「女だらけの戦艦大和」・幻の本2

その晩、巡検後の烹炊所前に集まったのは――

 

「な、なんじゃ。野村副長が居ってじゃ」

と驚きの声を上げたのは石川水兵長である。航海科からはこのほかに松岡修子中尉に樽美酒ゆう少尉そして分隊士の麻生太特務少尉、その恋人の見張トメ二等兵曹、その友人の小泉純子二等兵曹や谷垣一等兵曹、それに暗黒の一重まぶたも重々しい石場茂子上等兵曹などが烹炊所前に集合して、なぜかマツコとトメキチもその後ろにくっついている。

そのほかに機銃分隊の長妻昭子二等兵曹、増添要子二等兵曹などもいてお互い瞳を見かわしては(なんでここに副長が居るんじゃろうねえ?)と思っているし、副長は副長で

(一体なんだあ?なんでこんなに下士官や兵隊が来てるんだろう?なんかこの中で私ヘンに目立っていないかしら。って言うかこの連中も例の<幻の本>を見に?)

とそわそわしている。

とそこに「お待たせしてしまって」と汚れた前掛けを外しながら主計の森脇兵曹が現れた。そして一行をざっと見まわすと

「では、図書庫へまいりましょうか?よろしいですか」

と言って皆を先導するように歩きだした。副長も、松岡中尉も樽美酒少尉も・・・皆期待に胸ふくらませている顔であるきだす。

その道々、麻生分隊士はこっそりオトメチャンの耳に

「なあオトメチャン。<幻の本>いうてどがいなもんじゃと思うね?」

と囁いた。オトメチャンは歩きながら腕を軽く組みながら

「ほうですねえ。きっと綺麗な絵本みとうなもんじゃないかとうちは思いますが。いうてうちはあまり絵本を見たことはないんですが」

と言った。麻生分隊士は(オトメチャンは絵本を見たことがないんじゃな・・・かわいそうじゃのう)と湿っぽい気分になったが(ほうじゃ、内地に帰ったら綺麗な絵本を買うてオトメチャンに贈ろうか)と思いついた。

その後ろをマツコとトメキチが歩きながら、「ねえトメキチ、一体どこに何があるって言うのかしらねえ」「そうねえマツコサン。<まぼろしのほん>て言うんだけど<ほん>ってみんなが時々開いてるあれのことかしら?」「あれって何が書いてあるのかしらねえ」「わかんない。でも時々絵の書いてあるのもあるわよ」などと話している。二人、もとい二匹の胸も期待に膨らんでいるようだ。

 

一行は、最下甲板の前方の一角にたどり着いた。普段あまり来ないところで、さすがの副長でさえ「ほう、こんなところがあったのか」というくらいである。森脇兵曹は慣れた手つきで扉を開けた。

ギッと鉄の扉が鳴って、森脇兵曹がまず身体を部屋に入れた。中に電燈がつき兵曹が皆を招じ入れた。入った皆は「わあ、えらい数の本があってじゃ」と声を上げた。松岡分隊長がまず、本を並べた棚に走りよって本の背表紙を眺める。その分隊長にマツコがまとわりつき「ねえ、なにこれ。なんて書いてあるの?」という。

そのマツコに松岡分隊長は

「鳥くん、君も本を読むかい?この本は<イワシの馬鹿>という本だよ。こっちは<カラシーゾフの兄弟>というどっちも外国の本だねえ。でも君には難しいかもしれないよ」

と言って他の棚を見に歩く。

そんな分隊長を尻目に、麻生分隊士やオトメチャン、それに野村副長たちは例の<幻の本>探索にかかる。八列ほど並んだ大きな本棚、その間を経巡って上の方まで見上げてみたり下の段をしゃがんで覗いてみたり。

麻生分隊士は森脇兵曹に

「森脇兵曹、その<幻の本>言うてどがいな本なんじゃ?その・・なんていうたらええんか・・本の表紙やらなんやら」

と問うた。森脇兵曹は麻生少尉のそばに駆け寄ると

「うちも記憶がおぼろげでありますが、まるで自分たちで作ったみとうな感じでありました。売っとるような本とはちいとちごうておりましたね。いうて中身は見てはないんじゃが」

と説明した。麻生分隊士は「ほう、普通の本とはちごうてか。ほんなら探しやすいかもしれんのう」と言って本棚を見つめる。

野村副長はオトメチャンと「本棚ばっかり探してもなさそうだわ。見張兵曹、この部屋の隅に何やら箱が置いてあったよね、その中に入ってないか見て見ない?」と部屋の隅に置いてあるいくつかの箱を二人で引きずり出してくる。

石川水兵長や樽美酒少尉、谷垣兵曹に石場兵曹などが手伝う。「重いのう―」「ああ重いのう―。この中に<幻の本>が入とるんかねえ」などと言いながら。大きな箱は全部で七つにも及んだ。それらを図書庫の広い場所に出してきて、

「野村副長、さっそく熱くなってください。さあ、副長あなたも今日から富士山だ」

と松岡分隊長の叫びで野村副長が埃だらけの箱のふたをそっと開いた。ボハッ、と埃が舞い上がりまず副長が「げほっ、ぐへっ!」と咳をしてそのあとまるで伝染したかのように見張兵曹から麻生分隊士、谷垣石場石川樽美酒森脇・・・と咳をした。マツコとトメキチさえ大きなくしゃみをした。

が、一人松岡中尉だけが咳もくしゃみもしないでラケットを振りながら

「さあ、全部のふたを開けて下さい副長!熱くなりましょう」

と檄を飛ばす。しかし激しく咳こむ副長は片手を横に振り、それを見た石場兵曹は暗黒の一重まぶたも重々しく

「松岡分隊長、副長は『開けるなら貴様がやれ』というておられます。ですけえどうぞあとはすべて分隊長が開けてつかあさい」

と言ってそれは大きなくしゃみをした。そのくしゃみがあまりにも可笑しく、皆はどっと笑った。

松岡中尉はラケットをブン、と振ると

「なんとこの私がその役目を。これは光栄ですね、樽美酒くん私が開けていいかな?いやだと言っても無駄ですよ、私がもう副長からその役目をいただいたんですからね」

と話しだして止まらない。麻生分隊士が「松岡分隊長、ええ加減にしてはよう開けてつかあさい」と怒鳴って松岡はやっと話をやめた。そして埃を派手に吹き飛ばしながらの箱のふたを次々開けた。

埃が落ち着いたころを見計らって居並ぶ副長以下が箱にわっと取りついて中の本をドンドンと箱の外に出す。谷垣兵曹が本の表紙を見ながら

「なんじゃどれも<幻>には程遠いのう。普通の小説本に料理の本。それになんじゃこれ、見い!誰かの日記じゃ、ワハハハハ!」

と騒ぎ出す。すると「どれどれ、うちにも見せんか!」と皆がそれに群がる。が、日記と言っても一ページの半分に<今日から日記を始めます>と書いてあるだけで駆け寄った皆は一斉にずっこける。

「なんじゃ、つーまらん」

と石川水兵長が言って次の箱を引きよせる。そこにマツコが来て「アタシにも探させてよう」と言って大きなくちばしで箱の中の本を摘まみだす。トメキチがそれをくわえて床に放りだす。オトメチャンが

「ハシビロ、トメキチもそがいに本を粗末に扱うたらいけんで。本は大事なもんじゃけえね」

と注意した。マツコとトメキチは作業を止めて「はい、わかりました」と言って今度は優しく本を扱う。それら箱から出された本を一つ一つ、丁寧になめるように皆は見て行く。が、<幻の本>らしいものは見当たらない。麻生分隊士が

「森脇兵曹、ほんまに<幻の本>があるんか?何かの間違いじゃあるまいな?」

と少しいらだったような声で言った。彼女はひどい埃で喉と鼻がひりひりして咳きたいのを必死でこらえているのだった。「うちは餓鬼の頃気管支が弱あていたんじゃ。またあれがぶり返したらたまらん」とブツブツ言っている。その向こうで野村副長がまた激しく咳きこんでいる。

麻生少尉は副長に

「副長、大丈夫でありますか?ちいと外に出てきれいな空気を吸いませんか?」

と声をかけた。副長は涙のたまった眼で少尉を見て「そうだねえ、ちょっと外に出ようか?喉の奥が変になってきたよ」と言って二人は扉を開けて外に一旦出ようとした。

と。

「あ、なんじゃろうこれ!」

というオトメチャンの大きな声に二人は、いやその場の皆が「なになに!出たか<幻の本>が」と叫んでオトメチャンのもとに駆け寄る。

オトメチャンの手には、埃をまとった厚手の古びた封筒がありその封筒の表には何やら難しい文字が書かれている。さっそく森脇兵曹がそれを手にとって熱くかぶったほこりを「フーーッ!」と吹き飛ばした。とたんに集まった総員が「グヘッ、げほーッ!」と激しく咳こむ。

森脇兵曹は何食わぬ顔でそれを手に取り封筒の口に手をそっと入れた。皆が固唾をのんで見守る中、一冊の<本>がその姿を見せた。

「森脇兵曹、これがその――あれでしょうかのう」

オトメチャンが小さな声で言うのへ、森脇兵曹はそれをすっかり封筒から出し表紙をじっと見つめると言った。

「ああ、ほうじゃ。これが<幻の本>じゃ。間違いないわ」

一同の間に緊張と期待が電撃のように走った――

   (次回に続きます)

 

     ・・・・・・・・・・・・・・

いよいよその姿を現した<幻の本>です。

一体何が書かれているのでしょうか?あんなことでしょうかそれとも、こんなこと??

次回どうぞご期待下さい。

 

「艦これ」グッズの続きです。クッキーを買ったのと一緒にこんなカップも買いました。

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「女だらけの戦艦大和」・幻の本1

「女だらけの戦艦大和」以下数隻はいよいよトレーラーを抜錨し内地へと航海を始めた――

 

艦上配置のものたちはその場に立ってトレーラーとのしばしの別れを惜しんだ。

日野原軍医長は最上甲板に上がってきて遠くなり始めたトレーラー諸島・水島を見つめた。その視線の先には、海軍診療所があり――そこで看護婦見習いとして働き始めたキリノがいる。

キリノは父親の入院とともに診療所に行きそこで医官によって見出された逸材である。看護婦にならないかと持ちかけられたキリノとその父親はとてもうれしそうにして快諾したという。診療所の責任者のトレーラー艦隊司令部軍医長は『武蔵』の村上軍医長に

「この子を日本に連れて行ってきちんと試験を受けさせたい・・・この子は頭がよいからきっと資格を取れます。しかも性質がよいから患者に慕われる看護婦になりますよ。もうしばらくここで研さんを積ませてから日本に行かせたい」

と言ったと、日野原軍医長はあとから村上軍医長に聞かされた。村上軍医長はそのさい、

「出来ることなら私がその役目をしたいくらいですよ。あの子はいい子です・・・もしかなうなら、あの子が日本に行った時の世話をしたいくらいです」

と言ったのだった。その思いは日野原軍医長も同じである。そして軍医長は(そうだ、日本に帰ったら日本語の勉強のできるような本を買っておこう。またトレーラーに戻る時それをキリノにあげよう)と計画した。

(しかし、よい日本語の参考書と言うのか練習帳と言うのかそういうものはさすがに売ってはいないだろう・・では一つ)

自分で作るか、と日野原軍医長は楽しい思いつきに心も浮き浮きとした気分になると背伸びをひとつして医務科の部屋に戻ってゆく。

 

それからしばらくたったころ。

機銃分隊では長妻兵曹が平野少尉に

「少尉。字引をお持ちでしたら拝借できませんかのう」

と言った。平野少尉は機銃の手入れに余念がない兵たちの間を回っていたが長妻兵曹の声に

「字引ねえ・・・私はちょっと持っていないなあ。あ、そうだ。最下甲板のどこかに図書庫があるって聞いたよ?そこにないかなあ?あとで行ってごらんよ」

と教えてくれた。長妻兵曹は平野少尉に礼を言って、(今夜にでも増添でも誘って下に行ってみよう)と思った。平野少尉は去り際、

「そうだ、図書庫には幻の一冊があるらしいからそれも探したらいいかもね」

と言って笑った。長妻兵曹はぽかんとして「幻の一冊・・・いうてどがいな本なんじゃろう」とその後ろ姿を見送る。

 

その同じころ。

防空指揮所では見張り員たちがそれぞれの受け持ちの双眼鏡に就いて見張りに余念がない。その様子を後ろから麻生分隊士が見回って検分する。

五分置きの間隔でそれぞれの見張りから「異常なし」の報告が入り麻生分隊士は伝声管を使って第一艦橋に報告。これから夜になると『大和』『矢矧』以下十二隻の艦隊は発光信号を頼りに航行することとなる。

そこにマツコとトメキチを従えて、松岡分隊長が上がってきた。その後ろには珍しく樽美酒少尉がいて、風に栗色の髪を吹かせている。松岡分隊長は指揮所の一番前の囲いの前に立つと樽美酒少尉を呼び寄せ

「樽くん。当分トレーラーとはお別れですからね、十分にお暇をなさい。そしてまた、今よりもっと熱くなって戻ってくるよと言ってあげなさい。さあ今日から君も富士山だ!」

と叫んで随分小さくなったトレーラ諸島をびしっと指差して叫んだ。樽美酒少尉ははいっと言って分隊長と同じようにビッとトレーラーの方に指を指し腕をぴんと伸ばした。そして

「トレーラー、お世話になりましたあ!しばしのお別れですが、また来まーす!また逢う日まで逢える時まで、お元気でー」

と叫んだので指揮所の皆はたいへんびっくりした。麻生分隊士は驚きのあまりその場に立ち尽くしてしまうし、見張兵曹さえ双眼鏡から目を離して樽美酒少尉の方を見て

「いけんわ・・・あの樽美酒少尉がおかしゅうなってしもうた。困ったのう、こりゃあ大ごとじゃわ」

とひとりごとを言っている、その独り言を聞きつけた麻生分隊士はさすがにクスッと笑った。麻生分隊士は見張兵曹のそばにそっと寄ると

「樽美酒少尉もあんがい松岡分隊長みとうな<熱いおなご>なんかもしれんな。でなきゃあがいに叫んだりできんで。しかし・・・困ったもんじゃのう」

と囁き二人はこっそり笑った。その二人の前に松岡分隊長が突然立ったので二人はあわてた。話を聞かれてとがめられるのかと思ったが分隊長は咎め立てしようと思ったのではない。

「麻生さんに特年兵君。そして小泉君や石場さ~ん。それに谷垣君に石川君酒井君たち。いよいよ待ちに待った内地に帰れますね。というわけで内地で君たちの帰りを待っている日本へと愛情あふれる手紙を書こうというコンテストを私、松岡の肝煎りで行おうと思うのですよ。で、ただ書いたのでは芸がない、なさすぎるねということで字引を引いてきちんとした正しい文字と正しい言葉の意味で書きましょう。てな訳で皆さんさっそく今夜からでも最下甲板にあるという図書庫に行って字引を拝借してらっしゃいな」

松岡分隊長はいきなりのようにそんな宣言をして居並ぶ航海科員たちを驚かせた。

小泉兵曹が「あのぅ、松岡分隊長」とおずおずと声をあげた。松岡分隊長は

「ん?なんだね突撃隊員くん」

と小泉兵曹の方を見て言うと小泉兵曹は

「コンテスト、言うことは優勝をしたらなんぞ賞金みとうなもんが出る思うてええんでしょうか?」

と言った。すると松岡分隊長は

「小泉君!」

と大きな声で怒鳴った。とたんに小泉兵曹は体を小さくして「すみません。妙な事言うてしもうて・・・謝りますけえ罰直だけは勘弁してつかあさい」と謝った、が松岡分隊長は

「小泉君、君はやる気になってますねえ!熱くなっていますよ!そうです、この松岡修子主催の手紙コンクールに優秀した人には私から素晴らしい贈り物がありますからどうかみんなその気になって頑張ってほしい!熱くなれよー、今日から君も富士山だっ」

と言って片手を天に突き上げ「バンブー」と叫ぶ。そしてその場の皆も「バンブー」と叫んで片手を天に突き上げるいつもの光景。

そしてその場を去ろうとした松岡分隊長と樽美酒少尉であったが、ふいに松岡分隊長が立ち止まり皆を振り向くと

「そういえば・・・聞いた話だがね。ここの図書庫に<幻の本>があるって聞いたことない?私はちょっとこの耳に挟んだのだが・・・誰か知らない?」

と言った。が、皆一様に首を横に振る。松岡分隊長は「ふーん、だめだねえ。・・・それじゃ私は副長に聞いてきましょう。さ、樽くんも一緒に行くよ?」というとその場を走り去っていったのだった。

 

松岡中尉と樽美酒少尉、そして何か面白いことがあるんじゃないかとそのあとをついてきたマツコとトメキチは、副長を探して艦内を走り回った。そしてやっと主計長の部屋で副長を捕まえた松岡中尉は

「副長、毎日暑くなっている副長にものをおたずねしますが・・・ここの図書庫に<幻の本>なるものがあると聞いたのですがそれは本当でしょうかっ!?」

とそれは大きな声で副長に尋ねた。野村副長はその大声に閉口したように耳をふさぎながら

「幻の本ねえ。ああ、そういえば私がここに砲術長として着任した時当時副長だった佐藤中佐がおっしゃっておられたアレのことかしら?でも私も見たことがないんだよね。図書庫には何回か行ったことはあるけどそれらしい本は見たことがないのよね・・・あ、偽装の時からいる古い下士官なら知ってるかもしれないね」

と言った、すると主計長が

「なら副長。うちの森脇兵曹が儀装の時から『大和(ここ)』にいるから彼女ならきっと知っていますよ」

と言ってさっそく森脇兵曹が呼ばれた。森脇兵曹は副長の直々のお呼びと聞いて緊張しきって主計長の部屋に来たがその話の内容が<幻の本>のことと聞いてほっとしたような表情になり

「ああ、<幻の本>のことですか。ありゃあもともとは、各分隊に一冊から二冊はあったもんなんじゃが段々兵隊連中が私物化しよってですねえ。散逸してしもうたんです。ほいでも図書庫にはたった一冊だけ残っとるとうちは聞いとりますよ。ただし、図書庫からの持ち出しは厳禁じゃ、言う話ですがのう」

と教えてくれた。野村副長は「ほう、さすが儀装からの乗組員だね。『大和の生き字引』みたいだね」と感心しきりだし主計長は自分のところの下士官が役に立ったので鼻が高い。

松岡中尉は、森脇兵曹の両手をガシッと握ると

「ありがとう森脇さん。あなた熱くなっていていいですねえ~、さすがですよ!で、そんなあなたにお願いがあるんですが、我々その図書庫の場所を知りませんのであなたに連れていってほしいんですがねえ。お願いできますか?」

と言った。森脇兵曹はちょっと小首を傾げて考えると

「うーん・・・これから烹炊所で作業がありますけえ今からはちいと無理ですのう。ああ、でも夜ならええでしょう。巡検後、うちは烹炊所に点検に行きますけえその時行きましょう。じゃけえ松岡中尉、巡検が終わったらお手数掛けますが烹炊所まで来てつかあさい」

といい、松岡中尉は「ありがとう森脇さん。では巡検後熱くなりに行きましょう。この樽くんも一緒に行きますからよろしくね~、今日から君も富士山だ!」と叫んだのだった。

そして松岡と樽美酒、そしてマツコとトメキチは副長と主計長に敬礼すると部屋を出て行った。

森脇兵曹も「ほいじゃあ私もこれで」と出ようとしたが副長に「ちょっと待って?」と呼びとめられた。はいなんでしょうと言った兵曹に副長は

「その<幻の本>っていったいどんな本なの?」

と聞いた。

森脇兵曹は右の頬を人さし指の先でちょっとひっかきながら笑うと

「兵隊の為の教育の本、といいましょうかのう。野村副長、御存じないようですね。今夜ご一緒にいかがですか」

といい――興味しんしんの野村副長は巡検が終わったら烹炊所に行くことを約束したのだった。

 

その話は、なぜかどこからか水漏れのように伝わり――その晩の巡検後、烹炊所前には上は副長から下は水兵長までの十数名にマツコとトメキチまでが集合することになったのだった――

   (次回に続きます)

 

             ・・・・・・・・・・・・・

読書の秋・・・というには少し季節が進み過ぎた感もありますが本好きな私には年中読書の時です^^。

さて、『大和』艦底にあるという図書庫に鎮座する<幻の本>とは一体!?

次回を御期待下さい。

 

先日日本橋に行った帰りに秋葉原に行きこんなものを買ってきました!

本日はその一。「艦これ」クッキーですが…もったいなくってまだ食べてないw。
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日々雑感・蜂のムサシか!?

いやあ・・・ゾッとしました。
なんのことかって?

いましがたのことです。
娘が「部屋の箪笥の引出しにハチがいる!」というのでそいつを退治せんと掃除機片手に件の引き出しをそっと開けました。

そっと見ると服の入った引き出しの右ふち、その奥の方に蜂が・・・

しかも!
スズメバチじゃないかこいつ!!

背筋がぞっとし、頭がパニック寸前に。

しかしよいことにこの寒さで奴は身動きが取れないようです。
ですので掃除機のノズルで吸い取ってやろうとしたのです。

が・・・・
掃除機の吸引力が足りない!
蜂が吸い込めない、このままでは蜂が逆上して出てきたら我々は名誉の戦死です。

そこで私は救援を要請!
頼もしい蜂撃退の助っ人、「マグナムジェット」さんです。
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彼がシューっとすると、蜂は引き出しの中で暴れていましたが一分もしないうちに「ぽとっ」という音を最後に静かになりました。

で、奴の死骸を見つけようとしましたが引き出しの中にはいない…一番下の引出しを取りだすとそこには変わり果てたスズメバチの姿が。

掃除機で吸い取り一件落着でしたが一体どこから来て引きだしの中に入り込んだのか???

仮定ですが洗濯物にくっついたスズメバチさんを私は一緒に取りこんでしまい畳んでしまったのではないかしらと思いました。この寒さですからさすがのスズメバチといえども動きは鈍い。

で、引き出しの服の中で息を吹き返したのではないでしょうか??


私はハチが大っきらいです。子供のころ、ミツバチに刺されて以来どうも蜂が本当に怖いのです。
スズメバチを至近で見た時正直卒倒しそうになりました。

ですが親のメンツにかけても退治せねば!
というわけで無事退治しました。

あ!
写真撮っとけばよかった===!

みなさんもどうぞ蜂にはご注意ください、ここ数年夏が暑すぎるから蜂も活動が活発だと聞いています。
秋とはいえ油断はできないと痛感しました。

ああ・…怖かった…
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「青の中から」あとがき

今は亡き人々――特に戦没した人たちを思う時、今現在の時の流れがとても不思議に感じてしまう時が、ままある。

彼らは、確かに存在したのだ。この日本の国に。

たった、六十数年前まで確かに存在したのだ。

そして彼らは日本の国と日本人の為にその心のうちの多くを黙して語らずに逝った。その心の内を知るよすがはわずかに残された「遺書」でしかない。その遺書ですら、現在の人間に読ませれば「本当の心を語っていない」となる。それにも一理あるかもしれないが、乱れた心内を吐露するようなあけすけなことをあの当時の日本人、特に軍人と呼ばれた人たちは好まなかったのだと思う。

故に彼らの遺書にはサッパリとした潔い心情がつづられている。

そのような中でもひときわ異彩を放つのが、今回「青の中から<問>」のモデルにした<回天金剛隊>で昭和二十年一月一二日にウルシーにて戦死した都所静世少佐(没後階級)の遺書である。

彼は敬愛する兄嫁さんに宛てて書いた手紙の中でその偽らざる心情――幼い姪っ子たちのためなら死ねるが自分のことしか考えない三〇過ぎの男女なんか糞食らえ、などといった当時の世相に対する憤りをそのまま兄嫁への手紙にぶつけている。

しかし、彼はそれらのことにこだわるなど小さなことでどうでもいいんだ、といい切り話しは潜水艦内での過ごし方に移る。青年らしい熱し方で、興奮して筆が走っているようであるがその実冷静にわが身を見つめているようだ。

そして、その冷静になった筆で兄嫁への優しい心遣いを見せる。

そのあまりに無垢で清純な魂に私はうたれるのである。

青年たちは清純で清浄なままで散華して行ったのだ・・・その必死の心を思う時、何とかして彼らの思いを残したいと思うにいたった。そして降りて来たのがこの「ものがたり」である。

この「ものがたり」は都所少佐をモチーフにしたかったため最初を『問』として南海に散華した回天特攻隊員・シーチャンのつぶやきを描いた。彼の魂は青い海を漂いながら、愛しい兄嫁や日本という国がその後どうなったのかを『問う』という形で。

これはほとんど一日、三時間ほどで書きあげた。その最後の方ではなぜだか妙に気分が悪くなるというハプニングもあったがなんとか書きあげた。そして一段落した後で兄嫁から彼の思いに応えるという『応』を書いた。実際のところ都所少佐と兄嫁がどのようなきょうだいであったかを示す資料はないので全くの創作である。

もしかしたら、こんなことがあったら?という思いで書いたものである。こんなふうであってほしい、という期待のようなものも込めてある。

 

そろそろ戦後も七〇年を迎えようとしている。日本は高度成長を成し遂げ、戦後復興を見事なまでになしえた。が、その半面人心は荒廃したように見えるのはなぜだろうか。物質的豊かさに馴らされて感性がすたれてしまったのではないか。

都所少佐始め多くの英霊たちはこの日本の状況をどう見つめて居られるのだろうか、気になって仕方がない。

彼らがその身をなげうって守った大和島根、日本という国を未来永劫、人も国土も美しく継承してゆかねば彼らに申し訳のないことである。

そして彼らを慰霊顕彰する心を繋いで行くことも忘れてはなるまい。

彼らは常に我々とともにある。

姿かたちが見えないだけで、彼らの国を想い国民を思う心や魂は我々の隣にある・・・そう、思いたい。

              ・・・・・・・・・

「青の中から」のあとがきとして私の思いを書きつけておきました。

なお、「青の中から<応>」の文末の歌は、見張り員の拙作であります。

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青の中から2<応>

・・・いずことも知れぬ 深い海の中

    眠れるおとうと

   いつ帰る 我がこの腕に・・・

 

私の手元に古いアルバムがあります。私がここの家に嫁に来た時からですからもう何年・・・いえ何十年の時を一緒に過ごしたことになりましょうか。

このアルバムを開くと私と夫の結婚式の写真があります。そして次のページには、懐かしいあの子の・・・。

 

私が十八でこの家にお嫁に来たその日、式が始まるまでの時間私と私の親や兄弟、親戚の十名ほどは十畳を一室を借りてお茶をいただいて待って居りました。わたしはきれいに縫った口紅が落ちてしまわないかとお茶をいただくのをためらっていました。

と、部屋のふすまがそっと、小さく開きました。その向こうに可愛い男の子がいて中を覗いています。フッと私と目が合った瞬間、その子は「お人形がいる!」と言うとあわててその場を走り去って行きました。これが――終生忘れられないシーチャンとの初めての出会いでした。

あの時シーチャンはわずか九つ。

そしてその日からシーチャンと私は大の仲良しになったのでした。

シーチャンはまだ物心も付かないうちにお母様を病で亡くされ二人の兄とは年も離れ、さみしい思いをしていたようです。家に女性と言えば、親戚のおばさまがたまに手伝いにいらっしゃるくらいだったそうで、私が嫁入りしたことで「家の中が明るくなったよ」と夫にも夫のすぐ下の弟にも喜ばれたのが昨日のようです。

一番喜んでくれたのがシーチャン、あなたでしたね。あなたは私を「お姉ちゃんおねえちゃん」と呼んで私の手伝いをよくしてくれましたね。私に最初の子供が生まれる時も

「お姉ちゃん、赤ちゃんが生まれたら俺が遊んであげる」

と言って、娘が生まれるととてもよく面倒を見てくれましたね。年子で生まれた次女にも面倒をよく見てくれましたね。

娘たちが少し大きくなるとシーチャンは学校の勉強の合間に一緒に散歩に行ってくれたり、ごはんの用意を手伝ってくれましたね。「お姉ちゃん、これどこに置こうか」「お姉ちゃんこれでいいの?」あの声が今も私の耳に残っています。

 

日本を取り巻く世界の状況が厳しくなり、大きくなったシーチャンは海軍の学校を受験しましたね。その頃にはもう、シーチャンは少年から「青年」になりつつありましたね。そして受験に合格したシーチャンは「姉さん、今までありがとうございました。わたしはこれから海軍軍人の道を歩みます」とうれしそうに報告してくれましたね。

そして学校のお休みで帰って来た時には娘たちと幼いころのように夢中で遊んでいましたね。そして夫に学校生活の愉快な話をしては笑わせていましたね。台所に来ては「姉さん手伝いましょう」と言ってお皿をあらってくれたり、娘たちと一緒にぬか床をかきまわしてくれました。

 

しかし、戦争はその間にのっぴきならないところまで来ていました。

南方で、大陸で、多くの将兵のみなさんたちが戦死されこの町から出征して行ったたくさんの兵隊さんも白木の箱で帰ってくる日が多くなりました。わたしは、大事なおとうとのシーチャンが無事でありますようにと鎮守様に参っては、娘たちと手を合わせていました。

シーチャンは学校を出てすっかり立派な士官さんになっていました。紺の軍服姿もりりしいその姿に、私も夫も感無量でした。

あの年の夏、休暇で帰って来たシーチャンは、昔と同じ笑顔で私たちに接してくれましたがその笑顔の底に今までとは違う何かを私は感じました。シーチャンは、縁側に私と座って庭で遊ぶ娘たちを見ていましたが、不意に

「姉さん。わたしはみいちゃんやれいちゃんを守るためならこの命なんか惜しくはないんだ、喜んで死ぬよ。でもね、自分のことしか考えないいい年した大人の為に死ぬのは正直腹が立つよ。情けないよね、こんなことでこの戦争に勝てるわけないじゃないか。

姉さん、この戦争はね若い者がもっともっとドンドン死んで日本中が軍神で埋まらなきゃ終わらないと思う。だからねえさん、私が死んでも決して悲しまないで兄さんと笑ってよくやったって言って欲しいんです」

と語り、その瞳には揺るがぬ決意がみなぎっていましたね。

 

それから秋が過ぎ、冬が来たころ。

シーチャンは二度と帰らぬ出撃行に出たのですね。わたしたちはシーチャンが何処で何をしているのかまったくわかりませんでしたがシーチャンは手紙をくれました。その手紙には

「蒸し風呂に中にいるようでなにをするのもおっくうなんですが優しい姉上様のお姿をしのびつつペンを取ります」

と書きだされていて、ああ多分シーチャンは南の方へ行ったんだなあということがわかりました。胸が締め付けられるように感じました。

その長い手紙には、今までの感謝の言葉と娘たちへのいたわりが書かれていました。そして幼いころから今までの思い出。私がお嫁に来た日のことも書かれていて私は懐かしさと悲しさに涙しながら文字を追いました。

「姉さんの花嫁姿、今でもしっかり目の奥に焼きついて居ります。初めてねえさんをふすまの間から見た時、なんてきれいな人なんだ、まるでお人形のようだと思って思わず言葉に出してしまったことも覚えて居ります」

ああ、あの日のこと・・・私の脳裏にもう何年も前の嫁入りの日が浮かびます。あの日のシーチャンの驚いたような、まん丸に見開いたかわいい目。

もう一度、時間をあの時に戻すことが出来るなら――。

 

昭和二十年が始まり、シーチャンからはそれ以降手紙も来なくなりました。夫もシーチャンを思っているのか、時折遠い目をしては空を見つめそれから勤めに出て行きます。娘たちも陰膳を据えた仏壇にその手を合わせてから学校に行きます。

シーチャン、一体どこにいるの?そして元気でいるの?

私は南の空を見つめてはシーチャンに問いかける毎日でした。

 

一月も終わりに近づいたある晩、眠りについていた私は「姉さん!」というシーチャンの声に飛び起きました。シーチャンが帰って来たんだ、とあわてて綿入れを肩にひっかけると玄関に行きました。

「シーチャン!」と叫んで玄関の戸をあけました。が、シーチャンの姿は何処にもなく月明かりが玄関の敷石を冷たく照らしているだけでした。しばらく呆然と立っていると夫が「どうした?」とやってきました。わたしは今あったことを言うと夫は黙って戸を閉め、鍵をかけると私の背中をそっと押して部屋へと戻ったのでした。

 

翌朝のラジオを聞いていた私達は信じられないニュースを聞いてその場に立ち尽くしました。

シーチャンは、神潮特別攻撃隊員として南方の海に散華したというのです。シーチャンのほか数名の方のお名前もありました。でももう、私には聞きとれなかった・・・

 

シーチャン。シーチャンは護国の神となられたのですね。

そして昨夜私にお別れを言いに来てくれたのですね。

シーチャン、シーチャン・・・私の可愛いおとうと。

あなたは立派に軍人としての務めを果たされましたね。

 

でも、湧いてくる悲しみと涙を止めることはどうしてもできません。

 

シーチャンの戦死の公報が入ったのは、その年の夏日本が連合国に降伏した後でした。それと前後してシーチャンの私宛の最後の手紙が届きました。短いその手紙の終わりは

「姉さん、私は最後の時姉さんと叫んで死にます」

と結んでありました。その言葉通り、シーチャンは「姉さん」と叫んでそして死んでいったのですね。シーチャンの思いを私はしっかり受け止めたのです。

 

 

戦争が終わって何年もしてから、シーチャンと一緒に出撃して兵器の故障で生還したお仲間お二人が訪ねて来てくれました。シーチャンが乗って行ったのは「回天」という魚雷を改造した兵器であることを私は初めて知りました。そしてシーチャンのいた隊の出撃前に撮った写真をいただきました。シーチャンは昔の面影がそのまんま残った顔で笑っています。手には錦の袋に入った短刀を持って、数名の方たちと笑っています。

これが死に行く人の顔なのかというくらいすがすがしい笑顔です。お仲間のお話によれば、シーチャンは隊長さんのあとに続いてゆき、大きな戦果をあげたということでした。

「シーチャン・・・」

と私は写真のシーチャンの顔を指先でそっと撫でていました。涙が次から次へと流れて止まりません。それを見て夫も泣く、お仲間がたも泣く。

シーチャン、大きな手がらを立てておめでとう。我が家の誇りです・・・

そうは言ってみたものの、どうして死んでしまったの?どうして生きて「姉さん」と言ってくれなかったの?という思いが残ります。

どんなに大きな声で「シーチャン」と叫んでももうこの声は遠いところに去っていったあなたには聞こえないのですね。

・・・シーチャン・・・

 

あれからもう何十年もたちました。アルバムの中の写真はすっかりセピア色になりましたが写真の中のシーチャンは昔のまんまの笑顔で今も笑っています。

そして今も「姉さん」と呼びかけてくれているようです。

シーチャン、私ももうすぐあなたのそばに行きますよ。あなたの兄さんたちとは会えましたか?

私は最近、死ぬのが怖くなくなりました。

なぜって・・・そう、そちらの世界に一足早く行った夫やそして――シーチャン、あなたに逢えるからです。

 

古いこのアルバムを胸に抱えると今も聞こえます、シーチャンが遠くの青い海の中から私を呼ぶ声が――

 

若人の 清し(すがし)思ひを 人よ知れ

皇国(すめらみくに)の つづくはてまで



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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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