女だらけの戦艦大和・総員配置良し!

女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?

トレーラーのつぼみたち 3

「武蔵」加東副長と村上軍医長は、タモイ一家からの心尽くしの弁当を食べたあと昼寝をした――

 

どのくらい眠ったのだろうか、軍医長は木漏れ日の下で目が覚めた。ふと横に顔を向けると加東副長がそれはそれは幸せそうな顔で眠っている。副長の顔にも木漏れ日はきらめき、彼女の顔はこの上なく美しく見えた。

軍医長は(副長、お疲れなんだろう)と思って彼女を起こさないように起き上がるのをやめた。

普段、艦内の繁多な業務をこなす副長の、大事な休息の時なのだ。村上軍医長はそっと仰向けになると大きな木を見上げた。キラキラと、葉の合間から日が差し込んで宝石を見ているようである。

暫くの間、軍医長は目を閉じて涼やかな風に吹かれてまどろんだ。

そのうち、軍医長の横の副長が寝返りを打った気配がして軍医長は目を開けた。横には、副長が目を覚ましていて、軍医長を見ると微笑んだ。そして

「とてもよく眠れました…村上軍医長、ここに連れてきてくださってありがとう」

と言ってほほ笑んだ。軍医長は副長のほうへ向きなおり上半身を起こすと

「いえいえ…気に入っていただけたようで嬉しいです。私もよく眠れました。こんな素敵な自然の中で昼寝なんてそうそうできないことですからね」

と言った。副長は「本当に」というとそっと体を起こした。軍医長も

「いい経験でしたね」

と笑った。

副長は、タモイがサンドイッチを包んできた大きな布を丁寧に畳んで懐に収めた。そして軍医長にタモイへの礼のことを話そうかと思ったが(まだ早いかな。いきなりすぎるかな)と思い返し言うのは控えた。あとで艦に戻ってから艦長たちにも相談した方がいいのではないかと考えたのだった。

 

二人は、丘の上で日か落ちるのを見た後自転車に乗って町へと降りて行った。夜風は二人の頬をやさしく撫で自転車は軽快に町中目指して走る。

軍医長は前を向いたまま

「休暇中の宿は取ってありますからご安心を。自転車を返したら飯を食いに行きましょう」

と言い、副長は「ありがとうございます軍医長」と言って左の手で軍医長の軍袴のバンドをしっかりつかみ右の手で軍帽の庇を掴んだ。彼女の表情が少し必死だったのは、坂道の最後の曲りで、振り落とされそうだったから。

町の大通りに出ると店店の明かりはまるで夢のように揺らめき行き交う人々さえも夢の中のように風景の中に揺蕩って、軍医長も副長も幼き日の鎮守様の縁日を思い出していた。そしてその夢のような風景の中をゆく海軍将兵嬢たちが自転車の二人に敬礼するのへ、来た時と同じように返礼しながら副長は(なんか、変な風景)と思ってそっと忍び笑った。

やがて自転車はタモイの家につき、二人は自転車を降りた。そしてサドルを手のひらで拭いて軍医長は、まだ開いている店の奥へ声をかけた。

タモイの一家、父親に母親、そしてタモイが出てきた。軍医長と副長は今日の礼を丁寧に言った。タモイの父親は

「オレイなんてトンデモナイこと。喜んでイタダケたのがイチバンね。アア、よかた!妻もツクタ甲斐がアリマシタ」

と言い、タモイの母親ははにかんだような笑顔を二人に向けた。タモイは嬉しそうに皆を見まわしている。

副長は「このお礼は必ず。本当にありがとうございました」というと懐から布を取り出し、妻に渡した。「とてもおいしかったですよ。ありがとうございました」

そう言って妻の手をしっかり握ってほほ笑む副長に妻も微笑み返し「ヨカタ!アリガト」と言った。

 

副長と軍医長はタモイの家を辞し、軍医長のよく使うという料亭<禿勝>に向かう。途中で何人もの兵隊嬢と敬礼を交わし「いい加減疲れるねえ」と笑いあった二人である。

料亭の玄関を入ると女将が迎えてくれ「村上大佐、お久しぶりです」とあいさつした。軍医長は副長を紹介し、二人は座敷に通される。

座卓の前に置かれた座布団に座りながら加東副長は

「いい店ですね…まるで内地の料亭そのものですね」

と感心していったのへ軍医長は声を少し落として内地某所でそこそこ有名な料亭の名を上げ

「ここの女将はそこの大旦那の妾腹の子だそうですよ。で、大旦那が本妻に気を遣って顔を合わせなくて済むこちらに店を持たせたというわけらしい。大変な金額の金を持たせてこの店を作らせたらしいですがね。まさに豪著というべきですねえ」

と言い副長は目を丸くして聞いている。その副長に「そしてね、副長」とちょっと湿った声で軍医長は言った、「この店で桐乃は働いていたんですよ…あの小さな体で大きなものを持たされて、夜遅くまで」。

副長は「桐乃ちゃんが、ここで…」とつぶやいた。桐乃が、とある料亭から「武蔵」と「大和」の軍医長から声をかけられそして看護婦の道を進んだというのは聞いていたが細かいところまではさすがに知らなかった。

初めて聞く話、副長は詳しい話をせがんだ。

 

料理がすべて並んだ頃、軍医長は桐乃の話を副長にしてやった。副長は

「そうだったのですか、桐乃も苦労をしてきたんですね。そして今日のタモイ、彼もこの先幸せになってほしいものです」

と真剣な表情で言った。加東副長は桐乃には一目しかあっていないが彼女の瞳を見てその賢さには気が付いていた。

副長は、勧められて箸を取って「ああした優秀な人材はまだまだこのトレーラーにはいるはずでしょうから、見出してやりたいですね。そして生活の苦労から解放してやりたい」と言った。

村上軍医長も「その通りです。彼らすべてが美味しいものを食べ、綺麗な服を着て電気の通る家に住むようになれたらどんなにいいでしょうね。そうしてやりたい、そのためにも我々頑張らないといけませんね」と言って副長は真剣なまなざしを軍医長に向けてうなずいた。

 

今日の<禿勝>には海軍将兵嬢以外の客も来ているようだ。男の大声が廊下の奥から響いてきて軍医長も加東副長も少し顔をしかめた。

副長が

「誰でしょうね、あの品のない声の男たち。―そうかここは海軍専用ではないから一般の客も入るんですね」

と言って徳利を軍医長に差し出した。それを杯で受けながら村上軍医長は「今まであんな大声を出す客は来てなかったが…しばらく来ないうちに客層が変わったのかな?酒を飲むなら静かにしてほしいね、若い士官連中の芋ほりを思い出します」と言った。

本当に、と副長が言ったときふすまがそっと開いて女将が料理の追加を持って入ってきた。村上軍医長は「なんだ今日はずいぶんにぎやかな客が来てるじゃないか?珍しいねえあの手の客が来るなんて」

と女将に話しかけた。すると女将の表情が曇り

「ここひと月ふた月で来るようになったんですが…実は…私の夫の友人とかで、断れなくて」

と言って刺身の皿を二人の前に並べた。並べ終えると女将は声を潜めて「あまり、素性のよくない人のようで私も怖いんです」と言ってそっと背後を振り返る。

聞けば傍若無人にふるまうことも多く「海軍さんにもご迷惑をかけております、申し訳のないことでございます」と女将は言った。

副長は

「そうか…それはちょっと困ったことだがあまり我々が口を出すのも」

どうだろうか、と言いかけたその時。

男たちの声が入って行った廊下の奥の方から凄まじい女性の――いやまだ幼さの十分残る女の子の――叫び声が響いてその場の三人はぎょっとして身を固くした。

そしてすぐに廊下を走ってくるいくつかの足音、そして女の子の泣き叫ぶ声が混じった。

副長と軍医長は「なんだ、何の騒ぎだ!」と立ち上がり部屋のふすまを開いた。

そこに二人が見たものは―ー!

  (次回に続きます)

 

              ・・・・・・・・・・・・・・・

「武蔵」副長と軍医長の心安らかな休暇。タモイ一家の心尽くしも受けて気持ちがよかったようです。

しかし、料亭で何が起きたというのでしょうか?次回を緊張しながらお待ちくださいませ!!



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トレーラーのつぼみたち 2

純白の二種軍装に身を包んだ加東副長は、久々の上陸に心ときめかせて内火艇に乗り込んだ――

 

その後を村上軍医長が同じく二種軍装に身を包んで乗り込んだ。軍医長は副長の顔を見て

「思い切り楽しみましょう、加東副長。そろそろ『武蔵』も内地へ向かうようですからしばらくトレーラーとはお別れになりそうです。副長のご存じないトレーラーをご案内しますからお楽しみになさってください」

と言って副長は

「私の知らないトレーラー!楽しみですね、軍医長よろしく願います」すお

と飛び跳ねんばかりに大喜びした。副長はそれほどトレーラーの街には詳しくなかったからである。以前、猪田艦長とともに上陸し、『大和』の艦長・副長そして「水雷戦隊」司令の古村大佐、『矢矧』の原艦長と一晩料亭で語り合ったのが一番の思い出である。

副長は浮き立った。その副長の横顔を見て村上軍医長は(どれだけこの日を待っていただろう…加東副長は自分は上陸しないでほかの科長たちをどんな思いで見送っていたのだろう)とその心中を思いやった。

そして(この三日間はいい日々にしたいものだ)と思う軍医長である。

 

内火艇は上陸桟橋に横付けし、副長と軍医長が降り立った。内火艇の艇指揮の中尉は、すらりと降り立った二人のスマートな姿に思わず見入ってしまった。その二人に敬礼して中尉は、足取りも軽やかにゆく副長の背中を見つめ、(よい休暇でありますように)と祈った。

副長は軍医長に

「どこに行きますか?というよりどこに連れて行ってくださいますか?私はもう楽しみで仕方がありません」

と笑顔で話しかける。その副長に軍医長も笑顔で

「まず…あの丘の上を目指しましょうか」

と言って島の中央にある小高い丘を指さした。その丘は以前『大和』の麻生中尉と桜本兵曹がデートに使った場所でもある。軍医長は、ほう、あの丘へと声を上げる副長に

「こうしてみれば大したことのないような丘ですが、実際歩けば大変なんで…ちょっとご足労願いますよ」

と言って歩き、副長は興味津々で付いてゆく。

二人は繁華街の中を歩いてゆき、その中の一軒の店――現地の人の経営する駄菓子屋であった―ーに入り軍医長は「こんにちは!」と声をかけた。中から店主の男性が「ああ!村上サン」と笑顔で迎え、軍医長は副長を紹介した。店主は副長に丁寧にあいさつして

「村上軍医さんにはいつもお世話にナテマス」

と言った。どうやら病弱な彼の妻を軍医長は診療所に紹介し、その後妻の具合がいいようである。

軍医長は彼に「自転車を貸していただけないだろうか」と頼み男性は快く貸してくれた。大事な自転車を貸してくれるとは、と副長は驚いたがそれは村上軍医長と男性の間にしっかり信頼関係が構築されているからなのだと悟った。

男性は裏から古ぼけた自転車を引き出してきて、サドルと荷台を布で丁寧に拭いた。そして荷台に厚い布をひもで括り付けてくれた。

「副長サンここにすわるのにコシガ痛くなってはイケマセン」

と男性は気を遣ってくれた。その男性に心から礼を言って二人は自転車にまたがった。軍医長は「ではお借りします、夕方までにはお返ししますから」というと男性はにっこり笑って

「ドウゾごゆくり、ワタシ急がないね。イツデモいいですよ…キヲつけてイテラッシャイ」

と言って手を振ってくれた。副長は荷台に座って「ありがとう、お借りします」と言って微笑み返した。

「じゃ、行きますよー」

軍医長が言って自転車はぐん、と走り出した――

 

軍医長の運転の自転車は軽快にトレーラーの繁華街の通りを走りぬける。自動車の往来もそれほどないので気が楽な道。途中行きかう水兵嬢、下士官嬢たちに敬礼されて軍医長も副長も「おう、おう」という軽い感じで返礼。心まで軽い。

見送る兵隊嬢たちは「いいなあ~自転車。それにしてもどこの艦の方だろうか?楽しそうだね」と言って、通りかかった「武蔵」の兵隊嬢に

「私たちの艦・武蔵の副長と軍医長だよ。副長やっと休暇をお取りになられたんだ…今までほとんどお休みを取られなかったから嬉しそうね」

と言って教えられ、「そうだったんですか…楽しんでいただきたいですねえ」と心底から願うのだった。

 

自転車は、繁華街を走りゆく。

途中、たくさんのトレーラーの子供たちが何やら大きな荷物を以て小走りに行くのを目にした加東副長は「あの子たちは何を持ってあんなに急いでいるんでしょう?」

と軍医長の背中に向かって尋ねた。村上軍医長は少し顔を後ろに向けて

「あの子たちは料亭に雇われているんですよ…本当のことを言ってトレーラーはまだまだ貧しいですからね。日本だってまだ豊かとはいえませんがここはそれ以上です。それにここも子供が多いですから口減らしに住み込みで働く子供が多いんです。そしてああして汗水たらして働いて家に給料を入れるんです。健気なものです」

と言って言葉を切った。

加東副長は「そうだったのですか」というとやや暗い目で子供たちを見つめた。まだ遊びたい盛りの子供たちが必死に大きな荷物を抱えて走る様はけなげというよりも痛々しかった。軍医長はそんな副長の気持ちをわかってか、声を励まして

「それでも副長、その中からキリノちゃんのような子も今後もっと出てきましょう。私たちはそういう子供たちを見出してやらねばならないと思いますよ」

と言った。キリノと聞いて副長も顔を上げて

「ああ、あの子!村上軍医長と『大和』の日野原軍医長が見出して今では内地の病院にいるという、あの子ですね」

と言った。軍医長は坂道に入ってきたので立ちこぎをしながら

「そうです、あの子です…あの子だってあのままあの料亭に居たらどうなっていたかわかったものではありません。ずっとこき使われて自分の才能など気が付かずに埋もれていたかもしれません」

と答えた。副長は、自転車から振り落とされまいと軍医長の腰のバンドにつかまりながら

「キリノちゃんは本当にラッキーでしたね。幸せにやっているんでしょうね…」

というと軍医長ははい、と言って

「今働いている病院が、日野原軍医長のご実家の病院です。東京の聖蘆花病院。そして彼女、医者になる学校へ行くための勉強を始めたらしいです」

と教えると副長は大変驚いた。

「なんと、そんなに素晴らしい逸材を発掘したんですね。これは素晴らしい、きっとこのトレーラーにはまだまだ各方面に才能を持つ子供たちがいることでしょうね」

副長はそういって嬉しそうに微笑んだ。

 

やがて自転車は丘の頂上に着いた。軍医長は「さあここですよ」と言って副長が降りるのを待ってから自分も自転車を降り、その場に立てた。

副長はわあ~、と声を上げてその場の大きな木の根元に立つと眼下に広がるトレーラー水島の風景に見入っている。

それは今まで彼女が知らなかった風景であり彼女を感激させるに十分なものである。

軍医長はそっと副長のそばに立つと

「いかがです?こんな景色ご存じなかったでしょう?」

と言った。副長は感激に瞳をキラキラさせてうなずき、「知らなかったです…軍医長、ありがとう」と言って軍医長の両手を握った。今まで平面でしか見たことがなかったトレーラーも、立体的に見ればこんなに素晴らしい場所であることを、副長は改めて知った。

二人がしばらく声もなく、景色を見つめていると下から子供の声が流れてきた。軍医長はその方向を見て「あれ!タモイ、タモイじゃないか。どうしたんだ?」

と言って走り出した。副長もそちらへ一緒に駆け寄ると、坂道を大きな包みを持って走ってくる少年が一人。

彼は自転車を貸してくれた男性店主の息子で、ハアハアと息をつきながら、それでも笑顔で軍医長の前にやってくると包みと二つの竹筒をを差し出して

「コレ、父さんからムラカミさんたちに。おひるごはんデス。かあさんツクッタ、食べてください」

と言うではないか。軍医長も副長もびっくりしてタモイの顔を見つめた。タモイはちょっと照れくさそうに笑うと

「村上サン、ナニモ持ってなかったから」

と言った。タモイは店の中から軍医長たちが荷物を持っていないのを見た、そして自転車を借りて行ったとなるとおそらくこの丘を目指したのだろう。この丘は時折海軍将兵嬢が静かな休息の場として使うのを彼は知っていたから、それで母親に弁当を作ってくれと頼んだのだった。

母親は快諾し、作ったものを彼が必死で走ってここまで持ってきたのだ。

「タモイ…ありがとう」

そう言って包みを受けとった軍医長、そして副長の瞳が濡れた。何とやさしい心根の人たちなのだろう、と村上軍医長も加東副長も感激した。

副長は、帰ろうとするタモイに小遣いでも、と思ったが純粋な心に、今ここで金銭で返すのはやめようと思い直した。よく見れば彼のシャツは汚れてところどころ破れている。

(着るものをさりげなく返したらどうだろう)

そう思った副長にタモイは微笑みかけて「ジャ、またね」と手を振って走り去ってしまった。たぶん…父親から「邪魔してはいけない、渡したら早く帰りなさい」とでも言われたのだろう。タモイは笑顔で手を振りながら坂を駆け下りてゆく。

彼の姿が見えなくなるまで見送った二人は、包みを奉持して大きな木の下へ座るとそれを広げた。中には大きなサンドイッチがいくつも入っていた。

息をのむようにしてそれを見つめる二人、軍医長が

「あの夫婦にこれを買うほどの余裕があるとは思えない…なのにこれをしてくれたというのは相当な無理をしたのだろう…申し訳ないことだ」

と唸るように言い、加東副長も「ここではパンもハムも…相当な値段ですからね」とつぶやいた。

有難いことだ。

二人は手をしっかり合わせて「いただきます」というと、そのサンドイッチをいただいた。タモイの、そしてタモイの親たちの心が伝わるようなおいしさだった。

 

加東副長と村上軍医長は、サンドイッチを食べ終えて竹筒の水を飲んだ。水かと思っていたらこれもただの水ではなくヤシの実のジュースで、さらに感激の度を増したのだった。

 

二人は、ありがたい有難いと言いながらいつの間にか木漏れ日の下で心地よい睡眠に入って行ったのだった――

   (次回に続きます)

 

             ・・・・・・・・・・・・

副長が初めて見るトレーラーの町中の様子です。健気な子供たちが一所懸命働く様子に副長は感じ入ったようです。

そしてタモイという少年も家族の恩人のために尽くしてくれました。

 

二人の休暇、まだまだ続きます!



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トレーラーのつぼみたち 1

常夏のトレーラー諸島の水島には、女だらけの「軍艦武蔵」が停泊中である――

 

女だらけの武蔵はもうずいぶん長いことここに居て、訓練を重ねてきた。そして昨日まで何度も環礁の外に出て対潜・対空訓練を重ねたしふた月ほど前には重軽巡・駆逐艦など多数を引き連れて実践装備で外洋を数日間航海した。これは最近日本海軍のすきを見てその手を伸ばそうとする連合国軍への示威行動でもあった。

途中アメリカ空軍と交戦状態になったが彼女たちは女だらけの帝国海軍の敵ではなかった。さんざんに打ち負かされ、鱶のうようよいる海を青い眼の搭乗員嬢たちは生きた心地もなく漂流し、やがて日本の駆逐艦に拾い上げられた。

そんなこんなの日々を過ごしたが、やっと武蔵乗組員に休暇が許されることになった。

狂喜する乗組員嬢たちは三日ほどの休暇をもらい、順番に上陸していった。

猪田艦長は、第一艦橋にいて窓から外を見つめ

「いい天気だね。そしてみんな嬉しそうだ…久しぶりにまとまった休暇だから羽目を外さないといいんだが」

と言って、傍らにいる加東副長を見た。加東副長は猪田艦長に微笑み

「ご心配には及びません艦長。皆それぞれその辺は肝に銘じております。―それより艦長は上陸なさらないのですか?」

と尋ねた。艦長の足元でマスコット犬のナナが二人の話に聞き耳を立てているようだ。猪田艦長は身をかがめてナナのあたまをなでると

「私は上陸はしないつもりだよ。とくに陸に用もないし…私より副長。あなたが上陸しなきゃいけないよ?副長はここ一年ほどまともに休暇もとってなければ上陸もしていないでしょう?いい機会だ、上陸して鋭気を養ってきなさい」

と顔を上げて加東副長に微笑んだ。副長は

「しかし、私が上陸してしまっては」

と渋ったが艦長は「留守は古志野さんに代行してもらう、だから副長。休みなさい」と砲術長の名前を出して休暇を勧めた。

そこまで言われて断るのも角が立つ、と考えた加東副長は笑顔になって

「わかりました。では、私から古志野中佐に頼んできます」

と言って猪田艦長は頷いた。

艦橋を出る副長の後をナナがついてゆく。

 

古志野砲術長は士官室に居て、副長の申し出に快く承諾してくれた。どうやら前々から艦長とそういう話がついていたのかもしれない。

「というわけで古志野中佐、大変申し訳ないが三日だけ願います」

そう言って本当に申し訳なさそうな顔になった加東副長に古志野中佐は

「何をおっしゃいます、堂々と休暇をお取りになってください。副長は全然と言っていいほど休暇をとってらっしゃいませんもの、どうぞゆっくりなさってらしてください――、で、いつからにしますか?」

と副長の心を浮き立たせるように笑みながら話す。

そこに村上軍医長が入ってきて、

「なんだかうれしそうですねえ、何のお話です?」

と尋ねたので、古志野中佐がこれこれこうだというと村上軍医長は

「私があさってから上陸させてもらいますので、良かったらご一緒にいかがです?」

と副長を誘った。副長に依存があるはずもなく「ではお邪魔かと思いますが願います」と言ってあさってから三日の休暇をとることになった。

そしてその間代行をしてくれる古志野中佐に、副長の仕事のあれこれを教えて

「甲板士官の金子少尉によく言っておきますからご心配なく」

と言って古志野中佐を安心させる。古志野中佐は「金子少尉がいるなら私も大船に乗った気分です。彼女は素晴らしい甲板士官ですからね。さすが副長の直属です」と言って副長は何かくすぐったい気分になる。副長はそのあと甲板士官の金子少尉を副長室に呼び、

「私はあさってから休暇をもらいます…その間古志野中佐が代わりを務めてくれますからどうぞよろしく。――そして金子少尉はいつ休暇を取りますか?」

と言った。

が、金子少尉は笑って「休暇は取りません。間もなく内地に帰ると聞きましたので休暇はそれまでお預けにします」と言った。ナナが、金子少尉を見上げている。ナナは(金子さんって本当によく働くのね。ちょっとは休んだらいいのになあ…そういえば『大和』のトメキチさんはどうしてるかなあ、会いたいな)と思っている。

そんなナナの背中を、金子少尉は撫でながら微笑んでいる。副長は

「それでよいのか?金子少尉。内地に間もなく帰ると言っても、帰ってもすぐに休暇が取れるとは限らんのに?」

と心配していったが金子少尉はナナを抱き上げて

「ご心配には及びません副長。私は独り者ですしふた親ももういません…帰っても一番上の兄夫婦がいるだけで私が帰れば邪魔でしょうからね」

と言ってナナの顔にそっと自分の頬を寄せて微笑んだ。

ナナは金子少尉を見て

「金子さん…お父さんもお母さんももういないの?寂しいでしょうね」

と言った、そのナナに金子少尉は

「どっちも私の小さい時、病気で亡くなったから覚えてないよ。私は兄たちと一緒に親戚の家で大きくなったのよ。でもどうにも居づらくってね…中学終えたら兵学校に行こうって一所懸命に勉強したの。で、今があるわけよ」

と言い聞かせるようにしてまた微笑んだ。

副長は初めて聞く直属の部下の生い立ちに衝撃を受けた。が、本人の金子少尉は何事でも無いように春のような微笑みを浮かべている。

金子少尉はナナを抱いたまま加東副長を見ると

「副長、良い休暇を。お留守の間は私と古志野中佐がお預かりします」

としっかり宣言し副長は「では、願います!」と力強く言った。

 

加東副長の三日の休暇の話はほかの科長たちにも伝えられた。

みな「ほう、それは良かった!加東副長、休暇楽しんできてくださいね!」と言いわがことのように喜んでくれた。

その様子に副長は涙ぐみながら「みんなありがとう、厄介駆けますがどうぞよろしく願います、そして古志野さんを助けてやってください」と言った。

主計長も内務長も、誰もが「心配しないで、大丈夫だから」と副長を励ました。

 

休暇までの短い間、副長は古志野中佐に仕事を教え、古志野中佐も布が水を吸うように自分のものにしていき加東副長を安堵させた。

 

休暇の日、加東副長は晴れ晴れとした顔で村上軍医長と一緒に内火艇に乗り込んで上陸していった。

猪田艦長は舷門でそれを見送りながら傍らに立つ古志野砲術長と金子少尉に

「うれしそうだね、加東さん。ほらなんだか内火艇が弾んでいるように見えない?」

と言って古志野中佐と金子少尉は頷いた。

そのそばでナナが

「加藤副長さん、行ってらっしゃいー!」

と内火艇に向かって叫んでいる。

 

加東副長の目の前には青い海が広がり、久々以上にひさびさの副長の休暇が今始まった――

 

 (次回に続きます)

 

             ・・・・・・・・・・・・・・・・・

トレーラーでの「武蔵」のお話です。

加東副長、久しぶりの休暇を村上軍医長と共に過ごします。何かが起きなければいいのですが…。次回をお楽しみに!

 

 

今日(二四日)は急に涼しくなりましたね。夜なんか風が冷たいくらいでした。一昨日あたりからちょっと体調が崩れ、めまいに喘息の(軽くはありますが)発作が出始めています。おなかの調子も良くなくて閉口です。

皆様もどうぞお体お気をつけてお過ごしくださいね、そして大きな台風が接近中です。進路上にお住いの皆さまくれぐれもご注意くださいね!



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おしらせです

いつも「女だらけの戦艦大和」のご訪問くださってありがとうございます。

盆休みも終わりましたのでいよいよお話の続きを書きたいとおもっっております。
が。
台風接近により体調が崩れ喘息の軽い発作が出始めまた、めまいの持病も出ておりますのでもう少しお待ちくださいませ。

再開第一話はトレーラーで起きた事件をお送りします。「武蔵」のだれかが活躍するかもしれません!
どうぞお楽しみに!


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山梨--!

ご無沙汰しておりました、お久しぶりです!

夏休みを無事終え、今日から日常が還ってきました。

休みは、山梨県北杜市の山中で過ごしました。とても涼しくっていい思いをしてまいりました。湿気が少なく昼間にクーラーをつけなくて済んだというのは大変な驚きです。

吹きすぎる風はさわやかで昼寝も十分できました。

また今回は、母の従兄の家にお邪魔させていただき楽しい時間を過ごしました。このおうちはその昔大名を泊める旅籠のようなことをしていた家で今でも当時をしのばせる家の構えです。柳沢吉保が甲斐を治めていた関係でこの家にも来たようで、柳沢の地名を賜ったらしいです。

素晴らしい庭に古い造りのお宅にしばし、往時を思いました。

このおうちには母が幼いころよく尋ねて行ったそうです、懐かしいと従兄さんと話をたくさんしていました。そしてここでなんと、母にとっては自分の両親の、私にとっては祖父母の結婚式の写真を見せてもらいました。初めて見るものでした。

なんでも数日前に探し物をしていたら出てきたとのことで、まさに私たちの訪れを待っていたかのようでした。

写真の中の若い祖父母は素敵でした。

祖父は、りりしい男性でした。そして祖母はとてもかわいい楚々とした大和撫子。昭和10年頃、祖母は21歳くらいだったようです。その祖母の顔は私の母の若いころとよく似ていました。

ですが私はあまり似ていないので、私が不美人なわけがよくわかりました。

ともあれとてもうれしい発見をしました。

 

そして「山荘」周辺では18日、19日と野猿が出てきました。

18日は一日雨で、私と母で山荘にいたのですが母が「あれ!なに?」と窓の外を指さすを見れば、家の塀のそばに何か座っています…「猿だ!!」

私と母で窓のそばに寄って行くとサルもびっくりしたようでその赤い顔をこっちに向けて歯をむき出してから逃げ出しました。

怖かった…

と思っていたら翌日の夕方、庭でごみを燃やしていましたら遠くで犬が吠えて何か人がどなるような声も響いてきたので「??」と思っていたら長女が「猿だ!」と叫んでみれば家の前の道を猿が走ってゆきます。

そして一軒の家の屋根に飛び乗ってどこかに行ってしまいました。その後どこかのおっちゃんが「猿が来なんだけ?」と来ました。なんでもこのあたりでもサル被害が多く、そのおっちゃんの畑のブドウやサツマイモが食われてしまったのだとか。しかも、集団で…。

駒城の家でもサル被害が多いと聞いていたばかりなので、深刻なのだなあと痛感したところです。

 

いろんなことがあった今回の山梨滞在でしたが楽しかった!念願の台ケ原の『金精軒』にも行けましたし。そのそばの「七賢」さんにも行ってお酒を買ってきました。

来年もまた行きたいなあと思います。亡き父も大好きだったあの場所、また皆で行って楽しみたいと思っております。

 

山梨から帰ってくると、数日間は何か心が虚ろになる私。できたらあの場所にひと月くらい居たいなあ。そして読書三昧をしたい、と切に思うのでした(笑)。

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さあ、「女だらけの戦艦大和」も再開します。いよいよ『大和』抜錨間近です。ご期待くださいませ^^。



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