2014年05月|女だらけの戦艦大和・総員配置良し!

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父の病状報告を兼ねてーーコメントを下さった皆様へ

2014.05.31(20:22) 862

こんばんは!
前の記事にはたくさんのコメントを頂戴し、ほんとうにうれしくまた、勇気をいただきましたこと心よりお礼申し上げます。
父は、私が実家に行った後にもかかりつけの病院に見てもらうつもりでしたがその日(診察予定の29日)の朝になって「動けない」と言い出しました。

しかし、その前日も嘔吐が激しくまた腹部全体が大きく膨らんだ状態も異常なので私と母で協議し救急車を要請しました。
そして実家のある場所から自動車で35分ほどどの距離にある病院に搬送されました。
救急隊の見立ては「腹水貯留」、そして病院の院長先生は当初「肝臓由来の腹水貯留ではないか」とのことでしたがCTスキャンの画像で「腸閉塞」と判明。

しかもその腸閉塞の原因が
「大腸がん」
の可能性が9割とのことでした。
大腸の腫れがひどく腸に水が溜まり、またガンと思しき部位の大きさもかなりなので手術は難しいかもしれないとのこと。

少しも食欲がなくなったのも、水を飲んでも戻してしまっていたということすべてこれで納得いきました。通り道がないわけですから・・・

その前から食事がとれなくなっていたりしたのでかなり弱ってきております。
手術もできるかどうか、耐えられるかどうかも…わからない状態です。金曜日に内視鏡で組織をとったので間もなく結果が出ることでしょう。そのうえで今後の方針が出てくることだと思います。

たぶん…年内はもとより、半年も持つかわかりません。
大変な大酒のみで脂っこい食事ばかり取っていただった父ですので大腸がんもそれが大いに祟ったと思っています。ある意味仕方がありません。

私はここに来た日に父の大変に膨らんだ腹を見て「がんではないか」と直感していました。当たったようです。

残り少ない父親の地上の命となりました。
これまで家族を顧みないできた父の最後はどうなるかわかりませんが、その日が来たら静かに送りたいと思っています。

みなさん、コメントをありがとうございました。本当なら一つ一つにお返事をいたすべきですが、このようにまとめてのお返しをお許しくださいませ。

まだ少しは実家にいる予定です。
ブログ記事もそろそろ構想を考えてアップしたいと思います。私の生きがいですから!

本当にありがとうございます。
皆様のご健勝を心よりお祈りいたします!


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お知らせ「ちょっとの間更新お休みします」

2014.05.28(20:15) 861

いつも「女だらけの戦艦大和」をお読みいただきありがとうございます。
さて急なことですが、実家の父親の具合が悪くなり27日の午前中から実家に来ております。
父の具合はあまり良くないようで、明日にも診察を受けさせる予定です。

この先どうなるかわかりませんので、更新をしばらくお休みします。
新しい事態が動いたらまたこの場をお借りしてお知らせいたします。

皆様にはどうぞ御身大切にお過ごしくださいませ。
またお会いできる日を楽しみにしています。

取り急ぎお知らせ申し上げます。
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「女だらけの戦艦大和」・叱られて3

2014.05.25(09:35) 860

 野田兵曹は、テーブルの上に置かれたままの飲みさしの紅茶カップに手を伸ばし、わずかに残った紅茶を飲み下して咳払いを一回するとさらに話を継いだ――

 

――父親は佳子の海兵団行きを賛成し母親は何も言わなかったので兵曹は了承されたものと思い、海兵団入団の準備を始めた。入団試験も間近のある日、ちょうど父親が米問屋の集まりでしばらくの間東京に行っていたがそれと入れちがいのように、東京の、母親の兄がやってきた。兵曹にとっては伯父である彼はもう一人若い男性を伴ってやってきた。

母親は至極当たり前のように、驚く様子もなく二人を迎えた。兵曹は(何かおかしい。単純に遊びに来たいうんとは何か違うようじゃ)と直感していた、そのくらい自然に二人を迎えた。そいえば昨日母親は客間や玄関など入念に掃除して私にも「あなたもお部屋をきれいになさい」と言いつけてた、私はきちんとはしなかったが――。

兵曹はかれらが来る前になぜか晴れ着を着せられて「お母さんなんで晴れ着を着んといけんのですか?うちは窮屈でたまらんです」と文句を垂れたら母親は怖い顔をして「お客さまをお迎えするんにええ加減な格好では失礼と思わんのね?きちんとするんが礼儀です」と兵曹を睨んだのだった。今まで伯父が来るくらいでは晴れ着など着たことはなかったので不審に思った。

そして、今。客間に兵曹が紅茶と母親手作りの菓子を運んで行った。

伯父ともう一人若い男性の前にそっと紅茶と菓子を出して一礼した兵曹は部屋を出ようとしたが母親に

「ここに座りんさい、一緒にお話をしましょう」

と言われ渋々ソファに腰をかけた。すると伯父が満面の笑みで以て兵曹を見つめて

「佳子は綺麗になったなあ、幾つになった?――そうかあ早いもんだなあ、あのよちよち歩きがもうこんなにきれいな娘になって、なあ!じゃあもうそろそろ嫁入りを考えないといけないんじゃあないか?」

と言った。兵曹はあいまいな笑みを浮かべて「――いえ、うちはまだ・・・」と小さな声で言った、がその声も聞こえぬか伯父はとなりの男性を見て

「おお、そうだ彼の紹介をまだしてなかったな。彼は私の会社の、部署は別だが課長職だ。佐野君と言ってね、トテモ頭の切れる男だよ」

と言った。佐野と呼ばれた男は丁寧に頭を下げると「はじめまして佐野と申します。香川さんにはいつもお世話になっております」と言った。瞬間兵曹はこの男に<母親と同類>の匂いを嗅ぎつけた。つまり、自分を押しとおすタイプの。

まあ素晴らしい方ね、と母親が嬉しそうに言って伯父はさらに

「うちの会社はね、今度南方に支店を出すんだよ。で、彼がその支店長に抜擢されてね。ただ、一人で行くのも何かとたいへんだから女房がいるというわけで」

と言った後兵曹の顔をひたと見つめると「佳子、お前彼の嫁になって一緒に南方に行け」と<命じた>。

「ヒエッ!」と兵曹が驚きの声を発すると伯父は「そんなに嬉しいか、ワハハ!佐野くんよかったなあ、佳子は嬉しいってぞ」と言って佐野の背中をドンドンと叩いた。佐野はぎこちない微笑みを浮かべると

「よろしく。佳子さん」

と言った。野田兵曹は(なんだこれは!こんないきなりな話があってええもんじゃろうか!?)とあっけに取られて言葉も出ない。そんな兵曹を尻目に伯父と母親、そして佐野は今後の話に没頭し始めた。

兵曹は(こげえな結婚話あってええわけない!うちは絶対お断りじゃ)と腹をくくった、なんとしてもこの話は断って海兵団に入団したい。もうひとのいいなりになって生きるのはいやだった。

しばらくして話が一段落したのか、伯父が「若いもんは若いもん同士がよかろう。庭に出て話をしてきたらどうだね」と言ったので、兵曹はある作戦を考えついた。この男性には気の毒な方法ではあるがショックを与えてこの話を<彼から>断らせようと思ったのだ。

二人は庭に出た。佐野は「大きなお宅ですねえ。さすが米問屋だ」と感心している。兵曹は「そげえなことありません」と謙遜しつつ、ゆっくりと歩を進めた。池にかかった小さな石橋を越えるとその向こうには兵曹の部屋がある。兵曹はこの先に自分の部屋があるということをさりげなく言った後、「見てつかあさい、鯉があげえに」と言って指差したりしながら無邪気な様子を作った。佐野も「大きな鯉ですねえ、一体幾匹飼ってらっしゃるんでしょう」などと言いながら、二人は石橋を渡った。

そして、兵曹の部屋の前まで来た。何気なく濡れ縁に目をやった佐野は、その先の部屋を見て絶句した。彼の視線の先にはめちゃくちゃに散らかった兵曹の部屋があったのだった。それでも兵曹はそ知らぬ顔で自分の部屋の前を通り屋敷中を案内して回った。

そして伯父の待つ客間に二人で帰った。母親と伯父が笑顔で迎え、兵曹もご機嫌を装ってソファに座った。佐野だけが妙に硬い表情でいる。それを伯父と母親は若い男性のはにかみだと思っていた。伯父はあるいは、佐野が結婚の意思を固めたと思ったかもしれない。

そのあと四人は夕飯を共にし、その後伯父と佐野は「宿がとってあるから」と言って広島へ行った。母親は「いい人でよかったわね。あなた海兵団に行くよりお嫁に行った方が絶対幸せになるわよ」とすっかり決まったような口ぶりである。そんな母親の喜びをめちゃめちゃに砕く知らせが来たのはそれから二日ののちだった。伯父が「佐野が・・・断ってきた」とがっかりしたような声で電話をしてきたのだ。母親は「どうしてです!佳子はあんなに乗り気だったのに」と言ったが自分の兄の言葉に絶句してしまった。

「片付けのできない女は・・・いやだ・・・って」

電話の後、母親はその場にへたりこんでしばし呆然としていた。が、やっと我に開けるなり「佳子、佳子さんちょっと来なさい!」と兵曹を呼び付けた。そして「いったいどういうことです?あなたはちゃんとお部屋を整理したはずでしょう、それなのに!」と言うと兵曹の部屋へと走った。部屋のふすまを開けると――そこには乱雑に物が散らかった座敷があった。

「あ、あなたって人は――」

母親の悲痛な嗚咽がその場を引き裂いた――

 

「とまあ、そげえなことがありました」

野田兵曹は語り終えてふっと息を吐いた。生方中尉は

「そうか・・・それで兵曹は海兵団に入ったのか」

とつぶやいた。中尉の脳裏にそんな実家から逃げるようにして海兵団へと行った彼女の姿が見えるようであった。

兵曹ははあ、と言って「うちの母親はうちみとうなもんが邪魔だったんです。じゃけえ嫁にやろう思うて伯父さんにあの男の人を連れてこさせたんじゃ思います。うちみとうな言うこときかん、母親の気に入らん娘なんぞ必要ないのですよ。この家には兄が居ってですけえ、兄さえおりゃあええんです。うちは邪魔もんなんです」と一気に言うとすすり泣き始めた。

生方中尉はすすり泣く野田兵曹の背中をそっと撫でてやった。そして

「兵曹はお母さんに反感を持っていたんだな。それを表に出せなくてつらかったろう。その思いがわざとチェストを汚くしたりという行為に走らせたんだな。――野田兵曹、もう自分を解放しろ。いつまで母親に心縛られていてもつまらんぞ。お前はお前の道をもう歩いているんだから、妙な形で反抗心を燃やすんじゃない!お前はもっと素直な人間なはずだ、本来の自分に戻れ。すべて捨てて生まれ変われ!」

と言って兵曹を抱きしめた。野田兵曹は子供のように泣きながら生方中尉の胸にすがった。つらそうな、悲しそうな泣き声が中尉の胸をえぐった。それにしても、と中尉は、佐野なる男性の男のメンツを慮って相手から断りをさせるよう仕組んだ兵曹が健気にも、哀れにも感じていた。

 

そして、落ち着いた母親が客間に戻ってきたがもう、兵曹を見ることはなく視線を落としている。兵曹も母親を見ない。生方中尉は

「野田兵曹、私はこれで失礼する。貴様はゆっくり休養を取りなさい」

と言った。果たして兵曹は「ここ(・・)()()いやであります」と答え、母親は顔をそむけた。母親のそのしぐさから娘に対する強烈な拒否の意思が感じ取れた。

中尉は当然の答えが出たと思いながら「それではどうするのだ?」と尋ねた。兵曹は「生方中尉と一緒に艦に帰ります、帰りたいであります!」と言ってまた泣いた。母親は顔をそむけたまま

「申し訳ございませんが連れて帰ってつかあさい」

とだけ言うと客間を出て行ってしまった。ドアがパタン、と閉まり乱れた足音が去った後の部屋には兵曹の泣き声だけが満ちている。

 

二人は見送る人もなく野田の家を出た。

弱い日差しの照る道を駅に向かって歩きながら生方中尉は「今日のところは・・・私の下宿に来るといい。そのあとのことは私が艦に帰って高射長たちにご相談申し上げて決める。それでいいな?」と言った。一陣の風が吹きつけ、中尉のマントを翻した。野田兵曹が、軍帽の廂をつかんで風をやり過ごしながら

「はい。ご面倒をおかけして申し訳ございません」

と謝った。生方中尉は「貴様が謝ることでもあるまい」とつぶやくとあとは黙って歩きだす。兵曹もそのあとを黙ってついてゆく。

 

二人はあまり口を利かないまま呉に戻った。生方中尉の下宿に行き、「おばさん、ただ今」と声をかけると下宿の女主人が「まあお帰りなさい生方さん!」と嬉しげに出迎えてくれた。生方中尉が

「今日は私の妹分を連れて来ました、野田佳子上等兵曹です」

と紹介した。野田が丁寧に頭を下げ「野田と申します」とあいさつすると女主人は野田の顔を見るなり「まあ、なんて可愛い!私には生方さんは娘みとうなもんじゃが、もう一人娘が出来たわ!よう来て下さいましたな、寒かったでしょう?さあおあがりなさい。ちょうど汁粉を作ったとこじゃけえ食べてつかあさいな」と喜んだ。

野田兵曹の、今まで硬かった表情が少し和らいだ。

生方中尉と野田兵曹は、女主人のあとをついて居間へと入ってゆく――

     (次回に続きます)

 

               ・・・・・・・・・・・・・・・・

野田兵曹にもつらい過去があった・・・。

野田母子は心をすっかり離してしまったのでしょうか。そして生方中尉の下宿で手放しの歓迎を受けた野田兵曹の堅くなった心はどう変化しますでしょうか。そして何より野田兵曹の休養はどこで取れるのでしょうか!


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「女だらけの戦艦大和」・叱られて2

2014.05.20(23:19) 859

 生方中尉は、休養を命じられた野田兵曹をその実家に送り届けに来たのだった――

 

中尉は河崎高射長からの、今までのことを書きつづった手紙を野田の母親に手渡した。そしてそれを読んでいた母親の表情が激変して来たのに気がついてぎょっとした。

(ものすごく・・・怒っている!?)

生方中尉はなにか、全身総毛立つような恐怖を感じて思わず腰を上げかけた。思わず隣に座る野田兵曹を見るとこれも真っ青な顔色に変化し、一種軍装の膝がガタガタ震えているのが見えた。

野田の母親は、手紙を読み終え丁寧に畳むと封筒の中に収めた。かすかにその手が震えている、怒りを抑えかねているようだ。ふうー、と一息吐いた。

そして、しっかり野田兵曹を見据えると

佳子(よしこ)

と静かなしかし、重々しい声で言った。ゾクッ!と生方中尉と野田兵曹の背筋が、同時に冷えた。すると野田の母親は

「あんたは一体何をしていたんね?前からちいとも片づけが出来んで、海軍に入ったらちいとは整理整頓ができるようになったか思うとったが余計悪うなったじゃないね!?そのうえなんです、自分の物入れを汚し放題で艦の皆さまにご迷惑をかけて、褌にきのこを生やした?ゴミを艦の中の捨ててはいけないところに捨てた?蝙蝠を物入れの中で飼って物入れを汚した?服をフンだらけにした?そのうえあなたはその蝙蝠を殺そうとした?

――私はあなたをそういう娘に育てた覚えはありませんよ!私は昔っから言ってるじゃないですか、整理整頓はきちんとなさいって。大体あなたは子供のころからだらしないんですよ。一体だれに似たのかしら・・・お父様もおじい様も、いえ、おばあさまだってきちんとなさっているというのにあなたったら。こんなことでは佳夫さん(兵曹の兄)も笑い物になるんですよ!?世間様にこんなことが知れたら『野田米穀の娘は海軍でも名うてのだらしない女』と言われて家名に傷がつきます!いいですか佳子、うちは元は士族の出。その誇りをあなたはなんと考えているんです?おじい様が一所懸命にここまでにした野田家をあなたはつぶす気ですか!」

と最後は金切声で叫ぶように言った。手紙がその手でぐしゃりと握りつぶされた。生方中尉は野田の母親の言葉が東京言葉になっているのに気がついた。野田の母親は東京言葉のままで娘を罵倒している。

野田兵曹は下を向いたまま母親の厳しい、いや、厳しすぎる言葉にただ打たれているだけである。生方中尉はさすがに野田兵曹が気の毒になってきた。

生方中尉が野田の為にとりなそうとしたその時野田の母親は

「あなたのために生方中尉さんはお気の毒に、お忙しいところをこんな遠くまでいらっしゃる羽目になって。本当にお気の毒ですよ、佳子あなたひと様に迷惑をかけて平気なの!?いい加減になさい。どうしてこんなに自堕落な女になってしまったのか・・・私のしつけが悪かったのかしら・・・」

といい、そしてその瞳がうるみだした。生方中尉はなんだか事態がのっぴきならない方向へ動き出した気がしてならず、何とか収拾せむと考えてそっと「――あの、お母様」と話しかけた。

野田の母親は、生方中尉の問いかけに中尉を見つめた。中尉は

「あのお母様、そうおっしゃいますが野田兵曹は艦では部下を大勢抱えています、たいへんよくやってくれています。お母様が思われるほどいい加減な女ではないと私は思うのでありますが・・・」

と言った。確かに野田には生活面では随分困らされもしたが、実戦ではなかなか勇敢なところがあって生方中尉は(悪い人物ではない)と思っている。しかし、野田の母親は

「お言葉ですが生方中尉さん。あなたはそうおっしゃってくださいますがこの娘のいい加減なことはもう、この家では皆ため息をつくばかりなのです。何度言っても部屋は片付けない。きれいにしてあってもすぐ散らかす。反抗する。――これをいい加減と言わないで他に何がいい加減なのですか。私はもう情けなくって」

とそこまで言うとふっと席を立って部屋を出て行ってしまった。部屋のドアがバタンと閉まって母親の足音が足早に去っていった。涙を見られるのが嫌だったのかもしれない。テーブルの上には、河崎高射長が野田の母親に宛てた手紙が残されている。生方中尉は(一体高射長はなんと書かれたのだろうか)と気になって封筒に手を伸ばし、中の便箋を引きだした。母親があれほど怒りをあらわにするようなことが書いてあったのだろうか。

野田兵曹は苦いものを食ったような顔でドアを見つめているままで中尉の行動を見てもいない。中尉は野田の母親が握りつぶした便箋をそっと開いて読み始めた。

冒頭は時節の挨拶、そのあと「母上様には、突然のご令嬢の長期休暇に驚かれることかと思ひますが」と本題に切りこんでいる。そして野田兵曹が今まで起こしてきた事件があまり深刻でないように気を使って書かれている。例の蝙蝠を床にたたきつけようとした件も「愛しさが余つての感情の高ぶりと我々は考へ」、「海軍病院での静養も考へましたがやはり、ここは精神的にも落ち着けるご実家での静養をと思ひ」野田兵曹をしばらく実家に返すことにしたと河崎少佐らしい心遣いで書かれている。

少佐の手紙の中には野田に対して<だらしない>とか<いい加減>という文言は一切書かれていない。ばかりか、「野田兵曹はわれわれにとつてはかけがへの無ひ艦の仲間であります。暫くのあひだとは言へ、不在にされるのは寂しくもありつらひ物がありますが」とある。

(母親にとってそれほど打撃のある内容とは思えないのだが)

生方中尉は頭を抱えてしまった。さらに読むと手紙の最後は

「だうか野田兵曹を優しく迎へてやつてくださひ。野田兵曹は、長ひあひだの勤務で少し心がつかれてしまつたのでせう。しかし野田兵曹が弱ひといふのではありません。誰にでも起こりうることです、ですからだうか、兵曹を優しく休ませてやつてくださひ」

と結ばれている。

生方中尉は「野田・・・」と言って高射長からの手紙をそっと渡した。その手紙を読んだ兵曹の瞳はあっという間に濡れて、大きな雫が軍袴を濡らした。そしてその唇が震え「・・・高射長・・・」と声が漏れた。

生方中尉は野田兵曹の波打つ肩にそっと手を置いて

「高射長も、我々も貴様を嫌っている訳ではないのだ。わかってほしい、その手紙に書かれた高射長のお言葉は、本物だ」

といい聞かせた。そして

「野田兵曹は・・・何かに反抗してわざと汚くしているような気がしてならんが・・・もし自分の中で何か・・・心当たりと言っていいのか・・・あるならば聞かせてはくれまいか?」

と野田の両手をつかんで言った。

野田兵曹は、しばらく嗚咽を漏らしていたがやがて何とか泣きやむと腫れたまぶたの下の瞳で中尉を見つめると話し始めた――

 

野田兵曹は子供のころから厳しく母親に躾けられてきた。親戚の集まりがあると、大人のようなふるまいを要求され気づまりだった。しかし母親は「こどもらしく」振舞うより「おとなのように」振舞うことを良しとし、兵曹は親戚の集まりが嫌いになっていった。特に母方の親戚の集まりは嫌だった。東京に行けるのはよかったがいとこたちとはしゃぐといつも兵曹が叱られた。

そしていとこたちが部屋を散らかした時一番叱られたのは兵曹だった。母親の言い草は「あなたが片付けなさい、あなたが散らかしたんでしょう!」で、兵曹の「私じゃないの、この子たちが」という言葉を母親は「いい訳をしない!!」の言葉とげんこつで黙らされた。ざっくりと傷ついた兵曹の心であった。

そのあと学校に入ってからも母親は兵曹の机の中を、兵曹が学校に行っている間に「片付けておいた」ということをされ、兵曹が隠していたさえない点数の試験やら友達にもらった手紙などが床に広げられていた。そして母親はそれについて一つ一つ、兵曹の説明を求めた。そして納得ができないと怒って兵曹を叩いた。

そんなことをされるうち、兵曹の心の中に母親に対する反抗心と言うべきものがむくむくと盛り上がってきて、母親の言うことと反対のことをしてやろうと思うようになった。

本来、兵曹は「汚な好き」ではない。だが母に反抗するためには汚いことをしなければならない。心ならずも散らかす日々が続いた。そのたび兵曹は母親にきつく叱られ、時には男のわりにきちんと整理整頓ができる兄と比較された。中学に入り進路を決める際、兵曹は『海軍兵学校を』受験すると担任や親に申し出た。その時まだ存命だった父親は「やってみなさい、出来るはずだよ」と言ってくれたが母親と担任は「やめんさい、どうせ受からんけえ」といい母親は「受からなかったらうちの恥じゃけえ」とさえ言った。それでも兵曹はその時は踏ん張って、大変勉強をした。

が、結果は不合格で「それ見たことか」と母親や担任に鼻で嗤われた。さらに深く傷ついた兵曹は投げやりになって本当に部屋も掃除しなくなってしまった。そんな兵曹を見かねてか、同級の友人が「佳子さん、兵学校が受からんでも海兵団があるけえ、そっちに行ったらどうじゃ?すぐに士官さんにはなれんがあれこれ勉強できてええらしいで。うちの姉さんが海兵団から今は陸戦隊に居るよ」と教えてくれた。

そこで兵曹はまず、父親に相談した。父親は「佳子がそうしたいならしたらええよ。わしは佳子ならどがいな境遇でも上手くやる思うとるからやってみたらええ」と言ってくれた。勢い付いて兵曹は母親に打ち明けた。

母親はその時は何も言わないで黙っていた。兵曹はそれが、母親の了解のしるしだと思っていたが――そんなに甘いものではなかったというのをそれからしばらくの後、知ることとなるのだった――

    (次回に続きます)

 

             ・・・・・・・・・・・・・・・

なんだかどうしたらいいのかわからない展開になりました。生方中尉も困ってしまっています。そして野田兵曹の身の上話、なんだか衝撃的告白がありそうな・・。

次回をお楽しみに!   
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「女だらけの戦艦大和」・叱られて1

2014.05.18(20:42) 858

 これは蝙蝠事件で『大和』を降りて行った野田兵曹のその後の話である――

 

野田兵曹はあの日、生方中尉に伴われて実家へと帰っていった。すっかりうなだれた野田兵曹を生方中尉は

「実家に帰ってゆっくり休め。貴様は少し疲れているのだろう・・・『大和』もしばらく呉にいるから安心してゆっくり休め、な?」

と汽車の中でも言ってきかせたのだった。しかし野田兵曹はうつろな瞳を宙に泳がせるだけで返事もない。生方中尉はかすかにため息をついて車窓の風景を見つめていた・・・

 

野田兵曹の実家は駅からバスに乗って三十分ほど走った静かな町の中にあった。

生方中尉は「貴様はここで育ったのか。良い町だな、静かだし美しい」と言って兵曹を振り返った。が兵曹はずっと後ろの方で立ち止まったままである。

生方中尉は「あれっ!」と言ってマントを翻して走って戻り

「どうした野田兵曹?貴様のうちはもうすぐそこじゃないか。何を立ち止まってる?」

といい、外套を着た背中をドン、と押した。野田兵曹はその勢いで少し前にのめったがまたも足を踏ん張って動こうとしない。手にしたカバンの持ち手を、その両手でぐうっとつかんでいるのがわかった。生方中尉は野田兵曹の顔をそっと覗きこんで

「どうした一体?もうすぐ貴様の家なんだろう?早く帰って親御さんに顔を見せてやればいいのに」

と言った。が野田兵曹の表情に苦衷の色が浮かび出したので生方中尉はあたりをそっと見回した。一軒の甘味処が目に入ったので「あの店に入ろう、心配すんな代金は私が持つ」といい聞かせ甘味処に入った。店の親父が、珍しい海軍嬢二人の客に緊張した面持ちで注文を取りに来た。そして二つの湯呑を二人の前にそれぞれ置いた。

生方中尉は野田がぜんざいに目が無いのを知っていたので「ぜんざいを二つ、願います」と言って親父に微笑んだ。その微笑に親父はほっとしたような顔になると

「はい、では少しお待ちを」

というと店の奥へと引っ込んだ。それを目で追ってから生方中尉は湯呑を手に取り熱い番茶をすすった。外の寒さでかじかんだ手のひらに湯呑の熱さが心地よい。そして中尉は対面して座る野田兵曹を見つめた。野田兵曹は相変わらずうつろな表情のままで木のテーブルの上に置かれた湯呑を見つめている。

(何か言った方がいいのか、そうでないのか。どうしたものか)

生方中尉は正直、出方を失って途方に暮れる思いであった。しばし中尉は窓の外の風景に見入って、何も話さなかった。

やがて親父が「はい、おまちどおさまです」とぜんざいを二つ持ってやってきた。生方中尉は

「ありがとうございます」

と軽く礼をして、その時やっと野田兵曹の顔にかすかに微笑みが浮かんだ。生方中尉は箸をとりながら

「野田、貴様ぜんざい好きだったな。たくさん食え、足りなかったらお替わり注文してやるから遠慮するな」

と言って笑った。野田兵曹の微笑みが続いた。

二人は「いただきます」と言ってあとは黙ってぜんざいを食べた。懐かしい内地の味に二人は舌鼓を打った。やがて野田兵曹が食べ終わって椀を小さな盆の上に置いた。生方中尉が

「野田、どうだもっと食わないか?」

と尋ねると野田兵曹は恥ずかしげに「ええでしょうか・・・あと一杯」と小さな声で言った。生方中尉は愉快そうに笑いながら

「あと一杯、なんてけちな事言わんで何杯でも食べろ。遠慮するなと言ってあるだろう」

と言って親父にぜんざいを頼んでやった。野田兵曹はやっと人心地ついたような顔になると姿勢を正して

「生方中尉、ありがとうございます!そして・・・申し訳ございませんです」

と言って深く頭を下げた。深く下げ過ぎてテーブルに額を思いっきりぶつけた野田兵曹、「いてえ」と言って顔をあげると生方中尉の必死に笑いをこらえた顔が見える。生方中尉は食べ終えた椀を盆ごと横へ寄せると少し身を乗り出し

「野田兵曹。貴様何か元気がないな・・・それほどあの蝙蝠のことが気になっているのか?」

と尋ねてみた。すると野田兵曹はそっとかぶりを振って

「いえ・・・蝙蝠(あのこ)たちのことはもうふっ切りました。私はあの子たちに嫌われてしまったんですけえ。今私が悩んどるんは<母親>にどげえにこのことを言おうか思うて悩んどってです。問題起こして艦をしばらく下ろされたいうんをそのまま言うたもんか」

と言って苦しげな顔になった。生方中尉は

「どう言おうって、貴様の母親あてに高射長からお手紙を書いていただいたじゃないか、それを見せればお母様もわかって下さるのではないか?わたしから口添えもさせてもらうが」

と言った。そこへ親父がぜんざいを運んで来て野田はこの時は嬉しげな顔になると大事そうに受け取った。そして小さな声で

「母がわかってくれるとええんですが。あの母親はいびしいですけえ」

と言って「いただきます」と言って両手を合わすとぜんざいを食べ始めた。生方中尉はその言葉を聞いた瞬間何やら不穏な予感に胸の中を支配されたが(いや、思いすごしだろう)とその予感を否定した。

結局野田兵曹は、ぜんざいをそのあと三杯おかわりして店の親父を驚かせかつ喜ばせた。二人は軍帽をかぶり中尉はマントを、兵曹は外套を身につけ勘定を済ますと店を出た。野田は大変恐縮して

「いつかきっとお返ししますけえ。今回は堪えてつかあさい」

と何度も言った。中尉はそのたび、軍帽の廂の下の目を細めて

「いいというのに。返すというなら貴様早く元の通りになって艦に帰ってこいよ」

と言ってやった。

そこから一五分ほど歩いた時兵曹が行く手を指して

「あれがうちです。・・・相変わらずさえん家です」

と言った。生方中尉は「そんなこと言うな」と軽く叱って野田家への歩を早めた。一陣のつめたい風が二人に吹きつけ、中尉と兵曹は軍帽の廂を思わずつかんだ。

家の門構えはなかなか立派である。中尉は感心してほう、と声を上げた。そして後ろに控えている兵曹を見返ると

「貴様の家は大したものだな。門構えを見ればわかる。貴様<お嬢様>だったんだなあ」

と言った。兵曹はびっくりして片手を顔の前で横に激しく振ると「いえとんでもないことで!そげえなことありません。屋敷がでかいというだけの話ですけえ」と否定した。そして兵曹は門を開けて中尉を「どうぞ」と中に入れた。玄関まで細い道がありその先に大きな母屋がある。

兵曹は玄関まで小走りに行くと扉を開けた。ガラガラとガラスの付いた扉が開いて生方中尉が

「ごめん下さい!」

と声を張り上げた。数瞬の間をおいて奥から「はーい」と女性の声がしてかすかな足音が近づいてきた。玄関に上がりに置かれた衝立の向こうから初老の女性が現れて二人の海軍嬢を見た。野田兵曹の母親である。

まず中尉がピッと姿勢をただすとしっかり敬礼して

「私は生方幸子海軍中尉であります。野田佳子上等兵曹の直属の上司として、本日兵曹を送り届けに参りました」

と言った。我ながら妙な挨拶だとは思ったがほかに言い方がないので仕方がない。野田兵曹はその後ろでうつ向いている。野田の母親はその場に正座すると

「まあまあ・・・それはありがとうございます。遠方からお疲れ様でございます、さあ、どうぞおあがり下さいませ」

と言って頭を下げて中尉を中に招じ入れた。野田兵曹もそのあとに続く。

二人は母親のあとをついて客間に入った。洋風の客間でしゃれたソファとテーブルがあり室内は極めて綺麗に整頓されている。ソファを勧めて母親は

「ただ今お茶をお持ちしますけえ、お楽になさってつかあさいね」

とほほ笑むと部屋を出た。生方中尉は客間から見える庭を見て「すごいなあ、野田の家は。お父様はどんなお仕事をしてらっしゃるのか?」と尋ねた。野田兵曹は

「はあ、米屋をしとりました。ほいでも父がのうなった後は兄が米屋を継いどってです」

と答えた。生方中尉は「ほう、米屋。大したものだ」と感心しきり。

そこに母親が紅茶と菓子を持って入ってきた。さあ、どうぞ私が作った菓子ですがお口に合いますでしょうかのう、という母親に生方中尉は「お手作りですか!これは素晴らしい」と心から感激して言った。母親は若いころミッションスクールに学び西洋菓子の作り方も少し学んだと言った。

紅茶を喫し、菓子を食べ終えて落ち着いたころを見計らい生方中尉は

「実は」

と河崎高射長からの手紙を母親に手渡した。その手紙を中尉から押しいただくようにして受け取り中身を読み進むうち・・・母親の表情が今までとは激変して来たのに生方中尉は気がついた。

そして――

   (次回に続きます)

 

             ・・・・・・・・・・・・・・・・・

お騒がせ野田兵曹のお話です。

『大和』を休養のため降ろされた兵曹は生方中尉の付添のもと帰郷しました。そして、事の顛末を書いた河崎高射長からの手紙を手渡した生方中尉ですが・・・。

次回をお楽しみに!

ぜんざい(画像お借りしました)
ぜんざい 


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