Archive2016年02月 1/2

横須賀泣き笑い 4

加東副長はしばらくの間泣き続けていた――   仮谷航海長に対しては全く憎悪も感じなければ憎しみもない、それは当然である。彼女が見合いをしそれがうまくゆけばたいへんめでたいことで、『武蔵』総員で祝うべき話である。 だが。 加東憲子という一女性としてはそれが大変悲しい。うらやましさが高じてつらさばかりが際立ってしまうのである。 (私生涯独り身なのだろうか。そんなの嫌だ、私だってどなたかいい人と家庭を...

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横須賀泣き笑い 3

恥ずかし気に顔を伏せていた仮谷航海長は、そっと顔を上げて相手を見たーー   ハッ、とかすかに息をのむ音が隣に座る加東副長の耳朶を打った。そっと見やると仮谷航海長は見合いの相手・鍛冶屋健吾中佐を見つめその頬を桜色に染めている。そして、鍛冶屋健吾中佐も航海長を見つめたままである。彼の頬も心なしか紅潮しているようだ。 加東副長はそれを見て(ああ、この二人は絶対うまくいく。決まったようなものだね。ああ...

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横須賀泣き笑い 2

いよいよ仮谷航海長の休暇の日がやってきたーー   二人は上陸桟橋に降り立つと衛兵所を通り、その先へと歩いて行った。すると前方から年配の夫婦がやってくるのが見えた。 「あ、父さん母さん」と仮谷航海長が声を小さく上げて、その右手をちょっと挙げて軽く手を振った。それを見て父親のほうが大きく手を振って応え、母親も胸のあたりまで手を上げて応える。 久々の親子の対面である。仮谷航海長は几帳面な敬礼をして ...

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横須賀泣き笑い 1

「女だらけの戦艦武蔵」は久々の内地を満喫していた――   各分隊の将兵嬢たちは、それぞれの配置の仕事や訓練の合間に上陸、あるいは一週間から十日ほどの休暇をもらって嬉しそうに艦を降りてそれぞれの目的の場所へと散ってゆく。 甲板で、きょう最後のランチを見送った加東憲子副長は大きなため息をついた。甲板士官の金子ナミ少尉が 「どうなさいました副長?どこかお悪いのではないですか、すぐに軍医長にお見せしない...

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新しい私へ、今。

トレーラ水島に戻って初めての上陸日――   長妻兵曹はランチから降りると衛兵所を敬礼で通ったあといきなり走り出した。ほかの乗組員嬢たちが「あいつどうしたんね?何をあがいにいそいどってかねえ?」とあきれるほどの速さである。 あの一所懸命な顔つきと駆け方を見たらきっと平野ヒラ女少尉などは「ああ!きっと男と遊びたいんでしょう。だからだよハハハ」と笑うところであろう。 が、それは外れである。 長妻兵曹は...

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女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?
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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)