2013-05

「女だらけの戦艦大和」・松岡中尉夜話5<解決編> - 2013.05.31 Fri

石場兵曹ほかが閉められたふすまの前に一列になって中の様子に聞き入っていると突然中から「アハーン?」という松岡中尉の声が聞こえて来た――

 

松岡話 その四の続きのさらに続き

 

「始まったんかいな?」

と小泉兵曹は言ったが長妻兵曹が「いや・・・あの声は違うで」と否定した。長妻兵曹の相方になる男性――モエギくん――が「そうですね、ちょっと違うみたいですね」という。石場兵曹も「そうだな・・・あの時の声ではないな・・・『あは~ん』ではないもんのう」と暗黒の一重まぶたを閉じて中の音に聞き入りつつ呟いた。

果たして中では――

 

松岡中尉は男性――シロくん――とふすまの向こうの部屋に入った。そこには布団が一組敷かれている。それを何気に見た中尉の前でシロはいきなり、唐突に着物を脱ぎ出した。松岡中尉はそこに座って彼のする様子を黙ってしかし、興味深く見つめる。

と・・・シロくんは褌まで解くと全裸になった。彼のモノがあらわになり中尉の眼前に突き出された。

その時中尉は彼の物をしげしげと見つめるなり「アハーン?」と言ったのだった。これが皆がふすまの向こうで聞いた声そのものである。しかし松岡中尉のこの「アハーン?」は色気のあるものではないというのをふすまの向こうの皆は悟っていたのは前述の通り。「アハーン?」は松岡中尉の疑問を表す言葉であったのだが、残念ながらみなはそれを知らない。
ともあれ、

「ほら…中尉さん。どうぞ」

シロくんは自分のモノを中尉に突き出した。松岡中尉は再び「アハーン?」と声を上げた。そして中尉はシロくんの顔を見上げると彼のモノを指差して言った。

「あなた。これはいったい何です!?」

「は!?」

シロくんは面食らった。普通・・・これを見た女兵士は「たまらん~」とか「いただきます~」と言ってむしゃぶりついて来るというのに。この中尉は彼のモノをしげしげ見つめている。その痛いくらいの視線と沈黙に耐えきれなくなったシロくんが「・・・あの中尉さん」と話しかける。

すると松岡中尉はズザッと立ち上がるとシロくんの裸の肩をぐうっとつかんだ。つかみ方がものすごく強いのでシロ氏は思わず[い、痛いです。中尉さん]と声を上げた。しかし真剣な表情で松岡中尉はつかみ続ける。中尉の手の爪がシロ氏の肩に食い込む。シロくんは、ついに悲鳴を上げ始める――

 

その悲鳴を、ふすまの向こうにいる一同は「どうしたことじゃ、いったい松岡中尉どがいなことしとるんじゃろうねえ」と覗きたくてうずうずしている。小泉兵曹は「男が悲鳴上げよるなんか始めてじゃのう。いったいどこをどうしとるんじゃ?」と首をひねっている。長妻兵曹は「ああしたんじゃろうかそれともこうしたんじゃろうか?」とひとり考え込んでいるし、男性陣は「こんな悲鳴を上げるなんて・・・あいつのアレは大丈夫なんだろうか」と心配げ。

 

松岡中尉は、シロくんの肩に爪をグイッと食いこませている。中尉の眼は血走っていてシロくんは命の危険さえ感じてしまった。(一体僕が何をしたって言うんだ、知らないうちに失礼をしてしまったのだろうか。ああ、思いつかない~)

そう思ううち松岡中尉は意外な、予想外な行動に出た。

シロくんの肩から手を離すと背後のふすまを思いっ切り開いたのだ。スパーン!と音を立ててふすまは左右に開きその前に一列になって中の様子を聞いていた石場兵曹や男性陣はポカ―ンとしてその場に座ったまんまで松岡中尉を見上げる格好になった。間抜けな情景が展開中である。

その向こうに全裸で前を隠すさえ忘れて突っ立ったままのシロくんがいる。石場・長妻・小泉の各兵曹の瞳はシロくんのイチモツにくぎつけになっている。

「ま、松岡中尉。いったいどうなさったんで?」と石場兵曹がやっとこさ、声を出した。すると松岡中尉はなんと、シロくんの方を向き直るとそのイチモツを思い切りつかむなりグイーーッと引っ張ったではないか。

「ううーっ!!」

とシロくんの顔がゆがんだ。長妻兵曹が見れば、シロくんのモノに松岡中尉の爪が食い込んでいる。(うわあ、ありゃあ痛いねえ)と長妻兵曹はシロくんを気の毒に思った。男性陣の顔も悲痛に歪んだ

小泉兵曹が「松岡分隊長、そげえなことをしたらいけんです。そこは大事なところですけえ、手ぇ離してあげてつかあさい」と叫んだ。他の男性たちも「壊れてしまいます、中尉さん手をお放し下さい」と口々に言う。そんな皆をズイッと見てから松岡中尉はデカイ声で、

「おお、大きな声を出して熱くなってますねえ!ところでみなさん、一体これは何なんですか!」

と叫んだ。小泉兵曹が「へ?へえ!?」ととんまな声をあげてしまった。「なんなんですか・・いうて中尉。それはあの・・・」そこまで言って先は言い淀む。他の皆も下を向いてしまった。小泉兵曹が長妻兵曹をつついて「長妻、ほら貴様なんか言え」というがさすがの長妻兵曹も「ウウウ・・・」と唸ったまま何も言えない。

松岡中尉はシロくんのモノをつかんで引っ張ったまんまである。彼は苦痛に顔をゆがませて「ちゅ、中尉さん・・・どうか手を」とうめいている。松岡中尉はつかんだまま、

「いったいこれは何なんだね!もっと熱くなれよ、尻の穴を締めろ。あきらめんな!」

と言って今度はその手を押したり引いたりし始めた。「ウウウ!!」とシロくんが本気でうめき始めた。石場兵曹が「ああ!いけんで、松岡中尉ほんまにもう手ぇ離してつかあさい。そげえなことしたら彼は・・・!」と叫んだ。

長妻兵曹が

「いけーん!種イモが、種イモがでかくなりよったで!」

と大声で叫び・・・松岡中尉が「ん?でかくなったと??」と手元を見ればすっかり先ほどとは姿を変えた「種イモ」が彼女の手の中に・・・。

「キャーー―!」

石場、小泉、長妻の黄色い声が響いた。

 

「今日から君も富士山だー」

「裏飯屋」全体に松岡中尉のわけのわからない叫びが突き抜けた。そして松岡中尉は押したり引いたりをさらに激しくし始めた。と、シロくんは「も、もう我慢が出来ません、中尉さん行きましょう」というなり松岡中尉を抱きかかえてふすまを急いで閉めた。

石場兵曹がその場に腰を落として額の汗を手の甲で拭った、そして「はあうちはどうなることか思うたが・・・いったい今の騒ぎはなんだったんじゃ?あん人は男のアレを知らんのじゃろうか」と皆を見て言った。男性の一人――モモくん――が「こう言ったら失礼ですが・・・兵学校での士官さんなら男の一人は二人は知ってらっしゃると思うんですが」と語尾を濁した。小泉兵曹も、

「ほうじゃなあ、松岡分隊長はいろいろ知っとりんさるで男の人とも随分経験しとってじゃろうと思うとったが・・・もしかしたらオトメチャン並みの・・・おぼこだった言うことか??」

と言って変な顔をして皆を見た。そして「では今夜が・・・中尉のお初、ってことか?」と閉められたふすまを見つめた。長妻兵曹はそれでも、「まさか、松岡中尉がおぼこなんかありえんで。大体おぼこが男のアレをいきなりつかんだりするかいな。オトメチャンがそがいなことをした言う話を聞いたことがあるかね、ないじゃろ?」と反論しているが・・・。

 

当の松岡中尉、焦りまくったシロくんに部屋に引っ張り込まれ布団の上に投げ出された。そしてシロくんは中尉の着ていた軍装を上から下まで荒っぽく脱がした。「急いで・・・急いでください中尉さん」と言いながら。そして松岡中尉を組み敷いていよいよ事に及んだ――と思ったその時。

シロくんの下になった松岡中尉は柔道の投げ技のようにシロくんをひっくり返した。反対側の壁にたたきつけられたシロくん、「痛いっ」と叫んでしまった。と、松岡中尉の背後のふすまにぶすぶすと六つの小さな穴が開いた。石場たちがなんとか中を見ようと苦心しながら開けたものである。「障子とちごうてやねこいねえ」といいながら。

ともあれ彼女ら彼らが見守っていると部屋の中では松岡中尉が褌だけの姿で仁王立ちになっているのが見える。そしてシロくんが畳の上に股を大きく広げたまま、涙目になって中尉を見上げている。松岡中尉はシロくんを――いや、シロくんのモノを指差して言い放った。

「あなた、いいですか。あなたも種イモと言われてみたいなら普段からもっと大きなものをぶら下げてから言いましょう。あなたのモノは種イモというには力(りき)がたりませんね。一体何の種イモなんだね?ジャガイモかそれともサトイモか?もうあきらめてんじゃないのか!?もっと大きくなれよ!私を満足させたいならもっともっと大きくなってみなさい。サツマイモくらいになって!そう、尻の穴をキチット締めて、かかってきなさい!!」

そういうなり、松岡中尉は自分の下帯を取りシロくんにまたがると一気に・・・!

 

「なんと」モモくん、モエギくん、キイロくんと言った男性陣は絶句した。「シロはジャガイモの種イモ並みということなんでしょうか、それほど小さいと」そこまで言って何も言えなくなった男性の背中をそっと撫でると長妻兵曹は言った、

「じゃけえ松岡中尉はおぼこなんぞではのうて百戦錬磨の猛者だった、言うことじゃ。男の大きさをよう知っとりんさるもんがおぼこであるわけない。ああ、あほくさ。あん人の思わせぶりな言葉にしてやられた。時間を損してしもうた」と。

その言葉を合図のように、それぞれのペアはそれぞれの部屋に向かっていったのだった。明かりを消した宴会後の部屋に、松岡中尉とシロくんの部屋から声が漏れてくる・・・今度こそ「あは~ん」と――

 

            ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

なんだこの話は!!

恥ずかしくて今回はもう何も言いません。が一言だけ、松岡中尉、やる時はやるんだね・・・(^_^;)

このくらい大きくなればいいってことでしょうか、松岡中尉・・・(写真はうちにあったサツマイモです)。
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「女だらけの戦艦大和」・松岡中尉夜話4 - 2013.05.29 Wed

松岡中尉を連れて石場兵曹・小泉兵曹・長妻兵曹は行きつけの見世の「裏飯屋」に行った――

 

松岡話 その四 続き

「ほう、ここが君たちが熱くなる場所なんだね。それでここの何処で熱くなるんだね?」

松岡中尉は見世の玄関を入りながら傍らの長妻兵曹に尋ねる、長妻兵曹は「中尉、どうかお静かに願います」と自分の唇に右手の人さし指を当てていさめた。松岡中尉は小首をかしげて「熱くなるのに静かにしなきゃいけないのかね?なんか変だね」と言ってから、「まあ、いい。それが君たち流なんだね、私も今日は君たち流を見習おうじゃないか。私も今日は静かに熱くなろう」と笑った。

見世の女将は士官、それも特務士官ではない「本チャン」士官の登場に驚いている。この見世は兵や下士官の主に使う見世で――つまり料金が安い――士官が来たとしてもそれは下士官からたたき上げた特務士官がここを懐かしがって来るくらいしか見たことがなかった。

(失礼のないようにしないと)と緊張の面持ちの女将に、松岡中尉は笑顔で

「私はここは初めてですがどうぞよろしくね。松岡海軍中尉です・・・と言っても特別扱いは嫌ですよ。ここに来る皆と名時扱いでないと私は怒りますよ」

と言ったので女将は少しほっとした、(ちょっと変わった人みたいだけど、威張らないからいいか)と。そして女将は「では皆さまこちらへ」と一室に案内された。石場兵曹は女将に「いつものように願います」というと女将はうなずいた。

長妻兵曹が「松岡中尉、どうぞお楽になさってつかあさい」と床の間の前を指した。松岡中尉は「おお、こんな上座に私が座っていいいいのかね!?」と、感激のあまり「いいのかね」の「い」が多くなったがそれでも「行為はありがたく受けるのが私流だよ」と言ってそこに座った。

そのうち見世の男性陣が料理や酒を持ってやってきた。

「長妻さんお久しぶりです」とか「石場さんお元気でしたか」とか「小泉さん今日もお綺麗ですね」なんて言いながら。そして松岡中尉の顔を見て

「おや、こちら様はお初ですね!はじめまして」

といっせいに挨拶。松岡中尉は至極機嫌よく「こちらこそはじめまして。熱くなってますねみなさん―!バンブー!」と例のよくわけのわからない掛け声を発し、手にしたラケットを振り上げた。男性陣は「おお、素晴らしい」と感激。気をよくした松岡中尉はさらにラケットを振ろうとしたが、

「中尉、それは収めてください。怪我のもとでありますけえね」

と小泉兵曹に言われ「それもそうだね!」と後ろの床の間に置いた。そして男性たちは松岡や石場たちの前に膳を置くと各自その前に座り、銚子を取り上げ「さあどうぞ」と酒を勧める。

皆盃を取って酒を受け飲み干した後、自分の相方の男性にも「じゃあ、ご返杯」と酒を注いでやる。それから和やかににぎやかに、宴席は始まった。

その途中で長妻兵曹は自分の相方の男性にそっと、「だれかに中尉のお相手を頼みます」と言った。男性はうなずいたが「で、長妻さんは今夜は?」と尋ねる。この男性こそ、長妻兵曹の「いいひと」である。長妻兵曹はにっこり笑うと「もちろん今夜は泊り。皆泊るからよろしく」と言って二人は盃をさらに重ねる。

やがて気分がよくなったか松岡中尉が歌を歌い始める。歌は彼女の十八番「ゆんべ父ちゃんが~」である。普段なら顔をしかめて嫌がる石場兵曹や小泉兵曹の航海科メンバーも今夜は無責任に乗せまくる。長妻兵曹は

「これが例の歌かいね!こりゃあ確かに整列で歌わされるんは恥ずかしいのう」

と大笑い。男性たちにもオオウケである。やがて皆で大声で畳をふみならしながら歌い出す。

ゆんべ父ちゃんと寝たときに

変なところにイモがある

父ちゃんこのいも何のイモ

オラ

坊やよく聞けこのいもは

お前を作った種イモだ

しかも何度も何度も、壊れたレコードのように・・・。この場に麻生分隊士がいたら顔を真っ赤にして「ええ加減にしてつかあさい、分隊長!こげえな恥ずかしい歌うちはよう歌えません!」と激怒するところである。が、今日は麻生分隊士はこの場にはいないので歌い放題である。

さんざ歌って踊って食って飲んで・・・皆がちょっとだけお休み状態に入ったその時、「失礼いたします」と一人の男性が入ってきた。彼こそ、今夜松岡中尉と枕を交わす男性である。その男性はまず石場兵曹のそばに行くとそっと

「あちらの中尉さんと・・・ですね」

と確認してきた。石場兵曹はうなずいて「ほうじゃ。あん人じゃ。が、あん人はちいと変わっとるが驚かんようにな。今夜はよろしく願います」と言った。

その男性は――見世での名前はシロ――、松岡中尉のそばへ寄っていくと「はじめまして。シロと申します、よろしくお願いいたします」と銚子を捧げた。中尉は機嫌よく「はじめまして!いやあ今夜は素晴らしい夜だね、これ程素敵な夜は今まで過ごしたことはないよ、熱くなれそうだね!」と言って酒を注いでもらう。

シロと中尉は意気投合したようであれこれと話がはずんでいる。そのうちふと、シロが松岡中尉の手をそっと取るとその耳元で

「松岡中尉さん・・・そろそろ・・・私と熱くなりに行きませんか?

と囁いた。一瞬その場の全員が聞き耳を立てて室内はし~んとした。松岡中尉は全く気にもかけないでしかもシロのひそやかな囁きに反してデカイ声で

「おお!いいねえ、熱くなろうじゃないか。で?そこで熱くなるんだね?」

と言い、シロも他の男性陣も、もちろん石場、小泉、長妻も大変面食らうことになった。が、シロは気を取り直し「そちらで・・・」と中尉から見て右側のふすまをそっとしめした。その向こうにこそ、今夜松岡中尉が<熱くなる>場所が用意されているのだ。そして松岡中尉がどんなふうに熱くなるのかを皆で確認した後、それぞれのお楽しみに行くというのが今夜の筋書きである。

松岡中尉は床の間のラケットを取り上げると、皆に向かって

「じゃあ私はこのシロ君と熱くなってくるからね・・・で、石場さん。明日は何時に戻ればいいかな」

と言い、石場兵曹は「明日は五時に上陸場です」と答え、中尉は「じゃあみんな、寝坊しないように。おくれたら長妻さんあなた重営倉ですよ」と脅した。長妻兵曹は「なんでうちが重営倉なんじゃ」とブツブツ言ったが中尉はシロのあとに従ってふすまの向こうに入っていった。

なまめかしい蒲団が敷かれているのが、小泉兵曹の目にちらりと見えた。小泉はごくり、と唾を飲んだ。(いよいよ・・・松岡中尉のあの時の声が聞けるんじゃ・・・)と期待に胸膨らむ思いである。

一同は皆押し黙ってふすまの向こうの様子に耳をそばだてた。

(なあも聞こえんなあ)

と、石場兵曹が小声で言った。すると小泉兵曹が

(接吻しとるんじゃろ?じゃけえなんも聞こえんのじゃないかね)

と言い、長妻兵曹は

(いや、もう前戯に入っとるんよ。言葉は要らん世界にね)

と決めつける。そのどれもに男性たちはいちいちうなずく。そして皆はもっとよく聞こえるようにとふすまの前に一列に並んで耳を澄ました。

と!

「アハーン」

という松岡中尉の声が聞こえて来たではないか。一同はかたずをのんでふすまの向こうの音に聞き入った――。

  (次回に続きます)

 

           ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

松岡中尉、下士官兵たちの行きつけでいよいよ始めたのでしょうか。え?なにを始めたって??そんなこと書けません、だって・・・恥ずかしいんだもん^^。

てな訳で緊迫の次回をお楽しみに!!

種イモ(画像お借りしました)。
種イモ


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「女だらけの戦艦大和」・松岡中尉夜話3 - 2013.05.27 Mon

――松岡中尉はなんにでもどこにでも興味を持つ。

 

松岡話 その四

小泉兵曹と長妻兵曹、それに石場兵曹がある晩主砲前でひそひそと話しあっている。話の内容は実に品のないもので男性の品定めである。

「あの見世の○○いう男はアレがいい」だの「いやあっちの見世の××いう男の方がええぞ。うちの××をええがいにしてくれるけえねえ」だのとオトメチャンなどが聞いたら赤面して逃げ出しそうな話ばかりである。

その時ふっと石場兵曹が「なあ、」と言った。「なんね、石場さん」と言った長妻兵曹に石場兵曹は、

「ずうと前から気になっとったんじゃが、うちの松岡中尉のことじゃ。あん人はあまり上陸をしたんを見たことがないが、たまに上陸した時そういう場所に行って遊んだりするんじゃろうか?」

と言った。これは前々から皆が気になっていたことで、以前上陸した時はマツコやトメキチが一緒で大騒動になったと聞いた。その時は麻生分隊士や医務科の畑大尉が一緒だったので色気のある話はなかったようだが。

「一度でええからあん人とそういう店に行ってみたいものじゃね。分隊長がそういう遊びをするかどうか見たいと思わんか?」

石場兵曹が言うと小泉も長妻兵曹も「見たいわー。ほいでどがいにするんか見たいわ」と乗ってきた。石場兵曹は「ほいじゃあ明日にでもうちが分隊長を誘ってみようか」と言った。が小泉兵曹が「なあ、ほいでもあの人は曲がりなりにも『士官』じゃろ?士官はうちらの行くような見世には行かんのと違うか?」と言った。

石場兵曹は「うーん、ほうか・・・。うちはあの人が士官じゃ言うこと忘れとったわ」と言ったが「ほいでもいうてみるわ。もしかしたら、言うことがあるかもしれんけえね」と笑った。

 

翌日午前中の配置訓練のあと石場兵曹は小泉兵曹を手招くと、わざと松岡中尉の前で「なあ、小泉。今度の上陸の時もあそこに行くんか?ええ思いしたんじゃろう~、うちにも教えてほしいわあ」と大きな声で言った。

案の定、松岡中尉は食いついてきた。つかつかと石場と小泉のそばに寄っていくと、

「石場さーん、あなたいったいどこに連れて行って貰うつもりなんですかねえ?そこは熱くなれる場所なんですかね」

と聞いた。石場兵曹は「はっ。ええ所、としか今は言えませんが熱くなれる場所であります。それは間違いありません」としかつめらしい顔で言った。松岡中尉は今度は小泉兵曹の顔を見て「そうなの?」とお言う、それに小泉はこれまたまじめくさった顔で「はい。間違いありません、ぶち熱うなれるところであります」と答えた。すると松岡中尉は興味しんしんで、

「ねえそれじゃあ、今度君たちの上陸の時私もそこに連れて行ってくれるかねえ?是非に願いたいんだが」

と言ってラケットを天にかざす。小泉兵曹がちょっと首をかしげて「ですが分隊長。そこは我々のような下士官や兵隊士か行かん所でありますがええでしょうか」と聞いた。分隊長はさらにラケットを天に突き上げると「何を言ってるんだね小泉さん!士官だの下士官だの兵隊だのと私がいちいちそんなことに構うと思ってかい?いいんだよどこでも私は全然構わないからね。連れて行ってくれたまえ」と言った。

そこで石場兵曹は「ほいじゃあ・・・海軍記念日の翌日がうちらの上陸日ですけえその日に」と約束した。

五月二十七日は『海軍記念日』でその日は「めでたくも誇りある海軍記念日に不祥事を起こしてはならん」からとの艦長からのお達しで『大和』の皆は一日艦内で過ごした。もちろん乗組員が退屈しないように梨賀艦長・野村副長・森上参謀長らの「艦艇―ズ」によるコンサートが前甲板にて行われ、当直要員以外は前甲板でそれを観てその日は無事に済んだ・・・

 

さて翌日、上陸員は甲板上に整列して衛生科員から<待ち受け一番>をもらい上陸札を箱の中に投げ込んでランチに乗り込む。

長妻兵曹、小泉兵曹、石場兵曹も乗り込んだ。「松岡分隊長は何処へ行ったんじゃ」という小泉に石場兵曹は「あん人は先のランチじゃ。衛兵所を越した先でまっとるて言うとったで」と答えた。

「ほうね」と小泉兵曹は答え、長妻兵曹は「ああ、楽しみじゃのう。あん人がどんとな態度に出るんか。よう見といて皆に知らさんとな」とさも愉快そうに肩をゆすって笑った。

そんな三人とほかの連中を乗せたランチは軽快に海を渡ってゆく。

 

「おーい、石場さん!小泉くんに長妻くーん。『大和の突撃隊員』くんたち、ここだよー!」

衛兵所を敬礼で通り過ぎた三人に何処からかそんな恥ずかしい声が投げつけられた。石場・小泉・長妻の三人が「うわっ、何処で叫んどってかね?」と顔を真っ赤にしてあたりを見回す。他の兵や下士官たちがくすくす笑いながら通り過ぎる。

「ここですよ、ここ!みんなもっと熱くなって私を探さなきゃ、だめじゃないですか」

そんな声とともに松岡分隊長は衛兵所の門柱の後ろから顔をのぞかせた。衛兵のふりをしようとしたのか、当直の衛兵の銃剣を奪って立っている。そばで本物の衛兵嬢が中尉のラケットを持たされ困惑した顔つきで立っている。

石場兵曹は「松岡中尉、衛兵さんがこまっとるじゃないですか。あまり変なことせんでくださいよ。『大和』の恥になりますけえね」といさめた。松岡中尉はそれには全く構わず衛兵嬢に銃を返し自分のラケットを受け取ると、

「ありがとう、面白かったよ。通り過ぎるみんなが私をわからないって愉快じゃないか。君ももっと熱くなって頑張れよ。いいですか、今日から君は富士山だーっ!」

と怒鳴るように言って「じゃあ、行こうか」と歩き出した。石場兵曹たちは「待ってつかあさい、分隊長」とあわててあとを追う。しばらくずんずんと歩いた松岡中尉であったが突然立ち止まった。

「??」

とその背中を見守る三人に松岡中尉はいきなりふりかえると

「ねえ君たち。それでその熱くなれる場所っていったいどこにあるのかな?」

と聞いてきたので三人は思い切り面食らって、それでも気を取り直し「こちらです・・・分隊長、一人であちこち行ったらいけませんよ。迷子になりますけえね」と言って中尉を囲んで歩き始めた。

中尉はそれでも浮き浮きして鼻歌なんぞ歌いつつラケット振り振り歩いて行く。途中何度かそのラケットが横を歩く石場兵曹の頭を直撃し、「おお、ごめんね~!石場くんの顔は大きいから当たっちゃうんだよね~」などと大変失礼なことを言ってそれでも笑っている。

石場兵曹も笑っているようだが、暗黒の一重まぶたが重く降りてきてものすごい怖ろしい形相になっているのを小泉兵曹と長妻兵曹は見た。「石場さん、怒っとるで。見てみいあの顔、うちは怖いわ」と小泉兵曹はこっそり長妻兵曹にささやいた。長妻兵曹もこっそりうなずく。

そうこうしているうちに一行は繁華街に出た。

松岡中尉は皆を振り返り、「さあ皆さん。その熱くなれる場所はいったいどこですかね」と聞いたが長妻兵曹は「この近くではありますが・・・中尉、熱くなるんは夜でありますけえ、昼間は別のところで遊びませんか」と提案。

松岡中尉は「おお!熱くなるのは夜かね!それでは昼の間はおとなしくして英気を養わないといけないね・・・というわけでどこに行こうか」と腕を組み、「じゃあ、私の行きつけのところでいいかね」と言い皆が賛成。歩きだした。

松岡中尉の行きつけとは現地の人の経営の「トレーラー筋肉トレーニング事務」という看板を掲げた、椰子の葉を屋根にふいた小屋である。小泉兵曹は看板を見上げて

「トレーニング事務、いうて・・・事務いうたら仕事じゃねえ。どがいな仕事しとるんじゃろうね」

と考えたが、松岡中尉は「小泉君、いいところに気がついたね。事務ではなくてジムなんだ。ここのおやじさんはちょっと間違っちゃったんだよ。まあこういうのを<御愛嬌>って言うんだよ、覚えときたまえ小泉君」というと入り口に掛けられた布をめくって「こんちは~」と大声を出すとずかずかと入っていった・・・

 

四人が、否、三人がへろへろになって「トレーラー筋肉トレーニング事務」から出て来たのはそれから五時間も後のことだった。三人は松岡中尉の組んだ過酷なトレーニングをさせられていたのだった。

一人だけ松岡中尉は上機嫌で

「親父さーん。今日も熱くなれましたよ、ありがとう。また来るよ、親父さんももっともっと熱くなれよ、今日からあなたも富士山だ」

と叫んで経営者の叔父さんと笑いあって出て来た。そしてその場にへたりこんでいる石場兵曹たちを見るなり「どーしたって言うんだよ!」と怒鳴り始めた。へ?と中尉の顔を見上げる石場兵曹たちに松岡中尉は

「ダメじゃないか、こんなところでへたり込んでる場合か?ちょっと体がつらいともう駄目だ~ってへたっちゃうのか?あきらめんなってあれほど言ってるのが君たちにはまだ分かんないのか?あれくらいのことでへたってたらこの戦争には勝てないぞ!いいのか?勝てなくて?嫌だろう、だったらもっと熱くなれよ!

いいか、わかったら立ちあがれ。・・・そうです、立ちあがったら大きな声で叫ぼう、バンブー!」

と怒鳴った。石場兵曹たちはもうやけくそで「バンブー」と叫んで腕を天に突き上げた。腕が鈍く痛む。しかし松岡中尉は上機嫌になると「そうだそうやって熱くなれば決して不可能はないぞ。というわけでさあ、みんなの行きつけの熱くなれる場所に行こうじゃないか。さ、石場さん案内してちょうだいなっと」と言ってにこにこしている。

「はいはい・・・では行きましょうか松岡中尉」

と痛む腕をさすりつつ言った石場兵曹に松岡中尉は「はい、は一回でいいんだよ石場君。お母さんに言われなかったかね?」と注意した。

「わかりました」と暗黒の一重まぶたを朝よりも重く垂らした石場兵曹は応え、皆は<熱くなれる場所>に向かって歩き出したのだった。


そんな頃、『大和』ではマツコがトメキチ相手に「マツオカがいないとつまんないわねえ~。あんた何か面白いことやってよ」と愚痴っている――

 

    (次回に続きます)

 

             ・・・・・・・・・・・・・

 

松岡中尉が絡むとどうも何事もめんどくさくなる気がしてなりません。周囲は振り回されていますが本人は全く気にしていないのが気になります。

さて、これから四人はどんなことになるのでしょうか、お楽しみに。

筋トレ。つらそうだわあ~・・・(画像お借りしました)。
筋トレ器具

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「女だらけの戦艦大和」・松岡中尉夜話2 - 2013.05.26 Sun

松岡中尉の武勇伝?はまだ続く――

 

松岡話 その参

ある日、松岡分隊長は航海科の数名をひきつれてカッターをこぎ出した。カッターを漕ぎながら見張兵曹は「松岡分隊長、一体どこへ行きんさるんで?」と聞いてみた。松岡分隊長はカッタ―の舳先に格好つけて座り、

「いいところ、いいところですよ特年兵君。君も今日はきっといい経験が出来ていい大人になれますから頑張れよ!」

と言ってラケットをひと振りした。麻生分隊士がオールをぐうっと回して「・・じゃけえ、オトメチャンは特年兵じゃないいうんが一体いつになったらあん人にはわかるんじゃ?もしかしてわかっとっていっとるんじゃろか」とブツブツ言う。そして「分隊長、ええ所でええ経験をするんはええんですが私まで来てしもうたら困るじゃないですか」とこれは松岡分隊長へと声を張り上げた。

松岡分隊長はラケットで肩を自分の肩をトントンと軽くたたきつつ

「麻生さんは心配性だなあ~。だから主席下士官のイシバチャンを残してきたでしょうが?あの人はあれでも結構使える人材ですからね。何があってもあの暗黒の一重瞼でにらみを聞かせてガンバってくれるって。あの人は富士山を目指してますからね、薄ぼんやりしてるとイシバチャンに追い越されますよ麻生さん」

とこともなげに言い放ち麻生分隊士は軽く怒りで唸り声をあげた。松岡分隊長は「さあ」と言って立ち上がるとラケットを振り振り「さあ皆さん、もっと頑張ってこげこげもっとこげ~~!早くしないと日が暮れる・・・ってあきらめんなよ!!」と怒鳴った。が、小泉兵曹は

「いうても分隊長」

と少し不満げな声を出した。松岡は「ん?どうしたんだい『大和の突撃隊員』くん?何か大きな不安がありそうだね、不安は早いうちに解消しないとあと後に禍根を残すからね・・・なにかね、何でもこの私に聞いて熱くなってくださいよ!!」と言って小泉を見た。

『大和の突撃隊員』という自分にとっては不名誉なあだ名を言われて面食らった小泉兵曹ではあるが気を取り直し、オールを握りなおして

「いうても分隊長、カッタ―はもっと大勢で漕がな、きつうてかなわんです」

と文句を垂れた。確かに今日のカッタ―漕艇員――つまり松岡が率いて来た航海科の面々は――麻生分隊士・見張兵曹・小泉兵曹・石川水兵長・亀井一水のたった五人。しかも松岡分隊長は決してオールを持たないので大変な負担である。

亀井静一水は小声で「カッタ―訓練は海兵団でもしよりましたがこげえな少人数でしたことなんかありません。こげえな人数ではよう進みませんよ」と不満をあらわにした。すると地獄耳の松岡分隊長は手にしたラケットで亀井一水を指すと

「亀井くーん!君には闘争心てものがないのかい?どんな少人数でも必死でやれば大人数に勝るとも劣らない。いや!大勝利することだって決して夢じゃないんだ、あきらめてるなもう既に!亀井くんあとで私は君に用があるから巡検後主砲前に来なさいッ!」

と怒鳴った。麻生分隊士が「あほ。そげえなこという奴が居ってかね?あの地獄耳にはなんでも届くんじゃけえ注意せえ」と叱った。がその声は松岡分隊長の耳には届いてないらしい。

やがてカッタ―はトレーラー環礁のほぼ中間あたりに来た。

すると松岡分隊長は皆に、「では諸君。ここで褌一本になって海に飛び込め、熱くなれよ!」というなり一番先に褌一本になるとラケットを持ったままザブンと海に飛び込んだ。ここのあたりはけっこう深い。麻生分隊士はあわてて、

「分隊長ー、この辺は鱶が居ると聞いとります。危ないですけえ海に入るんはよしましょう。うちは鱶に食われるんは嫌ですけえ」

と叫んだ。が、松岡分隊長は海面に顔を出すなりラケットを振り上げて、

「麻生さーん、貴様そんな気の弱いことでどうするんだ、それでも貴様分隊士か!もっと熱くなれよ、やる前からあきらめてんじゃねえよ!来い、来いったら貴様あ!」

とすごい剣幕で怒鳴り始め、ラケットで海水をすくって皆に掛け始めた。それがあまりに大量なので分隊士は「やめてつかあさい分隊長、私が悪うございました・・・ええ、鱶なんぞ怖いもんですか。ええ怖くなんかありやせん、怖いことなんぞありませんとも!」とやけくそになって怒鳴るとパッパと防暑服を脱ぎ捨てふんどし一つになるなり「たあっ!」と気合をかけて海に飛び込んだ。水しぶきが上がり、やがて分隊長が海面に顔を出した。それを見ていた見張兵曹が「ではうちも。うちは命何ぞ惜しくないですけえ!」というなりこれも服を脱ぎ捨て海に。

そのあとを小泉、亀井、石川たちが追い三つの水柱が次々に立った。満足げな松岡分隊長は「ではみんな。私のあとについておいで。あきらめんなよ!」というと平泳ぎで泳ぎ出した。そのあとを麻生・見張・小泉・亀井・石川が単縦陣のようにくっついて泳ぐ。松岡分隊長は後ろを見返って

「おお!すばらしい、まるで聯合艦隊のようじゃないか。これこそ熱くなっている証拠ですよ、やればできるじゃないの麻生さん。・・・もしかしてあなた泳げないのかと思って心配しちゃったよ」

と言って笑った。麻生分隊士はむっとして黙って泳ぐ。山村の出身ということを馬鹿にされたと思ったらしい。興に乗った分隊長、『軍艦行進曲』をハミングしながら泳ぐ、泳ぐ泳ぐ・・・。

どのくらい泳いだか、やっと分隊長は「そろそろカッタ―に上がろうか?少し腹が減ったね」と言って皆は遠くに漂うカッターを目指して今度は抜き手を切って泳ぐ。

麻生分隊士がカッタ―をつかみ、見張兵曹から小泉兵曹、石川水兵長そして亀井一水が乗り込み、見張兵曹が麻生分隊士を引き上げた。

「はあー。たいぎい」

と皆がカッタ―の上で息をついた。麻生分隊士が「松岡分隊長、はよう上がってつかあさい」と声をかけた。分隊長はまだカッタ―から数メートルほど先を浮かんで遊んでいる。ラケットが大きく左右に振られる。

麻生分隊士が「ほんまにあん人はしょうもないお人じゃなあ」とため息をついたその時。

「分隊士、あれ!鱶と違いますか!」

見張兵曹がまだ褌姿のままで海面を指差して叫んだ。ええっと皆が見た先に・・・分隊長の足の先、十メートルほど先の海面に鱶の背びれと思しきものがいくつか向かってくる。

麻生分隊士が「松岡分隊長、足元に鱶がいます!危ないー!」と怒鳴った。しかしラケットは左右に振られるだけ・・・麻生分隊士、見張兵曹たちはかたずをのんで見守るしか出来ない・・・

いよいよ鱶の一頭が分隊長の元へ・・・「ああっ!」と皆が両手で眼をふさいだ時。

「この鱶野郎、何処の分隊だ!」

というものすごい大声が響いた。皆が驚いて眼を見開いて状況を見ると、なんと松岡分隊長が鱶に襲いかかっているではないか。分隊長は怒りに燃え、ラケットを振り回し「貴様どこの分隊だ、私の邪魔をしようなんざ千年早いッ!」と怒鳴るとラケットで鱶の顔の真ん中をぶっ叩いたのだった。それも何回も。

挙句に分隊長は鱶の首を締めあげて「貴様あ・・ふかひれスープにしてやろうじゃないか。貴様ら全員『大和』に連れて行って烹炊員に解体されるのがいいか、それともこの松岡の配下になるのがいいか。どっちか選べ!」と悪魔のような声で囁いた。

鱶は恐怖にかられ、暴れて逃げようとした。周囲にいた仲間の鱶も松岡の剣幕にたじろいでいるようだ。しかも大事な仲間が人質状態、どうにもできない。

「どっちがいいかと聞いているじゃないか、返事をせんかこの鱶小僧」

いつの間にか野郎から小僧へ格下げされた鱶、その鱶をさらにしめあげ周囲を取り巻く他の鱶を怖ろしい目つきでにらむ松岡分隊長。と・・・松岡分隊長に締められている鱶が白目をむいて降参を宣言。周囲の鱶もいわしのごとくおとなしくなった。

松岡分隊長は鱶をまだ絞めたまま「貴様らこの先わが帝国海軍の人間にちょっかい出したら私がだまっていないぞ、貴様らの悪行は必ずこの松岡の地獄耳に入るようになっているからな!わかったか?わかったらわかったと言わんか!」と無茶な要求をし、ついに鱶どもは「わかりました」とうなずき、松岡中尉は鱶どもにロープをかけるとカッタ―の舳先につなぎ、

「貴様らこのカッターを『大和』まで曳航して行け。途中で妙な気を起こすと烹炊所の露と消えるぞ!」

と脅した。鱶はおとなしく従った。一部始終を目撃していた麻生分隊士以下は

「やはりあん人はちいと普通と違う。ハシビロを手なずけた時も驚いたが今回はスケールが違いすぎる、この先何を手なずけるか、うちらは怖い」

と言ったとか。

 

さて『大和』に戻る途中行き交う海軍艦艇や警備艇は珍奇な――あまりに珍奇なカッタ―に絶句した。『矢矧』の原艦長がそれをまず最初に目撃し、古村司令に知らせると古村司令は笑いながら「んな、馬鹿なこと」と言って双眼鏡をのぞいて卒倒寸前に至った。

『武蔵』でも猪田艦長と加東副長が呆然として、鱶に曳航されるカッターを見送り『大和』では梨賀艦長が「鱶嫌い。鱶大っきらい!なんで松岡中尉はあんなものと仲良くなるの?信じられない!」と半べそかき、浜口機関長は「うまそうなヒレだぜ。いつか食ってやろうじゃないか!」と舌なめずりした。

さて『大和』に到着し、松岡の魔手から解放された鱶たちは一目散に逃げ、その行方はようとして知れないという――

    (次回に続きます)

 

         ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

松岡中尉何をやらかすと思えば相手は鱶・・・。ふつうは鱶なんか怖ろしくて相手に出来ません。私は絶対いやです。ふかヒレは大好きですが。

みなさんは絶対真似をしないでください!・・・そういえば昔ハワイに行った時(真珠湾攻撃に行ったのではない)、とある水族館だったか??でサメの腹から出たものが展示されていましたが・・・恐怖でぞっとう寸前になりました。思い出したくないので書きません・・・(^_^;)

さあ次回は松岡中尉いよいよ・・・!!

鱶…てなんでこういう字なんだろう???
鱶


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「女だらけの戦艦大和」・松岡中尉夜話1 - 2013.05.23 Thu

「女だらけの大和」には名物人間の松岡修子海軍中尉がいる。彼女は『大和』に配属されてもう二年ほどたっているがずっと前からいたような存在感を醸し出している。その彼女の様々な話――

 

松岡話 その壱。

「なあ、松岡分隊長っていつからここに居ったかいね?」

とある晩兵員居住区で言ったのは小泉兵曹である。そばで防暑服のポケットを繕っていた見張兵曹が顔をあげて「ほうじゃねえ。もうかれこれ二・三年にはなろうかねえ」と言ってまた手元に眼を落した。一所懸命に繕ってはいるがオトメチャン縫い物は不得手なようだ。石場兵曹が艦橋の当直から降りてきて

「オトメチャンそこはこうした方がええで。貸してみんか」

というと代わって縫い始める。見張兵曹は感心して石場兵曹の手つきを見ながら

「石場兵曹は繕い物が上手ですねえ。うちは縫物が下手じゃけえ恥ずかしいです。石場兵曹、今度うちに裁縫を教えてつかあさい」

と言って「願います」とつけくわえた。石場兵曹は頬を真っ赤に染めて嬉しげにニヤニヤしながら「う、うちでええんか?ほいじゃあそのうち個人的にじっくり教えてあげるけえね」という。それをさも呆れたような顔で見た谷垣兵曹は

「個人的に、いうて二人で何処ぞにこもっとったら麻生分隊士に殴られるで、貴様。ここで教えたらんかい」

と言った。石場兵曹は以前にオトメチャンを襲って麻生分隊士に殴られた思い出があるので顔を引き締めた。そしてオトメチャンを見返ると暗黒の一重まぶたも重々しく

「そうですね・・・見張トメ兵曹。明日の晩にでもここで教えてあげましょう。それでえですか?」

と四角張ったものの言い方をした。周囲の兵員が笑った。見張兵曹も笑いながら「ええですよ。石場兵曹では明日の晩からよろしく願います」と答えた。

そんなことを言って皆がたわいもない話をしているうち、入口に松岡分隊長が立っているのに谷垣兵曹が気がついた。

「あ、松岡分隊長。誰ぞにご用でありますか」

皆が一斉に分隊長を見ると松岡修子中尉はラケットを振り振り兵員居住区に入ってきた。そして大きな声で

「みんな、熱くなってるか!?尻の穴を締めろ、いいかあ、君らも今日から富士山だ―っ」

と叫んだ。そして石場兵曹が縫物をしているのに目を止めると「石場君、熱くなってますね。さあちょっと私に貸してご覧?私が縫って見せようじゃないか」と言って石場兵曹の手から防暑服を取った。石場兵曹は「分隊長、その服はうちのと違います。オトメ・・いや、見張兵曹のものであります」と言った。すると分隊長は

「ほう、特年兵君のね。特年兵君は裁縫は下手と見たが・・まあ私がやるのを見てれば絶対上手になるからね。いいか見てなさい!」

と言って針を取り上げた。見張兵曹は「特年兵」「裁縫が下手」と言われて悲しげな顔になったが次の瞬間、「わああ」と大声をあげていた。周囲で見守っていた兵員たちも「おお!」「すごい」と歓声を上げた。

なぜなら、松岡分隊長はものすごい勢いでまるでミシンのようにがっしがっしと縫い始めたからだ。石場兵曹は航海科の中でも裁縫上手で通っているのだかその彼女をして「すごいわあ。あがいに早う縫うなん、うちには出来んわ」と言わせるほどの早い縫い方である。

けどなあ、と小泉兵曹が言った、「いくら早うに縫えたいうても綺麗に縫えとらなんだら意味ないわ。なあ」。

すると松岡中尉は糸の尻を止めると小さなハサミでそこをぱちっと切って「はい出来上がり、熱くなっただろう?」というと見張兵曹の防暑服を皆の前に広げて見せた。

「おお!」「さすがじゃ」

皆がどよめく、それもそのはず元の縫い目が大きくほつれていた部分が本当のミシンで縫ったかのようにきれいに針目が通っているではないか。見張兵曹が服を受け取ってその部分をじいっと見つめている。石場兵曹も見つめていたがやがて大きくため息をついた。

見張兵曹は、「分隊長・・・上手すぎます」と言い石場兵曹は「分隊長・・・うちは負けました」と言った。

松岡分隊長は上機嫌で見張兵曹と石場兵曹の肩を交互にたたくと「今度教えてあげよう。君も明日から富士山だ」というと「じゃあまた明日~」というとあっという間に出て行ってしまったのだった。

その翌日から石場兵曹とオトメチャンは巡検後、兵員居住区で松岡分隊長の裁縫の手ほどきを受け、二人とも半月後には松岡の半分ほどの勢いではあったがきれいに縫物が出来るようになったのだった。それを見ていた兵員たちは次々に「分隊長、うちにも教えてつかあされ」「うちにも」「いや、俺が先!」と皆で先を争って松岡裁縫塾に入門したという・・・

 

松岡話 その弐。

ハッシー・デ・ラ・マツコとトメキチは松岡中尉の良い仲間である。

最近トメキチはマツコの上に乗って飛ぶことを覚えたのだが実はこれこそ松岡中尉の発案によるものであった。

ある日、空を往く「トレーラー航空隊」の零戦の編隊を大和最上甲板から眺めて、それに「熱くなれよ!零戦くん、尻の穴を締めてあきらめんなよー!今日から君も富士山だ」とわけのわからない声援を送っていた中尉、隣に舞い降りて来たマツコと、その少し前から中尉の足元にいて空を見上げていたトメキチに視線を下ろした。じっと見つめた。

「どうしたのよ、マツオカ?」と問うたマツコに、松岡中尉はニィ~っと笑うなり、言った。

「鳥くん、君この犬くんを背中に乗せて飛んでみないか?犬くんが乗って鳥くんが飛んだらまるであの空を往く零戦くんのようだぞ、かっこいいと思わないかね?」と。

マツコは「ええ!あたしが零戦ですって?すごいすごい、ねえトメキチやってみましょうよ」と大騒ぎをしてその場を跳ねまわる。しかし、トメキチは非常に嫌そうな顔で

「僕、怖いからいやだ」

と言って尻尾を丸めておなかの下に入れてしまった。マツコはそのトメキチをその足でけっ飛ばすと「何言ってんのよう、せっかくマツオカがいい提案してくれたんじゃないの。アタシ達が目立ついい機会よ!あんたあたしの背中に乗って!でもそのくだらない爪であたしの羽を傷つけたら承知しないわよ」と言ってその金色の目でトメキチをにらんだ。

松岡中尉は「犬くん、怖がっちゃいけないよ。君は勇敢な海軍犬だよねえ。て事はだ、君はこの鳥くんとペアを組んでいずれ空の戦いにも参加出来るよう訓練しなきゃいけないってことだよ。さあ、犬くん熱くなって今日から君らは富士山だ!」と叫ぶなり、トメキチを抱き上げてマツコの背中に乗っけてしまった。

「いやだよう、怖いよう、降りたいよう」

とトメキチは泣いて叫んだがマツコは「しっかりつかまってんのよう!」というと大きく羽ばたきを始めた。トメキチは泣きながら、「マツコサン、お願いだからあんまり高く飛ばないで?慣れるまで怖いから絶対やめて?」と懇願した。マツコは羽ばたきながら「わかったわよ、最初はマツオカの背丈ぐらいでいい?」と尋ねた。トメキチはふるえつつも「うん、いいよ。でも絶対ね」と念を押した。

するとマツコはふわりと舞い上がった。そしてゆっくりと旋回し、松岡中尉の頭の上あたりを飛んだ。マツコは背中のトメキチに

「どうよあんた?これくらいから慣らしたら怖くないんじゃない?」

と聞いた。するとトメキチはしっかり目を見開いて「うん、これなら大丈夫みたい。マツコさんの背中乗りやすいから平気かも」と言った。するとマツコは「じゃあもうちょっと高く跳ぶわよ」というと松岡中尉の上を旋回しつつ上昇。

それを見ていた松岡中尉は「いいぞ鳥くん犬くん、熱くなってるな!その調子で尻の穴を締めろ」と両手をメガホンにして叫んだ。マツコはそれを聞いて喜んで「じゃあもう少し」というと防空指揮所まで上昇して行った。

そして・・・休憩時間を終えて配置に帰って来た見張兵曹とばっちり目があった。

「キャーー―ッ!」

とオトメチャンの絹を裂くような叫びに、指揮所は上を下への大騒ぎになって右舷側にいた小泉兵曹や伝令所にいた石場兵曹や谷垣兵曹、それに麻生少尉が「どうした!」と叫んで走り込んできた。

オトメチャンは真っ青になって床にへたりこみ、ガタガタ震えながら空を指差して「あ、あ、アレを見てつかあさい・・・」と言っている。一同が指の先をたどるとそこにはトメキチを背中に乗せて悠々と宙を舞うマツコがいるではないか!

「わああ!」「ハシビロ、危ないけえ降りんか!」「トメキチしっかりつかまっとれ、おい誰か下に行ってトメキチを受け止めんか!」・・・

しかしマツコはそんな一同を眺めまわし、トメキチですら喜びの声をあげてやがて松岡中尉の待つ甲板に降りたのだった。

松岡中尉は両手を広げて二人を迎え「やったじゃないか犬くん!君が鳥くんを信頼した結果だよこれは。だから言っただろう、何事もあきらめんな!いいか、あきらめたらだめだそこで終わりだ!さあ、これで君たちも明日から富士山だ、大きな日本の誇りとなるんだ!尻の穴をしっかり締めて頑張れよ、バンブー!」と大声で叫んだ。

そこに、指揮所から皆が降りて来た。見張兵曹など泣きながらである。松岡中尉はトメキチとマツコを後ろに従えて「おや特年兵君は何を泣いているのかな?帝国海軍軍人のはしくれの特年兵ともあろうものがべそべそ泣くなどみっともない!もっとしゃんとしろよ!」と説教を始めようとした。

が、麻生分隊士が皆をかき分けて出て来ると

「分隊長、あなた何をこの二匹にさせたんですか!おかげで皆、特に見張兵曹は大変驚いてこのありさまです・・・どういうことか説明してください!きちんと納得いく説明聞くまでうちはあなたを許しませんけえね!」

と怒鳴った。怒りで汗が全身から噴き出した。そんな分隊士をじっと見つめた松岡中尉は一歩前に出た。とたんに皆は一歩飛び退いた。松岡中尉はニ―ッと笑うと

「麻生さんも熱くなっていていいですね、その調子です。いいですか私はねこの二人に零戦のように熱くかっこよく勇ましく生きてほしいのです。だから鳥くんに、犬くんを乗せて飛んでみたらかっこいいよと教えたんですよ。そしたらこの賢い鳥くんと犬くんはそれをやってのけたんですよ。これが熱くなってあきらめないってことじゃないか!?ええ!?もうあきらめてんだろう麻生さんもみんなも!もっとこの日たりを見習いなさい。君たちだってやれば空を飛べるぞ、あきらめんなよ!」

と叫ぶなり「行くぞ鳥くん犬くん、ここでぼーっとしててもなーんの意味もないよねえ」と言ってマツコとトメキチと一緒にどこかへ走り去ってしまったのだった。

その場に取り残された麻生分隊士以下はその後ろ姿を眼で追いつつ、

「わからん。どうにもうちにはあの人がわからん・・・」

と呪文のように呟いていた――

(次回に続きます)

 

            ・・・・・・・・・・・・・・

 

不可解?な松岡修子ワールド、まずは小手調べです。恐るべき松岡分隊長の素顔が次回また、解明されます。どうぞ皆様、気付け薬を持って読みにいらしてくださいませ!!

 

裁縫箱(画像お借りしました)。海軍兵は自分でほころびを繕ったのでした・・・えらいぞ!
裁縫箱


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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