女だらけの戦艦大和・総員配置良し!

女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?

「女だらけの戦艦大和」・長妻兵曹涙する3<解決編>

長妻兵曹と懐かしげに握手を交わす男性の顔を見た見張兵曹は(ああ、あの人じゃ!)とハッと気がついた――

 

長妻兵曹には、男好きのほかにもう一つ大きな癖があった。それは、椰子の実を見るとどうにも矢も楯もたまらなくなって木に登り、椰子の実を落とすという癖である。

実際、ハワイ奪還作戦の後のワイキキでの休暇では、小泉兵曹とワイキキの浜を散策中どうにもたまらなくなって服を脱ぎ捨てて椰子の木に突進。そのままふんどし一つで木に登り椰子の実を落とし、周囲の将兵の喝さいを浴びなおかつ遠くでそれを見ていた山本いそ聯合艦隊司令長官をも感動感激させた人物である。

長妻兵曹はここトレーラーで、椰子の実を落として売ることを生業としているこの男性と知り合い、その相棒のお猿と良い競争相手になっている。

と言っても長妻兵曹が一方的に強くて勝ち続けるため男性もお猿も長妻兵曹を怖がって避けているという噂もあったが。

ともあれ。

長妻兵曹は男性の手をやっと離し、

「長いこと日本に帰っていたからご無沙汰してました。おじさん元気でした?」

と言って笑った。男性も「元気ダッタヨ。ながつまサンモ、元気デナニヨリネ」と言って海軍式の敬礼をして笑った。がなんとなくその笑顔に力がないのを、長妻兵曹も傍観していた見張兵曹も感じていた。

長妻兵曹は敬礼を返し、あたりを見ると

「ほいで、おじさん。おじさんの相棒のタロはどこ行ったんね?」

とたずねた。いつもこの男性の肩に乗って離れないあのお猿が長妻兵曹にはとても懐かしい。椰子の実落としの勝負の時はお互いに闘志をむき出しているが勝負が終わればいい友達である。昨年、名前がまだないというあのお猿に兵曹は「タロ」という名をつけて内地へ向かったのだった。

と。

長妻兵曹は、男性の顔がくしゃくしゃに歪んだのを見た。

見張兵曹・小泉兵曹・増添兵曹もそれを見てはっと息をのんだ。

男性はくしゃくしゃにゆがめたほほに、涙を流した。嗚咽が漏れた。長妻兵曹は男性の両肩に手を置くと軽く男性を揺すった、そして

「おじさん、どうしたんじゃ?どうして泣くんね?」

とその顔を覗き込むようにして言った。すると男性は、涙をぬぐいながら

「タロ。わたしのダイジナおさる。・・シンジャッタ。ながつまサンの帰り、ずっとマッテタ。でもタロ、ビョウキニナッテ。ながつまサンにモラッタ大きな椰子の実大事ニカカエタママ・・・シンジャッタ・・・」

とやっとこさ言った。

「そんな・・・」

長妻兵曹の両手が、男性の肩からするりと落ちた。長妻兵曹は呆然として立ち尽くしている。

そして、

「タロが。タロが死んでしもうた・・・タロ、なんでうちが戻ってくるまでまっとらんかったんじゃ。・・・タロ、うちはお前にあと4勝せんと20勝にならんというんに。タロ、タロ・・・嘘じゃろう、嘘じゃいうてくれえ・・・」

と叫ぶように言うなりその場にくずおれると泣き出した。

軍帽がその場に落ちた。それでも構わず兵曹は悲痛な泣き声をあげる。二種軍装の袖に砂がつく。男性もそれを見てまた悲しみが込み上げて来たか、声をあげて泣きじゃくる。

見張兵曹はいたたまれなくなった。

そっと膝を砂につけて、長妻兵曹の背に手を置いた。そして「長妻兵曹・・・」と呼びかけたが自分も声にならない。見張兵曹もあのお猿を知っていたからたまらないものがあった。

長妻兵曹の背に置いた見張兵曹の手に、長妻の悲しみがそくそくと伝わってくる。

小泉兵曹・増添兵曹は言葉もなく少し遠巻きにして黙って見ている。

辛そうな泣き声をあげる長妻兵曹、その兵曹のそばに男性は涙を拭き拭き膝をつくとその手を長妻兵曹の揺れる肩に掛けた。

そしてそっと兵曹を引き起こした、長妻兵曹の涙に濡れた瞳を覗き込むと

「ナガツマサン。タロはあなたにカワイガッテもらって幸せデシタ。・・・タロはキット、天国であなたやアナタノお友達のコトヲ見守ッテルネ。・・・もう、ナクノハヤメマショウ。タロは、タノシイコト好きダッタネ。ダカラ、ながつまサン。タロのコト、笑ってオモイダシテヤッテネ・・・。タロハ、いつもワタシタチのソバニイルカラ・・・」

と言い聞かせるようにした。長妻兵曹は涙を軍曹の袖で拭きながらうんうん、とうなずいた。そして、軍服の胸ポケットから手帳を出した。

それに挟めてあった写真が二枚、そのうちの一枚を男性に手渡した。見張兵曹がそっと見るといつだったか長妻兵曹がこの男性とタロ(当時はまだ名無しだったが)に勝負を挑んだ際の記念写真――裸の女海軍数名と日章旗に挟まれるようにして、ちょっと複雑な表情な男性とタロがいる――である。

男性はそれを見つめ、やがてその顔に嬉しそうな微笑みが浮かんだ。長妻兵曹は「それ、もうずっと前撮ったんだけど渡し損ねて・・・いまになってしもうてごめんねおじさん」と言うと男性は

「アリガト、ながつまさん。これワタシノ宝物ニシマス。アリガトネ。・・・タロノコト、ずっとワスレナイデヤッテネ。タロハ、きっと天国でヨロコンデルヨ、イイヒトニ会えてヨカッタッテ」

と言って微笑んだ。

長妻兵曹はやっと落ち着いたのか、それでもひくひくしながら砂の上に座りなおした。男性もその横に座った。見張兵曹他もその少し後ろに座る。

長妻兵曹は海を見つめながら、

「ほうじゃおじさん。椰子の実取りはこれからどがいするんじゃね?」

と聞いてみた。男性はもらった写真を見ながら、

「マダわかりません。デモそのうちタロのカワリヲ見つけないとイケマセンネ」

と言った。長妻兵曹はそっとうなずいて

「ほうじゃな。せっかくのタロの椰子の実落としの技これで絶やしたらタロも悲しもう。落ち着いたらタロの後釜を探したらええよ」

と言った。男性は力強くうなずいて、そして長妻兵曹とがっちり握手をしたのだった。

 

そのあとはしばらく気の抜けたような感じの否めない長妻兵曹であったが、次の上陸の際例の男性から、

「ナガツマサン!タロの親戚ノオサルをモラッタネ!だからこれがタロの後釜。コウケイシャです!!ナガツマサン、また名前ツケテチョーダイネエ!」

と言われ、タロの親せき筋という猿に「ジロ」と名をつけて来た。

その晩、巡検後に露天甲板で長妻兵曹とあった見張兵曹は

「ほう、タロの親戚のお猿ですかあ。どがいなお猿ですか」

と聞いてみた。いつの間にか、増添兵曹も小泉兵曹、石場兵曹も寄ってきている。

見張兵曹に長妻兵曹は、手帳からあの写真を出して眺めながら

「それがのう、タロにも増して気の弱いオサルじゃ。・・・さあ!うちはこれからジロをタロみとうに立派な椰子の実落としザルに育てんならんけえね。ほいでうちとの椰子の実落とし競争を一から始めるんじゃ!忙しゅうなるでー!」

と張り切って言って・・・

見張兵曹は(良かった。これで今まで通りの長妻兵曹じゃ)とホッとしたのだった。

 

写真の「タロ」がそんな皆にほほ笑んだような気がした――

 

             ・・・・・・・・・・・・・・・

 

椰子の実落としは長妻兵曹の趣味です。

そのライバルが死んでしまったお猿さんでした。兵曹や男性の心はどれだけ悲しかったか。

でも後釜の「ジロ」ができました。タロの分まで頑張れ、ジロ!!
椰子の実落としをするお猿さんの映像を見つけました!




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「女だらけの戦艦大和」。長妻兵曹涙する2

長妻兵曹、副砲の陰でオトメチャンを抱きしめて「・・・したい」とうめいた――

 

しばらくオトメチャンを抱いていた長妻兵曹だったがやがてその腕を解くと「すまんかったな、オトメチャン」というと歩み去っていった。

見張兵曹はその後ろ姿を見送っていたが(さっき小泉たちがなんぞ話しとったんは長妻兵曹のことじゃったんじゃな。でも・・・なんかいつもみとうなスケベな感じとはちいとちごうたが?)と思いつつ、艦橋の後ろのラッタルをあがってゆく。

 

長妻兵曹の様子がおかしいというのはあっという間に艦内に広がって行った。

機銃分隊の平野少尉が心配して折に触れて「長妻兵曹、ちいと休まんか?」とか「これ食ってみんか?」などと声をかけるがなかなか兵曹の顔は晴れない。

「どうしたもんだかなあ~」

平野少尉は頭を抱えている。その少尉にいつの間に来たか、野村副長が後ろから

「まあ心配しなさんな。そのうちきっと解決するよ」

と言ってその肩をそっと叩いて行った。少尉はあわてて敬礼した、その少尉にちょっと振り返って副長は微笑んだ。

 

その長妻兵曹のいらいら状態が晴れる日が来た。

「入湯上陸」の日である。その日朝から長妻兵曹は気分が高揚していた。同じ日に上陸の仲間たちは、

「ほれ見い、長妻兵曹もう矢も盾もたまらんらしいで。こりゃあ、陸に上がったら一目散に慰安所だな」

と言って長妻兵曹から目が離せないようだ。

今日は見張兵曹と小泉兵曹も入湯上陸である。小泉は「俺、長妻より先に慰安所に入るけえ見とけ。あいつの目当ての男、先取りじゃ」と意地悪を言う。見張兵曹はちょっと眉を寄せると、

「小泉。あんまり意地悪せんほうがええんと違うかね?あげえに長妻さんは楽しみにしとってじゃけえ、その楽しみに水さしたらいけんで!」

と小泉を諌めた。小泉兵曹はむっとした顔つきになると、見張兵曹の胸を片手のひらでドンと突いた。見張兵曹はよろっとその場にたたらを踏んだ。

「なにするんね、小泉は!」

さすがに腹を立てた見張兵曹に小泉兵曹は両腕を組むと、

「貴様は男の経験もないくせに、利いた風な口を聞くな!長妻はなあ、男が欲しゅうていらいらしとってじゃ。そがいなん、俺たちは見たらわかる!ええか、ほんなら今日これから上陸したらあいつの後を追っかけてゆくで?あいつはいの一番に慰安所に行くけえ、みとれよ!」

と言って見張兵曹を睨みつけた。

見張兵曹は黙って下を向いた。そこへ麻生分隊士が来て、「小泉なんで貴様は見張兵曹に乱暴するんじゃ!ええ加減にせえよ!」と怒鳴った。小泉兵曹は渋々、「すまん」と言いその場を去り、麻生分隊士は見張兵曹をそっと抱きしめて慰める。

その様子を、トップのトップから見下ろしていたハッシー・デ・ラ・マツコは傍らのトメキチに、

「あの小泉って女、意外とあほね」

と囁く。トメキチは「マツコサンは、長妻さんの考えてることわかるの?」と聞く。マツコは翼を少し広げると、「はっきりは分からないわよアンタ。あたしだって超能力者じゃないもの。でもねえ、長妻とかいう女が男に会いたくてうずうずしてるのとは・・・違うね!」と言い切ったのだった。

トメキチはマツコの顔をしげしげ見つめ「マツコサン・・・かっこいい」と言い、マツコは両方の翼を大きく広げて得意になったのだった。

 

そんなこともあったが、この日の上陸員がそれぞれランチに乗ってトレーラー・水島に上がった。それぞれお目当ての場所に散ってゆく。二艇目のランチに、長妻兵曹・小泉兵曹・見張兵曹や増添兵曹が乗っている。長妻兵曹は誰も目に入らないようで水島の一点を見つめている。

小泉兵曹がその様子をそっと指差して、

「見い、あれは慰安所の方角を見とってじゃ。降りたらいっさんに走りよるで。あとを追うけえ、しっかり走りや」

と言った。見張兵曹ははいはい、と生返事をして久しぶりのトレーラーの海を見ている・・・

 

皆はランチを降り、衛兵所を敬礼しつつ通過。

と、長妻兵曹が走り出した。小泉兵曹が見張兵曹や増添兵曹をつついて「ほら、走るで!」と言って走り出し、長妻兵曹のあとを追い始めた。長妻兵曹は後も見ないで走り続ける。

小泉兵曹が「ほれ見い、この道を行くならやっぱり慰安所じゃ!」と言って皆を振り返ったその時、見張兵曹が「小泉、曲がったで!」と行く先を指した。

見れば長妻兵曹は慰安所への道の前の角を右に曲がった。

「ありゃ。こっちは慰安所じゃないな…長妻さんどこへ行くつもりなんじゃろう?」

小泉兵曹は首をかしげる。

ともあれ皆は息を切らしながら長妻兵曹のあとを追う。

長妻兵曹は海岸へ出た――

 

そこで長妻兵曹はきょろきょろとあちこちを見回した。

誰かか、何かを探してるようだ。増添兵曹が「なにをしとるんじゃ。あいつ、ここで誰かと待ち合わせかのう」と言って「ああ、たいぎい」とその場にしゃがみ込む。

と。

長妻兵曹は「おーい!」と手をあげて振ると走り出した。皆はそのあとを追う。長妻兵曹は海を右に見ながら浜辺を走る。

その先に一人の男性が立っているのが見える。

長妻兵曹はその男性のそばに到着、ほかの連中も長妻兵曹の後ろに立った。長妻兵曹はその男性に右手を差し伸べた。男性はその手を両手で包みこんだ。長妻兵曹は「久しぶりですね」と言って、そして二人は笑い合った。男性は30代後半くらいだろうか陽に焼けた顔が人懐こい。

その男性の顔を見ていた見張兵曹はハッと思いだした。

(この男の人・・・!)

    (次回に続きます)

 

            ・・・・・・・・・・・・・・

 

?の男性登場です!

オトメチャンはこの男性に見覚えがあるようですが・・・次回をお楽しみに!

三連装機銃だ
三連装機銃だ!!(画像WIKIから)



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「女だらけの戦艦大和」・長妻兵曹涙する1

「女だらけの戦艦大和」他艦艇はトレーラー基地に帰って来た――

 

久しぶりのトレーラーの風景に、「女だらけの大和」も「矢矧」も駆逐艦数艇の乗組員たちはほっとしたような笑みを浮かべている。

「長いこと留守にしよったが、ちいとも変わらんのう。いつもの通りじゃな」

『大和』機銃分隊の長妻兵曹はそう言って常夏の日差しに目を細めた。そのそばに増添兵曹が立って、両手で日差しを遮りながら、

「ほうじゃのう。ここはいつも平和でええのう。まあ『武蔵』がおってじゃけえ、敵も来られんじゃろう」

と言って『武蔵』を探した。が、『武蔵』は昨日から外海に出て訓練中である。

長妻兵曹は三連装機銃の一つの砲身を撫でながら、

「ああ・・・○○○しとうていけんわ」

と唸った。増添兵曹は長妻兵曹の顔をまじまじと見つめると、苦笑して「長妻さんよ、あんたもう(都合により伏字)のこと考えとってかね?」と言って艦内帽を取ると綺麗に生えそろった前髪をそっと撫でた。

そして、

もええが、トレーラーに帰って来たばかりじゃ。明日からまた訓練じゃ。と○○○しとるひまなんぞないで?しばらくはお預けじゃ」

と言って艦内帽をかぶりなおす。

すると長妻兵曹は珍しく食ってかかった、「ちがうわ、何でもうちが『○○○○』言うたらと○○することじゃ思うたらえらい間違いじゃわ。まったく増添兵曹はすぐにうちが○○したがる女じゃ思うてる!ええ加減にせんね、うちはそがいにはすっぱな女と違うで!」。

増添兵曹はこれには驚いた。

そして「すまんのう・・・別に貴様が○○○じゃ、思うて言うたんじゃない。・・・その・・・普段が普段じゃけえ言うただけじゃ」と終いの方は声も小さくなってしまった。

長妻兵曹は、鼻息荒くふーっと吐き出してから

「うちはな、勝利せんとならんのじゃ」

と言った。増添兵曹が「は!? 勝利・・・勝利てどういうことね?」というと長妻兵曹は怖い目で増添兵曹をにらんでその事業服の襟をつかんだ。

「おおう!」と増添兵曹はそのまま一歩、二歩とあとじさった。長妻兵曹は増添の襟をつかんだまま、

「うちが勝つ、言うたらなあ!あのことに決まっとろうが!おめえは俺と何年つきおうとるんじゃ!おめえは俺のいったいどこを見とるんじゃ!その目え、でっかく開いてよううちを見とかんか!あほ!!」

と怒鳴ると襟をつかんだ手を振り切るようにして離すと「ふん!」と言ってその場を離れていった。

ドスドスと足音が荒い。

増添兵曹は、ほどけてしまった襟もとのひもを結びなおしながら「・・・なんじゃ。どがいしたいうんじゃ。に勝つ、いうことじゃろうか?どがいしたらに勝ったことになるんじゃろう?」と不審げにつぶやいた。

 

長妻兵曹は(○○○○。・・・ああもううちは○○を○○とうていけん。はあ我慢の限界じゃ)とイライラしながら甲板を歩いてゆく。

甲板の熱さが、靴の裏を通して伝わってくる。これこそがトレーラーの熱さでトレーラーにいるという実感を持たせるもの。

長妻兵曹は前甲板方向へと歩いてゆく。

第一主砲塔のそばに歩いてゆくとどこからかドタドタと音がしてくる。ふっと主砲塔を見上げた長妻兵曹の目に、何かを見て手を叩いて笑う野村副長と森上参謀長の姿がちらりと見えた。

(何しよるんじゃ、あの連中)

と思った兵曹はそっと砲塔の上へ続くラッタルを登った。そっと首を伸ばしてみると艦長が裸足で焼けた砲塔の上ではね回る梨賀艦長と、それを見ては大笑いする副長・参謀長の姿があった。

長妻兵曹は(また再発しよったんか、艦長の水虫もしつこいのう)と思わず噴き出しそうになってあわててそこを降りた。

梨賀艦長の水虫は帝国海軍、聯合艦隊でも知らぬものがないくらい有名で以前見張兵曹の発案でこの焼けた砲塔の上で裸足で歩いてから一旦治まったのだ。

だがまたこのところかゆみが出て、艦長はここで<治療>していたらしい。

(ばかばかしい)

と長妻兵曹はため息をついて目をトレーラー・水島にむけた。緑の濃い島である。

(はよう、○○○したいわあ。うちはアレをせんとどうもいけんわ。やらんと我慢できん体になってしもうたようじゃ。えらいことじゃ、はよう勝ってこれを鎮めんことにはどこにもゆけんで)

長妻兵曹は深いため息をついた。

だが、上陸できる日は、まだ先のようである。長妻兵曹はさらに深いため息をつくと、もう一度自分の配置の機銃座に向かって歩いた。

 

長妻兵曹の機嫌がよくないことはその日のうちにあっという間に仲のいい連中の間に広がって行った。

巡検後のタバコ盆出せ、の号令の後小泉兵曹がそれを増添兵曹から聞いて「ほう!あの長妻兵曹がねえ。よっぽどたまっとりんさるんじゃろか。ほいでも内地で頑張ったんじゃなかったかね?」と首をかしげた。

増添兵曹が「なあ、そうじゃろ?」と言って両腕を組んで考え込む。小泉兵曹が、

「まあ、さわらぬ神にたたりなしいうけえ、上陸して満足するまでほっとき。うっかり触ってやけどしたら詰まらんで」

と言って増添兵曹は「おう、わかった」と言って腕を解いた。そこへ「小泉兵曹、何の話しとってじゃね」とオトメチャンがやってきた。これから当直で艦橋に詰めるらしい。

そのオトメチャンを小泉兵曹は半ば馬鹿にしたような顔で見て、

「子供には関係ねえ話じゃ。あっち行っとれ!」

と言って追い払うしぐさをした。オトメチャンは子供と言われて少しむくれて

「ほうですか。ほいじゃあうちは当直があるけえね。さいなら」

と言ってその場を離れた。増添兵曹は「ああ、オトメチャン」とあわてたが小泉兵曹は「ええんよ、こげえな話になんも知らん奴が割り込んできよったらややこしゅうなるでね」と意に介さない。

 

オトメチャンはもう、そんなことは忘れて艦橋へのラッタルへ向かって歩いている。

ふと暗闇に何か動いた気がして闇を透かして見ると、副砲塔の陰に誰かがいる。よくよく見れば長妻兵曹ではないか。

「長妻兵曹?どうしたんですかこげえなところで」

オトメチャンが問うと、長妻兵曹はオトメチャンの前に現れた。

何か思いつめたような顔の長妻兵曹にオトメチャンはけげんな顔である。すると、長妻兵曹はいきなりオトメチャンを抱きしめた。

そして長妻兵曹はオトメチャンを抱いたままその耳元に、

「○○○・・・したいんじゃ」

と囁いた。

オトメチャンは抱きしめられたまま動くことも出来ず、遠い星空を見つめている――

   (次回に続きます)

 

          ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

何があった、長妻兵曹!

長妻兵曹と言えば・・・・ですよねえ。その辺で何か欲求不満があるのでしょうか。一体彼女はどうしたというのでしょう。一体彼女は何を考えているのでしょう。今のままでは分からないぞ!?

そしてオトメチャンに何を囁いたのか、抱きしめたことと関連があるのでしょうか??
海軍事業服
小さいですが彼らの着ているのが「事業服」です(画像お借りしました)。



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「女だらけの戦艦大和」・長妻兵曹涙する1

「女だらけの戦艦大和」他艦艇はトレーラー基地に帰って来た――

 

久しぶりのトレーラーの風景に、「女だらけの大和」も「矢矧」も駆逐艦数艇の乗組員たちはほっとしたような笑みを浮かべている。

「長いこと留守にしよったが、ちいとも変わらんのう。いつもの通りじゃな」

『大和』機銃分隊の長妻兵曹はそう言って常夏の日差しに目を細めた。そのそばに増添兵曹が立って、両手で日差しを遮りながら、

「ほうじゃのう。ここはいつも平和でええのう。まあ『武蔵』がおってじゃけえ、敵も来られんじゃろう」

と言って『武蔵』を探した。が、『武蔵』は昨日から外海に出て訓練中である。

長妻兵曹は三連装機銃の一つの砲身を撫でながら、

「ああ・・・○○○しとうていけんわ」

と唸った。増添兵曹は長妻兵曹の顔をまじまじと見つめると、苦笑して「長妻さんよ、あんたもう(都合により伏字)のこと考えとってかね?」と言って艦内帽を取ると綺麗に生えそろった前髪をそっと撫でた。

そして、

もええが、トレーラーに帰って来たばかりじゃ。明日からまた訓練じゃ。と○○○しとるひまなんぞないで?しばらくはお預けじゃ」

と言って艦内帽をかぶりなおす。

すると長妻兵曹は珍しく食ってかかった、「ちがうわ、何でもうちが『○○○○』言うたらと○○することじゃ思うたらえらい間違いじゃわ。まったく増添兵曹はすぐにうちが○○したがる女じゃ思うてる!ええ加減にせんね、うちはそがいにはすっぱな女と違うで!」。

増添兵曹はこれには驚いた。

そして「すまんのう・・・別に貴様が○○○じゃ、思うて言うたんじゃない。・・・その・・・普段が普段じゃけえ言うただけじゃ」と終いの方は声も小さくなってしまった。

長妻兵曹は、鼻息荒くふーっと吐き出してから

「うちはな、勝利せんとならんのじゃ」

と言った。増添兵曹が「は!? 勝利・・・勝利てどういうことね?」というと長妻兵曹は怖い目で増添兵曹をにらんでその事業服の襟をつかんだ。

「おおう!」と増添兵曹はそのまま一歩、二歩とあとじさった。長妻兵曹は増添の襟をつかんだまま、

「うちが勝つ、言うたらなあ!あのことに決まっとろうが!おめえは俺と何年つきおうとるんじゃ!おめえは俺のいったいどこを見とるんじゃ!その目え、でっかく開いてよううちを見とかんか!あほ!!」

と怒鳴ると襟をつかんだ手を振り切るようにして離すと「ふん!」と言ってその場を離れていった。

ドスドスと足音が荒い。

増添兵曹は、ほどけてしまった襟もとのひもを結びなおしながら「・・・なんじゃ。どがいしたいうんじゃ。に勝つ、いうことじゃろうか?どがいしたらに勝ったことになるんじゃろう?」と不審げにつぶやいた。

 

長妻兵曹は(○○○○。・・・ああもううちは○○を○○とうていけん。はあ我慢の限界じゃ)とイライラしながら甲板を歩いてゆく。

甲板の熱さが、靴の裏を通して伝わってくる。これこそがトレーラーの熱さでトレーラーにいるという実感を持たせるもの。

長妻兵曹は前甲板方向へと歩いてゆく。

第一主砲塔のそばに歩いてゆくとどこからかドタドタと音がしてくる。ふっと主砲塔を見上げた長妻兵曹の目に、何かを見て手を叩いて笑う野村副長と森上参謀長の姿がちらりと見えた。

(何しよるんじゃ、あの連中)

と思った兵曹はそっと砲塔の上へ続くラッタルを登った。そっと首を伸ばしてみると艦長が裸足で焼けた砲塔の上ではね回る梨賀艦長と、それを見ては大笑いする副長・参謀長の姿があった。

長妻兵曹は(また再発しよったんか、艦長の水虫もしつこいのう)と思わず噴き出しそうになってあわててそこを降りた。

梨賀艦長の水虫は帝国海軍、聯合艦隊でも知らぬものがないくらい有名で以前見張兵曹の発案でこの焼けた砲塔の上で裸足で歩いてから一旦治まったのだ。

だがまたこのところかゆみが出て、艦長はここで<治療>していたらしい。

(ばかばかしい)

と長妻兵曹はため息をついて目をトレーラー・水島にむけた。緑の濃い島である。

(はよう、○○○したいわあ。うちはアレをせんとどうもいけんわ。やらんと我慢できん体になってしもうたようじゃ。えらいことじゃ、はよう勝ってこれを鎮めんことにはどこにもゆけんで)

長妻兵曹は深いため息をついた。

だが、上陸できる日は、まだ先のようである。長妻兵曹はさらに深いため息をつくと、もう一度自分の配置の機銃座に向かって歩いた。

 

長妻兵曹の機嫌がよくないことはその日のうちにあっという間に仲のいい連中の間に広がって行った。

巡検後のタバコ盆出せ、の号令の後小泉兵曹がそれを増添兵曹から聞いて「ほう!あの長妻兵曹がねえ。よっぽどたまっとりんさるんじゃろか。ほいでも内地で頑張ったんじゃなかったかね?」と首をかしげた。

増添兵曹が「なあ、そうじゃろ?」と言って両腕を組んで考え込む。小泉兵曹が、

「まあ、さわらぬ神にたたりなしいうけえ、上陸して満足するまでほっとき。うっかり触ってやけどしたら詰まらんで」

と言って増添兵曹は「おう、わかった」と言って腕を解いた。そこへ「小泉兵曹、何の話しとってじゃね」とオトメチャンがやってきた。これから当直で艦橋に詰めるらしい。

そのオトメチャンを小泉兵曹は半ば馬鹿にしたような顔で見て、

「子供には関係ねえ話じゃ。あっち行っとれ!」

と言って追い払うしぐさをした。オトメチャンは子供と言われて少しむくれて

「ほうですか。ほいじゃあうちは当直があるけえね。さいなら」

と言ってその場を離れた。増添兵曹は「ああ、オトメチャン」とあわてたが小泉兵曹は「ええんよ、こげえな話になんも知らん奴が割り込んできよったらややこしゅうなるでね」と意に介さない。

 

オトメチャンはもう、そんなことは忘れて艦橋へのラッタルへ向かって歩いている。

ふと暗闇に何か動いた気がして闇を透かして見ると、副砲塔の陰に誰かがいる。よくよく見れば長妻兵曹ではないか。

「長妻兵曹?どうしたんですかこげえなところで」

オトメチャンが問うと、長妻兵曹はオトメチャンの前に現れた。

何か思いつめたような顔の長妻兵曹にオトメチャンはけげんな顔である。すると、長妻兵曹はいきなりオトメチャンを抱きしめた。

そして長妻兵曹はオトメチャンを抱いたままその耳元に、

「○○○・・・したいんじゃ」

と囁いた。

オトメチャンは抱きしめられたまま動くことも出来ず、遠い星空を見つめている――

   (次回に続きます)

 

          ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

何があった、長妻兵曹!

長妻兵曹と言えば・・・・ですよねえ。その辺で何か欲求不満があるのでしょうか。一体彼女はどうしたというのでしょう。一体彼女は何を考えているのでしょう。今のままでは分からないぞ!?

そしてオトメチャンに何を囁いたのか、抱きしめたことと関連があるのでしょうか??
海軍事業服
小さいですが彼らの着ているのが「事業服」です(画像お借りしました)。



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日々雑感・懐かしの歌たち~中学時代

この年になって時々考える――というより思い出すのはわが中学時代のこと。

あの頃は毎日がキラキラしていた。特に中学一年の時のことは生涯忘れないと思うくらい。私は小学校456年とひどいいじめに遭っていたので中学入学を機に転居しました。

内心ドキドキしながら入った学校でしたが押し並べてみんな親切で、見知らぬ顔の私に逆の興味を持っていたようです。

 

もういじめの影もないのですからのびのび過ごせ、男子生徒とも仲良くしていました。結構面白い人材がそろっていたわが18組。

校舎は古い木造校舎で雨が降れば漏れてきたり、思い切りよく窓を閉めたら、窓枠にはまったガラスをふるい落としてしまったり(危ない!)とスリリングな中学生活・・・

 

そんな中、クラスの話題と言えば・・・

音楽!

しかも当時なかなか個性的なアーテイスト?がいて楽しめました。

 

その中でも思い出の歌の一つ。

河内のおっさんの歌」(ミス花子)

一般にがらが悪い!と言われる河内弁でが鳴るように歌うこの歌が当時の中学一年生の心を捕らえました!

当時流行っていた「エアチェック(FM放送で流れる音楽などを録音すること)」でカセットに録音して、勉強してるふりして聞いてました。

余談ですが私は音楽がないと勉強できないたちで、いつも片耳にイヤホンを突っ込んではカセットやラジオを聞いて試験勉強していました。

が、目ざといわが母親はいつもそれを見つけては小言を言います。挙句にはラジカセを隠すという大暴挙に!

ですので私も学習し、考えてみました。

ラジカセを机の下の奥に突っ込んで、コードの長い(3メートル)イヤホンを購入してきてそれをまず、ラジカセに装着。

そしてイヤホンのコードを自分の服の裾から入れて見えないように首元から耳へと導くのです。これは、服の襟がポイントですので、夏より冬の方がやりやすかったですね。

という手段を使いながら試験勉強しながら聞いていました。

ですのでいつも試験の出来は悪く、特に数学は小学校時代から最悪でしたが中学一年の最初の中間試験でありえない、自分でもうそだろ!?というような点数を取って、担任の度肝を抜き、2年生に進級の際一番いやだった数学の教師のクラスになってしまいました・・・

そこでもまた最悪の点数を取ってその担任から今でいうところの学習障害だ、と言われました。

まあそんなことはどうでもいいのです。

問題は音楽です。

音楽なくして生活できない私にとって、その歌は人生最初の衝撃でした。今でもカラオケに行ってこの歌があると・・・歌います!

 

 

そしてもう一つ、この歌を聞くと、中学初めての遠足を思い出します。遠足は九十九里浜での『地引網』。

いかにも千葉県の中学らしいチョイスです。

しかもこの日は朝から雨でした。それでも、「海でぬれるんだから雨にぬれても変わらんじゃないですか!」とまるで少年時代の坂本竜馬のような理屈で強行したのでした。

その遠足に行くとき、バスに乗る前の点呼の時男子生徒が歌っていたのがこの歌。

ああ、宮城県」(吉川団十郎)


歌い手さんの『吉川団十郎』という名前も良かったですねえ~。宮城県は全く行ったことがなかったので「どんなところだろう、宮城県」と考えていたことでした。

でもこの歌なぜかなかなかFMでかからずイジイジしていましたね。クラスの男子生徒がこの歌の楽譜(雑誌に載っていたらしい)を持っていてしきりに自慢するのが嫌でした。

でも。

あれから約40年弱ほどたって、この歌を聞くときまさかあのような大震災が「宮城県」を襲うとは夢にも思わなかったですね。

そういえば中3の時修学旅行は福島県でした。

同じようにあの美しい福島県が地震と津波はもとより、原発事故でもあんな目に遭うとは・・・。

楽しい思いをさせてくれた福島県、そして想像をかき立ててくれた宮城県には本当に一日も早い復興を願いますし、被災県の産品はドンドン買いますよ!!

 

あとこれはなんだか忘れられないのがやはり中1の時の社会科の先生が授業中聞かせてくれた

チューリップのアップリケ」(岡林信康)

悲しいメロデイーと歌詞がいつまでも心に食い込んでいます。(聞いた話では一時期放送禁止になっていたとか?いろいろな問題があったように聞いていますが)

 

また中二の時どうしようもなく好きだったのが

河のほとりに」(谷山浩子)


せつない旋律と歌詞、その素敵なバランスが思春期の女の子たちの心をとらえたのでした。言ってみれば恋に恋する年ごろでしたからね。

 

 

そんな楽しい中学時代も、受験生と言われる3年生になってからほとんど思い出の歌が無くなってきます。

個性的な楽曲があまりなくなってきたのも一因かもしれません。

以前のように皆が騒いで面白がるような歌が無くなって、いわゆるアイドル系の歌が多くなってきたのでした。

でも、自分の『アイドル』を見つけてそれに没頭し、受験勉強中も聞いていたのでした。

 

今でもあの時好きだった歌を聞くと、あのころにさ―っと心が戻ります。

あの頃の自分の部屋の様子、外を吹き抜ける風の音。

制服の紺の匂い、鞄の重さ。

重い鞄を抱えて歩いた通学路、クラスの友達と朝、待ち合わせの場所。

 

時々実家に帰った際、当時の通学路を歩いてみます。

すると、私の耳にはあの時の歌たちと一緒に、中学一年当時の自分の歌う声が――聞こえてくるのです。

あれから何十年経とうとも、忘れがたい歌と一緒に。



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