女だらけの戦艦大和・総員配置良し!

女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?

「女だらけの戦艦大和」・野田のチェスト3<解決編>

必死に<野田のチェスト>からごみをかき出す前原水兵長、生方中尉はそれを見てはっとあることに気がついた――

 

「このチェストはおかしいぞ、皆気がつかないか!?」

生方中尉が顔色を変えて叫んだ。野田兵曹も松原兵曹も、厳場兵曹もぽかんとしている。デッキブラシを使っている前原水兵長がふと手元を見て「ああっ!」と声をあげた、そして、

「生方中尉、このチェスト本当におかしいであります!」

と叫んでその場から飛びのいた。チェストの中にデッキブラシを突っ込んだままで。

すると初めて皆が「あああ!」「おおっ!」と叫び声をあげた。生方中尉が「分かっただろう」と言いブラシを引っこ抜く。

松原兵曹が震える声で、

「中尉・・・このチェスト奥が深すぎます」

と言って生方中尉はうなずいた。そして

「わかったろう、このチェストの奥行きはせいぜい50センチあるかないかだ。そしてこのブラシの柄の長さは一メートルほどだ。その柄がほとんど入ってるということはこれは」

と言い皆を眺めまわす。野田兵曹が真っ青になって生方中尉の顔を見つめ「・・・これは?」とつぶやく。

生方中尉は、うんともう一度うなずいて「化け物チェストだ。ここだけ<底なし>の状態だな」と言って厳場兵曹は思わず身震いをした。そして、

「なんでここだけそがいなことになったんでしょう・・・」

と怖げな声で中尉に言った。中尉は野田兵曹をちらっと見てから、「こんなに汚くしてるから妙なことになるんじゃないのか?聞いた話だが幽霊妖怪の類は汚いところを好んで取りつくと言うぞ?さあ、おかしなものが出てこないうちに早くどうにかしてしまわないと」と言った。

前原水兵長が「ゆ、幽霊妖怪の類ですかあ!いやだあ、うちはそがいなもんと一緒に居るんはいやじゃあ!」とべそをかき始めた。前原水兵長は高角砲分隊でも有名な怖がりである。

生方中尉はその様子を見て(こんなことで分隊の士気が落ちては一大事だ。万が一艦内にこれが蔓延したら手の打ちようが無くなる。何とかしないと)と思って

「とりあえず中を確認だ」

というと防毒面を外してチェストの奥を覗き込んだ。他の連中も生方中尉の肩越しに覗き込む。

「なんだ・・・あれは」と生方中尉がうめいた。

チェストの奥の方にまるで真っ黒い煙とも何ともつかないものが渦巻いている。大変不気味でさすがの中尉も少し身を引いた。

と、その奥の方から何か飛び出してきたものがある。

「わあああ!」

と皆が一斉に飛びのいた。床に落ちたのは一匹の<泥鰌>。びちびちと跳ねている。

「どじょう・・・」と前原水兵長がつぶやいた。そして野田兵曹をびしっと指差すと、

「泥鰌、どじょうだ!野田兵曹、前のどじょうもここから飛び出して来たんと違いますか?それをうちらのせいにして!大体が兵曹がここをこげえに汚くしとるけえ、それが一番の原因じゃないですか?もうええ加減にしてくださいよ、あなたのせいでうちらがひっぱたかれるんはもういやじゃ!」

と絶叫した。生方中尉が野田兵曹を見返って「ひっぱたく、だと?」と低い声で言った。野田兵曹がぎょっとしてちょっと体を離した。野田は片手を顔の前で振ると「そんなこと・・・私はそげえなひどいことはしとりません」と必死で言ったが松原兵曹が小声で「嘘じゃ。この期に及んで嘘ついとるわ」と言ったのを生方中尉は聞き逃さなかった。野田兵曹の前に両手を組みたちはだかると、

「野田兵曹、私は貴様に何度も何度もここを掃除しろと言ったはずだが貴様は聞き入れるどころかほっぽりぱなしてそのうえに下級兵に泥鰌を投げ込んだと言いがかりをつけるなど言語道断だ。この責任をどうとるんだ!ええ?」

と怒鳴った。野田兵曹は困ってしまって涙目になってうつ向いている。

と。

チェストの奥からコオオオ・・・という音が響いてきた。厳場兵曹が顔色を変えて、「あっ、いけんで。あのへんな音じゃ!」と叫んで生方中尉はチェストの扉に飛びかかると閉めようとした。

が、何かものすごい風圧のようなものがチェストの奥から吹き出してきて閉めるに閉められない。松原兵曹たちも一緒になって閉めようとするが、出来ない。

「誰か、だれでもええから応援を呼んでこんか!」

厳場兵曹が叫んだとき、どこからすっ飛んできたのか副砲の大槻義子大尉が

「任せるんだ!」

と怒鳴って皆をつかんで退かした。そしてチェストの奥へ向かって何かを投げ込んだ。すると中から目もくらむような光が部屋いっぱいに溢れた・・・と次の瞬間にはもう何事もなかったかのように鎮まった。変な音もしなくなった。

生方中尉以下はその場に座り込んでぽかんとしてチェストを見つめている。やがて中尉は立ち上がって、

「大槻大尉、ありがとうございました。・・・ところで今何をなさったんですか」

と礼を言って尋ねてみた。

大槻大尉はメガネを片手でちょっと持ち上げてポジションを直してからエヘンと咳払いをした、そして「これはねえ、時空の歪みだと思うよ?ここの磁場かなんかがおかしくなってどこかとつながってしまったんじゃないかなあ?
だからちょっと磁場を変えてやろうと思って棒の磁石を投げてみたのさ。そしたら治まったみたいだから大丈夫だよもう」と言い笑って見せた。

前原水兵長が恐る恐る、「あの、大槻大尉」と話しかけた。大槻大尉はメガネの奥の瞳を前原水兵長にむけて「何かね?」と聞いてやった。前原水兵長は

「ほいじゃあ、幽霊妖怪の仕業ではないんでありますか」

と聞いた。大槻大尉は大きな声で笑い、「そんな非科学的なものじゃあないよう、そんなものこの世に存在しないって」と言ったので前原水兵長はほっとした。

生方中尉は「本当にありがとうございました、助かりました」と心から礼を言って、大槻大尉は手を振り去ってゆく。

「さて」と生方中尉は言って床を見た。その場には泥鰌を始めチェストから引き出されたごみがうずたかく積もっている。

「野田兵曹貴様はこれをすっかりきれいにしろ。そしてこれに懲りてもう二度とチェストを汚くしてはいけない、今度のことは汚くした貴様への天からの警告かもしれない。ときどき抜き打ちに私がチェックを入れるからきちんとしておけ、いいな!」

生方中尉は野田兵曹にそう宣言して、野田兵曹はひとりごみを片付けていた・・・

 

ところで。

そのゴミの中の「きのこの生えた褌」が塵取りから落ちて、それをマツコが拾ってしまった。マツコはトメキチに、「珍しいもの拾ったわよ~、これ何かしらねえ。見て!キノコが生えてるわ、アタシこれ大きくしてやろっと!」と防空指揮所まで持って帰ってきた。

だが、<野田のチェスト>の怖い話を聞いていた麻生分隊士に、

「ギャアア!こげえにきたねえもんをもっとったらいけんで!ハシビロ、貴様病気になるで!」

と取り上げられてしまった。見張兵曹や小泉兵曹も大騒ぎになる。トメキチは「臭いよう、マツコサン。捨ててよう」と鼻を押さえてうめく。

マツコは返して返してと分隊士にまとわっていたがそこへ松岡分隊長が来たので今度は松岡分隊長に助けを求めようとする。

分隊士は褌を丸めると、「分隊長これ。汚いけん捨ててくださいっ!」と叫んで分隊長にパス。分隊長は「もらったあ!」と叫んでラケットで撃った。が、折悪しく一陣の風が吹き付け褌はどこかへ落ちてしまった。

「あ~あ・・・」

とマツコ・麻生分隊士・松岡分隊長が落胆した。松岡分隊長はしかし、

「まあいいじゃないか、あんな汚いもの誰がどう見たって汚いんだから捨ててくれるよ。さて、掃除も終わったね。皆ご苦労」

と言って皆をねぎらった。

 

いずこかへ落ちて行ったきのこの生えた褌・・・

これが実は露天甲板を歩いていた梨賀艦長の頭にかぶさったのは誰も知らない。そして艦長が真っ赤になって怒って、「いったい誰!こんなに汚い褌をほっぱり出すなんて、しかも艦長が被ったなんて恥ずかしくって言えないじゃない!」と怒鳴りまくったが・・・野村副長と森上参謀長は手を叩いて笑うだけだったとさ。

そしてチェストをすっかりきれいにした野田兵曹、「今日から生まれ変わるぞ」と意欲満々だとか。

良かったんでないかい?

 

        ・・・・・・・・・・・・・・・・

野田兵曹のチェストの問題、何とか収束しましたね。普段から綺麗にしとけばいいんですがね。まあ今度汚くしたら生方中尉の制裁が待っています。

しかし、きのこの生えた褌・・・それが空から降ってきてかぶさったとなると梨賀艦長はお気の毒です。・・・考えたくもない・・・オエエ。
棒磁石
棒磁石。これを投げ込んだ…?(画像お借りしました)



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「女だらけの戦艦大和」・野田のチェスト2

「近いうち、近いうちに綺麗にしますって言ってるんだから、うるさい事いうとひっぱたきますよ!」と怒鳴った野田兵曹であった――

 

その野田兵曹が体の向きをくるりとかえるとそこには悪鬼羅刹のような形相の、生方中尉が両腕を組んで仁王立ちになっていた。野田兵曹の今の今まで下士官たちに見せていた強気の顔がしぼんだ。

生方中尉は、さっき野田兵曹が見せたよりすさまじい白目をむき、鼻息も荒く「野田あ!」と一喝した。

前原水兵長、松原兵曹、厳場兵曹が驚いて2、3歩あとじさる。生方中尉は立ちすくむ野田兵曹の真ん前に立つと

「私は以前に言ったはずだ。貴様のあの臭くて汚いと評判のチェストを速やかに片付けよとな。しかるに貴様はあれから数カ月以上たつというのにいまだに片づけをして居らぬようだ。私の命令が聞けないようだな、そんなに私をなめているのか?ああ?」

と詰め寄った。野田兵曹はその大きな顔に、脂汗を浮かべて必死に首を横に振り

「いいえ、いいえ!そんな生方中尉をなめているなんてことはありません!決して、あの・・・」

と弁解に夢中である。生方中尉はさらに野田兵曹に詰め寄ると、

「ならどうして片づけないのだ。・・・ははあん、貴様はなにか、今内地で話題の<片づけられないおなご>というやつか?普通の生活のおなごならいざ知らず、我々はいやしくも帝国海軍の軍人であるぞ。その軍人がこのざまでいいと思っているのか?こんなことをしているようなら私は河崎少佐に申し上げて貴様の昇進を止めねばならん。当然だらしのない奴は艦隊勤務から外れてもらわねばならん」

と言った。野田兵曹は今度は真っ青になった。野田兵曹はそろそろ兵曹長への昇進が近いのだった。そして唯一の自慢の<大型戦艦乗務>。

「そんな、それだけは・・・」

さすがに泣きそうになった野田兵曹に生方中尉は、

「いやだろう、私だってそんなことを少佐に申し上げるのは本意ではないし大体が高角砲分隊の恥になることだ。だから」

とそこで言葉を切った。野田兵曹は涙を浮かべて生方中尉の顔を見つめた。中尉は、

「今から私がたちあいのもと、貴様のチェストをきれいにする!前原、松原、厳場。貴様たちご苦労だが手伝ってほしい」

というとその場に打ち捨てられたようになっているソーフとデッキブラシを取り上げた。前原水兵長・松原兵曹・厳場兵曹がかすかにため息をついた。

 

五人は野田兵曹のチェストの前に立った。

前原水兵長が心なしか緊張したような顔で立っている。手にはデッキブラシ。これは松原兵曹が「もしかしたらチェストの中から鼠が飛んで出るかもしらんで。出てきたら貴様、このデッキブラシでぶったたけ。鼠上陸出来るで」と持たせたもの。

厳場兵曹は、

「生方中尉。野田兵曹のチェストからおかしな物音がします。うちらその音が気色悪うていけんです」

と訴えた。生方中尉は

「おかしな物音ね、この居住区の連中がよく言ってるがどんな音なんだね?」

と聞いた。厳場兵曹は手にした塵取りを持ち直すと

「なんといいますかこう、たとえるならトンネルの奥のような音がします」

という。はあ、トンネルの奥?と首をひねる中尉に前原水兵長が、「コオオオオ・・・というような音であります」と音を真似て見せた。松原兵曹が「ほうほう、そがいな音じゃ」と言った。生方中尉は「そんな音がチェストの中からするわけなかろう?なんか別の音じゃないかね」と言ったがそれよりなによりまず、「掃除掃除、そっちが先決だ」とのことで一同緊張の面持ちのままブラシを構える。

生方中尉が「野田、開けろ」と命令し野田兵曹は扉に手をかけ、そっと開けた。

ギッ、と音を軽く音を立てて扉は開いた。

と!

「ぐえええ!」「オ、オエエエ」「く、くせえッ!」・・・

野田兵曹以外の皆は一斉に悶絶した。とんでもなくひどい臭気がチェストから<噴き出して>来たのだった。生方中尉は右腕で鼻を覆うようにして「野田、野田早く閉めろ」と怒鳴った。あわてて扉を閉める野田兵曹。

生方中尉・前原、松原、厳場の四人はその場にうつ伏したり仰向けになったりしてハアハアと苦しい息をついている。まるで毒ガスでも艦内で発生したかのようで、いつかの<シュール缶事件>をほうふつとさせる。

野田兵曹だけが平気な顔で、だが申し訳なさそうに立っている。生方中尉は今にも吐きそうな顔で「ぼ、防毒面を持ってこい。命にかかわるぞ、この臭気は」と言い、前原水兵長が這いながら人数分持ってきた。

 

そして一同、防毒面を装備して再度野田のチェストを開けるため、気を取り直してチェストの前に立つ。事情を知らない他の兵が「なになに?何しとるんね」と入ってきそうになるのを松原兵曹が「いけんで、これはうちらだけで始末するけえ。野田のチェストを掃除じゃ」と押しとどめる。それを聞いた兵は「えッ!野田兵曹のチェストを開けるんで?こりゃあ大ごとじゃ・・・どうぞお気をつけて」と言って敬礼する。

なんだか今生の別れの敬礼のようで松原兵曹は泣き笑いのような顔になってしまった。

「さあいいか、松原兵曹。野田、開けろ」

生方中尉は防毒面の顔を野田にむけて言った。

ふたたび、ギッと音を立てて扉が開く。今度は防毒面のおかげで臭いに直撃されないで済んだが野田兵曹が「うっ・・・オエっ!」と唸って皆から「貴様何言うとるんじゃ!あほ!」とデッキブラシで殴られる羽目に。

 

「うわあ・・・いったい何をこんなに押し込んだんじゃね」

恐る恐るデッキブラシで中のもの――ゴミばかりだが――を掻きだしながら厳場兵曹が唸る。生方中尉もあきれて野田の顔を見つめている。

野田兵曹はデヘヘと笑って

「バナナとか果物が多いですかのう、あとそうだ、父島でもろうた魚の干物を入れとったんですが」

と悪びれもせずに言う。前原水兵長が面の下から「オエエエ」と唸りながらブラシでかき出したものは確かに果物の皮、しかも真っ黒に変色して元がなんだったかさえ分からない。

そのほかにもくちゃくちゃになった手紙のようなもの、真っ黒にカビの生えたパン、きのこの生えた(!)褌などが引きずり出されてきた。

「うっひゃあ、野田兵曹こりゃあエライことじゃわ」

厳場兵曹が感心したように言って、ごみの山を見つめる。

前原水兵長は必死になってブラシでチェストの奥からごみをかき出しているが、生方中尉は<あること>に気がついて

「おい、ちょっと待て!皆何か気がつかないか、このチェスト・・・」

と言ってチェストを見つめた――

  (次回に続きます)

 

         ・・・・・・・・・・・・・・・・

すさまじいごみ入りチェストです・・・オエエ、と言いたくもなりますね。考えただけで倒れそうです。

さて、生方中尉何に気がついたのでしょうか。緊迫の次回に続きます!!

防毒面

防毒面。(画像お借りしました)



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「女だらけの戦艦大和」・野田のチェスト1

「女だらけの大和」はいよいよサイパンをあとにしてトレーラーに戻る――

 

トレーラーまでの道中、各種訓練はもちろん兵器の整備や生活居住区の整理整頓も行う。皆各分隊、班ごとに清掃を行う。

航海科の居住区でもそれぞれが各自の持ち場を清掃、松岡分隊長は例のラケットを振りながら「さあみんな、熱くなって片付けと整理整頓だ。いいですかあ、人間身の回りをきれいに出来ない人は偉くなれませんよ?身の回りをきれいにきちんとすればおのずと心も体もしゃんとするんだよ!いいか、皆あ!熱くなれよ!」

と怒鳴りながら回る。

はては他の分隊にまで顔を出して苦笑される始末。それでも野村副長は、

「いいじゃないか、ああして皆を鼓舞してくれるっていうのはいいことだよ。うん、松岡中尉、もっとあちこち行って来てよ」

とはっぱをかける始末。麻生分隊士はソーフを手にして

「やだなあ副長のやつ、分隊長に変なこと言わんでほしいわ。あの人一人おらんでも結構大変なんじゃけえねえ」

と思いっきり口をひん曲げた。それを聞きつけたか松岡分隊長はつかつかと麻生分隊士のもとへ。(ゲッ、『副長のやつ』って言ったんを聞かれちゃったかのう)

と少し顔色を変えた分隊士であったが、分隊長はそれをとがめたのではない。分隊長は麻生分隊士の両肩に手を置いた。分隊長は右手にラケットを持ったままなのでそれが分隊士の背中に当たる。

「いてっ!」と声を出した麻生分隊士にはお構いなしに松岡分隊長は、

「麻生さーん、私のことがそんなに気になるのかねえ?嬉しいよ麻生さん、これこそ分隊長冥利に尽きる!が、麻生さんには特年兵くんというものがありながらいいのかね?

・・・なあんて、冗談はさておいてだ。私はちょっとだけ場を外すが、すぐに戻ってくるから大丈夫だ!まだまだ航海科には掃除すべきところはたくさんあるからな。

というわけでちょっと行ってくるよ!」

と一気にしゃべるとラケットをひっかつぐと風のように走り去る。

走りながら担いだラケットが通路の天井部分の鉄の梁に当たって派手な音を立てている。

「もううちはあの人がようわからん」

分隊士はぶつぶつ言いながらも、脚立の上に「よっこらしょ」と上がって天井部分をソーフで拭く。

その分隊士を心配げに見上げる見張兵曹、その兵曹を見つめる石場兵曹・・・妙な三角関係?が展開中のようだ。

ともあれ、松岡分隊長は右舷・左舷を縦横無尽に走り回って「熱くなれよ!」「きれいにしろよ」「やればできる、やらないからできないんだ!」と檄を飛ばして回る。

その後ろを、トメキチとマツコが面白がってついて回る。マツコは大きなくちばしをガタガタ言わせて、トメキチは後足で立って走りながらキャンキャンと吠える。人の耳には言葉としては聞こえないが、マツコは

「マツオカ―。面白わねえ、皆がびっくりしてみてるじゃないの。もっと走りましょうよ~」

と言い、トメキチは

「マツコサン見て、僕前よりずっと早く走れるようになったよ?」

と言っているのである。

その奇妙な一行は艦長室の前やら参謀長の部屋に駆けこんで走り回り、医務科で叫んで日野原軍医長に「入室患者がいるんだぞ、静かにせんかあ!」と怒鳴られ機関科居住区では居合わせた浜口機関長と松本兵曹長に『気合い』を入れられる始末。

露天甲板では機銃の手入れ中の長妻兵曹や増添兵曹が「ほう、松岡中尉はまた何ぞやっとるんかねえ?あの人は珍奇なお人じゃね」と言いながら笑う。

 

さて、松岡分隊長の「艦内めぐり」が一段落して航海科居住区のあたりに帰ってきたころ、高角砲分隊の居住区の一室ではちょっとしたもめごとが起きていた。

 

もめごとの渦中の人は、野田佳子上等兵曹。

いつぞや、野田兵曹は自分のチェストの中に泥鰌を入れられたとして大変ご立腹になり、班員や分隊の皆を「貴様か?貴様が入れたんじゃろ?言わんか!」と執拗に追求した人である。

その野田兵曹、分隊員から詰め寄られているのだ。

前原水兵長、松原二等兵曹、厳場一等兵曹など大勢の兵が野田兵曹を取り囲んでいる、口々に「野田兵曹、ご自分のチェストを開けて掃除してください!」「野田兵曹のチェストはいつも変なにおいがしてたまらんがです、どうにかしてください!」「我慢にも限度いうものがありますけえ、これがええ機会です。どうかねがいます!」と叫んでいるのだ。

だが野田上等兵曹はしれっとして、大きな顔をつとめて無表情にしながら

「近いうち、近いうちに綺麗にします」

としか言わない。厳場兵曹が、「近いうちっていつでありますか?もうずうと前から野田兵曹はそういっとられますがね、今日はその日にしてくれないと皆迷惑しとってですよ!」とついに怒鳴った。

すると野田兵曹は大きな顔を真っ赤にして

「今日はだめなんだよ今日は!だから近いうちにって言ってんでしょうが!!」

と大きな声を出した。

ふうふうと鼻息荒く白目をむいて怒る野田兵曹。その前に詰め寄っていた兵たちが、そろそろと後じさりを始めた。

野田兵曹はフフンと鼻を鳴らすと、

「わかりましたか?私はね、近いうちにやると言ってるんですからね。四の五の五月蠅いことを言ったら私は今夜みんなを甲板整列でひっぱたきますからね」

と恫喝した。そしてくるりと体の向きを変えたその野田兵曹の顔がみるみるひきつった。

そこには――。

  (次回に続きます)

 

          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

チェストとは要するに「モノ入れ」ですね。

ものの本によればおおよそ縦50センチ、横40センチ、奥行き40センチほどの金属製。ここに私物を仕舞いました。下には靴入れがついていたと言います。チェストの上には手箱(裁縫箱や手回り品を入れる箱)を置いておいたようです。この手箱は時に腰かけ代わりにもなったようです。

 

さて、野田兵曹どうしたんでしょうか???
野田兵曹
「近いうちに…」(画像お借りしました)



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日々雑感・涼やかに・・・凛として

今日の「女だらけの大和」は、あの『坊ノ岬沖海戦』で奇跡的の生還を果たした駆逐艦4隻の中の一隻、「涼月」に関して書いた私の別ブログからの転記になります(初出・20101030日)。

あまり知られていない「涼月」に関しての私の感想です。つたない記事ではありますがどうぞ読んでやってくださいませ。

このところ「軍艦大和」に関する記事をたくさん書いた気がします。

「大和」と言うとそれだけで何か特別な感じが否めませんね。でも、あの最後の「水上特攻」では、「大和」に負けない奮戦をし、そして奇跡的に生還した艦もあったのを忘れてはならな

いと思います。

あの水上特攻で生還した駆逐艦は

雪風

冬月

初霜

涼月

の四艦でした。

今日はそのうちに涼月について。

 

「涼月」、防空駆逐艦として「秋月」型11隻のうちの3番目の艦として昭和17年12月2

9日に三菱重工長崎造船所で竣工しました。

この「涼月」さん、すさまじい戦歴の持ち主で南方戦線で活躍して呉に帰り、整備等を済ませた昭和19年1月15日、宇品を出て16日、豊後水道を出て日向灘に差し掛かった時敵潜水艦の雷跡を発見します。直ちに回避しようとしましたが折悪しく荒天のためその雷跡発見はお

そく艦橋下部に一本命中それが爆発。

ために二番砲の弾火薬庫に引火、さらにもう一本が後部に命中。

そんなことでなんと、艦首・艦尾を失い艦の中央第二缶室、前後部機関室を残すだけのまさに

鉄の箱状態に。

しかも司令・艦長以下153名戦死。この時陸軍の兵隊さんが便乗していたそうですが彼ら9

9名も戦死。

しかし生き残った掌機長以下の全員で力を合わせて僚艦「初月」の協力もあって呼び寄せた防

備隊に曳航されて、半年に及ぶ大修理の後艦隊復帰。

出撃したもののなんという運命のいたずらか、10月16日にまたも同じ日向灘で雷撃され艦

首切断の憂き目に。

しかし不屈の「涼月」は直ちに修理を行って戦線復帰。

 

となんだか因果な感じさえする「涼月」ですが、昭和20年4月の「海上特攻」にも出撃しま

す。

この時はものすごい戦闘になり、「涼月」もたくさん被弾し傾斜してきます。

艦長と砲術長は防火・防水の指揮をとり弾薬とか重量物の海中投棄や、艦のバランスを保つた

めに後部に重量物を移す、などてきぱきと指示します。

 

その後火薬庫の火災から砲弾の暴発が起き火災発生、しかしこれも必死の消火活動で鎮火しま

す。

 

「涼月」は佐世保と連絡を取ろうと試みますが艦橋の通信機器は壊れていてだめ。

ある中尉が他の通信室を使って連絡をとった結果、夜明け前には甑島の南で、基地との連絡を

とることができました。

 

潮の流れはうまい具合に九州に向かっています・・・「涼月」は沈まないように後進で進みま

す。缶室・機関室の皆さんの努力は大変なものがあったでしょう。

もちろんその間機銃員たちは海面に注意を払っています。

 

後進を続けながら、九州の山々を望見し、やっとの思いで佐世保が見えてきたときの「涼月の

みんなの喜びはどんなだったでしょうか。

佐世保湾外で駆潜艇が迎えに来ます。

水偵も上空を飛んで偵察して、通りかかった漁船さえ激励してくれます。

 

・・・やがて。

 

佐世保港にいた艦艇は、艦首が水につかりそうになってしかも艦尾のもちあがった

異形の艦に最初呆然としますがそれが「沈んだ」と言われていた「涼月」と知った時、大変な

感動が突き抜けます。

それがすごい歓声となってわきあがります。

応援です、「涼月」の乗員は手すきが艦尾に立ち並んでバランスを取りながらその応援に「軍

歌」を歌ってこたえます。

 

・・・四面海なる帝国を まもる海軍軍人は・・・

 

・・・海ゆかば 水漬く屍 山ゆかば 草むす屍・・・

 

「涼月」は皆の前でブイをとり錨を入れましたが、艦はたちまち浸水し、沈み始めました。

そこで「武蔵」を建造したドックに曳航しましたがそこで着底。

 

そのあと、排水作業。浸水箇所の隔壁を溶接機で次々切断して開放して行ったところ。

極めて痛ましい風景が展開したのです。

缶室では熱気のため乗組員は服も帽子も、いや皮膚さえ溶けて生白い肉塊と化していました。

探信儀についていた兵はそのまんまの姿でこと切れていたーーー。

 

全員一丸の精神が満身創痍の「涼月」を生還させたのでしょう。

自分の命を顧みず、配置に殉じて行った乗組員たち。

 

戦闘中にも配置を守りながら死んでいった士官や兵はたくさんいました。

軍医長は、腹部が裂け腸が露出した状態で戦死。

 

16歳の水測兵は絶対音感の持ち主で聴音させると抜群の音感の良さを持っていましたが艦が被弾の際、水測室から外に吹き飛ばされ艦腹にあったワイヤーにしがみついて「分隊士、分隊士」と上官を読んでいたそうです、分隊士はそれを見、聞きつけて彼にブイを投げて「掴まれ」と叫びましたがおそらく負傷していた少年兵はつかまることあたわず、穴のあいた艦腹に吸い込まれて行きました。スクリューに巻き込まれたかついに浮いてくることはなかつたと。

 

こうしたたくさんの英霊の支えもあったのでしょうね。

 

この16歳の少年兵の話を思い出すたび、今の16歳の幸せを思わずにはいられません。

 

こうした年少の英霊がいることにも思いを致したいものです。

 

 ・・・・・・・・・・・後日譚ですが、この奇跡の駆逐艦に興味を持ったアメリカ軍は「涼

月」を接収に来たそうです。

彼らに日本人の崇高な精神が理解できたかはわかりませんが、アメリカ軍人も軍人のはしくな

ならわかってほしいものです。

 

「涼月」。

あの海上特攻で奇跡の生還を果たした駆逐艦です。「大和」の陰に隠れてその名すら忘れさら

そうな艦ですが、どうぞ何かの折に思い出してあげてください。

 

それが「涼月」のご英霊に対する何よりの贈り物だと信じています。

涼月・坊の岬戦 昭和20年4月7日。米軍の攻撃を受ける「涼月」(画像WIKIより拝借しました)

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「女だらけの戦艦大和」・スモーキング・武技!?3<解決編>

松岡分隊長はその場にしゃがみ込むと、箱から出したタバコを甲板に並べ始めた――

 

見張兵曹が「どがいするんです?タバコを出してしもうて」と少しあきれたような声を出した。小泉兵曹も、麻生分隊士もうなずく。すると松岡分隊長はタバコの前にしゃがみ込んだままで、皆を見上げてニイッと笑った。

その不気味さに、皆は半歩から一歩確実に引いた。松岡分隊長はその不気味な笑いを消さないまま、

「いいですかみなさん。タバコってものはねただ吸ったらいいってもんじゃアない!鳥くんには正しい帝国海軍のタバコの吸い方を教えてあげなきゃですよ。タバコを吸って熱くなって、さあみんな米英撃滅に行こうじゃないか!」

と叫んだ。麻生分隊士は(なんじゃ、遠足にでも行くような言い方じゃなあ)とおかしくなってきた。見張兵曹がもう一度、

「ほいで、これをどがいにするんでありますか?」

と訊いた。松岡分隊長は防暑服のポケットから携帯用の裁縫用具を取りだした。そしてそれを皆の前に突き出して見せた。

「裁縫道具・・・裁縫道具とタバコがどがいな関係にあるんですか」

小泉兵曹がわけわからんと言った顔つきで訊いた。すると分隊長はそこから少し太めの糸を取りだすと、針に通しそれを一列に並べた煙草を縫うようにして行く。

「煙草を・・・縫っとりんさる」

見張兵曹がつぶやく。その横でマツコとトメキチが小首をかしげて松岡分隊長のすることを見つめている。皆が見守る中、分隊長は器用に作業を進めすべてのタバコを縫い、タバコは行儀よく横一列に肩を並べる格好になった。

「よし、と!」

分隊長はそういうと「鳥くん、さあこっちにおいで」とマツコを手招いた。マツコは嬉しげに松岡のもとに。

分隊長はそのタバコをマツコの前に出して、「さあ鳥くん。私が正しい軍人のタバコの吸い方を伝授しよう。いいですか鳥くん、タバコは熱い心で吸うものだよ。そのためにはちびちび吸ってちゃいけない!時に戦闘中にも吸って、これを煙幕代わりにすることだってあるんだぞ!というわけで・・・」というとマツコの口を開かせた。麻生分隊士が小声で見張兵曹に、

「あがいな嘘をゆうて、この人はいけんなあ。相手が鳥じゃからいうていくらなんでもひどかろう?」

と囁き見張兵曹も
「ほうですねえ、タバコを煙幕にせえなんか聞いたことないですもんねえ」

とあきれ気味。確かに今までの戦闘中も、森上参謀長がくわえたばこで指揮所に上がってきたことはあったが煙幕になるほどの吸い方なぞしているのを見たことなど、当然ない。そんなことありえない。

だが松岡分隊長はマツコに、「そーうそう、その調子でそっとくわえるんだ。いいねえ。さすが君は鳥の王者・ハシビロだね、熱くなってるよ。・・・では、いいかい」と囁くとマッチを取りだし、端から煙草に火をつけていった。

「さあ鳥くん、思いっきり胸いっぱい吸い込め!熱くなれば出来る、あきらめんなよ!!」

松岡分隊長の大声とともに、マツコはひと箱分のタバコをくわえたまま<思いっきり>胸いっぱい吸い込んだ。横一列のタバコの先が、真っ赤になった。

・・・と!

「ト、トメキチ・・・アタシ目が回るう・・・」

というなりマツコはその場にぶっ倒れてしまった。驚いたのは麻生分隊士や見張兵曹・小泉兵曹にトメキチである。上を下への大騒ぎになって、やがて甲板士官の藤村少尉や機銃群の水兵嬢たちや、果ては梨賀艦長までがすっ飛んでくる事態に発展した。

「どうしたんだ!・・・ハシビロが、倒れてるじゃないか」

梨賀艦長は驚いてマツコを抱き起こした。

ふとその傍らを見れば、なななんとタバコが横一列に糸で縫われて、しかも煙があがっているではないか。

艦長は「??」とそのタバコを拾い上げた。さらによく見れば松岡中尉の足元に「櫻」の箱が落ちているではないか。

「か、艦長の『櫻』!」

梨賀艦長は叫んでいた。梨賀艦長はハシビロをその場に置くと、「櫻」の箱を拾い上げた、そして

「これえ!これ艦長の『櫻』あ~!さっきおとした『櫻』じゃないのぉ・・・なんでここにあるのぉ?しかもこんなに縫われてハシビロが吸ってたし・・・。

松岡中尉、これどういうこと!説明して!」

と半分べそかきながら、でも最後の方は毅然として言った。その場の皆が固唾をのんで松岡中尉を見た。

だが松岡中尉は、

「艦長。これはですねハシビロが是非帝国海軍の一員としてタバコによる米英撃滅砲を学びたいと持ってきたのでありますよ。ですから私はハシビロのその心意気に感じて帝国海軍流のタバコの吸い方を伝授したのであります。いいですか艦長、タバコだってただ漠然と吸っていてはなーんの意味もないよねえ。ですから私はタバコで煙幕を作るべく・・・」

と話し出して止まらない。

梨賀艦長は両手を大きく振り話を遮った。そして、

「ああもういいから!私はそんなおかしなタバコの吸い方なんか海軍に入って今日まで聞いたことがないよ。煙幕だって?笑わせちゃいけないね、あのエントツみたいな吸い方する森上さんだってそんなこと考えついちゃいないよ」

とまるで欧米人のように両手を広げて見せた。そこに、森上参謀長が後ろから「おーい、何があったあ?どうしたあ?」と間延びした声でやってきた。

一同がふりかえるとそこには、タバコをいっぺんに五本くわえている森上参謀長が立っているではないか。

参謀長は「なんかめんどくさいからな、いっぺんに吸ってみようと咥えてみたよ。でもなんかこれじゃあ吸えねえよな。それでちょっと思ったんだが総員でこれ訓練してやったら<煙幕>にならんかなあ~、なんてな!ワハハハハ!!!」と大笑い。

麻生分隊士や、藤村少尉そして見張兵曹たちがプッと吹き出した。「煙幕、じゃと」と誰か機銃の兵が小声で言うのが聞こえ、梨賀艦長は悲劇的な表情になってしまった。

そして、

「森上の、あほう!」

というなり艦長はあっという間にそこを走り去ってしまったのだった。

森上参謀長はタバコを一本づつ口から取ると、ポケットから出した箱に納めると

「梨賀のやつ、何怒ってんだ?で、貴様たちはいったい何してんの?」

と初めて尋ねる。麻生分隊士は

「いえ、なんでもありません!」

と言ってハシビロをさりげなく後ろに隠した。参謀長は「そう、そんならいいんだが」というと「じゃな」と歩み去る。

その後ろ姿が消えるか消えないうちにマツコは気を取り直し、
「ああ―もう、ひどい目に遭ったわ。ねえトメキチこれってさこういう吸い方するもんじゃあないとあたし思うんだけど、どう?」
とトメキチに訊く。トメキチは困ってしまって、「そうね、でも僕よくわからない」としか言えない。マツコは皆が見守る中しばらく甲板に落ちたタバコを見つめていたが急に「そうよ!こうだわ」と叫ぶとタバコを器用にくわえた。

そして「マツオカが言うのはこれを武器代わりにするってことよ、ならこうよ!」というなり、一列になったタバコをすごい勢いで「フッ!!!」と吹き飛ばし、タバコの一群はまっすぐに、見事海へと落ちて行った。

「すごい、すごいのう!」「ひと吹きであのタバコの束をふっ飛ばしたわ!」「ハシビロの武技じゃ、これなんぞ使えるかも知れんで?」

皆は大騒ぎ、その中で一人松岡分隊長が「そうでしょうそうでしょう。鳥くんはいちいち私が言わなくっても私の思いを汲んでくれたんです。いいですか皆、鳥くんを見習いなさい!皆は鳥くんより鈍いですよ、もっともっと熱くなって冴えてくれなきゃ、私は怒りますからね。さあみんな諦めんなよ!」とわめき散らす。

マツコは、「なんだか知らないけどアタシ松岡に褒められてるんだわ。ホホホ」とうれしげであった。トメキチが「・・・よかったね、マツコサン」と微妙な表情で見つめている。

 

さて。傷心の梨賀艦長は大事な『櫻』を鳥ごときに吸われた悔しさ悲しさに、しばらくの間艦長室で泣いてから重い足と心を引きずるように第一艦橋に戻ってきた。

その艦長に、「艦長、これを」と野村副長が差し出したのが『櫻』のひと箱。艦長は副長の顔を見つめ、「これは」というと副長は「いいんですいいんです。何も言わないで取ってください」と言って笑っている。

「副長・・・」梨賀艦長の顔がぱっと晴れた。やっぱり野村副長は私の良き片腕だ、もう誰が何と言っても野村次子中佐は離さない・・・

さっそく艦長は箱を開けて一本に火をつける。今回は副長がくれたのだからとぎりぎりまで吸ってみた。

「ああ・・・うまい」

艦長は感激の声を漏らした。

副長は思っていた(ああ、よかったバレてないみたい。艦長のタバコの吸い方ってもったいないでしょう?先っちょを少しだけしか吸わないなんてねえ。だから吸殻を集めて解いて、もう一遍巻きなおしたんだけど・・・気がついてないみたいでほっとしたあ。なーんだ結局『先のこの辺が一番うまい』なんて気分だけか。うふふ)。

 

恐るべし、副長の妙技――

 

          ・・・・・・・・・・・・・・・・

 

長い割にはしまらない話でした(-_-;)

松岡分隊長の「煙草煙幕」構想は子供だましです。マツコのタバコ吹き飛ばしという武技は危ないですので決して真似をしないでくださいね(って誰もせんわ)。
煙幕イメージ

煙幕のイメージ。船じゃないのが残念!(画像お借りしました)



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