「女だらけの戦艦大和」・まさか!であってほしいのよ

「女だらけの帝国海軍軍人」の娘たちを持つ、ふた親の心配はいつの日も尽きることがない――

 

壱・於、「蒼龍飛行隊」飯田房子中佐の郷里

「蒼龍」飛行隊の「飯田中佐の実家では中佐の手紙を前にした父と母がため息をついている。母は父に湯呑を差し出しつつ

「困りましたねえお父さん。房子はまた、見合い話を蹴るつもりですよ」

と言ってもう一度深いため息をついた。中佐の父親は受け取った湯呑を両掌でくるむようにしてふーっと息をついた。そして

「そうだなあ、この文面からしたら<お断り>のようだな。房子のようにえらくなってあちこちで戦果もあげるような娘だからあちこちから見合いの話がかかってそれはいいんだが肝心の本人に全くその気がないというのは困ったものだ。それとも――房子には心に決めた誰かがいるのかね?母さん何か聞いてないかね?」

と妻を見た。中佐の母はかぶりを振って「いいえ、聞いてませんよ」と答えた。二人の前の座卓には、見合い写真が積まれている。それを見ながら父親は

「いったい房子な何が不満なんだろう、何が不満で見合いをしないのだろう・・・困った奴だ」

と言って茶をグイ、とあおった。母親は

「どんなに素敵だと思う方の写真を送っても『今は軍務に忙しい』とか『わたしの趣味ではないから』と言って断ってくるんですよ。それに房子の写真のなるべく新しいものを送って頂戴って言っても送ってこないし。もう私はどうしたらいいか、わかりませんよ」

と言って心底困った表情をした。父親は湯呑をトン、と音を点てて卓上に置くと咳払いを一回してから

「母さん、今度房のやつが帰ってきたら有無を言わさず見合いさせよう。帰ってきたらすぐ見合いの場に連れてゆけるようにしたらいい。一度見合いを経験したらまた違ってくるかもしれないからな」

と提案した。強引なやり方ではあるが、仕方がない。母も

「そうですねえお父さん。房さんだってそろそろ身を固めていいころですものねえ。そうしましょうか」

と賛成した。

「よし、じゃあ母さん。房が帰ってくるという連絡を受けたらまずこの人からにしよう・・・」

父親はそう言って一番上に積んである写真の男性を母親の前に置いた。はい、と母親が言ったそのあと、父親は数瞬の間考え込んだ。そして不意に妻を見るなり

「母さん。まさか房の奴――!」

 

弐・於、「蒼龍飛行隊」大島一飛曹の郷里

「蒼龍」飛行隊・大島一飛曹の実家でも同じような話が展開されている。

一飛曹の母親は畑仕事に精を出している、向こうでは夫がこれも畑にクワを入れて耕している。自分の少し後ろでは長男(一飛曹の兄)夫婦が土をならしている。

そろそろお昼だ。一飛曹の母親は「そろそろお昼にするかねえ」と声を投げ、長男の妻が「お母さん、それじゃ支度してきます」と言って家へと小走りに走り出す。そのあとを母親も追って行く。

皆が居間にそろい、「いただきます」と箸を取る。漬物に味噌汁、ごはんだけの質素な昼食ではあるが労働のあとでは大変に美味なものである。その昼食の最中、長男が唐突に言いだしたのだ。

「なあ、そういやあみゆきはどうしてるのかなあ」

母がご飯を飲み込んでから

「随分前だけど手紙が来たよ?見合いの話は断って下さい、ってそれだけだけど」

という。父親が「はあ?見合いを断わるって・・・前に帰って来た時は乗り気だったじゃないか?なんで急に断るんだね?」とわけがわからないと言った表情をした。兄の妻が

「みぃちゃんも難しいお年頃なんですよ・・・本当は嬉しいんでしょうけどそれを表に出すとお仲間さんに恥ずかしいと思うんじゃないでしょうかねえ」

と一飛曹の為にとりなすような形で口を挟んだ。母親が嫁の顔を見つめて「ああ、そういうこともあるかねえ」とつぶやいた。しかし父親は

「みゆきに限ってそんなことがあるはずがないぞ、あんな関取みたいな体しやがって恥ずかしいもへったくれもあるもんかい」

といい皆は大笑いしてしまった。「それでも、」と兄嫁が再び話し始める。「みぃちゃんは戦闘機のパイロットですもの、自分との釣り合いを考えてるんじゃないかしらねえ?みぃちゃんはなかなか考え深い子だから」

兄が妻の顔を見つめて

「あいつが考え深いかねえ?・・・まああいつももういっぱしの戦闘機乗りならちょっとやそっとの相手じゃ満足行かんかもしれないな」

といい二人はうなずき合う。

と、父親がひときわ大きな声で叫んだ。

「まさか・・・まさかみゆきの奴―ー!」

 

参・於、『大和』副長野村中佐の郷里

『大和』副長の野村中佐の実家では母親がたくさんの封筒に入ったものを吟味中である。

「これは・・・だめ。こっちは・・・まあ良し。これは・・・これならいいわ!これは最後の隠し玉」

などとひとり楽しげに作業中。何かと言えば「次子さんのお見合い相手ですよ」。副長は以前、見合いで手痛い目にあってから「見合いなんか金輪際しませんからね。写真なんかいくら送ってきても無駄ですから。わたしは見ませんからね、いいですね!?」と怖いくらい念を押して出かけて行ったのだった。が、母親として

「はいそうですか、とはいきませんものねえ」

と言ってホホホ、と高笑いしてあちこちに副長の写真を配りまくりそして男性側からも写真をもらいまくった。そして身上書を吟味し<軍服を着ていても違和感等感じない>男性に限って選択しているのだった。

「だって、また次子さんがショックを受けたらもう一生独身でいる、とか言い出すんじゃないかと思って。そんなこと私耐えられないわ、娘はやっぱりきれいなうちにお嫁に行かなきゃ!」

母親は使命感のようなものに支配されている感じさえ受ける。そんな妻を少しあきれたように見つめる夫は、

「まあ待て、お前がそんなムキになってどうするんだね?これは次子の問題だろうが。それに、もしかしたら次子はどこかに思う人がいるんじゃないのかね?そのへんも含めて今度、あの子が帰ってきたら聞いてみたらいいじゃないか、話はそれからでも遅くはないだろう?」

と言ってやった。しかし妻は「だって!」と頬を膨らませて夫を軽くにらんだ。

「あなたはいつだってそう、次子のことなんかあまり考えてらっしゃらないでしょう?もし、もし次子が嫁ぎ遅れてしまったらあなたいったい」

急に言葉が途切れ、夫が妻をよく見ればこれが涙にむせんでいるのだ。彼は驚き呆れつつも

「僕だって次子が、と思うと心中穏やかではないよ無論。その見合い写真の中からまずお前がいいと思う人を選んで僕に見せなさい。二人で選べば間違いなかろう」

と言って妻の選んだ写真と身上書を手に取った。

とその時副長の父親は不意に呟いた、

「まさか・・・まさか次子は――!」

 

 飯田中佐の父・大島一飛曹の父・野村中佐の父は同じことを叫んでいた。

「まさか、まさか、・・・まさか

         房子は

         みゆきは

         次子は

      !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

艦の中の女将兵に惚れてるんじゃないだろうなあーー!?

 

            ・・・・・・・・・・・・・・・

一つは――当たりです。

どうしても親というものは娘の結婚に関しては熱くなるものなのですね。最近でこそあまり結婚年齢にあれこれ言わなくなった世間ではありますがわたしたちのころ「女はクリスマスケーキ」と言われていました。つまり――二十四日までは皆我も我もと殺到して高くても売れますが二十六日まで売れ残れば投げ売りされると。

ひどい言われようですよね。わたしは二十五日のケーキでしたが「美味い」と言ってもらえた気はしていません。義弟の嫁は四十でこのうちに来ましたが皆が「美味い」と言ってくれて幸せなあと思います。ケーキはやはり鮮度よりまず見目形なのでしょうね。わたしはもっと、きれいな顔で生まれたかったよ~~だ。

 

さあ・・・飯田中佐も大島一飛曹も野村中佐も、帰国後大変そうですね。

 

結婚。やはりいろいろ大変だ。DSCN1083.jpg


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日々雑感・池淵少佐のことなど

いろいろと書きたい話が山積しています。が、ちょっとここは頭の中を整理しないと話がまとまらないような感じなので、脳内整理の最中の今日は「日々雑感」でご勘弁願います。

 

「回天」の話はもう何回か書いてはいますがそれでもまだ書き足りておりません。

回天で戦死・殉職・自決なさった搭乗員総数は一〇六名。その出身県は以下の通りです。

樺太・1           埼玉・2        静岡・2       山口・5

北海道・10         千葉・1        愛知・2       徳島・1

青森・1           東京・9        三重・1       福岡・4 

岩手・4           新潟・4        京都・4       佐賀・2 

秋田・1           富山・1        大阪・4       長崎・1

山形・3           石川・1        兵庫・5       熊本・3

福島・3           山梨・2        和歌山・2      大分・1

茨城・5           長野・4        岡山・2       宮崎・2 

群馬・3           岐阜・2        広島・1       鹿児島・6

 

そのうち海軍兵学校出身が一九名、海軍機関学校出身が一二名、海軍水雷学校出身が九名、予備学生が二六名、甲種飛行予科練生が四〇名(甲飛予科練生は出身期一三期、この一三期はその殆どが「特攻作戦」で戦死した悲劇の期です)。

そして没時平均年齢は実に二〇・八歳。一番年上の方でも二七歳。最年少が一七歳。

そしてその中にお二人だけ、妻帯者がいました。菊水隊で戦死なさった佐藤章大尉 二六歳(没後階級)と、轟隊の池淵信夫少佐 二四歳(没後階級)。

その池淵少佐についてお話したいと思います。
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池淵少佐の奥さま、ユキコさんは少佐と同い年です。そしてこのお二人は血のつながりはないものの「きょうだい」として育った間柄です。ユキコさんのお母様はユキコさんを出産後亡くなり、池淵少佐のお父様も少佐が幼いころ亡くなりユキコさんのお父さんと少佐のお母さんが再婚しましたので「きょうだい」としてお育ちになりました。それでも結婚は自然の成り行きのように進み、少佐が昭和一九年十一月に休暇で帰省の折、親戚が集まった中で「盛り上がってしまい、突然結婚ということに」なったそうです。

もともとこのお二人の結婚は周囲が昔から決めていたことであまり先延ばしにしているとユキコさんが「年を取ってしまう」ということで急きょ決行されたようです。

それでもお母さんが式を楽しみにしてあつらえてくれていた着物をまとって式を挙げたお二人。しかしこのころすでに池淵少佐は大津島で回天搭乗員としての訓練を受けていました。

少佐は結婚の前にご両親に「結婚には異存はありませんがわたしにもしもの場合、ユキコさんが社会的にも法律的にも未亡人となることを思う時気の毒になる。・・しかしこの点を十分覚悟してくれればいつでも結婚します」ということをおっしゃっていらしたそうで、内心逡巡があったことをうかがわせます。

その後、なかなか会えない日々が続いた二人でしたが昭和二十年六月二日、光市の借家に呼ばれユキコさんは少佐が出撃する四日の朝まで水入らずの新婚生活を送ることになります。

たった、二日の新婚生活。

でもそれがお二人にとって最高の楽しい思い出に満ちた日々になったのです。

出撃前夜の池淵少佐は饒舌で、結婚写真が届いた時自分は訓練中で留守だったのだが仲間が勝手に封を開いて、「随分冷やかされたよ」と言ったり「結婚なんかすると万日の場合君が可哀そうだと思ったんだが俺の気持ちはどうしたわけかずっとおちついて来たよ。君は偉大なんだなあ。不思議にちっとも不安を感じないんだ」

そして「明日九時出航するから裏山の天神様から見送ってくれ」。

出撃のあさ、池淵少佐は「じゃあ、行ってくる」とだけ言って家を出られました。

ユキコさんは八時過ぎに裏山へ行くと見下ろす砂浜には小さな鯉のぼりや吹き流しが風にたなびき大勢の人影が忙しく立ち働いていた。やがて全炊艦が静かに出航。消えてゆきました。

その時のことをユキコさんは

「山には私だけ一人。地球はしばし回るのをやめ、ただ太陽だけが燦々と照りつけて、白夜が来たのかと思われるほど、あたりは静まり返っておりました」

ユキコさんは次の歌を詠まれました。

若人は 国を思いて出でゆけり

   海のかなたに白波のこして

翌日実家に戻ったユキ子さん、池淵少佐はすぐに戻ると思っていました。が、終戦の日を幾日か過ぎた日、池淵少佐と一緒に出撃しながら回天の不調で生還した隊員の訪問でその戦死を知ることになります。

悲しみに暮れたユキ子さんは、こーりゃんを石臼でただ、引くだけでした。涙が粉の上にぽたぽた落ちて・・その部分だけ色が変わるのを見ていた。それ以外のことは何も覚えていなかったといいます。戦死公報が届く一年後くらいまで何も覚えていらっしゃらないというくらいの衝撃でした。

戦後一年半ほど後、白木の遺骨箱――もちろん空っぽの――と遺品が届きます。ユキ子さんが夫に宛てて出した、封もきられていない手紙。

あの人は戦死したんだ、ということが実感になってユキ子さんに迫ります。

 

池淵少佐は生前、ユキ子さんに

今日の日をかねて覚悟で嫁ぎ来し

   君のこころぞ国の礎石

といいのこされていました。それに対して戦後ユキ子さんは

夢に見る君の姿はりりしくて

   年ふることのなきぞかなしき

とその思いを詠まれました。

戦後、ユキ子さんは再婚もせず編み物を習い教室を開いて生活をしてきたユキ子さん。きっと・・・池淵少佐は今日もユキ子さんを見守っていらっしゃることでしょう。

 

 

回天。わたしも思い入れのある兵器の一つであります。兵器に、というよりそれに乗って行った人たちに、というのが正解です。空の特攻と比するとあまり表に出てはこない印象のある「特攻」ですがこれを考案した黒木博司少佐・仁科関夫少佐はどんな思いでこれを考案し、そして自らこれに搭乗して一人は殉職し、一人はウルシーで戦死したのだろうか?

いろいろと考えると出口のない「回天」という兵器の深遠さに気がつきます。

 

        *******************

最近艦艇の擬人化、というのがよく目に着きますね。艦艇を美少女に見立てて可愛かったりちょっとエロい?イラストが人気です。イカロス出版から発行の雑誌「MCあくしず」がその最初かなあ?と思いますがどうなんでしょう?ちょっと過激な絵柄があるのでこっそり見るのがいいかも?

またこの頃では『艦艇これくしょん』というのもあってちょっと興味があります(これはゲームのようで、私はゲームはしないのでキャラクターだけ見ている状態です。やはり艦艇の擬人化で、可愛いんですがちょっとHな絵柄があって・・・目のやり場に困る時も!!)。

ただ・・・わたしがひそかに願うのは・・・「回天」だけは(いや、「桜花」もだけど)この先擬人化しないでほしいのです。 

あれほど悲しくも、崇高な若者の祈りの込められた兵器はないと思うからです。よく「回天」は海軍上層部が作って無理やり乗せて行かせた、という言い方をされるのですがあれはそういう性質の兵器ではなかったというのは生存の元隊員の方が皆おっしゃることです。その操作は大変難しく、下手をすれば事故の可能性さえあるものです。無理やり押し込めて行けるものではない、そうおっしゃいます。

そのへんに関しては私の下手な文章でお伝えするよりこの本「海の特攻 回天」(宮本雅史著 角川ソフィア文庫)を読んでいただけたらと思います。
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いつかいつの日か、山口県周南市の「回天記念館」を訪問するのが私の夢です。


(参考までに

MCあくしずHPhttp://www.ikaros.jp/mcaxis/index.html
艦艇これくしょんHPhttp://www.dmm.com/netgame/feature/kancolle.html)
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「女だらけの戦艦大和」・南方の大茶会4<解決編>

マツコは猪田艦長の手元を覗いて大声をあげていた――

 

ナナがびっくりしてマツコのそばに駆け寄る。無論、猪田艦長他も驚いてマツコを見つめる。梨賀艦長が「何処に言ってたのかと思ったらここに来ていたのか・・・ああ、ナナに逢いたかったのかあ」

と言って野村副長に笑いかけた。

ナナが「どうしたのマツコサン」というとマツコはその大きなくちばしを震わせて

「みてよちょっと・・・これってさ」

と言って翼の先で猪田艦長が持っているものを指した。

「・・・なに、これ?」

ナナが言うとマツコはその金色の目を見開いて「いいこと?なにを聞いても驚いちゃいけないわよ、これはね」と言った。その言い方に悲壮感のようなものがにじむ。ナナは、ごくっと唾を飲む。マツコは、

「これはね・・・青虫の粉よ!」

と言い放った。とたんにナナは「ギャーーー」と叫んでその場に尻もちをつく。マツコはくちばしをガタガタ言わせて

「青虫の粉をどうにかしようなんてこの連中も野蛮よ!・・・この粉青っ臭いのよアンタ。とてもお湯に溶いたって耐えられるもんじゃあないわよ」

と言った。ナナは「ぐ・・ぐえええ」と戻しそうな雰囲気である。と、ナナは背後から加東副長に抱きあげられ、マツコは席を立ってきた古村司令に抱きあげられた。

古村司令はマツコを抱き上げてその場に座ると

「おお、心の友よ!君も今日はお茶会に参加かい?鳥とはいえ風流がわかるなんか、鳥にしとくのはもったいないねえ」

といい、猪田艦長がわきに置いた蓋のあいたままの棗を拾い上げた。そしてそれをマツコの前に突き出すと

「ほーら、いい香りでしょう鳥くん」

と言った。が、ちょっとだけ勢いがつきすぎたか中の抹茶がすこしマツコにかかった。マツコは「青虫の粉―!」と叫んでその場に昏倒せんばかりの衝撃を受けた。

が。

「あら。これいいにおいじゃない?」

と我に帰った。ナナが「どういうことマツコサン」と尋ねる。マツコは自分にかかった粉を、その舌を伸ばしておそるおそるなめた。とたんにマツコの金色の瞳が歓喜の色を帯びる。そしてナナを振り向いて

「これは青虫の粉じゃないわ、素敵な味がするわよナナ!」

と叫んだのだ。ナナは合点がいかないような顔つきであったが猪田艦長の横に来ると、古村司令の手にした棗の中のものの匂いを嗅いだ、そして「ああ!」と声を上げた。「ホントね、いいにおいがする」とナナもうっとりした表情。

猪田艦長がそんな二人を見て「なんだ。君たちもこれが飲みたかったのか・・・じゃあ、早いところ茶をたてようか」と言ってまず、『大和』梨賀艦長の茶碗に抹茶を入れて、しゅんしゅんと音を立てて沸く釜から熱い湯を柄杓で汲んで茶碗に注ぎこむ。そして茶せんでそれを混ぜる。

心地よい音が聞こえ、皆は艦長の手元に見入る。もちろんマツコとナナも。出来上がった茶は、加東副長が梨賀艦長のもとへ運ぶ。そして次々とその場の皆の茶が点てられそのたび加東副長が持って行く。

マツコとナナにも冷ました茶が運ばれる。マツコとナナはそれを飲んだ、「おいしいわ」「おいしいねえ」と二人はうなずき合う。猪田艦長はそれを嬉しそうに見つめていたが、梨賀艦長に

「では猪田さんと加東副長の茶は私が点てよう」

と言われて「それでは、願います」と席を交代。梨賀艦長が上手に茶を点て猪田艦長と加東副長はそれを喫して満足げな表情になる。そして猪田艦長は

「それではここからはご自由に茶を点てて楽しんでください、菓子はここにありますから」

といい、座が一気に和みを見せた。

「そういえばトメキチはどうしたね?」

と森上参謀長がマツコに言った。夢中で茶碗の底をなめていたマツコはハッと顔をあげた、そしてナナを翼の先でつつくと

「やだわ。アタシタチまだかくれんぼの途中だったじゃない!」

というとあわててトメキチを探しに走り出した。ナナが「待ってよう」とそのあとを追って行く。

マツコは「トメキチー。あんたどこ行っちゃったのよう?すねてどっか行っちゃったの?悪かったわようーごめんなさーい」と叫んで走る。ナナも「トメキチさん、どこー?」と必死にあちこち探す。

「何処行っちゃったのかしら」

マツコが途方に暮れたその時、前甲板から兵員嬢たちの黄色い歓声が聞こえて来た。何かしらとマツコとナナが走ってゆくと、たくさんの兵隊嬢や下士官嬢それに士官嬢たちが何かを取り囲んで騒いでいる。

マツコとナナがその間に身体をねじ込んでみると、そこには誰かの防暑服の中に入り込んで眠っているトメキチの姿があった。

どうやらトメキチは隠れ場所として誰かが脱いでおいた防暑服の中に入り込んでいるうちに眠りこんでしまったらしい。まるで防暑服を着こんでいるような格好になったトメキチはこの上なく可愛い。マツコは「ああ、よかった」と安堵して「トメキチ、起きてよ」とくちばしでゆり起した。ナナも防暑服に前足をかけてゆり起し「トメキチさん、起きて。お茶会始まったよ」と声をかけた。やっとトメキチは大きな伸びと欠伸をして目を覚ました。

そして防暑服から出ると後ろ足で耳を掻くと「ああ、寝ちゃった。なかなかマツコサンたち探しに来ないんだもん」と言って笑った。そして三人は「艦長さんたちのところに行こう」と言って歩き出したのだった。

『武蔵』艦上は茶を喫しては菓子を食べて笑いがはじけている。猪田艦長はその様子をときどき見て回っては加東副長に「いい催しになったね。これでみんながもっと今以上に結束が強くなってくれればいうことはないよ、ね」と笑いかけた。

加東副長も「そうです、きっとわが『武蔵』乗組員のことですから固い結束で頑張ってくれますよ」と答えた。

 

その頃、『大和』艦上。

前甲板通風口前では皆が茶碗を手に座り、松岡中尉のラケットの構造の講座を聞いている。『矢矧』の中尉が感心して、

「ほう、今日はとてもいい日だね。内地のおいしい抹茶や菓子が味わえる上にあのへんな中尉の変なラケットのこともわかったし。うん、いい日だ」

と言っては茶を干す。それを聞きつけた松岡中尉はラケットでその中尉を指して

「そこのあなた、いいですかあまり浮かれてこのことをあちこち言いふらしたら私は怒りますよ!このことがもし万一、敵に知られたらあなたは軍法会議に掛けられて銃殺ですからね。その辺よく考えて下さいよ・・・それから私は変な中尉ではありません。松岡修子海軍中尉ですからね、わかったら尻の穴を締めて熱くなれよ」

と怒鳴り、『矢矧』の中尉は「おお怖。はいはい、誰にも言いませんって。て言うか敵がこの話を聞いても絶対まともには受け取りませんよ。尻の穴もしっかり閉まってます」と言って皆は大爆笑した。

 

そんな爆笑の中、麻生分隊士は頬を染めて「恥ずかしい、うちは恥ずかしゅうていけん。穴があったら入りたいわ」とうつむく。その分隊士にオトメチャンは

「分隊士、ほいでもみんな松岡分隊長をあほじゃとは思うてないみたいですよ。『矢矧』の人たちみんな、分隊長の言うことを感心して聞いとられます。ほいじゃけえ、分隊士もっと胸を張って自信持ってつかあさい。うちは分隊士が哀しい顔をしとるんを見るんがつらいですけえね」

と慰めた。

麻生分隊士は「・・・オトメチャン・・・」というと茶碗を下に置き「オトメチャンはなんて優しいんじゃ。うちはオトメチャンみとうなええ部下を持って幸せじゃあ!」と叫ぶなりその場でオトメチャンを抱きしめ、『矢矧』の皆は

「わあ、これが噂に聞いたアレか!すばらしい、眼福にあずかれた」

とさらに大喜び。その歓声を、少し離れた場所で釜に湯を沸かしながら聞いていた主計科・福島大尉は傍らの烹炊員に

「良かったわねえ。みんなが喜んでくれて。・・・お湯沸いたら抹茶この中に入れて?はいじゃあ、混ぜるわよ!」

というと、烹炊所にあるような大きな釜の中にどさっと抹茶を入れさせ、湯を注がせると「さっき倉庫から持ってきたばっかの新品だからいいよね、だって小さいのじゃ間に合わないんだもん」と言って・・・箒で混ぜ始めたのだった。

福島大尉はにっこり笑い「いいこと。これは内緒よ」としかし、声だけはすごませて烹炊員たちに厳命したのだった。

何も知らず盛り上がる『大和』艦上・・・ともあれ猪田艦長の発案による「南方の大茶会」は成功裏に終わりを告げるのであった。

 

          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

抹茶。あの香りはとてもいいですね。わたしも大好きで時たま点てて楽しみます。

しかしマツコ、どうしてあれを青虫の粉だなんて思ったのでしょう??色が似てるから?彼女の考えることはよくわかりませんね。ともあれ、いい集まりが出来たようで良かったとしましょう。

 

わたしもお茶を点ててみました!
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「女だらけの戦艦大和」・南方の大茶会3

今日は楽しい、「女だらけの武蔵」主催の大茶会の日――!

 

その日は朝早くから主計科員中心で茶会の用意に忙しい。何処から見つけて来たのか、茶釜がいくつも搬入され一番きれいな茶釜は「これはえらいさん用だね」ということで天幕の下に据えられる。そのほかの釜は適宜設けられた炉の上に置かれてその時を待つ。

猪田艦長と加東副長も今日は暗いうちから甲板に出てあれこれ検分している。やがて東の水平線から陽が昇りはじめ、猪田艦長と加東副長は今日の大茶会の成功を祈って新しい一日を告げる最初の光に両手を合わせた。

空いっぱいに光が広がると、武蔵のマスコット犬・ナナと、大和のマスコット犬・トメキチにマスコット鳥・マツコも起き出してきて、マツコはナナとトメキチをその背中に乗せてふわりと最上甲板に降り立った。マツコは二人を背中からおろすとノシノシと甲板を歩きまわり天幕の下に入った。ナナとトメキチもあとを追う。

マツコは天幕の中を歩き回り「あら。これみてよ!畳が敷いてあるわよ!」と感激したように叫ぶ。ナナとトメキチも「ほんとだ。ここで座って何かするのね。僕たちも座りたいねえ」と言ってナナはちょっと前足を出して畳に触れてみた。

するとそこにやってきた主計科烹炊員の土井まさよ兵曹が

「ナナ、そこに座ったらだめだよ。そこに座ってもし爪で畳を引っ掛けたらこわーいお仕置きだからね」

とちょっと怖い顔をして見せた。あわてて逃げ去るナナやトメキチ・マツコを見て土井兵曹は「うっそだよーん」と言ってぺろりと舌を出した。

そんなこんな、準備に余念がなかったがその準備も万端整いやがて刻限となり、一〇〇〇(ひとまるまるまる、午前十時のこと)いよいよ『大和』と『矢矧』から内火艇が接舷し、艦長たちが乗り込んできた。そのあとから『矢矧』乗組員たちも『武蔵』に乗り込んでくる。

舷門に猪田艦長が出迎え「ようこそ武蔵へ」とにこやかにあいさつをすると、大和の梨賀艦長、野村副長そして森上参謀長も「今日はお招きをありがとうございます」と返礼。

そして『矢矧』の原艦長と第二〇〇水雷司令の古村大佐も同じようにあいさつを交わし五人は『武蔵』右舷にしつらえられた天幕の下に案内される。その天幕の下には猪田艦長のアイデイアによる畳の敷かれた「茶室」を模した空間があり森上参謀長は思わず

「おお、これはなかなか素晴らしい」

と声をあげていた。畳を敷いた上には座布団が置かれ、皆の後ろ側には艦隊単縦陣を描いた屏風が立てられている。正面から艦隊を見た図で一番先頭は『武蔵』だが梨賀艦長と野村副長は(あ、あれは『大和』だな)と思っている。

「この屏風は一体どなたが」描いたのですか、と原艦長が問うと猪田『武蔵』艦長は少し胸を張って、

「これはわが『武蔵』の誇る日本画家・平山郁子兵曹長の手によるものです。まあ、帝国海軍広しといえどもこれだけの日本画をかけるものはわが『武蔵』の平山兵曹長のほかには居ませんね」

といい、誇らしげに微笑んだ。加東副長がその横で同意の笑みを浮かべた。野村副長が感心したようにふーむと唸りながら屏風を眺める。猪田艦長が

「まあ皆さん、適宜お座り願います・・・『矢矧』の乗組員のみなさんがたももうすっかり乗艦されましたでしょう。では作法無しの大茶会をここに開始いたします」

と宣言した。今回は時間を気にせず茶の雰囲気を楽しもうということで釜に水を入れ、湯を沸かすところから始める。

湯が湧くまで皆は歓談の時を持つ――

 

さてそのしばらく前の話であるが、ナナにマツコとトメキチは「みんな忙しそうで遊んでくれないから自分たちで何かして遊ぼう」ということになりナナの「かくれんぼしたいです!だっていつも僕はここで一人でかくれんぼして遊ぶ相手がいないから」という一声に「決まり!かくれんぼしよう」と決まりルールとして「隠れる場所はこの甲板上のどこかに限ります」とし・・マツコが鬼となり「もういいかーい」と主砲塔前で、翼に顔を隠して叫ぶ。

わああ、とナナとトメキチは走りだした。

「僕はこっちに」「じゃあ僕はあっちね」

二匹はそれぞれの方向に駆けだして行く。そして遠くから「もういいよ~」「もーいいよー」の声が響いていてマツコは顔を覆っていた翼を収めた。そして大きなくちばしをガタガタさせると

「さあ、あの犬っころ達何処に隠れたのかしら?アタシのこの鋭い目であっという間に見つけ出してやるからね」

というとノシノシと歩き出した。途中、『武蔵』の兵隊嬢たちに「あ、『大和』のあのへんな鳥があるいてる!」とか「あのへんな鳥何処に行くんだろうねえ」とか「そういやあナナとトメキチがいないが、どこへ行ったんだろうか?変な鳥、あなた知らない?」などと声をかけられそのたび

「もう!何度言ったらわかるのよ、あたしはマ・ツ・コ!変な鳥って名前じゃないわよう」

「何処へ行こうといいじゃないの、今アタシかくれんぼの鬼なんだからあんまり騒いだらあの連中にわかっちゃうでしょ!?」

「どこにいるかを今探しに行くんじゃない。かくれんぼってそういうもんでしょう?」

と答える律義なマツコである。

マツコは、前甲板の通風口の周囲やそのずっと前にある錨鎖のあたりまで歩いてあちこち覗き込んで見たがいない。そしてそこにも茶会の用意がされておりマツコは(ここでうっかり何か壊したら大ごとね。もっとあっちに行ってみよっと)と思い甲板の中ほどまで引き返す。第二主砲塔あたりまで来たがそこにも見当たらず、マツコは(あいつらやるじゃない!本気だしてるわね)とその金色の瞳を輝かせた。

(じゃあ、アタシも本気出させてもらいますからね)

マツコはその場から飛び立つと、『武蔵』の甲板後部まで飛びそこからローラー作戦よろしくち密に探して歩くことに。

そのちょっと前、散開したナナとトメキチ。まず、トメキチは(どこかないかなあ、良い隠れ場所)とあちこちきょろきょろした。が、広い武蔵の甲板にはあまりかくれんぼに適した場所はないようだ。

(困ったなあ)と思ったその時、トメキチはあるものに目をとめた。(いいもの見つけ!)とそこに飛んでゆくトメキチ。

そしてナナはこれも(どこにしようかなあ?すぐ見つかっちゃったら詰まんないし。せっかくのかくれんぼだからちょっとやそっとじゃ見つからないところに)とあちこち見まわす。

と。

(あ、あれなんだろう)

とナナはあるものを見つけ飛んでいった。(ここにきーめた!)とそこに隠れるナナ。

二匹の隠れ場所は決まった――。

 

マツコが必死で二匹を探している時、大茶会は始まり『武蔵』の兵員・矢矧の兵員に『武蔵』に入る旧知のともや姉妹を訪ねて『大和』からも何人からやってきて茶会は楽しく進行している。同じころ『大和』でも石多主計長の音頭で大茶会が始まりを告げていた。

松岡中尉が「今日は茶会なので」となぜだか怪しげな日本舞踊のようなものを舞い皆の笑いを買っている。麻生分隊士が「ああうちはもう恥ずかしゅうていけんわ。見てみい、オトメチャン。『矢矧』の人たちが笑うとるで。うちは松岡分隊長の部下じゃと思われるんが今日ほど恥ずかしい思うた日はないわ」と消え入りそうな声で訴える。オトメチャンも「ほうですねえ。うちも恥ずかしいです」と言って松岡中尉の方を見れば中尉はラケットを扇代わりにして妙な舞をまだ舞っている。

『矢矧』の乗組員の大笑いの中、大和乗組員はいたたまれないような居心地の悪さを味わっている。

 

『武蔵』艦上。

釜の湯がわき始めた。猪田艦長が「炭のいい香りがしますね・・・内地の冬を思い出しますよ」といい、皆も「本当に。炭はいい香りがして心落ち着きます」などと静かに話しあう。

その横をマツコが「ナナ、トメキチ―!いったいどこに隠れたのよう。出てらっしゃいよう」と怒鳴りながら走ってゆく。野村副長がそれを見て「あれ?ハシビロがいつの間にここにきてたのかしら?」と言ってその背中を眼で追った。マツコはもう一遍、前甲板へ走っていく。

その頃、武蔵と矢矧の兵員が和気あいあいと茶会を始めようとしていた。一人の武蔵の二等兵曹が「おお、ここに釜がある・・水が入っているようだ。炉に火はおきてるかなあ?・・・そうかならこれを乗せるよ」と古い釜を抱えてきて炉の上に乗せた。炭が気持ちのいい香りを発しながら燃えている。

武蔵と矢矧の兵員嬢たちはそれぞれ持ち寄った茶碗を前にして楽しげに歓談を始める。

すると。

ものすごい叫びがその場に轟いたと思ったら炉にかけた釜がボン!と飛び上がったではないか。たいへん驚いて「わああ!」と腰を抜かして叫ぶ兵員嬢、釜を見ればなんと釜に足が四本生えているではないか。

「ぶ、ぶんぶく茶釜だあ!」

矢矧の兵曹が叫んだとたん、釜が二つにバリッと割れた。そして中からナナが「熱い、熱いようー!」とお尻を押さえて叫びながら飛び出してきた。皆が呆気にとられるなか、ナナはあっという間に走り去りマツコに「みーっけた!・・・てちょっとあんた、なにお尻から煙り出してんのよ?」と不審がられる。

ナナはそばにいた士官に、「ナナ、尻が焼けてるじゃないか。こっちに来い」と言われてお尻に水をかけてもらいやっと落ち着いた。そこでマツコに「はあ。助かった。僕あの黒い入れ物の中に隠れたんだけど隠れてるうちに熱くなってきて耐えられなくって暴れたら入れ物が割れちゃったの。でもほんと驚いた」と説明した。

マツコは「あんたって・・・稀代のあほね。あれは釜だって言ってるじゃないの。今日はお茶会、て事はアレに水入れて沸かすのよ、お湯を。そんなものの中に入ってよく無事だったわね。驚くわほんとに」と心底あきれたといった顔つきで言った。

で、とマツコは周囲を見回して言った「トメキチのやつは一体どこに行っちゃったのかしらねえ?」。ナナも「僕もわからないわ、マツコサン。探しましょうよ」と言って二人は歩きだす。途中、武蔵の兵隊嬢に「ナナ、おいで」と抱っこされたり矢矧の士官嬢に「大きな鳥だこと!ねえちょっとその足見せて?」と言われながら。

それでも何とか二人は歩き、艦長たちが茶を楽しんでいる天幕のところまで来た。湯が沸いたようで釜から湯気が立ち上っている。マツコは

「あいつのことだからさー、この辺に何気にいるんじゃない?」

と言って猪田艦長の背後からそっと覗きこんだ。猪田艦長の膝の中に入ってるのではないかと思ったのだが・・・

「いやあ!!見てナナちょっとこれ!」

とたんにマツコの絶叫が響く、ナナが半分腰を抜かしてそれでもなんとか見に行くとマツコはその翼を広げて猪田艦長の手元を指して

「みてよぅこれ!こいつら・・・こいつら野蛮よう!!」

と叫んだ。ナナが「や、野蛮てどういうことなの?」と艦長の前に回ってみたものは――!

  (次回に続きます)

 

             ・・・・・・・・・・・・・・

始まりました大茶会・・・ですがマツコ達はかくれんぼを始めるはトメキチは何処へ行ったかわからないは・・・そしていったいマツコはなににそんなに驚いてるのでしょうか??

かわいいかくれんぼ。懐かしい歌です。・・・マツコたちは「かわいい」??


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日々雑感・中秋の名月に。

今日は中秋の名月!
DSCN1068.jpg

素晴らしいお月さまが中天にかかっています。月を愛でつつ、今夜は一杯・・・と行きましょうか。付をめてつつと言えば思い出されるのがかの、(思い出したくもない)ミッドウエー海戦で、山口多聞少将が燃える『飛龍』に加来止男艦長とともに残留されそのさい「加来さん・・・いい月夜だね」と月を仰ぎつつ太平洋の泡沫の中に消えて行った、あのことを思い出すのです。

山口多聞少将は明治二十五年八月一七日の東京生まれ。生家は旧・松江藩士の家柄で「多聞」は南北朝の楠正成の幼名「多聞丸」からいただいたものです。

海軍兵学校四〇期出同期には大西瀧治郎氏、宇垣纏氏などそうそうたるメンバーがいます。

彼は航空のエキスパートとして第二航空戦隊司令官を務め二航戦を育て上げますがミッドウエー海戦で手塩に掛けた二航戦搭乗員たちを多く戦死させて、責任を取るように『飛龍』に残り最期を遂げられました。彼がもし生きてあれば、あの戦争の行方も少しは違うものになったのではないか、とさえいわれる優秀な提督でした。

 

彼の魅力はそうした軍人としての才能だけではなく家庭人としての部分にもあります。

最初の結婚で五人のお子さんをもうけますが(おひと方夭折)、五人目の男の子を出産したすぐ後奥さまが亡くなり、まだ幼い子供を抱えて途方に暮れていた多聞さんに、山本五十六氏から再婚の勧めがあり、孝子さんと再婚。まだ若い孝子さん、いきなり五人の子供の母親となって大変な毎日であったでしょう。その孝子さんを溺愛と言ってもおかしくないほど愛した多聞さん。孝子さんへの手紙には当時の男性が絶対書かなかったのではないか?というくらい甘く、ロマンチックな文言が並んでいます。

愛されていた孝子さんがとてもうらやましい・・・。

孝子さんは子供たちの扱いに心悩ます時もあったようですが多聞さんの愛があればこそ、耐えられたのではないかなあと思います。もし、彼女に対して通り一遍の言葉しかかけてくれなかったら、あるいは軍務の多忙を理由に家庭を一顧だにしてくれなかったら。

とても、誰にも耐えられるものではなかったでしょう。

多聞さんはえらい人だと思います。

女というものはたった一言でよい、ねぎらいやいたわりの言葉をかけてくれるだけで疲れやわだかまる思いが軽くなったり消えたりするものなのです。

そのへんをよくわかってらっしゃる山口多聞という人は、人間としてもすごい人だと改めて思うのです。無論、子供たちと継母の孝子さんの間に挟まって悩む日もあったでしょう。それでも「お前がしっかりしないから」みたいな叱責をしない彼はえらいなあと思うのです。

そういう旦那が欲しかった。

でも、そういう男性はあの時代だからいたかもしれないし、あるいは山口多聞という人がその点特別だったのかもしれないですね。

 

なんでこういう話を突然書いたのか?というと・・・

昨晩わたしの夢に山口多聞さんが出て来たのです!他に二、三人いたようですが多聞さんがいて皆で温泉宿に泊っている夢でした。

最高~~~~!

どうして覚めてしまったの!というくらいの夢でした。楽しかったあ!

で、目覚めてはた時がつけば今日は中秋の名月。多聞さんが亡くなった時の月とは季節は違いますが、同じ月だ!そしてこの晴天ですので素晴らしい月が出ることでしょう、もしかしたらどこかで多聞さんもこの月を今も愛でているかもしれません。

「一緒に愛でましょう、山口中将!!」

というわけで、酒と団子を買いに走る私・・・・

でも時間が遅かったからか、団子は売り切れ。ですので白いどら焼きを代用品にして酒は広島の銘酒「酔心」だ!で、うちには残念ながら『飛龍』の人形がないので、山口中将も出向かれたことがある『大和』の人形にお供えしました。
DSCN1074.jpg

平成二五年の御代の、中秋の名月。山口中将はどのようにご覧になってらっしゃるでしょうか・・・?

 

 

           ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

中秋の名月、素晴らしい・・・

写真を撮ったのですが小さなデジカメではうまくとれませんでした。しょうもない出来の写真ですがあえて載せるこの精神。

なんかきれいな月を見るたび、大好きな山口司令官を思い出します。ミッドウエーの『飛龍』の沈没のあたりに今も山口司令官の御霊はいて、美しい月が出るたびそれを見つめている・・・そんな光景が浮かびます。

 

「女だらけの武蔵」の大茶会の続き、明日以降になります。ああしようかこうしようか、いろいろ考えては一人笑っております。

ご期待下さいませ。

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プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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