2014-11

「女だらけの戦艦大和」・結婚ものがたり10~始まったばかりの二人<解決編> - 2014.11.29 Sat

 その瞬間、次ちゃんは「あ――ッ!」と悲鳴を上げた――

 

山中大佐の砲身が、とうとう次ちゃんを貫いたのだ。

次ちゃんはその思い切り裂かれたようなひどい痛みに思わず知らず叫び声をあげてしまっていた。こんな痛みは今まで経験したことがない。彼女は

(私のどこかが…裂けてしまった。きっとこの後、朝を待たずに死んでしまうのに違いない)

と真剣に思って怖くなった。これまで激しい戦いの中に身を投じたことが幾度かあったがその時は「怖い」とか「死んでしまうかもしれない」と思ったことなど一度もなかった。なのに今、どうして?こんな大事な時に。それでも自分のあの部分には大佐がその根元まで入っている。これが…妻になる、夫婦になるということなのだろう。これでいいのね、大佐に確かめたかった。次ちゃんの思考は乱れた。

しかし走り出した山中大佐はもう止まらない止められない。次ちゃんにぴったりと腰をつけて激しく動いている。そして「次ちゃん、次ちゃん」と呼びかけながらさらに激しく動く。その動きに突き上げられながら次ちゃんはだんだんと、裂かれるような痛みが徐々に去ってゆくのを感じていた。そして時折走る<快感>に似た感じはなに?これなら死んでしまうなんてことはないのかもしれない、次ちゃんはそう考えて少し安心した。

山中大佐は長いこと次ちゃんを突きまくった。次ちゃんは大佐の動きについてゆくこともできず、彼のなすがまま揺すられている。どうしたらいいのかわからぬまま次ちゃんは身体の下になっている掛け布団をぎゅうっとつかんでいる。ずっとそうしていたせいか彼女の指は硬直して来た。

 

いつ果てるともつかない行為に、次ちゃんは少し気分が悪くなり始めて来た。だからと言って大佐が嫌いとか言うのではなく初めての行為に緊張しきってとうとうその頂点に来たということだろうか。(お願い、今日はもうやめて)と必死で願い始めたその時。

山中大佐は小さな叫びにも、うめきにも似た声を発して次ちゃんの上にその身体を投げ出すようにして――終わった。彼は愛しい野村中佐・次ちゃんの中にその愛のすべてを注ぎ込んだ。しばらく時間が過ぎた後、大佐は優しく次ちゃんから身体を離した。しかしまだ、彼の砲身は次ちゃんの中にあってその大きさを保っているようだ。

大佐は「痛かったですか?ごめんね…初めてだったのですね。乱暴にしてしまって、本当にごめんね」と謝るとそっと彼女に口づけした。唇が離れて、大佐は次ちゃんの目じりから流れおちる涙を手のひらで拭った。次ちゃんは「――平気です。これが、これが夫婦になるということなんですね。私達夫婦になれたんですね」とそっと言って微笑んだ。大佐はうなずいた。

涙を盛り上げた瞳がつけたままの電燈の明かりにきらきらして、大佐は再び自分の砲身がむくむくと脈打ち出すのを感じていた。

しかしそんなたぎりを悟られるのが気恥ずかしくて、「このままでは風邪をひいてしまいますね」というと、次ちゃんの中に自分を預けたままで彼女の体の下から掛け布団を引き出すと自分の背中に引っかけて次ちゃんをそっと抱き、「これで温かくなりますね」というと再び――次ちゃんを揺すり始めた。

今度はもう、次ちゃんの中にすっかり入っているのでなにもあわてる必要も無し、大佐はゆっくり楽しむように次ちゃんを突き上げその乳首をひねったりそこに舌を這わせる。

「ああ…大佐」と夢中で呼びかける次ちゃんに大佐は「むかしのように、しん兄さんと呼んでください」と言って彼女を思い切り突き上げた。次ちゃんはアッ、と小さく叫んだ後

「しん兄さん――」

と呼びかけ、それを合図に山中大佐は再び夢中で走りだした。先ほどよりも激しく突き進み大佐は「次ちゃん次ちゃん」とうわごとのように呟きながら彼女をめちゃくちゃに突きまくった。次ちゃんはその激しさに声を押し殺して耐えた。大佐はともすれば自分の下から逃げようとする次ちゃんをしっかり抱きしめ、さらに突く。

興奮で紅く色着いた彼女の乳首をその指先でぐいっとひねった、次ちゃんが「うう!」とうめいたその直後大佐は自分の砲身を思い切り締め付けられる感覚に「アアッ!」と叫ぶと又も、熱いものを次ちゃんの中に放って終わった。

 

どのくらいたったのか、二人は重なり合ったまましばらく眠ったようだ。心地よい疲れがそれぞれの身体を支配して、そして深い安心感が眠りを誘ったのだ。

深いがそれほど長くない眠りから、野村中佐が覚めると続いて山中大佐も覚めた。大佐は「次ちゃん、寒くはないですか」と言ってそっと身体を離した。ようやく彼の砲身は元に戻って、中佐の中から出ることができた。彼は中佐の浴衣を直し、その前をそっとかきあわせてやった。

時刻は〇二〇〇(午前二時)を回っていた。大佐は「今夜のところは寝ましょうか。次ちゃん疲れているのにごめんね…。明日は存分に寝坊しましょう。休暇中は普段できない事をしましょうね、いいですか決して早く起きたりしないでくださいね」と言って微笑む。

中佐も「はい。ではお言葉に甘えてそういたしたいと思います」とほほ笑んでそっと腰を動かした。と、先ほど裂かれた、と思ったあたりから何か熱いものが流れて来るのを感じ、「あ…」と小さく声を上げ浴衣の上から下腹部に手を当てた。大佐が「?」と彼女を見、その浴衣の前を開いて彼が今しがたまで入っていたところをそっと見るとその部分から中佐の乙女を奪った証が流れていた。浴衣が赤く染まっている。

「次ちゃん!大丈夫か?…どうしよう、私が激しくし過ぎて次ちゃんを壊してしまったのだろうか」

大佐はおろおろしながらたんすの引き出しにしまっておいた桜紙を持ってくると中佐のその部分に何枚かを丁寧に畳んでそっと当てた。そしてハッと気がつき例の<新婚初夜の医学事典>の存在を思い出すと、寝台の下に落ちてしまった本を拾い上げページを繰る。そして該当するページを探し当てそれを丹念に読んだ大佐は「そうか…そういうことなのか」と納得した。

やはり次ちゃんは乙女だった。

中佐へのいとおしさが胸の内にあふれて来る。大佐は次ちゃんをしっかり抱きしめて

「私のところへ嫁いできてくれてありがとう。私の長年の夢が今日、かないました。これからもしかしたら苦労もあるかもしれませんが、一緒に乗り越えましょう。私はあなたとならどんな苦労も厭いませんよ」

と囁いた。中佐も

「私こそ…こんな私をずっと長い間待っていて下さったあなたに感謝いたします。私もどんな苦労でもあなたとなら耐えて乗り越えて行けます。どうかよろしくお願いします」

というとそっと大佐の背中に両手を回し、彼を抱きしめたのだった。

 

そして二人は今度こそ安心して眠りに就くことができた。山中大佐は次ちゃんを抱きしめて眠り、次ちゃんは大佐に抱きしめられて眠る。中佐は今までの海軍生活がうそのように思えてくる。たとえ三週間でもあの忙しさから解放される…夢のような時間の始まりであった。

深い海の底に落ちてゆくような錯覚に陥って、中佐は眠った…

 

昨晩は遅くに眠ったのに中佐は朝は〇五三〇(午前5時30分)にはもう目が覚めていた。(朝御飯の支度をしないと)そう思ってそっと寝台から降りかけた中佐の手を、山中大佐はつかんで制した。そして

「今日は起きたらだめです。今日は一日こうして過ごすと私が決めたんです」

と言って微笑んで見せた。中佐は布団の上に正座すると「それでも」と言った、「お食事どうします?おなかすいたのではないですか」。

すると大佐は半身を起こして妻を引き寄せると「昨日、ねえさんが料理を折りに詰めておいてくれました。それを食べればいいんです――今日は、せめて今日はこうして過ごしたいんです」と囁いた。中佐は

「まあ…」

と言って頬を赤らめた。大佐は、中佐を布団の上に寝かせると

「三週間の休暇なんてあっという間に過ぎてしまいます。休暇が終わったら次ちゃんは又『大和』に帰ってしまいます。毎日会えなくなるでしょう…私は正直それがつらい。だから今のうちはこうしていたいんです」

と言って中佐に口づけた。中佐の体に電撃のように大佐への愛しさが走り抜け、彼女は夢中で大佐を抱きしめていた。大佐もそれに応えるように妻の体を思い切り抱きしめそして――彼女の体の奥へともう一度、入って行ったのだった――

 

長い時間が過ぎて日が高く上った頃、ふたりは一時停戦して大佐が「お茶淹れてきますからそのままでいて下さいね」と下へ降りて行った。「すみません」と言って中佐はけだるい体を起こした、その時、大佐の枕の下に何かが見えふと手を伸ばしてそれを引きだした中佐の顔が驚きの表情になった。それは例の<新婚初夜の医学事典>、彼女も十分見覚えのあるもの。

本の間に棗大尉直筆の紙帯が挟まっていて「どうしてこんなものがここに?」と小さく叫んだが、ハッと気がついた。もしかしたら私室に不在中に大尉がこっそりと荷物の中に忍ばせたのかも、と。(棗大尉なら、さもありなん)

そして昨晩大佐が時折何かをしている――紙をめくっているような気配がしたが――あれは、この本を見ながら<勉強>していたのだと思い当たると何か笑いがこみあげてきた。そして<医学事典>をそおっと元の枕の下へ戻した。

(お互い初めてだったのですものね)

さらに幸せな気分に支配された中佐、そこに「お茶ですよ」と緑茶をなみなみついだ湯呑を二つ載せたお盆を持って大佐が戻ってきた。

「ありがとうございます…すみません」

とそれを受け取った中佐に、山中大佐は微笑んで「次ちゃん喉が渇いたでしょう。これを飲んだら、また続きをね」といい…ふたりは何か気恥ずかしくて下を向いてしまった。しかし再び視線を交わした時、今までより堅くゆるぎないきずなが、互いの間に結ばれていることに気がついたふたりであった。

(何があっても)

(どんな時でも)

ふたり寄りそって力を合わせれば、きっと不可能などない。互いの瞳はそう、語っている。

 

そんなころ、三朝温泉の宿では山中大佐の兄夫婦と野村中佐の両親が語らいを楽しんでいる。ふと、兄の山中一矢は(あいつ…忘れなかっただろうなあ)と弟を思った。(あいつは昔っからここ一番でどでかい忘れ物をしやがるからな。まあ忘れても別にいいんだがあまり早くてもなあ)

その兄の心配は大当たり、弟の新矢はすっかり忘れ去っている。

そう、「ゴムかぶと」を装着して事に及ぶのを。そして一矢がひそかに心配しているその最中も大佐は次ちゃんを愛しまくっている――抜き身のままで。

            ・・・・・・・・・・・・・・・・・

うれし恥ずかし新婚初夜が明けましたが――なんだなんだ!?大佐は、今日一日をそうやって過ごすつもりのようです。意外と絶倫。

と言っても休暇が明けてしまえば毎日は会えない二人ですからこの時とばかりに、というのは解る気がしますね。そして大佐、お兄さんから言われたものをお忘れのようですが大丈夫なのかしら?まあこればかりは神のみぞ知る、ということで。

 

次回から新しいお話です。今度は誰が主人公になるでしょうか、お楽しみに。

 

カーペンターズ「愛のプレリュード」。アメリカでは結婚式での定番曲だったとか!


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「女だらけの戦艦大和」・結婚ものがたり9~長い夜の始まり - 2014.11.26 Wed

 野村中佐は二階の寝室に当てられた部屋のドアをそっと開けた――

 

十二畳ほどの広さの洋室に寝台が置かれそこにはすでに婚礼布団が延べられている。中佐は急に気恥ずかしくなって布団から視線を外した。この婚礼布団は中佐の両親が買って贈ってくれたものである。中佐は部屋をそっと見回した。大きな窓、外はベランダになっている。その窓にかかるカーテンをそっと中佐は開けてみた。漆黒の、春の闇の向こうに呉湾が広がり、(たぶんあのへんに『大和』が碇泊しているはず)と思ったあたりを見つめ中佐は『大和』の皆に今日の礼を心で言った。

そしてカーテンを元通りに閉めて壁の前の婚礼たんすを見つめた。これも両親が贈ってくれたもの。中佐は(あれこれしてもらって申し訳なかった…いつか恩返しせねば)と考えた。

そして中佐は、寝台の脇に正座をして夫を待った。やがて階段をとんとんと登ってくる足音がして、中佐は三つ指ついて頭を下げた。ドアが開き「おお!次ちゃん」と大佐の少しばかり驚いたような声がした。中佐は頭をそっと上げた。浴衣姿の山中大佐は、「床に座っていたのですか?体が冷えてしまいますよ」と言って中佐の肩に手を添えて、立ち上がらそうとした。中佐は夫の瞳をまっすぐに見つめると

「山中大佐。不出来な、ふつつかな私ではございますがどうぞ、末永くよろしくお願いいたします」

と初夜のあいさつをして再び頭を下げた。山中大佐の心に愛しさと嬉しさと…さまざまな感情がないまぜになって噴き上げてきた。我慢などもうできなかった。いきなり次ちゃんを抱き上げると寝台の上に放り投げるようにして置いた。

あ、と小さな声をあげて中佐は一瞬逃げの体勢を取った。が昨日日野原軍医長から言われた言葉が脳裏によみがえった。軍医長は、男性経験のない中佐を心配してあれこれ教えてくれたのだがその中で「どんなに乱暴に扱われても逃げたりしてはいけませんよ。男性と言うものは時として制御が聞きにくくなる時もあるのです――特に愛しい人を前にすると。その時が来たらそっと目を閉じていればいいです」と教えてくれた、その時が(今なんだ)と腹をくくって堅くまぶたを閉じた。

なにをされるのだろう?

そう思った瞬間、大佐の身体が覆いかぶさってきた。そして「次ちゃん。私こそ不出来な男だけれどどうぞよろしく願います。私は次ちゃんと一緒になれて最高にうれしいですよ」とその耳元で囁いた。大佐は身体を固くして怖がっているような次ちゃんを見て、先急ぐのをしばし停めたのだった。中佐の胸が嬉しさやら愛しさがいっぱいになった。中佐がそっと目を開けて「私も」と言いかけた時、その唇が大佐のそれでふさがれた。長い口づけ、そして大佐は唇を離すと無茶苦茶に中佐を抱きしめ息を荒げて彼女が着ている浴衣のひもを解いた。荒っぽく浴衣の前が開かれて次ちゃんの白い胸があらわになった。初めて男性の前にその素肌をさらした次ちゃんは羞恥で全身を染めた。山中大佐は「次ちゃん…とうとう私達…」と片手で次ちゃんの体を抱き、もう片手で彼女の乳房の片方をつかんだ。思いがけない力強さでそこをつかまれた次ちゃんは「ンン…!」と声をあげていた。

その声に誘発されたのか大佐は次ちゃんの乳房の先、かすかにふるえている乳首を噛みつくように吸った。次ちゃんは驚いて又声を上げかけたが、行為の際に大声を出すのははしたない、と教えられていたので必死に歯を食いしばってこらえた。大佐は次ちゃんの左右の乳首を噛みつくように吸ってそしてその片手が彼女の体を撫でて、そしていよいよ下へと降りてきた。

次ちゃんはまるで今さっきまでの大佐とは違う人みたいだ、と少しだけ怖くなった。それでも昨日日野原軍医長から「そういうものですよ。しだいに慣れますから」と言われたのを思い出し唇を噛んで耐える。

大佐は次ちゃんの肝心部分にそっとその手を当てた。彼の手は熱い、その熱い手で彼女のその部分を撫でまわした。次ちゃんはもう全身を羞恥に染め、まぶたを閉じて息が荒い。大佐の手が、次ちゃんの薄物色の下帯をそっと解く。次ちゃんの膝が固く閉じられた。

大佐は(これからどうするんだっけ…ああ!あの本を)ともう片方の手を伸ばして枕の下からあの<医学事典>を引きだした。次ちゃんは眼を閉じたままだから大佐のしていることは解らない。大佐は「次ちゃん」と言って膝を解かせその両足を大きく開かせた。次ちゃんの頬が真っ赤に染まり顔を横へ向けて恥じらいいっぱいの表情である。

大佐はまず、あの図解の部分に見入った。それから(え?ココ??ここでいいのか?)と図解と次ちゃんのそれを見比べた。そして次ちゃんのその部分にそっと指先を当てて<ココニ挿入イタシマス>というあたりまで指先をそっと下ろしてゆく。

「あ!」

次ちゃんの一番敏感な部分に指先が当たり次ちゃんの体はビクン、と跳ねた。大佐はその反応に驚きながらも(もう少し、下)と指をさらに下へとなぞる。そして大佐はついにそこを見つけた。

「よし!」

思わず声が出てしまい、ハッとして次ちゃんを見たが彼女は恥ずかしさで眼を閉じたまま。少しほっとして大佐は次の行動に出ようともう一度本に目を落とす。するとそこには<女性ノ潤ヒヲ、ヨク確メマセウ。潤ハナヒ内ニ、性急ニ挿入シテハナリマセン>とあり、(潤い?どういうことだ)と大佐は思ったがふと、以前に仲間たちがヘル談でそういう話をしていたのを思い出して次ちゃんのそこを触ってみた。潤っているとは言えない――(私のやり方がよくないのかな?)そう思って大佐は話にきいていたように次ちゃんの胸を愛撫してみたり吸ってみたりあるいは肝心部分を撫でさすってみたりした。

次ちゃんはだんだん、頬を上気させハアハアと喘ぎ始めた。(おお、感じてくれている)と大佐は嬉しくなった。そのとたん、またも激しい感情が彼を突き上げ大佐は「次ちゃん!」と叫ぶと彼女の足の間に自分の腰を入れて突き進み始めた。

が、彼の熱いものは次ちゃんのその部分からは少し外れている。外れたままで次ちゃんを求めて押しまくっている。しかし大佐はもうそんなことには構いなしのように一途に彼女を押しまくる。そして柔らかい乳房をつかみその先を吸いまくる。

「うう…」と声を押し殺してうめく次ちゃんに大佐は「声を出していいんですよ、誰もいませんから。思い切り声を出して下さい…」と話しかけていて自分でもその意外な言葉にびっくりしている。(私は…案外スケベなのかもしれない)

そう思うとなんだか大佐のうちに妙な力が湧いてきた。(私は次ちゃん一人の為にならスケベになれる!)そう自分に宣言するとなんだか気が楽になり変な緊張感がすうっと溶けていった。そして礼の図解を横眼でもう一度確かめると

「行くよ次ちゃん。これであなたは私の妻ですっ!」

と叫ぶように言うと――次ちゃんの胎内へ向かって肉弾を突き入れはじめた。

その頃には次ちゃんも何とか潤い始めていたものの本気の進撃に全く心の準備もなにもなくただ驚くだけ、そして初めてのあの痛み。今まで艦長たちにされていたこととは全く次元の違う痛みに、次ちゃんは混乱をきたしていた。

「ダメ…山中大佐。痛い…」

次ちゃんは泣きそうな声で訴えたがそれではいそうですか、とやめてくれるわけもない。その声を聞いて余計に大佐の欲望に火がつく。文字通り我と我が身を奮い立たせて次ちゃんの奥へと進もうとその腰をねじ込んで来る。しかし次ちゃんは<男性経験>がないため簡単に大佐を受け入れることができない。大佐は次ちゃんが布団の上を背中で逃げるのを抑えるようにしているがそれでも彼女はどんどんずれて行く。

とうとう次ちゃんの両足首をつかんでグイッと自分の方へ引き寄せ、抱き直してもう一度挑戦する、がうまくいかない。片手をあの部分に当てて(潤いが少ないな)と首をひねった。どうしたらいいのだろう。困って例の本をそっとめくると<女性ハ耳元デ『イトシヒ』『ダヒスキダ』ナドト愛ノ言葉ヲ囁カレテ乳房ヲ愛撫サレルト潤ヒガ増シマス>と書いてあるではないか!!

そうかそうかと大佐は進撃を一旦ストップし、次ちゃんを優しく抱いた。そして「次ちゃん」と囁きかけた。次ちゃんが眼を開けてちょっと首をかしげるようにして大佐の目を覗き込んだ。その可愛いしぐさに大佐はたまらなくなりつつもたぎりを必死で押さえて

「ごめんね乱暴にしてしまって。夜は長い、あせらないで夫婦になりましょう」

と言ってから次ちゃんの乳房に手を当て、その先を指でこねつつ捻りつつ「次ちゃんが大好きだ」「海軍一きれいで賢い次ちゃんが大好き」「どんな花よりずっときれい」「ずっと抱いていたい」…等々囁いた。次ちゃんの瞳がうるみ始めた。

そして「私も、大佐が大好きです」と言った。山中大佐は「私は昔から――そう、悪ガキだったあのころからあなたが大好きです」と言って彼女の乳首を吸う。ああん、と小さく次ちゃんがうめいた。大佐は「亡くなった私の両親も『野村の次子さんと結婚できるといいね』とずっと言っていましたよ。私達の晴れ姿を見せたかった」と言った。次ちゃんはうなずいて「それだけが残念です」と言った。

大佐は「次ちゃんは…ほかに好きな男の人はいなかったの?」とそっと尋ねてみた。内心気にになって仕方がなかったことだった。答えを聴くのが怖かったが聞きたかった。

次ちゃんは、まっすぐ大佐を見つめると「ずっと…すっとしん兄ちゃん――山中大佐の事が好きでした。今でも、これからもずっと」と言って、大佐は「次ちゃん!」と叫ぶともう一度次ちゃんの奥を目指して動き始めたのだった。

大佐、と呼びかける次ちゃんに「しん兄ちゃんと呼んでくれ」と頼み、大佐は必死で次ちゃんの中に入ろうと熱いものを次ちゃんにあてがい、ねじ込む。

もう、次ちゃんはしっとりと潤っているのだがそれでもなかなか大佐を受け入れるのが難しそうである。痛い、痛いと泣き始める。大佐は「もう少し、もう少しだから頑張って」と励ましながら又も離れようとうする次ちゃんの両ももを抱えて引き寄せる。

いつしか、<医学事典>に頼ることなく大佐は自らの中の天然自然に導かれて次ちゃんに入り込もうとしていた。もう、大佐自身は熱く燃え、次ちゃんを求めてドクドクと脈打つようにさえ感じられる。大佐はもう、これ以上我慢が出来ない、そう思った瞬間。

「次ちゃん!」

そう叫ぶと次ちゃんに思い切り体を押しあてた。

「あ――ッ!」

次ちゃんが悲鳴を上げた――

   (次回に続きます)

 

               ・・・・・・・・・・・・・・

遂に始まりました。新婚初夜!!

しかしどちらも経験がないのでたいへん苦労をしております。例の<医学事典>もちょっとは役に立っているようですが。はたして夜が明けるまでにふたりは夫婦になれるのでしょうか!?

こうご期待です。

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「女だらけの戦艦大和」・結婚ものがたり8~娘をよろしく - 2014.11.24 Mon

 列席の一同が写真撮影と、零戦の祝賀飛行に見とれている間に大広間はすっかり披露宴の準備が整えられた――

 

今日の一番の世話役の藤村少尉が軍帽に白手袋をつけて「皆さまお待たせいたしました。御披露の宴の準備が整いましたのでどうぞご着席ください」と呼びに来た。そこで参列者はぞろぞろと中に入り、その一番あとを山中大佐の兄夫婦と野村中佐の両親がひそやかに、仲良く言葉を交わしつつ行く。

山中大佐は「私はどうしたらいいのだろう?」と藤村少尉に尋ねた、藤村少尉は「ご新郎様には大広間横のお部屋にてお待ち願います。ご新婦さまにはお化粧直しと打ちかけのお掛け替えがございますので、終わりますれば記念撮影のあと、ご一緒にご入場となります」と説明し、山中大佐はおとなしく広間の横の部屋に入る。

野村中佐と藤村少尉は着替え用にあてられた部屋に入り、そこで中佐は白無垢のうちかけを脱いだ。そして控えていた化粧担当の女性が化粧直しを手際良くする。

その女性に中佐は「ありがとうございます。お疲れになりませんか?本日は夜までお世話になると伺いました、どうぞよろしくお願いいたします」と謝意を述べ、藤村少尉に「あなたもありがとう、そんなに硬くならないで、肩の力を抜いて頂戴」と緊張をほぐしてやり「お手伝い下さる皆様へのお食事をお願いね」と頼むのも忘れなかった。

藤村少尉は微笑んで「はい、ぬかりありません」と答え中佐はほっと微笑みを浮かべた。そして副長は色うちかけの写真を撮影。

 

そして新郎新婦、披露宴への入場。

大広間のふすまが開き、まずは山中大佐が緊張この上ない表情で入り列席者の前を歩き金屏風の前の座布団の手前に立って新婦を待つ。式の時も緊張しきっていた大佐だがさらに度合いが増したようでもある。そのあとを、藤村少尉に手をとられた野村中佐が豪華な色うちかけで入場すると列席の人々の間から軽いどよめきが起こった。うちかけの紅の地には桜の花が爛漫と咲き誇り、花弁が舞う。その下には波を蹴立てる軍艦と、その上を行く零戦の刺繍が施された品よくも素晴らしい色うちかけである。それが昼下がりの春の、うらうらとした日差しが差し込む広間の中で夢のように映る。

「なんとこれは素晴らしい。海軍士官嬢の嫁入りにふさわしい色うちかけだ。しかもこれほどの衣装を着こなす女性もなかなかおるまい」

と山中大佐の部下の益川中佐が感心して呟いた。その色うちかけの紅が色白の中佐の顔にほんのり照って美しさが増す。角隠しの下の中佐の瞳が感激でうるんでそれが山中大佐をはじめとする男性陣の心をそそった。(こんなに美しい人を娶れる山中大佐、実にうらやましい)と言う感情が彼の同僚・部下の間に広がっている。さらに、子供のころから好きだった中佐の事を探し続けてやっと巡り合えたという大佐の話を聞けば(本当に良かった)とこころから思う彼らである。

梨賀艦長は上座にあって副長の晴れ姿に感涙を禁じえなかった。式の最中も涙腺が緩んで仕方がなかったがここに来てもうどうにも我慢できないほどにその瞳は濡れている、自分の片腕として頑張ってくれている野村中佐、大事な中佐の幸せを心から祈る。森上参謀長も、繁木航海長以下の科長たちも感激に言葉もない。皆、今までの野村中佐の<副長>としての苦労を知っているからなおさら今回の祝言が嬉しくてたまらない。

そしてそれまで何も言わなかったがにこにこと上機嫌な日野原軍医長が「三国一の花嫁御寮ですね。そして三国一の花婿様。最高の組み合わせだ」と言ってその場の皆は大きくうなずいた。

藤村少尉に導かれて中佐はそっと座布団の手前に立つと二人は皆に頭を下げそして着席。山中大佐と野村中佐は互いに瞳を見交わすとそっと微笑んだ。

そして江崎少将から祝いの言葉のあと乾杯の発声、皆で杯をあげ新夫婦の誕生を心から喜んだ。ここから楽しい宴の始まりである。

酒や料理が次々運ばれ、祝いの歌や祝辞が延べられ笑いが起きたり拍手が起きたり、時に大佐や中佐の兄や親たちにも水が向けられ恥ずかしがりつつも謝辞やそれぞれの子供時代の思い出などを述べる一幕もあった。

宴はすっかり日が落ちるまで続いた。そしてとうとうお開きとなり、江崎少将が「では…お開きとする前に新夫婦から御挨拶を頂戴しましょう」と言ってふたりは居住まいを正すとまず、山中大佐から本日集まってくれたことへの感謝の意とこの先の生活への希望や仕事への意欲を熱く語った。そして

「私は長いことこの日を待っていました。そしてやっと願いがかないました。嬉しくてたまりません…次ちゃん私はあなたを生涯大事にします!ここに宣言しますっ!」

と力強く言って満場の拍手を浴びた。中佐は恥ずかしげに聞いていたが夫を見つめてそっと頭を下げた。

中佐は

「身に余るお言葉をいただき光栄の一言に尽きます。私のようなものをずっと思ってくださっていた大佐の御恩に報いるよう、私も家庭と軍務をしっかり頑張る所存です。そして皆さまにはこれからも私どもをお見捨てなく、よろしくお願いいたしとう存じます。――私も、大佐を生涯大事に、そして何処までもついてゆきます」

としっかり宣言し皆は一層喜んで手を叩いた。大佐の兄夫婦と中佐の両親がそっと眼がしらを拭っていたのを、梨賀艦長は見て(素晴らしい二人ですよ、皆さんの御訓育の賜物です)と心の中で祝ったのだった。その心が通じたのだろうか、大佐の兄夫婦と中佐の両親が梨賀艦長を見てそっと礼をした…。

 

新夫婦は列席者を玄関で見送った。江崎少将は「よい休暇を過ごしなさい。本当におめでとう、私は嬉しいよ」と言って上機嫌、その妻も中佐に「何か困ったことがあれば相談して下さいね、近くに居ますから頼ってくださいね」と言ってその手をそっと握った。この妻もかつて海軍生活を送ったので中佐の心配のあれこれを悟っている。「大佐のお姉さまはあなたの上官だったのね、力強い味方がいて良かったわね」そう言って微笑む少将の妻に中佐は「はい。奥さまには何かとお世話になることと思いますがそのせつはどうぞよろしくお願いいたします」と挨拶した。

工廠の技術士官たちは酒に軽く酔って機嫌よく、山中大佐の紋付の肩を叩いて「いい休暇をな。研究の事は今は忘れて楽しめよ」と言い、大佐は「ありがとう。休暇が終わったら一層頑張りますよ」と言って笑った。

日野原軍医長が副長に「全て忘れて休暇を楽しんでくださいね、休暇中は思い切り朝寝坊をしてみたらいいですよ。普段できない楽しいこと嬉しいことに没頭するのも大事なことですからね」とそっと話しかけ、副長は嬉しそうに「はい」とうなずいた。

皆は大きな引き出物の袋と折詰を手にして少し名残惜しげに山中家を後にしたのだった。

 

後に残った大佐の兄夫婦と中佐の両親はこれからどうするのかと言う大佐の問いに

「私達、四人でしばらく三朝温泉に行ってきます。だからあなたたちは水入らずで楽しんで頂戴ね」

と早くも仲の良いところを見せ付けた。これはシズの提案で大事な娘を嫁がせて寂しい想いの野村の両親を、環境を変えて気分を盛り上げさせようという配慮である。

そしてもともと中佐の家族と山中大佐の家族は隣同士であったから気心知れているし兄一矢の妻シズも海軍士官だったという関係から気張る必要もない。シズ本人が気さくな人柄だというのも幸いした。

シズと中佐の母が顔を見合わせて微笑み、母が「あなたの休暇が終わる前に一回ここに来させてもらいますよ」と言った。

その頃にはすでに大広間は綺麗に片づけられ、風呂も沸かされていた。中佐の母とシズが一日手伝ってくれた女性たちと藤村少尉に心から礼を言って「わずかですが」と心つけを渡した。藤村少尉は断ったが「気持ちですので」と言う親の気持ちに負けていただくことにした。

 

野村中佐は先に衣装を脱ぎ、髪もほどいて先に風呂に入ることにした。大佐が「次ちゃんは疲れているだろうから先に風呂にゆっくり入りなさい。私は後でいただくから」と勧めたしシズも「分隊長、そうしなさい。これは命令よ。今日のあなたは大任を果たしたのですから」と笑ったのでそうしたのだった。山中大佐も紋付き袴を脱ぎ、普段着に換えほっとした。

手伝いの女性たちと一緒に、花嫁衣装をたたみ、風呂敷に包みながら中佐の母が「こんなに素晴らしい衣装を着ていい人の元へお嫁に行けたあの子は幸せです」と言った言葉が皆の印象に残った。

そして中佐が風呂に入ったのを合図に山中・野村の四人と手伝いの女性たち、藤村少尉は家を出た。山中大佐は玄関先まで出て深く頭を下げると「お気をつけて。ありがとうございました」と大きな声で言った。野村中佐の父親が大佐の両手をつかんで

「新矢くん、娘をよろしく!」

と万感こもった声で言った。大佐は岳父の思いをしっかり受け止めて「はいっ!任せて下さい」と言って、父親は満足げな笑顔を見せた。兄の一矢が「聞いたぞ新矢、しっかりしろよ」と言った。いつにない真面目な兄の顔に大佐は気持ちと表情を引き締めた。

 

藤村少尉は几帳面な敬礼をして「野村中佐をよろしくお願いいたします」と言い、大佐はそれに深くうなずいた。藤村少尉は踵を返して皆のあとを追ってゆく。

皆の姿が坂の下へ見えなくなると大佐は家に入り玄関のカギを締めた。そしてあわてて二階へ駆けあがると寝台の上の掛け布団をはぐってあの本をとりだした。

心なしか震える手で棗大尉の手製の紙帯を取り、表紙を開く。逸る心でページをめくると「序章」として

>新婚初夜をお迎えのあなたへ

として男女それぞれの心得が書いてある。大佐は女性向けの部分をすっ飛ばして男性向けのページをめくった。

が、(肝心なことが書いてない!)と大佐は愕然とした。すなわち――大佐は彼女の何処にどうすれば所期の目的を達成できるのかということが。

大佐にはその経験が一度しかなく、それも玄人の相手に奪われるようにしての初体験だったので細かい事まで理解していなかったのだ。(困った…これでは本当に次ちゃんに嫌われてしまう)

ではその次ちゃんにすべてお任せと言うわけにはいかない、大体が次ちゃんだって男性経験がどれだけあるのかもわからない。(彼女はその経験はないだろうと兄貴は言ってた。きっと間違いないだろう、だとしたら!ああどうしたらいいのだろう)

大佐は頭を抱えてしまった。そうしながら本を見つめていると袋とじがあることにやっと、いまさらながら気がついた。

なんだこれは?と見ればそこには「初めての男性のかたへ」とある。大佐はさっそく袋とじを開いてみた、すると!

見開きいっぱいに女性の肝心部分の細密画が描かれてご丁寧に「この部分に挿入いたします」と矢印つきで解説してある。大佐は大感激して「これはありがたい、ではこの本を枕の下に置いて」とその部分を丁寧に手で押さえて枕の下に入れ込んだ。

そしてもう一度掛け布団を直すと下の部屋へと降りて行ったのだった。

 

山中大佐がそんなこんなでうめいたり喜んだりしているころ野村中佐は身体と髪をすっかり洗い、湯船につかってとろとろとうたた寝をしていた。疲れてもいたし、この後始まるはずの「初夜」の事を考えて昨晩から怖いような気がして眠れなかったのだ。

五分ほど経って中佐はやっと浅い眠りから覚め風呂を上がった。身体と髪を丹念に拭いて、浴衣が用意してあったのでそれを着つけた。風呂から出て大広間を覗き込むとすっかりかたづいてがらんとした畳の広間はなにか寂しげに感じられた。雨戸もすべて閉まって外の音もあまり聞こえてこない。昼間のにぎやかさがうそのように静まり返っている。

(みな、帰ったのですね)

そう思うと何か中佐は寂しくなってこの世界にたった一人でいるような錯覚さえ覚えた。涙が湧いて来た時背後の部屋のふすまが開いて

「ゆっくり出来ましたか?湯冷めしないように」

山中大佐が出てきた。中佐はあわてて「お先にお風呂、いただきました。ありがとうございます」と言って礼をした。その中佐に微笑みかけ「では私も入ってきます…二階に居て下さいね」と言うと大佐は湯殿の扉を開けて入って行った。

中佐は二階への階段を静かに上がり、二人の寝室のドアを開いた。

大きな寝台、その上に敷かれた婚礼布団が中佐の目に飛び込んできた――

    (次回に続きます)

 

               ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

豪華な色うちかけに身を包んだ花嫁の野村中佐、男性陣の心をわし掴みにしたようですね。それに『大和』の科長たちも副長の幸せを祈ってくれています。

そしていよいよ、山中大佐と野村中佐の<初めての夜>が来ます。首尾よく行くでしょうか、次回をお楽しみに!

 

はしだのりひことエンドレス「嫁ぐ日」。「凡児の娘をよろしく」(1972461979329フジテレビ系列で放映。関西テレビ制作)の主題歌。

今でも大好きですこの歌!


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「女だらけの戦艦大和」・結婚ものがたり7~瀬戸の花嫁 - 2014.11.23 Sun

 野村中佐を乗せた内火艇は上陸桟橋に静かに横付けされた――

 

野村中佐の両親が駆け寄ってきた。父は羽織はかま、母は黒留め袖。中佐は藤村少尉の手助けで内火艇から桟橋に降り立つと両親に向かって一礼した。白い角隠しの下の美しい顔が両親を見て微笑んだ。数瞬の間娘の晴れ姿に見とれていた中佐の母が「次子さん…きれいですよ」と少し涙ぐみつつ言い、父親は満足げな笑顔で何度もうなずいていた。

そこに一種軍装に身を包んだ衛兵所長がやってきて

「本日は誠におめでとうございます。野村中佐の末長いお幸せを衛兵所員一同心からお祝いいたします。早速ではございますが自動車が参りましたのでご案内いたします」

と言った。藤村少尉は「では、参りましょう」と副長の手を取り直して言い、副長は内火艇の艇長を見返ると「どうもありがとう、気をつけて艦へ戻ってください」と礼を言った。

そして一行は花嫁姿の副長と介添えの藤村少尉を先頭に歩き出す。衛兵所を通るときには一種軍装に身を包んだ所員嬢たちが一斉に敬礼する前を一行は通ってゆく。中佐は彼女たちに軽く会釈して微笑みかけながら通り過ぎ、皆は「綺麗じゃわあ!ええなあ、うちもあやかりたいわ」と身もだえる。

 

黒塗りの立派な自動車は梨賀艦長が呉鎮守府に掛けあって借りたもの。艦長は「全海軍期待の弩級艦・『大和』の副長の嫁入りなのだ、しかも相手は呉海軍工廠期待の星の大佐である。その嫁入りに町なかの埃だらけの道を延々あるけと言うのか!みっともないことはさせられない!どうあっても一台都合してもらいたい。できないとあれば…」と誰も貸さないなどと言ってもいないのに半ば脅すように言って借りることに成功したものである。

その自動車に、まず副長が乗り込み続いて両親が、そして最後は藤村少尉が助手席に乗り、鎮守府からの運転手役の兵曹長がドアをそっと閉め運転席に入り、エンジンがかかる。自動車は、山中大佐の待つ家へと一路、走り出した――

 

その頃丘の上の一軒家では山中大佐が愛しい野村中佐の到着を今か今かと待っている。羽織はかま姿で立ったり座ったりと落ち着きにまったく欠ける。黒留め袖のシズが笑いながら「新矢さんちょっとは落ち着きなさいよ。自動車で坂の下までいらっしゃるそうだからすぐわかりますよ…いらしたらお知らせするからお座りなさいな」と言って大佐を座らせる。

これも羽織はかま姿の兄の一矢も「おお。お前はそこで今夜の予習でもしとけや」と笑いながら声を掛けシズに「あなた昼間からへんな事言わないでくださいねっ」と叱られる。手伝いに来ている山中大佐の部下や近所の女性たちも笑うが、めでたい日だけにどの声も笑いを含んで険がない。笑いがはじける。

大佐は時間と体をもてあまし気味で、ふいと席を立つと二階の部屋に上がった。ベッドの上には中佐の家から運び込まれた婚礼寝具がすでに延べられ今宵新婚の二人がそこに身を横たえるのを待っているようだ。

大佐は部屋を見回した。中佐の家からはほかに鏡台やタンスが二棹搬入されている。そして中佐のカバンが一つ。

「おお、このかばんの中のものをたんすの引き出しに入れておくんだった。忘れていた、いかんいかん」

と大佐はあわててカバンの口を開いた。中には風呂敷に包まれた中佐の私物――おそらく肌着やなにかだろう――がいくつかあって、大佐はそれをそのまま引き出しにそっと入れておいた。いくらなんでも女性の肌着をじかに触れるわけにはいかない。

すべて出し終えてふとカバンの底を見れば一冊の本が入っている。「なんだ、何の本だろう」と取り出して見れば本には「おめでとう野村中佐。これでしっかりお勉強なさってね。ご主人さまもご一緒に。謹呈・棗佐和子海軍主計特務大尉」と手書きの帯が巻かれている。「は!?なんだこれは…結婚祝いの贈り物か?」と本のタイトルを見ればまあなんてうれしい…「新婚初夜の医学事典」ではないか!

大佐はニヤニヤとして本の表紙を手のひらで撫でると「これはありがたいものを頂戴して…さっそく今夜」とベッドの掛け布団をはぐってそこに入れ込んだ。(いよいよ今夜、次ちゃんと)と山中大佐は思って胸を高鳴らせたが階下からの

「坂の下に自動車が来ましたよ!新矢さん、お出迎えの準備を」

と言う兄嫁の声にハッと我に返って「はーい。今行きます」と叫んで階段を駆け降りた。

 

大佐の家の下、坂道を三分の二ほど上がって自動車は止まった。ここから先は道が細いので自動車は入れない。副長たちは自動車を降りた。副長の両親そして副長は心から運転の兵曹長に礼を言った。副長は「艦長がご無理を申しあげたのではないですか?鎮守府長官によくよく御礼申し上げて下さいませね」と言って頭を下げ、兵曹長はあわてて「そのようなこと…全く平気であります…。どうぞお幸せに。心よりお祝い申し上げます」と敬礼。そして副長と藤村少尉を先頭にそのあとを両親がついて坂を登る。副長は(この坂、最初来た時は急に感じたけど今はそんなに感じない…どうしてかしら)と少し不思議に思っている。それはきっとあの日は初めて男性の家に行くという緊張感があって、それで坂をきつく感じさせたのかもしれない。

自動車がついた時から近所の人たちが「お嫁さんじゃわ」「婚礼があるんじゃ」と言って集まり見送っている。副長は何か気恥ずかしいがシャンと背を伸ばして歩き続ける。

と、藤村少尉が立ち止まり「野村中佐。『大和』からお祝いが」と言って後ろを見返った。え、大和から?と副長も見返ると「大和」がその姿をきらきら光る呉湾に浮かべているのがよく見えた。

そして「オメデトウ オメデトウ タイヘンウツクシイ セトノハナヨメ オシアワセニ ノリクミインイチドウヨリ」と発光信号が読み取れた。これは山口通信長からの餞である。

「みんな…」副長は涙をグッとこらえて『大和』へ一礼した。両親もそれにならって一礼。そしてもうすこしゆるい坂を上がると、もう目の前に「山中」の表札の付いた門がありその前で山中の兄夫婦が待っていた。まず藤村少尉が先に立って「本日はおめでとうございます。花嫁様、ご両親様をご案内いたしました」と言って敬礼。山中大佐の兄夫婦が敬礼を受け、「ありがとうございます。どうぞ」と門の中へといざなう。そこに山中大佐が立っていて花嫁姿の野村中佐を見るなり「はっ!」と息をのんで立ち尽くした。

春の優しい風が吹き付け、うちかけの「櫻に錨」がきらきらきらめいて副長はまぶしげに眼を細めた。そしてその瞳をあげて大佐を見つめた。大佐は中佐を見つめたまま動けないようだったが兄にそっとつつかれてやっと我に返り中佐の横に並ぶと玄関へ向かった。

「間もなくご媒酌の呉海軍工廠の江崎少将ご夫妻がいらっしゃいます。御臨席の皆様もそろそろ参りましょう…それまでどうぞごゆっくりなさってくださいね」

山中シズが中佐とその両親そして藤村少尉にそう言って桜湯を出してくれた。そのそばで山中大佐は中佐を食い入るように見つめたままである。中佐は低い椅子に座ってうちかけの両そでを膝に重ねている、その姿が(花嫁人形そのものではないか、なんて美しい)と山中大佐には信じられないほどの美しさで眼に映る。普段から美しい中佐がもうこれ以上ないほど、まさに天女の美しさ。

(私は果報者だ。これほど美しく賢い女性を妻にできるのだから)

大佐は縁と言うものに感謝をささげる――

 

それから一時間後。双方の招待客が集まった。山中大佐側は海軍工廠と広航空廠の技術士官たちと大佐の旧友たち。野村中佐側は『大和』艦長以下の科長たち。

ふたりの挙式が始まった。大広間に金屏風が立てられその前に新夫婦の二人が座り、江崎少将の息子と娘が男蝶女蝶を務める。まだ幼いふたりではあったが事前に母親からきっちり教え込まれていたらしく落ち着いた態度でしかし、幼子らしい可愛らしさで皆のほほ笑みを誘った。

山中大佐と野村中佐は緊張でかすかに震える手でもってそれぞれの盃を干し、ここに新夫婦が誕生した。盃を置いたふたりはそっと瞳を見かわして微笑んだ。野村中佐は角隠しの下の瞳を輝かせて夫となった山中大佐を見つめ(たった今から私はあなたの妻となりました。至らぬ私ではありますがどうぞ末永くよろしくお願いいたします)と瞳で語る。

大佐も(私も今日この瞬間からあなたの夫となりました。ふたりで人生の航海に乗り出しましょう。どうぞよろしく)と瞳で返す。

列席の一同も盃を干して、これで挙式は無事終了した。皆の間にほっとした空気が流れ、藤村少尉がふすまをそっと開け「写真撮影の準備が出来ました、皆様お庭にお出まし願います」と言った。

 

記念写真はまず、新郎新婦ふたりだけのものを撮影。見守る中佐の両親や大佐の兄夫婦は嬉しそうに、大佐の仲間や『大和』の士官たちはそれを羨望のため息で見つめる。木航海長は「いいですねえ副長。とっても綺麗。私も副長くらい綺麗だったらよかったな」とまぶしげに副長を見て言い山口通信長は「あなたもとっても綺麗でしたよ。いやしかし『大和』は美人揃いで素晴らしいですね」と言って微笑む。

浜口機関長は「副長、気合いで素晴らしい男性を射止めましたね!さすが副長、気合いだ気合いだ気合いだー!オイオイオイ~~!」と例のごとく気合いを入れ始め工廠の技術士官たちの笑いを誘う。

そして参列者たちもそろっての集合写真。まぶしい春の日差しを浴びて幸せそのものの表情の新夫婦と参列の皆の嬉しそうな表情が印象的な写真となった。

撮影が済んだ時、上空に飛行機の爆音が響いて梨賀艦長が「副長、あれを」と空を指差した。副長がそっと見上げると零戦が五機、飛来して来た。そして皆の頭上で素晴らしい編隊飛行を繰り返す。

梨賀艦長が「副長の海兵同期のお友達が婚礼の話を聞きつけてね、ぜひ祝いたいと言ってきてくれたんだよ」と副長の同期の仲間の名前を言った。航空の道に進んだ仲間であるが同期のよしみで駆けつけてくれたのだ。副長はその心の感謝しながらそっと片手をあげて手を振った。山中大佐がそっと副長に寄りそうように立って零戦を見上げて手を振る。

零戦の編隊は翼をバンクさせるとやがて飛び去っていった。

 

そしていよいよ披露の宴が始まり、二人の婚礼はいよいよクライマックスを迎えるのである――

        (次回に続きます)

 

              ・・・・・・・・・・・・・・・・

結婚式が始まりました。

いよいよ夫婦となる若い二人にどうぞ拍手を。そして山中大佐、妙な本を見つけてしまいましたね…この後が大変気がかりですがゆっくりその時を待つことにいたしましょうか。

 

瀬戸の花嫁(小柳ルミ子)。なつかしい。

 


(十一月二十二日遅くに発生の長野県での地震で被害に遭われた皆さまへ心よりお見舞い申し上げます。大ごとになりません様祈るばかりです)

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「女だらけの戦艦大和」・結婚ものがたり6~登舷礼で送られて - 2014.11.19 Wed

 その日の朝が来た――

 

野村副長は自室で化粧や着付けを済ませて静かに椅子に座りその時を待っていた。運用長がじかに指名した三人の兵曹・兵曹長が副長の化粧・結髪と着付けを行った。その一人の化粧担当・斉田兵曹は「きれいじゃわあ、副長。あがいに綺麗な人をうちは今まで見たことがないわ。こがあに素敵な花嫁さんのお世話が出来てうちは嬉しいわあ」と言って見とれた。

着付けを担当した田尻兵曹長と宮部兵曹は「ほんまじゃ。それにこの衣装も素敵じゃわ。この衣装を着こなすんは副長にしかできんで。ええわあ、うらやましい」と声をそろえて称賛した。

副長は角隠しに、白無垢のうちかけには金糸と銀糸で豪華に「櫻に錨」が刺繍されている。佐官の挙式用にあつらえられたうちかけであるから豪華この上ない。そして副長の可憐な唇には紅がひかれ、副長の若さと初々しさが匂い立つようである。高島田は副長が今まで大事に伸ばしてきた自分の髪で結い上げた。髪に差し込んだ鼈甲のかんざしの飴色が美しい。

そこへ林田運用長と梨賀艦長、森上参謀長がやってきて副長室のドアをそっとノックした。運用長が「入ってよろしいですか」と声をかけると田尻兵曹長がドアを開け「どうぞ。我々はこれにて失礼いたします」と言ってから副長に向き直り三人は礼をした。副長は准士官と下士官嬢に感謝の思いを込めて頭を下げ「どうも有難う」と礼を言った。準士官たちはもう一度敬礼した。

艦長たちが部屋に入ると交替して準士官たちは出て、ドアが静かにしまった。

副長は部屋の真ん中に置かれた椅子に座っていたが艦長たちが入るとそっと立ちあがってゆっくりと頭を下げた。

そしてもう一度頭をあげた時艦長たちはその美しさに息をのんだ。「ツッチ…」と艦長は言って感激のあまり瞳を濡らした。森上参謀長も「おお…きれいだ」と言ったまま言葉を失っている。林田運用長は微笑みながら

「副長、とてもきれいですよ。天女もさもありなんと言うくらいです。いやあ、山中大佐は幸せ者ですね。こんなに美しい人を妻にできるなんて男冥利に尽きるってものですよ」

と言った。副長は頬をほんのり赤く染めた。艦長は感激の涙を指先でそっと拭うと

「ツチー、疲れるから座りなさい」

と副長を椅子に座らせた。森上参謀長は、副長から目を離せないままで「野村、新居への荷物は昨晩のうちに運んでおいたから心配ない。今日は身一つで行けるからね」と言ってやった。副長は「ありがとうございます、何から何までしていただいて。申し訳ありません、皆さんのお手を煩わせてしまって」と言った。

参謀長は面映ゆげに視線を外すと「そんなこと…あたりまえじゃないか。仲間だもの」と言った。そして「今までも、これからもずっと仲間だよ。それを忘れないでくれよ」と言葉を継いで副長に微笑みかけた。そこにドアをノックの音がして見張兵曹がドアの向こうから「桜湯をお持ちいたしました」と声をかけた。運用長がドアを開くと見張兵曹が人数分の湯呑を盆に載せて立っていた。

「おお、ありがとう」

と林田運用長が受け取ってから見張兵曹に「ほら。副長の晴れ姿を見て差し上げなさい」と言って部屋の中に入るよう声をかけた。兵曹は恐縮しながら副長室に体をそっと入れたが「わあ…副長」と言ってその場に立ちつくした。普段から副長は艦内の皆の手本となるべく身ぎれいにしていた、「綺麗な御方じゃわ、副長は。うちもああなりたい」とひそかに思う見張兵曹であった。そのあこがれの人の花嫁姿を目の前にして、見張兵曹は両手を胸の前で合わせて見つめているばかりである。

副長が「オトメチャン。私はしばらく留守にしますがその間みんなと助け合ってね。よろしく願います」と声を掛け、見張兵曹は我に返って「はい!しっかり務めます」と宣言した。感激に浸るオトメチャンに森上参謀長が

「もう少ししたら総員で見送りの時間だから、準備をなさい」

と言ってオトメチャンは「では失礼いたします――野村副長、末長いお幸せを祈ります」と言って敬礼すると副長室をでて行った。

 

そんなころ各居住区では「まだかのう、まだ甲板に出たらいけんのかのう」と皆やきもきしている。それぞれの一種軍装はアイロンをかけたり寝押しをしたりで変な皺ひとつなく、副長の門出を祝うにふさわしい。

いつも「熱くなれ熱くなれ」とやかましい松岡中尉も今日はしおらしくしている。それが航海科の皆にはちょっと気味が悪い気もするが、「副長の一世一代の日じゃ。黙っててもらえたらそれでええ。ちいとあん人も黙る言うことを覚えたらええんよ」と麻生分隊士は口をひん曲げて笑った。

そこに樽美酒少尉がきっちりと一種軍装を着こんで登場、皆はそのりりしさに目を奪われている。小泉兵曹などとなりに立っている酒井上水に「樽美酒少尉の方が松岡中尉より堂堂としとられるねえ。樽美酒少尉の方が分隊長に適任じゃないかねえ」と言ってはふたりでくすくす笑う。

そこに噂の松岡中尉がマツコとトメキチを伴ってやってきた。マツコもトメキチも、きちんと一種軍装に身を包んでなかなかの器量よしである。澄まして立っているのがなにか皆には可笑しい。

松岡中尉はラケットをブン!と振ってから

「さあ、みなさん。今日はいよいよ野村副長のお輿入れの日です。そして今日は皆で、登舷礼のようにして副長をお見送りしますからね、失礼があってはなりませんよ?いいですね、もう一度自分の姿を互いに見あって変なところがないようして頂戴な?――ほら亀井一水、水兵服の襟の右っ側が跳ねてますよ?イシバチャン、襟章の片方ひん曲がってますねえ。麻生さーんあなたの顔曲がってますよ」

と最後に余計なことを言い、麻生分隊士は「なんですと!うちの顔の何処がまがっとる言うんですか分隊長は!失礼なお人じゃわ」と大激怒したが、そこへ戻ってきた見張兵曹が「分隊士、今日はおめでたい日ぃですけん、それに免じて」と袖を引いたので何とか怒りを収めたが分隊士は「全く失礼な女じゃわ、分隊長は。いつかこの怒り百倍返ししてやるけえの!」と鼻息荒い。

そしてふっと兵曹の顔を見て「ほうじゃ、副長の花嫁姿を見たかのう?」と尋ねた。見張兵曹は「はいー」と得意げに微笑んで先ほど目にした副長の可憐な花嫁姿を皆に話して聞かせた。

「うわ~、はよう見たい」

「ええのう、副長は」

「うちもはよう、結婚したいわ」…

などなどその場の皆は羨望のため息をつく。マツコが「そんなにきれいなの…副長。良いわねえ、あの人にはアタシ、幸せになって欲しいと思ってるのよ。だってさあ」とそこまで言って感涙にむせんで言葉を切った。トメキチが「だって、なーに?マツコサン」と先を尋ねるとマツコは翼の先で涙をきりりとぬぐって

「あの人いつも朝は早くっから夜遅くまで働きづめなのよ。いろんな仕事があって休む間もないくらいなのよ。だもの、休暇がたくさんあって当然よ、それで幸せにならなきゃいけない人なのよ」

と言いきった。トメキチは「そうねマツコサン。僕も幸せになって欲しいと思うわ。副長さんとっても優しい人だものね」と言って二人は顔を見合わせてうなずき合った。その、マツコの一種軍装につけられた大きなポケットの中で三毛の仔猫の「ニャマト」が眠っている。

 

そして。

刻限となり、皆は甲板上に上がり自分の配置や舷側に立ち並んだ。この日の空はたいへんよく晴れて風も穏やか、日差しがうらうらと温かい婚礼日和となった。海さえ副長の結婚を祝福しているようでたいへん穏やかである。

副長の登場を今か今かと待つ皆、その時艦長が前牆楼入口から姿を現し次いで白無垢姿の副長、森上参謀長、そして各科長掌長が続いて出てきた。

皆の間に声にならないどよめきが起きた…。まずは士官連中が副長を真ん中にしての記念撮影。そして艦長は副長の手を取ると、甲板上をゆっくりと一周した。これは副長が「皆にもれなく挨拶してゆきたいから」との希望であった。左右両舷に立った将兵嬢たちは次々に敬礼の手をあげて副長を祝福する。マツコとトメキチがたまらずに駆け寄ってきたので、副長は小さな声で「ありがとう」と言ってふたりをそっと撫でた。ニャマトがマツコの服のポケットから「ニャ、ニャ、ニャ」と副長に声をかけたのへもそっと微笑みかけ「ありがとう」と答えるとそれもそっと撫でた。

やがて一周した艦長と副長は参謀長以下が待つ舷門に戻ってそこで副長は皆に一礼した。参謀長は深くうなずいた。そこで艦長から藤村甲板士官に介添えが移った。藤村少尉は緊張の面持ちで副長の隣に立った。梨賀艦長はしばし目を閉じていたがやがて目を開けると

「おめでとう副長。新たなる門出をお祝いします。幾久しくお幸せに。後ほど式場で会いましょう――藤村少尉、あとをよろしく」

と言って敬礼、参謀長以下も敬礼した。それに頭を下げて応える副長。副長は藤村少尉に手を取られて舷門から今日の為に特別に作られたラッタルを降りてゆく。幅は大きく傾斜は緩く、揺れもないようにあつらえられたラッタルを降り、ふたりは内火艇に乗った。

副長は内火艇に乗ると、『大和』を振り向いて一礼した。総員「帽振れ」で副長を祝い見送る。内火艇は静かに進み始める。

艦上に居並んで帽子を振る全将兵を見つめる副長に、藤村少尉は「寒くありませんか?」と声をかけた。副長は「いいえ。平気です」とほほ笑んだ。

副長を乗せた内火艇は、『大和』の周りを一周した。内火艇の甲板に立って『大和』を見つめる副長の胸大和』初乗艦から今までのあれこれが去来する。優しい海風が吹き付け、うちかけの袖がふんわりと舞う。

内火艇は『大和』の艦首に回ってきた。金色に光る菊の御紋に副長は最敬礼した。そこから内火艇は進路を上陸桟橋へと取り始める。

副長は江田島の方角へ頭を下げた。(私をここまでにしてくれたのはまず、江田島あってのもの)と言う想い。兵学校での四年間は厳しくも楽しい毎日だった。と、藤村少尉が「ご覧じませ」と言って右舷方向を指差した。

そこにはたくさんの巡洋艦・駆逐艦が居並びその中の一艦――朝霜――から発光信号が。

「ゴケッコン オメデトウ スエナガイ オシアワセヲ イノルモノナリ クレザイハクカンテイカイヘイ●●期イチドウヨリ」

副長の海軍兵学校の同期からの祝福の発光信号である。朝霜に乗り組みの、野村副長の同期の小瀧駆逐隊司令が今回の話を聴いて「それでは祝電ならぬ祝信号だ」とほかの艦の同期に声をかけて実現したものである。

副長の瞳がうるみ「ありがとう…みんな」とつぶやきが漏れた。そしてそれらの艦艇の甲板にも多くの将兵たちが居ててんでに帽子を振っては「おめでとう。おめでとうございます」と叫んでいる。その中でも少尉候補生たちは「素敵だわ、素敵ね!私もあのお姉さまみたいにしてお嫁に行きたいわ」と感涙にむせんでいる。

内火艇の艇長を務める中尉嬢は気を利かせてそれらの艦艇のそばまで走り、副長は彼女たちにも深く頭を下げた。歓声が一層大きくなった。「朝霜」の小瀧司令が艦首で「野村さーん。おめでとう、おめでとう!」とめちゃくちゃに帽子を振っているのが見えて副長も思わず片手を胸のあたりまでそっと上げて手を振り返した。

 

内火艇は、そこで進路を上陸桟橋にまっすぐとって走る。

上陸桟橋にはもう、副長の両親が今か今かと待ち構え見つめる瀬戸内の海はきらきらと宝石のように輝いている――

       (次回に続きます)

 

          ・・・・・・・・・・・・・・・・

挙式の日となりました。白無垢の副長、きっと素晴らしい美しさなのでしょう。

この章を書くのに随分推敲を重ねましたがそれでもまだ不完全な気がしています。頭の中には映像があって、まるで映画のシーンのように動いているのですがそれを文章にするのはなんて難しいのでしょうか!

登舷礼と言うのは本来、貴賓の送迎などの際行われるものですがここでは大事な副長の門出と言うことでおこなってみました。

そして登舷礼で思い出すのが映画「トラトラトラ」の冒頭シーンです。あの印象深い音楽がこれを書きながらずっと頭の中で鳴っていました!


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ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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