「女だらけの戦艦大和」・南方のグラビアクイーン!?1

艦橋へ上るラッタルの途中でへばっていた『海きゃん』取材班は、「あれ、どうしました?」という副長の声に我に返った――

 

一行がしゃがみ込んでいるラッタルの数段上の扉が開いてそこから野村副長が顔を出している。殘間中尉は「いやあ、みっともないところをお見せしたようで・・・」と言いつつ立ち上がろうとしたが膝ががくがくして上手く立てない。それを後ろの筑紫少尉がなんとか支えて立たせ殘間中尉は副長のいる扉までやっとこさ、歩いて行った。

皆もそのあとをぞろぞろついて扉の中へと入る。

「ここは作戦室です。作戦を立てるときとか実際の戦闘中などに使うことがあります」

副長が説明した。

ほう、と部屋を見回す取材班。そこに通信科の兵曹長がやってきて副長に何やら紙を手渡す。重要な書類の様だ。

副長はその書類を見ていたが「うん、わかった」と言うと書類をファイルに挟む。そして兵曹長に「そうだ、三山兵曹長。このご一行を後で無電室にご案内しては?」と言ったが、三山兵曹長はぎょろりと目をむいて『海きゃん』取材班を眺めまわした後、

「副長のご提案でもそれは無理です。いろいろと知られてはならんことがありますけえ」

ときっぱり断った。そのまなざしにはおいそれとこいつらを信用なんかしませんよという意志が込められているようで、三谷兵曹は内心(そうだよなあ~、殘間中尉なんかどっちかっていやあ信用ならん方に映るかもしれないよね)と思っている。

「そうですか、残念ですがあきらめます。で、野村少佐。ここ『大和』には可愛いおぼこな兵隊さんがいらっしゃると聞いてきたのですが、ご存知でらっしゃいましょうか?」

殘間中尉は丁寧に尋ねた。どうもこの『大和』の乗員は扱いにくい部分がある、下手に出た方が事がうまく運びそうだ、という政治的配慮が働いている――つもりである。

野村副長はああ、というと

13分隊航海科の見張兵曹のことでしょう。彼女ならそう、このさらに上の防空指揮所にいると思いますよ、今の時間なら」

と教えてやった。では行ってみましょうという殘間中尉に、副長はその手をしっかり握ると

「『大和』副長としてお願いします、ぜひ、ぜひ彼女をいい記事にしてやってくださいね」

というと満面の笑みで以て一行を送りだした。

 

殘間中尉以下はマンホールをあがって指揮所に出た。

空は晴れているが風が地上より強く感じる。小林兵曹と武田水兵長が「うわあ、高いなあ」と怖げな声を立てた。筑紫少尉が「高いのなんか当たり前だ。それより早く例のおぼこを探せ」と言って指揮所を眺める。

数名の見張り員が双眼鏡をのぞいているのが見え、筑紫少尉は「行くぞ、おぼこを探せ」というなり見張り員の一人に向かって歩き出していた。

皆も突撃状態。

「あのう・・・」

と筑紫少尉が右舷側の双眼鏡の一つにくっついている見張り員に寄っていった。

「ああ!?

と振り向いたのは小泉兵曹。兵曹は見慣れない少尉に不信の目を一瞬向けたが腕に巻かれた腕章で『海きゃん』取材班だとわかると突然のように愛想よく笑って見せた。まさに豹変である。

筑紫少尉がとても小さな声で「・・・違った、これはどう見てもおぼこじゃない」というのが袴田兵曹には聞こえた。袴田兵曹は(これはもう百戦錬磨の顔。あとで個人的に話を聞きたいなあ)と思う。

殘間中尉が筑紫少尉を押しのけるようにして、

「あの、お忙しいところ申し訳ないが」

と小泉兵曹に話しかけた。小泉兵曹は一行の中にカメラを構えた兵曹がいるのに気がついているから最高の笑顔で「はい、なんでしょう。何でも聞いてくださいな」と双眼鏡から離れて言った。殘間中尉はエヘンと咳払いをしてから、

「実はここに可愛いおぼこな兵がいると聞いてきたんです。ぜひ、ぜひ取材がしたいのだが・・・いるかね、その子は」

と聞いてみた。とたんに小泉兵曹のご機が悪くなってプイと双眼鏡に向き直ると「うちは知らんねえ。たいがい麻生分隊士と一緒じゃないかねえ」と元通りの無愛想なものの言い方をした。

「そうか・・・」と殘間中尉が言った時。

指揮所の入り口から華やかな声が聞こえて来た。写野兵曹がカメラを構えて「来たぞ、今度こそ例のおぼこだ!」と叫んだ。

果たして、やってきたのは見張兵曹。後ろには麻生分隊士がいるようだ。見張兵曹は「分隊士ぃ、早う」と言って入ってきたがいきなりのカメラのシャッター音に驚いたように立ちすくんだ。

その表情に殘間中尉も、袴田兵曹も――武田水兵長まで――「これがおぼこだあ!」と確信した。

立ちすくむ見張兵曹に気がついて、

「どうしたんじゃ、オトメチャン」

と入ってきた麻生分隊士は、見慣れない一行に一瞬驚いたが「ああ、『海きゃん』の皆さん」と言って敬礼した。殘間中尉たちも返礼した。その手も下りないうちに筑紫少尉がさっそく見張兵曹の前に立つと、

「あのッ、ぜひともあなたを取材させていただきたい!そして出来たら私たちはあなたのグラビアを特集で組みたいのです!」

と怒鳴るような大声で言ったので見張兵曹は驚いた。そして麻生分隊士を振り返ると、心細そうな声で、「分隊士、うちはどうしたらええんでしょう」という。その様子に、『海きゃん』取材班はまたまたそそられる。

麻生分隊士はふむ、と少し考え込んだが「まあええじゃないか、こうして遠くから来て下ったんじゃけえ、グラビアぐらい撮らしてあげんか」と諭した。

「では、善は急げと言いますからさっそく撮影に入りたいんですが・・・まずはこの『大和』艦内で、そのあとトレーラー島内で撮影したいんですがいいでしょうか」

と筑紫少尉が言った。もう殘間中尉など眼中にないようで、袴田兵曹以下も乗り出すようにして見張兵曹に迫っている。麻生分隊士が、

「ほう。艦内とトレーラ島でねえ。そりゃあきれいなグラビアになりそうじゃね。じゃあ、とりあえず航海長と副長・艦長に許可をもらわんと」

と言いかけた時。

「ちょっと待った―――!」

ものすごい大声が降ってきて、その場の皆はびっくりして立ちすくんだ。そこへ――!

    (次回に続きます)

 

         ・・・・・・・・・・・・・・・

いよいよオトメチャンがグラビアデビュー!麻生分隊士は意外と物分かり良くOK出したようですね。やはり愛しのオトメチャンを、少しは人目に触れさせたいという願望があるのでしょうか。

しかし、ものすごい大声の主はいったい誰?次回をお楽しみに^^。

ボラ。ボラ
オボコの語源は、ボラの幼魚から来てるのだそうです。まだ小さいところから世間ずれしていない若い人や処女を指すのだそうです。

・・・と言ってもオトメチャンに「ボラの幼魚だ」と言ったら麻生分隊士のすさまじい怒りを買いますから要注意であります!



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「女だらけの戦艦大和」・秘密の花園、『大和』❤5

――平野少尉は「さあ『海きゃん』の皆さん、25ミリ機銃をとくとご覧ください」と言って『海きゃん』取材班一行を機銃座に招いた――

 

初めて間近で見る機銃座に、皆――殘間中尉から武田水兵長まで――が目をらんらんと輝かせて走り寄った。そして口々に「おお、これが帝国海軍がほこる25ミリ機関銃なんですね!」とか「これが連続で発射されたら敵機はひとたまりもないですね」などと喋りまくる。

それを見ていた長妻兵曹と増添兵曹は「やかましい連中じゃのう、編集部員いうてこがいにやかましゅうてええんかいのー?もうちいと静かで知的な感じのする人じゃと思うとったがのう」と言って苦笑する。

その二人を平野少尉は近くに呼ぶと、「この人たちに機銃の撃ち方を見せてやりたいんだがちょっとやってみてくれる?」と言い二人はうなずく。

増添兵曹は普段はシールド付の機銃の配置だが少し前は露天のこの機銃座にもいたことがある、いわば古巣。喜んで旋回手の席に着く。長妻兵曹はちょっとだけ格好つけて射手席におもむろに座った。

そこで平野少尉はエヘン、と咳ばらいを一回すると殘間中尉以下を見回して「ではこれから、皆さんに機銃の射撃手順ほかをお見せいたします」と言うと、機銃の方に向きこれは何というものであれはこういう名前のもの云々と説明を始める。

それを一つ一つメモをとる袴田兵曹ほか、そして写野兵曹はあちこちのアングルからカメラのシャッターを切る。増添兵曹は自分の方にカメラが向いたとき緊張の面持ちだったが長妻兵曹は何気なくカメラ目線を送る余裕たっぷり。

そして「増添兵曹、長妻兵曹!敵機発見、仰角60度!」と平野少尉が叫んだ。『海きゃん』一行が緊張の面持ちで少尉や兵曹たちを見つめる。

平野少尉は得意になって指揮棒を振りながらまるで上空に敵機がいるかのような熱演である。『海きゃん』の皆も上空を見上げ、そこに敵の飛行機の姿を見ているかのようだ。旋回手の席の増添兵曹がもうノリまくって「仰角65度」となどと叫ぶし長妻兵曹も「右30度ぉ!」と叫んではハンドルを回して機銃を動かし、ついでに「バババババ!!」「ダダダダダダ!」と機銃の射撃音の口まねまでする熱の入れよう。

写野兵曹は「すごい!まるで本当の戦闘を見てるみたいだ」と興奮してカメラのシャッターを押しまくる。

そこに、それまでこの様子を後方で見ていた辻本一水が機銃の弾倉を抱えてきて「給弾しまーす」と言って機銃座の後ろ側にある給弾口に弾倉をがちんと入れた。

と、平野少尉が突然「いいですかみなさん!」と言った。増添兵曹、長妻兵曹の声と手が止まり二人は顔を見合すと(始まるで、平野少尉のアレが)とこっそり笑いあった。

「はい」と殘間中尉以下が平野少尉を見つめると、平野少尉はつい先ほど辻本一水が持ってきた大きい機銃の弾倉を給弾口から取り外すと皆の前に突き出した。

そして、

「もうお分かりとは思いますがこれがこの機銃の弾倉です。弾丸が15発入っています。発射速度は一分間に220発。それが三連。引き金は足元のこれで引きます。・・・まあ、この機銃群が火を噴けばアメちゃんの飛行機と言えど我々の敵ではない!」

と大変偉そうに話しだした。殘間中尉や筑紫少尉、下士官連中や武田水兵長などもう大感激で涙ぐみつつうなずいて聞いている。

「そして」と平野少尉がいい、皆は平野少尉に視線を移す。平野少尉は弾倉を抱えて

「給弾の際には弾倉ををこうやって・・・ここにハメるのです。そう、ハメる。で、弾をガンガン撃ちまくります。そしてぇ、撃ち終わったればこの空弾倉は跳ね上がります。で、それを引き抜いてまた新しくハメ直す・・・」

と言い、それを聞いている増添と長妻の顔がニヤつきだした。『海きゃん』取材班のうちの袴田兵曹の顔がなんとなくハッとしたような顔つきになり・・・。

平野少尉はなお続ける、「で、この機銃とて撃ちまくればもう真っ赤になって焼けてしまいます。この砲身の部分が真っ赤に焼けるんです」と言って一本の機銃の砲身を撫でた。その手つきに機銃の兵曹たちと『海きゃん』袴田兵曹は含み笑いをし始める。

平野少尉は袴田兵曹の顔を見て嬉しそうにさらに続ける、「ですので、熱を取るため濡れたソーフ(雑巾)を当てて火照りを取ってやるんですが」

増添兵曹が下を向いて笑いはじめ、長妻兵曹は視線を上にあげて笑いをこらえている。平野少尉は撫でる手を止めないままで

「そこまで行くと砲身がぐったりと曲がってしまうこともあります。・・・つまり・・・どういうことだと思う?君たち」

と部下の兵どもを見ると大声でいい、増添兵曹・長妻兵曹・辻本一水はこれも大きな声で

「イッちゃうのであります!」

と言い――四人は大笑い。『海きゃん』の皆――袴田兵曹以外――は呆気にとられてぽかんとしている。袴田兵曹も大笑いして「ゲハハ・・・イッちゃうんだってさ・・・ウホホ!」とその場で悶絶。

――すると、その袴田兵曹に向かって殘間中尉が言ったのだ。

「ねえ、どこに行っちゃうの?」

これには長妻兵曹が驚いた。「え!し、知らんのですかさっきの話の意味を?結構ええ年しとってじゃけえ、わかると思っとりましたが・・・オトメチャン並みのおぼこじゃったとは!」

これには筑紫少尉以下の『海きゃん』組が反論した、頬を真っ赤に染めて「し、知ってますよそのくらい!私らだって海軍軍人のはしくれ、とっくに男は知ってます!だから平野少尉のおっしゃったお話のスケベな意味もわかりますよ!ただ唐突に言われたからびっくりしただけですよ、馬鹿にしないでください!」。

しかし、肝心の殘間中尉は今一つわけがわからないと言った顔をしている・・・

そして筑紫少尉はまだ笑っている袴田兵曹をひっぱたいて「これ!あんたは笑いすぎだよ。そんなに笑う奴があるか!」としかったが、袴田兵曹は目にたまった涙を指先で拭いつつ、

「だって、すっごい良い表現じゃないですかあ。今までこんなにわかりやすい表現した人はいませんよ?・・・よし!これは記事に書きます!誰が何と言おうと記事にします!」

と言ってノートを取り出すと先ほどの平野少尉と下士官たちの言葉を書きつけた。殘間中尉は情けなさそうな顔でそれを見ていたが、平野少尉は満足そうな笑みを顔いっぱいに浮かべて

「わかる人にはわかる!さすが『海きゃん』の編集の人だけあるね。鋭いよ。こんな素晴らしい比喩を聞いてもまったく無反応な奴がいたが信じらんないよね~」

と言って袴田兵曹の肩を叩いて「あなたは偉い!」と賛辞を与えたのだった。

取材班は機銃の取材をとりあえず終えた。ノートやカメラを一応仕舞って、平野少尉たちに礼を言った一行。

すると、平野少尉が筑紫少尉にそっと寄ると

「そうだ、この艦のぴか一の下士官が艦橋の上の方におりますからお探しになるといいですよ。これはほんと、記事になる子でしてね。とても可愛くておぼこな子でね。ただこの子を取材しようとするといろいろな障害があるかもしれませんが、きっと皆さんの編集部魂に火をつけること請け合いです。幸運を祈ります。またあとでお会いしましょう」

と囁いた。

筑紫少尉の顔が今までになく輝いた。

「記事になる子!可愛くっておぼこい子!その上その子を取材するには様々な障害が待ちうけているとは!素晴らしい、さっそく探しに行きましょう。ありがとうございました」

筑紫少尉は叫ぶと殘間中尉他をせかして艦橋に走り出す。

が、急に走り戻ってくると平野少尉に「あのッ、艦橋にはどう行ったらいいのでありますか!?」とたずね、増添兵曹と長妻兵曹、辻本一水が「知らねえで行ったんかい!?」とずっこける一幕も。

 

前牆楼の後部のラッタルをぞろぞろ登ってゆく取材班。

妙に張りきった筑紫少尉が「いいかみな!それらしい子を見かけたらすぐに私に言うんだぞ、抜け駆けは許さん!」と皆に言いながら先頭を上がってゆく。(やっと「秘密の花園」とやらの本体が見られるのだな、どんな花園なんだか・・おお、楽しみだ!)

途中で足は萎えるわ、どこから入ったらいいかわからなくなるわでその場で立ち往生していると、数段上にあった鉄の扉が開いた。

副長が、顔を出した――

    (次回に続きます)

 

          ・・・・・・・・・・・・・・・・

いよいよ「秘密の花園」に足を踏み込むのでしょうか、取材班。

でも相手が相手ですから波乱が予想されますね。え?誰かって、そりゃあもうあなた、あの子でしょう~~
三連装機銃弾倉
三連送機銃の弾倉です(画像お借りしました)。



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――平野少尉は「さあ『海きゃん』の皆さん、25ミリ機銃をとくとご覧ください」と言って『海きゃん』取材班一行を機銃座に招いた――

 

初めて間近で見る機銃座に、皆――殘間中尉から武田水兵長まで――が目をらんらんと輝かせて走り寄った。そして口々に「おお、これが帝国海軍がほこる25ミリ機関銃なんですね!」とか「これが連続で発射されたら敵機はひとたまりもないですね」などと喋りまくる。

それを見ていた長妻兵曹と増添兵曹は「やかましい連中じゃのう、編集部員いうてこがいにやかましゅうてええんかいのー?もうちいと静かで知的な感じのする人じゃと思うとったがのう」と言って苦笑する。

その二人を平野少尉は近くに呼ぶと、「この人たちに機銃の撃ち方を見せてやりたいんだがちょっとやってみてくれる?」と言い二人はうなずく。

増添兵曹は普段はシールド付の機銃の配置だが少し前は露天のこの機銃座にもいたことがある、いわば古巣。喜んで旋回手の席に着く。長妻兵曹はちょっとだけ格好つけて射手席におもむろに座った。

そこで平野少尉はエヘン、と咳ばらいを一回すると殘間中尉以下を見回して「ではこれから、皆さんに機銃の射撃手順ほかをお見せいたします」と言うと、機銃の方に向きこれは何というものであれはこういう名前のもの云々と説明を始める。

それを一つ一つメモをとる袴田兵曹ほか、そして写野兵曹はあちこちのアングルからカメラのシャッターを切る。増添兵曹は自分の方にカメラが向いたとき緊張の面持ちだったが長妻兵曹は何気なくカメラ目線を送る余裕たっぷり。

そして「増添兵曹、長妻兵曹!敵機発見、仰角60度!」と平野少尉が叫んだ。『海きゃん』一行が緊張の面持ちで少尉や兵曹たちを見つめる。

平野少尉は得意になって指揮棒を振りながらまるで上空に敵機がいるかのような熱演である。『海きゃん』の皆も上空を見上げ、そこに敵の飛行機の姿を見ているかのようだ。旋回手の席の増添兵曹がもうノリまくって「仰角65度」となどと叫ぶし長妻兵曹も「右30度ぉ!」と叫んではハンドルを回して機銃を動かし、ついでに「バババババ!!」「ダダダダダダ!」と機銃の射撃音の口まねまでする熱の入れよう。

写野兵曹は「すごい!まるで本当の戦闘を見てるみたいだ」と興奮してカメラのシャッターを押しまくる。

そこに、それまでこの様子を後方で見ていた辻本一水が機銃の弾倉を抱えてきて「給弾しまーす」と言って機銃座の後ろ側にある給弾口に弾倉をがちんと入れた。

と、平野少尉が突然「いいですかみなさん!」と言った。増添兵曹、長妻兵曹の声と手が止まり二人は顔を見合すと(始まるで、平野少尉のアレが)とこっそり笑いあった。

「はい」と殘間中尉以下が平野少尉を見つめると、平野少尉はつい先ほど辻本一水が持ってきた大きい機銃の弾倉を給弾口から取り外すと皆の前に突き出した。

そして、

「もうお分かりとは思いますがこれがこの機銃の弾倉です。弾丸が15発入っています。発射速度は一分間に220発。それが三連。引き金は足元のこれで引きます。・・・まあ、この機銃群が火を噴けばアメちゃんの飛行機と言えど我々の敵ではない!」

と大変偉そうに話しだした。殘間中尉や筑紫少尉、下士官連中や武田水兵長などもう大感激で涙ぐみつつうなずいて聞いている。

「そして」と平野少尉がいい、皆は平野少尉に視線を移す。平野少尉は弾倉を抱えて

「給弾の際には弾倉ををこうやって・・・ここにハメるのです。そう、ハメる。で、弾をガンガン撃ちまくります。そしてぇ、撃ち終わったればこの空弾倉は跳ね上がります。で、それを引き抜いてまた新しくハメ直す・・・」

と言い、それを聞いている増添と長妻の顔がニヤつきだした。『海きゃん』取材班のうちの袴田兵曹の顔がなんとなくハッとしたような顔つきになり・・・。

平野少尉はなお続ける、「で、この機銃とて撃ちまくればもう真っ赤になって焼けてしまいます。この砲身の部分が真っ赤に焼けるんです」と言って一本の機銃の砲身を撫でた。その手つきに機銃の兵曹たちと『海きゃん』袴田兵曹は含み笑いをし始める。

平野少尉は袴田兵曹の顔を見て嬉しそうにさらに続ける、「ですので、熱を取るため濡れたソーフ(雑巾)を当てて火照りを取ってやるんですが」

増添兵曹が下を向いて笑いはじめ、長妻兵曹は視線を上にあげて笑いをこらえている。平野少尉は撫でる手を止めないままで

「そこまで行くと砲身がぐったりと曲がってしまうこともあります。・・・つまり・・・どういうことだと思う?君たち」

と部下の兵どもを見ると大声でいい、増添兵曹・長妻兵曹・辻本一水はこれも大きな声で

「イッちゃうのであります!」

と言い――四人は大笑い。『海きゃん』の皆――袴田兵曹以外――は呆気にとられてぽかんとしている。袴田兵曹も大笑いして「ゲハハ・・・イッちゃうんだってさ・・・ウホホ!」とその場で悶絶。

――すると、その袴田兵曹に向かって殘間中尉が言ったのだ。

「ねえ、どこに行っちゃうの?」

これには長妻兵曹が驚いた。「え!し、知らんのですかさっきの話の意味を?結構ええ年しとってじゃけえ、わかると思っとりましたが・・・オトメチャン並みのおぼこじゃったとは!」

これには筑紫少尉以下の『海きゃん』組が反論した、頬を真っ赤に染めて「し、知ってますよそのくらい!私らだって海軍軍人のはしくれ、とっくに男は知ってます!だから平野少尉のおっしゃったお話のスケベな意味もわかりますよ!ただ唐突に言われたからびっくりしただけですよ、馬鹿にしないでください!」。

しかし、肝心の殘間中尉は今一つわけがわからないと言った顔をしている・・・

そして筑紫少尉はまだ笑っている袴田兵曹をひっぱたいて「これ!あんたは笑いすぎだよ。そんなに笑う奴があるか!」としかったが、袴田兵曹は目にたまった涙を指先で拭いつつ、

「だって、すっごい良い表現じゃないですかあ。今までこんなにわかりやすい表現した人はいませんよ?・・・よし!これは記事に書きます!誰が何と言おうと記事にします!」

と言ってノートを取り出すと先ほどの平野少尉と下士官たちの言葉を書きつけた。殘間中尉は情けなさそうな顔でそれを見ていたが、平野少尉は満足そうな笑みを顔いっぱいに浮かべて

「わかる人にはわかる!さすが『海きゃん』の編集の人だけあるね。鋭いよ。こんな素晴らしい比喩を聞いてもまったく無反応な奴がいたが信じらんないよね~」

と言って袴田兵曹の肩を叩いて「あなたは偉い!」と賛辞を与えたのだった。

取材班は機銃の取材をとりあえず終えた。ノートやカメラを一応仕舞って、平野少尉たちに礼を言った一行。

すると、平野少尉が筑紫少尉にそっと寄ると

「そうだ、この艦のぴか一の下士官が艦橋の上の方におりますからお探しになるといいですよ。これはほんと、記事になる子でしてね。とても可愛くておぼこな子でね。ただこの子を取材しようとするといろいろな障害があるかもしれませんが、きっと皆さんの編集部魂に火をつけること請け合いです。幸運を祈ります。またあとでお会いしましょう」

と囁いた。

筑紫少尉の顔が今までになく輝いた。

「記事になる子!可愛くっておぼこい子!その上その子を取材するには様々な障害が待ちうけているとは!素晴らしい、さっそく探しに行きましょう。ありがとうございました」

筑紫少尉は叫ぶと殘間中尉他をせかして艦橋に走り出す。

が、急に走り戻ってくると平野少尉に「あのッ、艦橋にはどう行ったらいいのでありますか!?」とたずね、増添兵曹と長妻兵曹、辻本一水が「知らねえで行ったんかい!?」とずっこける一幕も。

 

前牆楼の後部のラッタルをぞろぞろ登ってゆく取材班。

妙に張りきった筑紫少尉が「いいかみな!それらしい子を見かけたらすぐに私に言うんだぞ、抜け駆けは許さん!」と皆に言いながら先頭を上がってゆく。(やっと「秘密の花園」とやらの本体が見られるのだな、どんな花園なんだか・・おお、楽しみだ!)

途中で足は萎えるわ、どこから入ったらいいかわからなくなるわでその場で立ち往生していると、数段上にあった鉄の扉が開いた。

副長が、顔を出した――

    (次回に続きます)

 

          ・・・・・・・・・・・・・・・・

いよいよ「秘密の花園」に足を踏み込むのでしょうか、取材班。

でも相手が相手ですから波乱が予想されますね。え?誰かって、そりゃあもうあなた、あの子でしょう~~
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三連送機銃の弾倉です(画像お借りしました)。



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「女だらけの戦艦大和」・秘密の花園、『大和』❤4

河村兵曹は、面倒くさくなったのか後は駆け足で案内し始める――

 

皆の顔にも早くも疲れが出始めていたのでもっけの幸いと言うべきか。ともかく河村兵曹は「『大和』に乗った奴が覚えていかなきゃ困る所だけ教える!その他は自分で勝手に覚えんさい」と言って烹炊所・兵員厠・酒保の場所だけ教えると再び陽ざしのきつい最上甲板、一番主砲の前に出た。

皆の背中にあっという間にじっとりと汗がにじむ。

河村兵曹は「うちは仕事があるけん、あとは勝手にしんさい」と言うと踵を返そうとした。そこに「待ってつかあさい、河村兵曹~」とひとりの水兵長が走ってきた。手には何か持っている。

「おお、大村水長ね。いったい何事じゃ」

河村兵曹が立ち止まって聞くと大村水長は手にしたものを兵曹に出して、

「副長が、『海きゃん』の皆さんに着けてもろうてくれいうて。これがないとどこのだれかわからんじゃろ言うてました」

と言った。見れば赤い文字で<海きやん取材班>と書かれた腕章である。河村兵曹は「ほう~、考えたねえ。ほうじゃのう、確かにこれがないとどこの誰だかようわからん。さっきみとうにぶんなぐられても気の毒じゃけえね」と言ってそれを受け取ると一行に一枚ずつ配った。

大村水長は「え?誰かぶんなぐられたんですか?誰が誰に?」と興味しんしん。河村兵曹は「まあまっとれ。・・・ほいじゃあこれをつけて、あとは勝手にしたらええよ。じゃが、やたらと入ったり写真を撮ってはいけん所もあるけえね、その辺はわきまえんさい。わからんことがあったらその辺に居る兵隊に聞いたらええ。ほいじゃ、うちはこれで」と言うと一礼して大村水長と一緒に去ってゆく。

一行がその姿をぼんやり見送っていると、去ってゆく大村水長が「グハハハハ!内田水長に!?」と大笑いし、河村兵曹が「なあ、面白いじゃろ!」という声がそのまんま伝わってきた。

武田水兵長が悔しげに「うう、人のことを話のネタにしやがって」とうめいたが、袴田兵曹は「そうは言うが・・・武田水長、我々だって同じようなもんじゃないか。おお、これで取材される側の気持ちもわかってよかったじゃない?武田、このことさっそく記事にしろ!」と半ば命令し、武田水兵長は悔しげな表情のまま、ノートを取り出し書きつけはじめる。

それを見ながら殘間中尉はふうっと息をついて額の汗を右手の甲で拭った。そして、

「武田さんがそれを書いたらさっそくどこかで取材を始めなきゃね。・・・どこからがいいだろうか」

と考える。筑紫少尉もうーん、と首をひねってから

「下のに閉鎖的なところは怖ろしげな人が多そうだから上の開放的な部分を中心に取材しませんか?下の方はここに慣れてからでいいでしょう。この艦の人たちの気性がわからないと取材も難しいですからね」

と言った。確かに、とこれには皆が激しく同意。もうさっきのようにぶんなぐられるのでは体がいくつあっても足りないというのが『海きゃん』一行の見解である。が、あの程度の鉄拳など、艦体勤務の将兵嬢たちには朝飯前のことなのだが、兵学校や海兵団での<修正>くらいしか経験のない彼女らにはすさまじい驚きのようである。

武田水長がようやっと、先程の痛い経験の要旨を書き終え「これは後できちんと書きます」と言ったところで筑紫少尉が「じゃあ、どこから取材をするか。ここでゆっくり決めようじゃないか」と言って皆は横一列に並んだ状態でしゃがむと主砲塔に寄りかかった――

と、皆の口から「ギャアア―――!」という叫びが噴出。

主砲塔の中にいた兵が何事かとあわてて飛んできた。「どうしたんじゃ!」という声に一行は涙目になりつつ「・・・熱い。ここに座って寄りかかったらものすごく熱い」と言ってその場を跳ねながら悶絶している。

その騒ぎに主砲の上等兵曹が出てきてあきれたような馬鹿にしたような表情で一行を眺めまわすと、

「あんたら見かけん顔じゃな。・・・鋼鉄の壁によっかかったらこの日差しじゃ、熱いんはあたりまえじゃ。あんたらはあれか、北辺艦隊の勤務じゃった連中か?それにしても寄りかかって休むとはどういう了見じゃ?あんたら本物の海軍軍人か?」

と説教を始めた。一行の中に中尉や少尉がいるのも気がつかないようで厳しい言葉がポンポン出てくる。そして、

「いったいあんたらはどこの分隊か?こんなええ加減な分隊員がおる分隊なんぞうちは聞いたことがないがねえ。よっぽど腑抜けた少尉か中尉が上司なんじゃろ!そいつの名前教えたらんかい!」

と言って恐ろしい顔つきで腕を組んで脅す。皆の後ろに隠れかけた殘間中尉が、「指揮官先頭でしょっ!」と袴田兵曹と小林兵曹に押し出され仕方なく、

「あの・・・私が一応そのあの・・・分隊長みたいな役目の殘間中尉なんですが」

とおずおずと声をかける。ああん!?と上等兵曹は殘間中尉を見た。襟章にはまごうかたなき中尉の階級章がついている。そしてその左の袖には『海きやん取材班』の文字が。

「ほう~」と上等兵曹が感心したように声をあげた。そして、傍らの主砲の水兵嬢をつつくと「海きゃんのか!おい、しっとるか貴様。俺聞いたんじゃがこいつら全く艦隊勤務をしたことがないんじゃと。じゃけえうちらみとうなもんとはちいと違うんじゃ」と言った。ちいと違う、という言葉に小林兵曹が小声で「あったり前だよね。そん所そこらの水兵や下士官とは知性が違う」と言って筑紫少尉は

「そうだそうだ。体力だけの兵隊とは違うんだよね~」と言ってこっそり笑った。

が、主砲の上等兵曹は

「あのな、ようするに艦隊勤務や陸戦部隊じゃ使うに使えん腰ぬけどもじゃけえ『海きゃん』編集部でつこうてやっとるらしいで?『海きゃん』自体は面白うてええ雑誌なのに、こんな連中がおったら編集長は大ごとじゃなあ」

というと兵とともに大爆笑した。殘間中尉以下はプライドをいたく傷つけられてさすがに悲しくなった。殘間中尉がズイッと前に出ると上等兵曹と対峙するような形になった。上等兵曹は肩をいからせて殘間中尉と正面から向き合うと、

「おお!? やるってえのか、中尉さんよ」

と言って艦内帽をあみだにかぶりなおす。武田水兵長が後ろから「やれ。やっちゃえ殘間中尉、あんなやつに負けないで」と囁く。

と。

殘間中尉はいきなりその場に土下座すると

「申し訳ありません!あなたのおっしゃる通りです、我々は使いようがないからこの仕事をしておりますっ!」

と大声を出した。へ!?と驚いた顔の主砲の上等兵曹を見て、三谷兵曹が(殘間中尉の捨て身の攻撃だな。自分を捨てて相手を持ち上げる、そこに戦術がある!これで相手は『悪かった、そこまで言わなくてもあなた方は素晴らしい仕事をしてるじゃないか』とかいうんだよね。さすが殘間中尉、伊達に何年もこの仕事をしてはいないよ)と感心していた。

が。

上等兵曹は次の瞬間顔を真っ赤にして怒りだした。土下座している殘間中尉を引き起こすと、

「あんたにはプライドってぇもんがないんか!?傷ついたような顔しよっておきながらその逆、自分を貶めて恥ずかしゅうないんか!俺が言うことが嘘なら嘘、ほんとならほんとで反撃してくるんが本物の軍人じゃろうが!帝国海軍がほこる『海軍きゃんきゃん』の取材班ならもっと誇りを持てえ!」

と怒鳴って殘間中尉をその場にたたきつけた。痛いよう、と殘間中尉は泣き声をあげたが写野兵曹は(あ~あ・・・馬鹿だなあ中尉も。あんなこと言ったら相手に余計馬鹿にされてあきれられるだけじゃないか。まったくもう)とあきれている。

上等兵曹は「もう泣くな!」と殘間中尉を立たせ「艦隊勤務があろうが無かろうが自分たちがその仕事が好きでやってるなら何を言われても動じないくらいの気構えを示せ! 妙な顔してると付け込まれるで」と言うと、少しの間考えて

「ほうじゃ、ほんならまず機銃の取材をしたらええで。機銃の指揮官に紹介したるわ」

というと一行を引っ張って機銃の平野少尉のところへと向かった。

 

「平野少尉。主砲の真坂兵曹であります!」

主砲の真坂上等兵曹は露天の三連装機銃座にいた平野少尉を見つけ駆け寄った。平野少尉は機銃座で増添兵曹と長妻兵曹とともに何やら談笑中であったが、「お!どうしたね真坂兵曹」と言って機銃座を出て来た。

真坂兵曹がこれこれこうだ、と説明すると平野少尉の顔が歓喜に輝いた。

そして「ようこそ25ミリ三連装機銃座へ!」と言うと『海きゃん』一行を増添・長妻のいる機銃座の方へ導いた――

   (次回に続きます)

 

          ・・・・・・・・・・・・・・

かわいそうな「海きゃん」取材班・・・でもくじけるな、きっといいことがあるぞ!

というわけで三連装機銃に来た一行ですが、さあどうなる!?
大和の主砲発射音というものを見つけました。
主砲の発射時の衝撃すさまじく乗員は発射を知らせるブザー音とともに退避するんだそうです。・・・でないと怖いことになるとか・・・ゾーッ!



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『海きゃん』一行はまず、海水にぬれた体を洗うために士官浴室に案内された――

 

そこでぬれた軍服を脱ぐと副長従兵がそれらすべてを持って洗濯室に行き、きれいに洗濯してくれた。殘間中尉以下は風呂からあがってそれを知り大感激。「やっぱり大和は違うねえ」なんて世辞を言う。

まあもっとも駆逐艦や巡洋艦ではこの連中はただの<お荷物>でしかなかったからこんな素敵な待遇をされたら舞い上がるのも致し方ないかもしれない。

そして皆は提供された防暑服に着替え副長従兵の河村兵曹に伴われ、「こちらが皆さんの居住区です」としばらくの仮の宿となる下甲板の兵員室に案内された。

「わあ、ベッドがある!」

と素っ頓狂な声をあげたのは筑紫少尉。殘間中尉の肩をばしばし叩いて、「殘間中尉、これはすごい。すごいですよ、普通兵員にベッドは与えられないっていうのに。さすが『大和』ですよね」と大騒ぎ。殘間中尉は痛い痛いと言いながらも副長従兵の河村兵曹に「『大和』はいいですねえ。皆にベッドなんて。聞いた話多くの艦はハンモックだと言うじゃないですか」と言った。河村兵曹は、「それでも新任の少尉たちはハンモックで寝ています。いろいろ彼女らには教育的見地からそうしてるらしいですよ。まあ、未来の提督はそういうところから育てないといけん、言うことでしょうな」

と言って右手の人さし指で頬をそっと引っ掻いた。そしてまだ感心して居住区を眺めまわしている一行に「さあ、では行きましょうか。<艦内旅行>」と言うといきなり歩き出したのだった。

 

缶室や機械室ばかりの船倉。機械のうなりがなんだか『海きゃん』取材班には気味が悪い。時折行きあう兵員が珍しそうに一行を見て通る。そのたびに写野兵曹が追いかけてカメラに彼女たちを収める。武田水兵長や三谷兵曹が軽くインタビュー。それを見て河村兵曹が「仕事熱心だねえ。さすが『海きゃん』編集部」と感心してうなる。

その上に上がるとまた缶室やら主機械室が居並んでいる。

「機械室が多いですねえ。さすが弩級の戦艦だけあります」

小林兵曹が感激して言うと河村兵曹が「弩級、じゃない。超弩級じゃ」と訂正した。すみません、と小林兵曹が誤ると、河村兵曹は嬉しげに肩を揺すって笑った。

そこへ前方から機関科の松本兵曹長がやってきた。

河村兵曹はさっと礼をし、皆も倣う。松本兵曹長はその中に中尉や少尉がいるのであわてて敬礼した。

「この方たちはどなただ?」と副長従兵にそっと尋ねた兵曹長に従兵は、

「『海軍きゃんきゃん』取材班の方々です。大宮島(グアム)を取材後わざわざトレーラーにまで取材に来て下さったのであります」

と答えた。松本兵曹長は「ほう!『海きゃん』のね?えらい遠くまでお疲れでしたね。まあ、ゆっくりと『大和』艦内を取材してください。・・・ここは帝国海軍一の秘密の花園ですけえ、話のタネはいくらでもころがっとる思いますけえの」と意味深長なことを言って、そばにいた袴田兵曹の背中をドン!とどやすと大笑いして去っていった。

「・・・秘密の花園、ですかあ」

殘間中尉が言うと河村兵曹はにやりと笑って「まあ、女だらけですけえの。いろいろありますわ。そのうちお分かりになる思いますよ」というと先を急ぐ。

武田水兵長はその言葉を聞いた時点でもう何か顔を上気させている。<女だらけ><秘密の花園>という言葉で何かを連想したのだろうか。

武田水兵長は(女だらけで秘密の花園とくれば、きっとあちこちで○○とか×××とかあるのかもしれない!うわあ~、これは取材のやりがいがあるってもんよ!)と思っている。

さらにもう一つ上の甲板に上がる――

皆は<秘密の花園>がどこにあるのか興味しんしんで河村兵曹の後に列を作ってあるく。しかし、さっきと変らないような機械室や缶室ばかり・・・と、ある大きなドアの前に水兵長が立っているのを見かけた。手には木銃のようなものを持っていて見張り役のような感じである。もしかしてここが秘密の花園の入り口?と思った武田水兵長は列を離れそっと近づいて行った。

と。

見張り役と思しき水兵長がいきなり「何者じゃ、貴様!」というなり武田水兵長の顔面に鉄拳を見舞った。派手にぶっ飛ぶ武田水兵長。わあ、と驚いた筑紫少尉や袴田兵曹たちが武田水兵長を抱き起こし、

「何すんですか、いきなり!」

と抗議の眼を向ける。しかしそれ以上に鉄拳を繰りだした内田水兵長の怒りはすさまじいもので、手にした木剣を皆の前に突き出すと

「いきなりはこっちのせりふじゃ!ここをどこじゃ思うとるんじゃ、ここは弾薬庫じゃ。俺はここの番をおおせつかっとる、やたらと入りこんで悪さをしようとする貴様らみとうな連中を捕まえて禁錮室にたたき込むためおるんじゃ!」

とそれはでかい声を放った。

一行は「だ、弾薬庫!」と真っ青になった。皆から背中を押されて殘間中尉が

「も、もうしわけない。私たちは取材で『大和』に来た『海軍きゃんきゃん』の者だ。まったく艦内のことを知らぬもので失礼した。今回だけは見逃してほしい、悪さをしようとしてきたのではないのだから」

と弁解を始める。それを凄味のある目つきで見ている内田水兵長は「何言うとる、嘘言うたって調べればわかるんじゃけえの!」と怒鳴る。
皆は河村兵曹に助けを求めようとしたが肝心の河村兵曹は先に行ってしまったか姿がない。

するとそこへ「おーい、皆あ。どこにおるんね?」と河村兵曹の間延びした声が聞こえ、やがて兵曹が「まだそんなとこに居ったんか。うちはもう先に行ってしもうてじゃ」と笑いながら戻ってきた。

そしてその場の緊張した場面を見て「ああ、あんたら内田水兵長の怒りを買うたんじゃね」と言うとまた笑った。わけのわからんと言った表情の一行に、兵曹は

「内田水兵長はこの弾薬庫の見張り役でなあ、この仕事に命かけとってじゃ。鼠一匹ゴキブリ一匹ここを通さんで、そりゃあ大したもんじゃわ。あんたら始めてみる顔じゃけえ内田水兵長は怪しい、思うたんじゃね。

まあ水長もちいと融通効かんとこがあるけえな、まあそれも任務に忠実言うことの証じゃけえ堪忍してやってくれんか?こんな<糞パッキン>みとうな女じゃがよろしゅうな」と説明してやった。

内田水兵長はそんな説明中もあたりを睥睨して木銃を握っている。

「はあ!?<糞パッキン>ですか」という写野兵曹に河村兵曹は「ほうじゃ、糞パッキン言うあだ名がついとるんは内田水長だけじゃのうてこの『大和』には何人かおるで。ほいでもみんなきっちりしとってなかなかええ連中ばっかじゃけえ、あまり先入観だけで見たらいけんで」と注意した。

わかりました、と殘間中尉は答え(やれやれ、『大和』は大きな艦だがそれだけに艦内の人間も大きな変人がいるのだな。これは気をつけないと)と思っている。

が、武田水兵長は(ふーん・・・秘密の花園を暴かれんようにその、なんだ、<糞パッキン>とかいう人も多数配置して目くらまししてるのだろうか。う~ん、謎の多い艦だなあ。でも取材のし甲斐があるね!)と内心浮き浮きしている。

河村兵曹は、そんな心のうちも知らず「さあ、今度はもっと上じゃけえ。みなさんの好きな烹炊所も見せてあげますけえね、がんばれ!」と励ます。

 

一行が<艦内旅行>を始めてから、もうすでに2時間半が過ぎていた――

   (次回に続きます)

 

         ・・・・・・・・・・・・・・・

禁断の?『大和』艦内を見て歩き出した『海きゃん』取材班一行ですが早くもおかしな目に逢い始めました。

この先取材をうまくできるのでしょうか。私は心配です・・・

水兵長。兵の中での最高階級水兵長 水兵服   、水兵服とももうじきお別れ、いよいよ下士官任官間近だ!(画像お借りしました)



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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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