大和』に再乗艦してからこっちを冷静に思い返してみた。

(確かに私は…あまりに自分を押し通しすぎた)

そう、思い当たった。(それに私はいい気になりすぎていた。その思いがあの大きな鳥を蹴らせてしまったのだろう。あの鳥には本当に悪いことをしてしまった)

副長の瞳が潤み、大粒の涙が流れだした。梨賀艦長は静かにそれを見つめるだけ。佐藤副長は、紅茶カップをテーブルの上に置くと、両手で顔を覆うとつらそうな声で号泣した。

 

藤村少尉は、医務室に担ぎ込まれた後数十分で起き上がり、日野原軍医長から「艦長が艦長室でお待ちですよ」と言われ、艦長室へ向かった。

 

艦長室のドアをノックすると中からドアが開いて艦長が静かなほほ笑みを浮かべて「お入りなさい」と言い、少尉は中に入った。応接セットのソファに佐藤副長が座って泣いているのを見て、藤村少尉はやや驚きながらも「座りなさい」という艦長の指示に従い、佐藤副長の隣のソファに腰を下ろした。

藤村少尉がソファに落ち着くと、艦長は藤村少尉を見て

「藤村君。あなたの思っていることを、さっき私に言ったことをもう一度ここで言ってみないかな?」

と言った。

藤村少尉は、「えっ…」と言って言葉が詰まったようだ。先にこの部屋で艦長にぶつけた言葉の数々、しかし冷静になってみればなんだか恥ずかしいような気がしてきて、

「いえ。あの、艦長。もういいんです」

と消え入りそうな声で言った。しかし艦長はまっすぐに視線を藤村少尉と、まだひくひく泣いている佐藤副長に当てて

「いいなさい?物言わぬは腹ふくるる思いというだろう?それにいい機会だ、お互い思っていることをさらけ出すといい。ここでは階級を気にしないで話しなさい。そして思っていることを吐き出したら今後どうしたらいいか、建設的な話し合いを持ちなさい」

といい、二人をさらに静かに見つめる。佐藤副長、そして藤村少尉は互いを遠慮がちにちらちらとみていたが、思い切って藤村少尉が口火を切った。

「佐藤副長、私の思いのたけをお話ししますー」

   (次回に続きます)

 

             ・・・・・・・・・・・・・

マツコ受難!どうなることかと思いましたが大したことがなかったようで何より。それにしても松岡中尉の取り乱し方はすごいものが。それだけマツコたちを愛しているんですね。

そして艦長室に呼ばれた佐藤中佐と藤村少尉。どうなりますか次回をご期待くださいませ。

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山中副長恋し 2 - 2016.04.23 Sat

「私は佐藤副長の下で甲板士官をやってゆくことはできません」と、藤村少尉は言ったーー

 

そう語る彼女と向かい合う梨賀艦長は静かに「どうしてかな?」と尋ねた、その途端藤村少尉はううっ、と嗚咽を漏らした。しばらく声を絞るようにして泣いていた藤村少尉だったが、やがて顔を上げ涙をふくと

「佐藤副長は許せません。佐藤副長は、私たちがー山中副長と私がー築き上げてきた巡検の仕方やその他もろもろを頭から否定しました。それはとりもなおさず、山中副長を否定することです。佐藤副長が前にこの『大和』にいて副長職にいたというのは知っています…でも山中副長を否定するようなこと私は絶対」

とそこまで言うとまた泣き始めた。

梨賀艦長は黙って藤村少尉を見つめている。

藤村少尉は防暑服のポケットからチリ紙を取り出すとそれで鼻をかんだ後涙にぬれた瞳を梨賀艦長にまっすぐに向け

「しかし佐藤中佐はここを離れて久しい人です。戻ってきたとはいえ、中佐がいらしたころとは多くが違っているはずです。その違いを御認めにならないで、いや、認めるどころかご自分のやり方を押し通すその強引さが私にはもうどうにも我慢がならないのです」

と言った。その表情には必死なものが現れていて、梨賀艦長は(これはちょっと難しいな)と思った。が、梨賀艦長は静かな声音で

「まあ…私も今までいろいろな艦を渡り歩いてきたから言えるんだが…副長や艦長が変わると、艦の雰囲気や日々のちょっとしたことが変化をきたすことはままあることだ。藤村少尉は『大和』が初めての乗務だったね。ならその辺の機微がわからなくても無理はない。つまりこういうことだ」

と、自分の経験を話してやった。

一時間半も話していただろうか、乗り出していた体を戻して梨賀艦長は藤村少尉の顔をもう一度見つめた。

藤村少尉は視線を下に落としたまま

「艦長がおっしゃりたいことはよくわかりました」

と言った。そうかそれは良かったといった艦長に藤村少尉は次の瞬間顔を上げると

「その辺のことは、よくわかりました…。しかし私は、佐藤副長を受け入れるのは…たぶん…できません」

と言った。「なぜ!?」とやや声が上ずった艦長に少尉は

「私はー山中副長が…恋しいのです!」

と叫ぶなり、あっという間に艦長室を飛び出していた。

後に残った梨賀艦長はしばらくぽかんとして閉まったドアを見つめているだけだった。

 

その晩遅くまで藤村少尉は、暗い甲板に出て月明かりにキラキラ輝く海を見つめていた。その脳裏には、山中次子中佐の面影が描き出されていた。

(山中副長…どうして、どうして艦を降りられたのですか)

そんなことを言ってもどうしようもないとは百も承知であったが、繰り返し心の中で問わねばいられない藤村少尉であった。

 

佐藤副長は、副長直属の甲板士官の藤村少尉が自分に対して不満や不平その他もろもろを抱えていることを知っていて、これまた呻吟していた。

(確かに、今まで山中中佐が築き上げてきたこの艦のやり方というものがあろう。そのすべてを否定するつもりはないが、私にだって私のやり方がある。それを解ろうともしないで私に反抗されても、私だって困るわ)

佐藤副長なりの苦しみがあった。

実をいうなら山中次子中佐と、佐藤述子中佐は海軍兵学校の同期である。二人は席次の一二を争う仲で、互いに練磨しあっていた。佐藤述子ががり勉タイプなら、野村(当時)次子はがり勉ではない。野村次子は少し考えただけでさらりと答えを出すほうであり、同級生からの信頼も厚かった。

そのころ佐藤述子は同級生たちが「佐藤さんも野村さんみたいに人当たりがもうちょっと柔らかいといいのにねえ。努力家で勉強ができるのは認めるけど、あんまり人から慕われるほうではないかもね。艦隊勤務になったら苦労するかもよ」とささやきあっているのを聞いて驚いたことがあった。

以来彼女の心の奥には、自分自身にはそうした意識がないものの野村次子への対抗心が生まれていた。海軍兵学校を佐藤は一番、野村は二番で卒業後、数年ののち風の知らせに野村次子は陸戦隊にいると聞いて、(フーン陸戦隊か。私は〈陸奥〉に配属。ウフフ、やはり卒業席次が上のほうが…ね)

とほくそ笑んだ。さらにその後佐藤は『大和』副長として輝かしい海軍軍人としての生活を送るに至った。そのころ野村は〈山城〉砲術長として活躍していたのだが、佐藤が〈大和〉に乗っているという自慢と誇りの絶頂のころ突然「佐藤述子中佐、海軍砲術学校教官に任ズ」という辞令が来て「まさか!なんで私が学校勤務に?」と悲嘆にくれた。

そして自分が『大和』を退艦ののちにあの野村次子が乗艦してくると聞いたとき(なぜ?なぜなの、なぜなのだ)と絶望にも似た気分になったのだった…

そのうえ、(私より先に結婚なんかして)。

しかし大人として、海軍士官としてみっともないところは見せられないと旧知の仲・山中次子の退艦の際、しっかり握手をして引き継ぎをし、そして別れたのだった。

(そうよ。私は彼女に嫉妬してるのよ)

佐藤副長は唇をキッとかみしめた。

 

そのころにはやはり佐藤副長に心を開けず、逆に不信感さえ抱いている一部の将兵嬢たちが佐藤副長に嫌がらせをするという行動に出始めていた。

佐藤副長が来ると、それまで談笑していたのが急に話をやめ背中を向けたりすれ違いざまににらみつけたり、ひどいのになると佐藤副長のいるそばで

「あーあ。山中副長がいらしたころのほうが艦の雰囲気がえかったなあ」

などと聞こえよがしに言う。

「ほうじゃのう。山中副長も厳しかったがほいでもみんなと打ち解けてくださって、一緒に酒飲んだりして楽しかったのう」

「ほうよ。ほいでなんぞことがあったときは山中副長は自ら飛び出してうちら兵隊を守ってくれたもんじゃが」

「今度の佐藤副長、信じてええんじゃろうか?なんかあん人は兵学校出以外は軍人じゃない…みとうな顔をしとって信じられん気ぃがするわい」

そんな話を副長のそばでして、佐藤副長はざっくりと心をえぐられるような気になった。

(私は…それほど信じてもらえてないのか)

兵隊嬢たちのあざけりの言葉を背中に受けながら、佐藤副長はただ立ち尽くしていた。

 

そんな佐藤中佐をハッシー・デ・ラ・マツコとトメキチ、ニャマトは痛ましそうに見つめている。マツコが

「ねえちょっとあいつらひどくない?佐藤さん気の毒よ…あたしたちで慰めてあげない?」

と言いトメキチニャマトも賛成した。

そこで三匹は、立ち尽くしている佐藤副長のそばに行くと

「佐藤副長。あたしたちと仲良くしましょう」

とあいさつした。その様子を将兵嬢たちがじっと見つめている。マツコがその大きな翼を広げ、

「どうぞよろしく、アタシはマツコ。ハッシー・デ・ラ・マツコよ」

と言った次の瞬間。

「うっとうしい!なんだ貴様らけだものが、私を慰めようなんぞいい気になるな!」

というなりマツコのお腹を蹴飛ばしたのだった。ギャ!と叫んで転がるマツコ、「マツコサン大丈夫!」「ギャマド!!」と、トメキチとニャマトが叫ぶ声。

そして将兵嬢たちが「佐藤中佐がハシビロを蹴り殺した!おおごとじゃあ!」と叫び、その場は上を下への大騒ぎになった。

それを聞きつけ

「いったい何を騒いでおる!」

と走ってきた藤村少尉はその場の異様さに息をのんだ。佐藤中佐がみつめる先にはハシビロが床に転がって目を閉じたまま。

そのハシビロにトメキチとニャマト、そして数名の将兵嬢たちが取りすがり「ハシビロ、しっかりせえ!」とか「死んだらいけん!」と言って半泣きになっている。

藤村少尉に気が付いた一人が佐藤中佐をびっと指さし

「藤村少尉!佐藤副長はせっかく仲良うなりたいと寄って行ったハシビロに〈うっとうしい〉、〈けだものが慰めようなんぞええ気になるな〉いうて蹴り殺しました!」

と言って喚き散らした。藤村少尉は最初呆然と転がったままのハシビロを見ていたが、その視線を佐藤中佐に移すと

「佐藤中佐…あなたどうしてこんなひどいことをなさるんですか。この鳥たちは『大和』のマスコットですよ?山中中佐も大事にされていた、そして艦内の皆から愛されていたマスコットをあなたは蹴り殺した…これは重罪ですよ!」

と叫んだ。

佐藤副長は、ぼうっとしたような瞳を宙に泳がせていたがやがてはっと我に返ると

「私…私なんてことをしたんだろう…どうしよう、どうしたらいいんだろう」

とつぶやくと頭を抱えるようにしてその場にへたり込み、そして大きな声で泣きだした。

 

将兵嬢の通報で、医務科から日野原軍医長と畑軍医大尉が駆けつけて、やがて森上参謀長そして各科長、梨賀艦長も駆けつけてきたーー

 

 (次回に続きます)

 

           ・・・・・・・・・・・・・・・

単なる「山中ロス」かと思ったらなんだか佐藤中佐虐めのような展開に。しかも中佐は慰めに来たマツコを蹴ってしまいました。マツコの運命は、そして佐藤中佐はこの後どうなるのでしょう?

緊迫の次回をお楽しみに!


海軍兵学校生徒館(現・海上自衛隊幹部候補生学校) WIKIよりお借りしました
海軍兵学校生徒館

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山中副長恋し 1 - 2016.04.19 Tue

山中副長が内地へと帰り、どこか寂しさの否めない「女だらけの大和」である――

 

梨賀艦長でさえ時に寂しげな表情を隠せなかったが、以前に副長職を務めてくれたことのある佐藤述子中佐が来てくれてほっとしているのも本当の話である。各科長たちも「佐藤さんが帰ってきてくれてよかった。この艦を知っているといないとでは、やはり違うからね」とほっとしている。

 

がしかし。

 

山中副長に心酔していた藤村少尉だけは全く別の感情を持っていた。彼女は、山中中佐が退艦してからこちら、まったくと言っていいほど笑わなくなっていた。常に眉間に不機嫌なしわを寄せ艦内を歩いては兵員嬢たちをしかりつけて兵員嬢たちの不興を買っている。

兵員嬢たちはそっと寄りあっては

「どうしたんじゃろう藤村少尉…今まではあがいなことでは叱らんかったのに。最近少尉は妙にご機が悪いのう」

とささやきあっている。

 

藤村少尉は、(前に大和にいたかもしれないが、『大和』は山中副長あってのものだったのに。あとからきて偉そうな顔をされたら迷惑だ)と思っていたのだ。

 

それは、佐藤副長が来て初めての巡検の時に起きた。

『大和』は大きな艦なので、巡検もなかなか大変なところかある。いくつかのコースがあって、そのコースをサイコロで決定するのだが藤村少尉がサイコロを振ろうとすると佐藤副長が押しとどめた。

「そんなことをしなくていいではないか。このコースを1から順に回ればいい。今日も明日も同じところを回るようでは意味がないではないか」

そういって佐藤副長は衛兵伍長を先頭に立たせ、衛兵伍長の彼女を促して歩き出した。

藤村少尉は怒りで顔を真っ赤にして佐藤副長の後姿をにらみつけている。それに気が付いた花山掌航海長が

「藤村少尉…こらえてつかあさい」

とささやいて、藤村少尉は歯を食いしばるような顔でうなずいた。随伴の掌長たちは何か居心地の悪いものを感じている。

巡検は一時間ほどかけて行われそして終了。衛兵伍長が艦内マイクに向かい「巡検終わり、煙草盆出せ」を通達した。

そして副長は掌長たちに明日の予定を伝え、掌長たちはそれを科長に伝えるため散会した。

藤村少尉だけはその場に立ったままこぶしを握って下を向いている。佐藤副長は彼女に気が付くと

「どうしました藤村少尉?」

と尋ねたが、藤村少尉のぎらついた瞳にぎょっとして片足を引いた。藤村少尉はその瞳を上げて副長を見つめ

「言わせていただいてよろしいでしょうか?私は山中副長と築き上げてきたやり方があるのです。何年もそのやり方で来たんです。それをあなたに、むげに否定される筋合いはありません。お気に障ったら申し訳もありませんが、それは皆―この艦の皆の総意です。わかっていただきたいのです」

というと走り去ってしまった。その場に残された佐藤副長は、茫然として夜風に吹かれていた…

 

その晩からめっきり、佐藤副長は元気がなくなってしまった。

視線を下に落とし、笑わなくなってしまった。すぐに梨賀艦長が気が付いて「どうしたね、副長?元気がないようだが」と尋ねたが佐藤副長は弱弱しい微笑みを浮かべて

「いえ何でもありません。…何でもないんです」

というだけである。それを見ていた繁木航海長が、梨賀艦長に「ちょっといいですか艦長…」とささやいて二人は第一艦橋を出て、常夏の日差しのはじける甲板に出た。

青い空にはところどころ雲が浮かび、見上げる前檣樓はまぶしく光る。その下で繁木航海長は

「梨賀艦長。お聞きになっていらっしゃらなかったんですね。実は、佐藤副長と藤村少尉、うまくいっていないようなんです」

と言って、花山掌航海長から聞いた話をした。梨賀艦長は驚いて

「まさか。あの藤村少尉が」

と言ったがはたと思い当たった。山中副長が艦を降りると聞いたとき藤村少尉は泣いて泣いて、どうしようも手の付けようがなかった、その上「私も一緒に艦を降りたい、海軍をやめたい」とさえ言った。

「まさか…」

ともう一度梨賀艦長は言った。こんなことを山中中佐が耳にしたらさぞ悲しむだろう。何とかせねば、と艦長は思い、

「分かった。報告をありがとう繁木さん。今夜早速藤村少尉を呼んで話を聞こう。そのあとで佐藤さんにも話を聞いて、必要なら二人を会わせて話も聞かねばね」

と言い繁木航海長は「どうか願います。せっかく佐藤副長が来てくださったのに、艦内に軋轢が生じては山中中佐も悲しむことでしょう。どうか良い方向に向きますように」と言って艦長に一礼した。

 

そしてその晩、巡検後。

梨賀艦長に呼び出された藤村少尉は(いったいなんだろう)といぶかりつつ艦長室を訪ねた。ノックのあと部屋の中から「どうぞ」と艦長の声、藤村少尉は「藤村少尉参りました」というとドアが開き、艦長が笑顔で迎えた。

「ようこそ。呼び立ててすまなかったね、忙しいところ申し訳ないが」

艦長はそういって、藤村少尉の肩を抱くようにして中に招じ入れた。中の椅子に少尉を座らせて、艦長は手ずから茶を淹れてくれた。

「さあ」

飲みなさい、と艦長は慈母のような優しい微笑みで少尉に茶を勧めた。ありがとうございます、と言って少尉は湯呑を手に取り、茶を口に含んだ。懐かしい日本の香りが広がって少尉のややすさんだ心がしばし和んだ。

梨賀艦長はその顔を見つめて

「で?どうですか最近。佐藤副長とは仲良くやっていますか」

と尋ねたその時、藤村少尉の顔がキッとひきつった。そして手にしていた湯呑をテーブルの上にコトンと置いた。そして梨賀艦長の顔をまっすぐに見つめると

「私…佐藤副長の下で甲板士官をやってゆくことはできません」

と言い放った。

梨賀艦長は静かに藤村少尉の顔を見つめて「どうしてかな?」と言った。すると藤村少尉の顔が悲痛に歪んでほほに涙が流れ始めたーー

 

      (次回に続きます)

 

             ・・・・・・・・・・・・・・

久しぶりの「女だらけの大和」でございます。山中副長去ったあとの『大和』、なんだかまた波乱が起きそうです。藤村少尉の不満を、艦長はどう見ているのでしょうか。次回をご期待ください。

 

相変わらず熊本中心に地震が収まりません。気が気でないです。もうこれ以上熊本大分、そして九州の皆さんを悩ませないで!と言いたいですね。亡くなった方へ衷心よりご冥福をお祈り申し上げるものでございます。また被災された皆さんが一日も早く、元の生活に戻れますように!!

高校時代に修学旅行で行った熊本と大分…あの懐かしい土地がひどい目に遭っていると思うと…。

 

そして私事で恐縮ですが、もうすっかり閉経したと思っていた私に今日不正出血のようなものがありました。閉経後の出血は子宮がんの可能性が大きいというので明日午後、診察を受けに参ります。まあそういう年齢だし、がんだとしても仕方がないかもしれないですね。腹をくくってまいります。

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熊本地震・あの人は無事だろうか - 2016.04.15 Fri

熊本県を震源とする大きな地震から24時間が経ちました。
夜間に発生の地震ということで被害状況がよくわからなかったようですが日が昇り被害がだんだんわかってきてその大きさに息をのむ私です。

どんな思いで皆さん過ごしているのでしょう…一日も早く、余震が収まって街の復興ができるように祈るばかりです。

そして私は一人の人を想う。
三月の末に、大きなおなかを抱えて私に「6月に出産です」と語ってくれたあのひと。6月なら私もよ、と言った私に嬉しそうにほほ笑んで
「里帰り出産なので4月になったら帰ります」
と言った彼女。里帰り、どこに?
「熊本です、市内」
「そう、熊本!いいところですね。おだいじに」

その熊本で彼女は昨日の震災に遭って怖い目に遭ったのでしょうか。

どうか元気でいてほしいのです。
彼女もおなかの赤ちゃんも。

地震なんぞに、負けないで!
元気な赤ちゃんを産んでください!!
そしていつか、逢いに来てほしい…そう思っています。

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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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