女だらけの戦艦大和・総員配置良し!

女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?

「女だらけの戦艦大和」・アヴェ・マリア2<解決編>

トレーラー島の教会では素晴らしいピアノの演奏に合わせて歌声が響いている――

 

聴衆はもう身動き一つせず聴き入っている。帝国海軍の兵士も陸軍兵も、現地の人々も。その中で春山兵曹は音楽に身を浸しつつも会堂内の一角に目を奪われたままである。

(あれはいったい・・・誰だろう)

そこを凝視している兵曹。懐かしい内地の唱歌がたくさん歌われ演奏され、やがて中村少尉がピアノの前から立って、秋川兵曹と並んで立った。

万雷の拍手。

二人は照れながらもお辞儀をして拍手にこたえた。なかなか拍手が鳴りやまなかったがやっと落ち着いたころ、中村少尉は一歩前に進み出ると

「では今日のリサイタルの最後の楽曲です。二人で随分と練習はしましたがうまいことゆきますでしょうか?この歌の主人公がここにいらっしゃいます、聖母『マリア』様であります。慈愛に満ちたそのお顔と心は、信仰の違う我々の心にも響いてくるものがございます。では我々の歌をマリア様にささげたいと思います・・・」

と言い、会堂の一角に立っているマリア像の方に手を差し伸べた。

春山兵曹は自分がさっきから凝視し続けていたその「像」が、聖母マリア様と言う人なのだと初めて知った。

(マリア・・・様・・・)

さらにその「人」を見つめる兵曹の耳に流れてきたのが<シューベルト>の「アヴェ・マリア」である。

マリア像を見つめながら聞き入る皆の瞳に涙があふれてきた。言葉にできないほどの感動が、今この会堂内を満たしている。神父さえ、この演奏に両手を組んで祈りの姿で聞き入ってその頬には光るものが流れている。

一同感動のうちに演奏が終わり、中村少尉と秋川兵曹の二人は万雷の拍手に送られて「舞台」を降りた。それからしばらく、一同は感動の余韻に浸って席を立つ者はいなかった――

 

それからどのくらいの時間がたったか、やっと皆が三々五々会堂を出てゆくころ、春山兵曹はそっと会堂の前の方に立っている『マリア像』のそばに寄って行った。

「これが、この人が『聖母マリア様』という方ですか・・・」

独り言のように言う兵曹に、青木兵曹が「ああ。なんというか、清純な方だなあ。この方がイエス・キリストさんのお母さんだそうだ」と教えてやった。そしてそっと、十字架に架けられているキリスト像をしめした。

春山兵曹はあまりその辺を知らないので興味をそそられている。青木兵曹が、

「この方は清純な処女(おとめ)のまま、キリストさんを産んだそうな。だから『聖母』と言うらしい。やっぱり神様になる人を産む人はちょっと違うなあ」

と言って自分の言葉に感心しているようだ。春山兵曹は(処女(おとめ)のままで子供を・・・。だからこんなにきれいでせつない感じがするんだろうか)となおもマリア像を見つめる。そこにほかの仲間も来てマリア像を見上げた。

「なんだかこのマリア様、春山兵曹に似てるねえ」

と、そのうちの一人の高梁皆実兵曹が言った。皆が春山兵曹を見た。春山兵曹はちょっとどぎまぎして皆を見つめ返す。

青木兵曹が「ああ、そうだねえ。似てるよ」という。春山兵曹はマリア像を改めて見た、マリアはどこかはかなげでしかしその瞳には強い信念のようなものが感じられる力を持っているようだ。片手には白いユリの花を持って、十字架に架けられたキリストの方に顔を少しだけ向けている。

(自分の息子が磔刑にされているのを見るのはつらいだろうに・・・)春山兵曹は言い知れない悲しみを感じて思わずマリアに同情の感情を持っていた。

が、マリアのその瞳には悲しみだけが湛えられているわけではないのに兵曹は気がついて驚いた。きっと母・マリアは息子・キリストという人物の「母」と言うだけの存在ではないのかもしれない・・・どう言ったらいいかわからないけれど。

(私もこんなふうに強くなりたい。遠く離れた夫をこういうふうに強い意志で支えてあげたい。日本の神様の雄々しさと、マリアさんの信念みたいなものが私にもあればいいのに。・・・なれるだろうか)

春山兵曹は自分自身に問いかけた。

そんな春山兵曹を見る青木兵曹は不意にとある予感を感じた。ただ・・・その予感が何を意味するものかはしっかり分かりはしなかったが・・・その予感はこの後しばらくして現実となるのだった。

 

皆は教会を出て丘を下り始めた。青木兵曹が

「今日はいい心の保養をしたね。清らかなものを見るのもいいもんだね」

と言い皆は同意した。高梁兵曹が、

「そういえば、『大和』にも聖母のような子がいるよね」

と言った。青木兵曹や春山兵曹、ほかの数名が一斉に高梁兵曹を指さして

オトメチャン!

と叫び、高梁兵曹は

「そう!!あの子は今も処女なんでしょう?なんか噂ではあの子の分隊士と何やらあったとかいうけど、あの清純さは聖母マリア様に匹敵するよ。だから処女のままで子供を産むよ」

と言い・・・一同大笑いしながら繁華街に歩いて行ったのだった。

 

そして、リサイタルを成功裏に終えた中村少尉と秋川兵曹は会堂を快く貸してくれた神父に丁重に礼を言い満足感を顔じゅうに表して「武蔵」に戻って行った。

「またやりましょうね、中村少尉!」という秋川兵曹に中村少尉は、「もちろんですよ!ここで十分研鑽を積んだら、いずれはカーネギーホールですよ」と笑った。

秋川兵曹は嬉しそうに両手を振りまわしながら「鴨葱ホール、鴨葱ホール!」と叫んでいた。中村少尉は(ちょっと違うけど。まあいいね。でもこれは夢では終わらさない!)と固く決意をしたのだった――

 

       ・・・・・・・・・・・・・・・

 

シューベルト 「アヴェ・マリア」です。私はこれが大好きです。




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「女だらけの戦艦大和」・アヴェ・マリア1

「女だらけの武蔵」はトレーラーに帰港していた――

 

帰港後の点検が済んで皆はそれぞれの配置で小さな訓練などをして過ごしている。そんなある日、医務科の春山兵曹は北野特務少尉とともに上陸して衛生用品の受領をした。トレーラーの二男島と言うところに内地からの輸送船が来る港がありそこの倉庫内に武蔵の分の衛生用品が積まれている。それのうち当座必要な分を受け取って団平船に乗せて武蔵に帰ってくるのである。

そんな折、春山兵曹が団平船の中から「あれ、なんでしょう」と彼方を指差して声を上げた。北野特務少尉は兵曹が指差した方を見た。

二男島の西端に瀟洒な建物が建っている。それを胸に下げた双眼鏡を目に押し当てて検分した北野少尉はああ、と声をあげて

「あれは春山兵曹、教会だよ。カトリックか何かの教会。ほら、屋根のてっぺんに十字架が建っているだろう。トレーラー諸島にはあちこち教会があるぞ、知らなかったかね?」

と言うと双眼鏡のひもを首から外してそれを兵曹に手渡した。兵曹がそれを双眼鏡で見ると白い教会が日を浴びて光って見える。

「教会、ですかあ。きれいな建物ですねえ」

春山兵曹は感心している。北野少尉は教会では祈りをささげたりさまざまな集まりをしたり、

「そうだ、結婚式もできるらしいぞ」

と言って兵曹を見た。春山兵曹はちょっとほほを赤くして少尉を見た。少尉は「三浦中尉はお元気かね?今度はいつ内地に帰れるかなあ」と独り言のように言う。兵曹はこれも独り言のように「はあ、もうそろそろ手紙が来るころと思います。私も昨日出したところです・・・」

と言って去りゆく教会を見つめる――

 

その日から二週間ほどたったある日の上陸で春山兵曹は数人の仲間とトレーラー本島の繁華街を歩いていた。新婚とあって仲間からはあれこれからかわれ、あるいは羨望されつつの楽しい上陸日。

と、後ろから「早く早く、始まっちゃうよ」という声がして武蔵の乗員の何人かが走ってくるのに出会った。

「どうしたんです」

と春山兵曹の同期の運用科の青木兵曹が走ってくる中の一人に尋ねると、その上等兵曹は息を弾ませて、

「この先の教会で、中村少尉と秋川兵曹がリサイタルをするんだそうだ。貴重な経験だから聴きに行くといいよ」

と教えてくれた。リサイタルとは何ぞや、と春山兵曹たちも一緒になって走りだした。

 

その教会は走って五分ほどの小高い丘の上にある。見晴らしはこの上なく良く、トレーラーの美しい海が一望でき常にやさしい風がさやさやと吹くところである。

ここトレーラー諸島では最も大きな教会で、その会堂の中にはもう沢山の現地民や海軍軍人、一部の陸軍さんもいてリサイタルの始まりを今か今かと待っている。

春山兵曹たちも会堂の一角に座を占めた。春山兵曹は珍しそうに会堂内を見回している。そんな兵曹を青木兵曹がそっとつついて

「これ、みっともない。きょろきょろすんなって」

と言って苦笑した。そばにいた連中が一様に下を向いてこっそり笑った。

やがてこの教会の神父が登壇し、この場に集まった皆に祝福を与える説教をした。帝国海軍や陸軍の中にもキリスト教の信者はいたがそれはほんの一握り、それ以外のものはちょっとだけ面食らった様子ではあったがまじめな顔つきで神父の話に耳を傾けた。

神父は一生懸命の日本語で、

「キョウハ、ここに素晴らしいお二方、オムカエしています。日本のカイグンノ<中村サン>と<アキカワさん>が、ピアノを弾いて歌をウタイます・・・」

と言って段を降りると皆は拍手をした。

段の下には立派なピアノがありそこに、「武蔵」の中村少尉と秋川兵曹が出てくると皆に礼をすると中村少尉はピアノの前の椅子に座った。

秋川兵曹はピアノからちょっとだけ離れた場所に立つと、中村少尉を見かえってうなずいた。中村少尉もうなずくとピアノの演奏を始めた。

「椰子の実」である。素晴らしい演奏に皆が声なき声を上げる。

♪名も知らぬ 遠き島より

流れ寄る椰子の実 ひとつ・・・

美しい声で秋川兵曹が歌いだしその場の皆は聴きほれる。おもに、日本の唱歌や童謡が歌われ帝国陸海軍の将兵は懐かしい思いにとらわれ、現地の人々はまだ見ぬ「日本」に心をはせる。

そんな素晴らしい曲と歌声を聴きながら春山兵曹の瞳は会堂の中のあるものにくぎ付けになっていた。

(あれは・・・いったい誰だろうか)

  <次回に続きます>

 

       ・・・・・・・・・・・・・・・・

「椰子の実」。靖国神社・遊就館に<奇跡の椰子の実>というものが展示されています。これは昭和十九年、島根県出身の陸軍軍属・山之内辰四郎さんがマニラを離れる際、椰子の実に同郷の戦友で先に帰還した方の名前を椰子の実に墨書して流しました。山之内軍属は翌二十年七月戦死なさいましたがその椰子の実はその後なんと三〇数年を流れ流れてその戦友の方の住む港に流れついたのです。

調べた結果この椰子の実は山之内軍属が流したものと判明し、椰子の実は戦後三〇数年を経て軍属の未亡人の胸に抱かれたのです。

遊就館にいらしたら是非これをご覧いただきたいです。

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「女だらけの戦艦大和」・マツコ、迷子になる!?

「女だらけの戦艦大和」には動物が二匹いる――

 

その二匹は、あまりにも暇なので連れだって「艦内旅行」をすることに決めた。言いだしっぺはハッシー・デ・ラ・マツコである。トメキチに、

「ねえ、みんなほとんどで払っちゃっててつまんないわねえ。もうあのマツオカとかいう奴を相手にするのも疲れたし、屋根の上も寒くってあたしには体に良くないわ。・・・あんたこのでかい艦の中を知ってるんならあたしを案内しなさいよ」

と言ったのだ。トメキチも寒いのはあまり好きではなかったし、ご主人の見張兵曹も麻生分隊士も休暇とやらで出かけたので暇は暇である。ただし、誤解のないよう言っておくが見張兵曹はトメキチが邪魔で置いて行ったのではない。

「休暇中は私が預かる~!」と、梨賀艦長が申し出て泣く泣くトメキチを預けたというだけの話である。

ともあれ。

トメキチも(まあこのおばさんも『大和』の中を知っておいてくれた方が何かといいかな)と思い、「そうですね、マツコさん。じゃあ、いっしょに『艦内旅行』しましょうか」と言ってマツコはその大きな体をトップから防空指揮所に降ろしてきた。

「アーラ、『艦内旅行』ってなんなの?」

ときくマツコにトメキチは「初めてこの『大和』に乗ってきた兵隊さんたちは『艦内旅行』と言って中を見て回るの。でもものすごーく大きい艦だから迷子になってしまう兵隊さんもいるの。マツコさんも迷子にならないでね、僕と離れないでちょうだい」と説明してやった。マツコは羽を大きく広げて

「あらやだ。あたしは今まで迷子になんかなったことないわよ。見損なわないでちょうだい」

と言い返した。トメキチは笑って、「それならいいです。じゃあ行きましょうか」と言ってマツコの前に立って歩き出した・・・

 

「そうだ、マツコサン」とトメキチは防空指揮所を出る前にマツコを振り返ると言った、「そこら辺にあるものをいたずらしたらいけませんよ。何が起きるか分かんないから」。

マツコは羽を膨らまして「何いってんのよあんた、あたしはあんたみたいな子供と違うんだからいたずらなんかしないわよ。まったく・・・」と少し怒ったようだ。

トメキチは「それならいいですが」と言うと前楼裏にあるラッタルへの扉を開いた。ボーっと、風が吹き上げてきた。

マツコが「こ、ここを降りるの」と少しばかりビビったような声を出した。トメキチは何事もないような顔で

「そうですよ。ここを降りなきゃ下へは行かれないですもん」

と言うとさっさとラッタルを降りてゆく。マツコはあわてて「ちょ・・・ちょっと待ちなさいよアンタ。あたしを置いて行くんじゃないわよ・・・」と後を追いラッタルを降りる。両方の羽でラッタルを持って降りるのだが、慣れない作業のため危なっかしいことこの上ない。

やっとこさっとこ、居住区のある上甲板に降りた二匹。マツコはもうへとへとである。そんなマツコを見てトメキチは「あ、マツコサンは飛べるんだから何もラッタルを降りなくてもよかったですね、飛んで最上甲板に降りればよかったのにね」といまさらながら言って、マツコは

「なによう!アンタわざとやったわねえ!あたしをはめたんでしょう!?」

と大変に怒って羽をバサバサと叩いた。トメキチは全く気に留めないで「さあ行きましょう」と言うとサクサク先を歩く。あわててそのあとを追うマツコ・・・

休暇中とあって行きかう兵がまだいない。

「ここは何なのよ。変な部屋みたいのがあるばっかで面白くないわねえ」

マツコはぶつぶつ言っていたが不意に、「あら、なんかいいにおいがするわよう」というなり走り出してしまった。トメキチは「あ、おばさん待ってよう」と叫んだがそのときちょうど向こうから歩いてきた士官に「おお、トメキチぃ!」と抱きとられてしまい、後を追い損ねた。(まあおばさんのことだから変なこともしないだろうから急がなくってもいいかあ)トメキチはそう思った。

 

マツコは「いいにおい」を追った。これは上甲板後部にある烹炊所からの調理の匂いだった。いつも腹ペコで食いしん坊のマツコにはとても魅力的なにおいである。

はたしてマツコは兵員烹炊所の前に来た。そっと中をのぞくと多くの主計兵が忙しく立ち働いている。(これじゃあちょっと何かをいただきます、ってわけにはいかないわねえ)と思ったマツコだが、落胆したその時一人の主計兵がマツコを見つけた。

「あ!見てみて、あれってハシビロじゃないかしら?」

その主計兵は、包丁を持ったままの手でマツコの方を指している。マツコは一瞬、殺されるのではないかと恐れて羽を広げかけたがそうではないので安心した。

烹炊班長の森脇兵曹が、「おお、ハシビロじゃ。どうしたんねこんなとこに来て?何か欲しいんか?」と言うと、そばにあった魚の切れっぱしをマツコに放ってやった。マツコはそれを器用にくちばしで受け止めた。それを見ていた兵たちが「おお、上手~」と口々に言ってマツコは気を良くした。

マツコにあちこちから魚の切れ端はもとより、大根のしっぽやこんにゃくの端っこ、なると巻きの半分ほどが放られ、それをマツコは器用に受け止め食った。

「見て、ハシビロがこんにゃく食った!」と皆は大喜びである。そのうち腹いっぱいになったマツコは烹炊所を後にして又歩き出した。

それから下士官浴室で浴室掃除中の下士官と一緒に掃除をしたりして過ごしたマツコはもう皆の人気者である。

マツコはすっかり気を良くしている。そして「そういやあの子供、どこに行っちゃったのかしらねえ~」と言いながら元来た道を戻ろうとしたが・・・・

どこよ、ここ!?

と真っ青になった。どこから来たのかどこへ行けば元の場所に戻れるのか全く分からなくなっていた。

「ちょっとお、トメキチ!アンタどこにいるのよー!」

叫びながら狭い廊下を走るマツコ。途中で出会った兵たちが「うわあ、ハシビロだあ」と大喜びしている。

がマツコはそれどころではない、必死になって元の場所を探す。でも・・・みつからない。

そのうちドアのあいた部屋を見つけそこに誰もいないのを見たマツコは「ちょっと休ませてよね」と言うとその部屋に入って机の前の椅子に座った。机の上には何やら難しそうな機械が並んでいた。そしてその手前にはマツコの気をそそる「モノ」が・・・

マツコはトメキチとはぐれてクサった気を紛らわさんと、それをもてあそび始めた・・・

 

「なんだ、『大和』から緊急電だ」

駆逐艦・無花果の電信員が無電機から顔をあげて叫んだ。聞きつけた谷航海長が「どうした、なんて言ってる?」と飛んできた。

電信員は片耳レシーバーに神経を集中させると、「・・・ワレ、マイゴナリ。ワレ、マイゴナリ。・・・いったい何なんでしょうね」とわけがわからないという顔をした。

「『大和』に発光信号を送れ。『意味不明の無電、そちらから発信あり。発信者の特定願う』」

谷航海長はそう言って甲板に上がって行った。

すぐに発光信号が『大和』に送られ、それを信号員が受信し大騒ぎで副長以下が捜索したところ、ハッシー・デ・ラ・マツコが上甲板の無電室で電鍵のキーを叩いているのが見つかり「これか!」とマツコを保護。駆逐艦・無花果に解決を報告した。

副長は艦長にこれを報告、梨賀艦長は「へえ!あのハシビロは無電も打てるんだねえ。トメキチもとても役に立つけどハシビロも訓練しだいで役に立ちそうだね」と大喜びしたとか。

 

トメキチと艦長室で再会を果たしたマツコは

「トメキチ~、あんたいやよ~あたしを一人にしちゃあ~」

と泣いてすがって、トメキチはなんだかとても「むずがゆい」ような気分になったという・・・

 

   ・・・・・・・・・・・・・・・・

久々の更新となりました。共有のPCだといろいろ不都合が多い、ああ自分のPCが欲しいです。


電鍵です(WIKIより)

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大和 | コメント:6 | トラックバック:0 |

「女だらけの戦艦大和」・そろそろ人生・・・

「女だらけの戦艦大和」はただ今兵器増強中――

 

そんな中、梨賀艦長・野村副長・森上参謀長がひと部屋に集まって何やらしている。内地での久しぶりの正月を「正月らしく過ごそうぜ」というわけで、何やらたくさん持ち込んでいるようだ。

「酒酒!!呉の銘酒・万福に鴨鶴、それにみんな大好き月経冠だあ!」

と野村副長が酒の一升瓶を抱えてくれば森上参謀長は「正月と言えばおせち料理じゃないか!昆布巻きに伊達巻。それに田作り。おう、雑煮の準備はいいかあ!?」とお重を抱えてくるし梨賀艦長はエヘンと威張って入口に立って

「これをお忘れではないかい?」

とニヤついている。

「へ?何をだね?」

と振り向いた復調と参謀長にほらっ、と梨賀艦長が突き出したのは「海軍きゃんきゃん」新年号付録の『初笑い!連合艦隊司令官福笑い』である。

「おお!それは!」

と副長も参謀長も駆け寄ってそれを手に取った。「ほう、これは山本いそ長官だ・・・これはウワハハハ、宇柿さんだよお!?オハハハハ!!!」と腹を抱えてバカ笑いの副長・参謀長に梨賀艦長は両手を腰に当てて、

「どうだ、今からこいつらをめちゃめちゃな顔にして笑ってやるんだ。面白いぞぉ!」

という。副長と参謀長は手を叩いて大笑いしてさっそく福笑いをテーブルの上に・・・

 

三人はおせちをつまみながら福笑いに興じた。まず山本長官を攻略、そのあと宇柿連合艦隊参謀長を撃沈、そして伊藤整子軍令部総長を、最後は小沢冶三(はるみ、と読んでね)中将を総攻撃して大笑いのうちに終了。

「ああ・・・可笑しい。しかしすげえ物を『海きゃん』も付録に付けたなあ。こんなもん付けて大丈夫なのかなあ、GFの逆鱗に触れて発禁とかにならんかなあ、心配だ」

という参謀長に梨賀艦長はチッチッと右手の人差し指を立てて左右に振って見せた。そして、

「大丈夫なんだな、それが。この企画は山本長官直々に『海きゃん』編集部に持って行ったらしいんだから。まあ、宇柿さんや伊藤さんは嫌がってたらしいけど長官の企画じゃあ文句言えないよ」

と言い二人は呵々大笑した。そのあと、「じゃ、ゆっくり酒でも飲もうかね」ということになった。

 

月経冠を艦長のコップに注ぎ入れながら参謀長は「なあ、梨賀」と言った。梨賀艦長はこぼれそうに注がれた酒をおっとっと、と言いながらすすってから「なんだ」と言った。

参謀長は「梨賀は今回は家に帰らんのかね」と言って今度は副長のコップに酒を注ぐ。副長はちょっと頭を下げてそれを飲む。

艦長は「帰んない」と言った。酒をあおってから「帰ってもおふくろさん忙しいし、寒いからいやだ」という。副長はちょっと意外そうな顔つきで艦長を見た、そして「いつだったか呉に帰った時艦長のお母様がいらして、一緒に食事をごちそうになりましたっけ。あの時のお返しをしなきゃいけないと思っているんですが、いつか是非お会いさせてくださいよ」と言った。

艦長は

「ああ!そんな事があったけねえ。いや別にお返しなんかいいから!・・・てか母親なんていつになっても口うるさいだけだから嫌なんだよね、会いたいは会いたいんだけどさ」

と言って笑った。

参謀長は「確かに、母親は口うるさい」と静かに言った、「でもありがたいものでもあるがね。私は最近自分のしぐさが母親にそっくりになってきていいような悪いような・・・」。

副長が顔をあげて、

「それ私もありますよ!ちょっとしたしぐさが似てきて、いつだったか上陸のときに会った父親に『次子は母さんそっくりのことをするなあ。その手つきは母さんそのものじゃないか』と言われましたよ」

と言い三人はなんだか気恥ずかしいのか、ふんわり笑った。

「そういえば」と副長が言葉をつづけた。

「昔ですがね、私が子供のころ私の母方のじいさんが私の母に『お前、しぐさまで母さんに似てきたじゃないか、顔だけじゃないんだなあ女ってものは』って言っててその時はどういうことかよくわからなかったですが・・・こういうことだったんですかねえ」

艦長がうなずいて、「そうだね。女ってものはこうして次世代に命を繋いでゆくんだろうね。それがわかってくるころには・・人生そろそろ真ん中あたりに掛ってきてるんだろうねえ」と言った。珍しくしみじみとした艦長の言葉と声音にほかの二人もしんみりとした。

「人生・・・真ん中あたり。てことはもう若くはないってことでしょうかねえ」と副長がため息つくとやおら参謀長がいきり立ち、

「否!まだまだ人生真ん中ではないか。ものは考えようだ。<もう>ではなく<まだ>と思えば人生もまだ先は長いぞ。それに」

「それに?」と艦長と副長が声をそろえて聞くと参謀長は

艦艇―ズは船出したばかりだ!この先戦争に勝ったらアメリカのカーネギーホールやフランスのオペラ座で公演をしなけりゃいかん。しんみりしてる暇はねえぞ、いいか!」

と檄を飛ばした。

とたんに、

「おお、そうだった。私たちは艦艇―ズナッシーツッチーモッチーだ!おおう、今年もやるぞお。艦艇―ズ万歳、天皇陛下万歳、帝国海軍ばんざーい!!」

と大盛り上がりな艦長と副長・・・

それに唱和する参謀長も・・・本人たちは知る由もないが・・・その姿はそれぞれの母親にそっくりの喜びようだったのだ。

これを遺伝というのだろうか。いずれにせよ、こうして遺伝子は次代へと紡がれてゆくのだろう。

そしてこの事実は「人生中ほど」になるまで気がつかない――

         ・・・・・・・・・・・・・・

人間、男でも女でも年をとると自分の親にそっくりなしぐさを見出すようです。私も時折「こういうところ似てるなあ」と思います。

が、一番似たくないのは性格でしょうか・・・(苦笑)。

 

中牟田俊男さん(海援隊)のソロ曲「人生真ん中あたり」。私の好きな歌の一つです。最近しみるなあ、この歌が・・・。





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「女だらけの戦艦大和」・そろそろ人生・・・

「女だらけの戦艦大和」はただ今兵器増強中――

 

そんな中、梨賀艦長・野村副長・森上参謀長がひと部屋に集まって何やらしている。内地での久しぶりの正月を「正月らしく過ごそうぜ」というわけで、何やらたくさん持ち込んでいるようだ。

「酒酒!!呉の銘酒・万福に鴨鶴、それにみんな大好き月経冠だあ!」

と野村副長が酒の一升瓶を抱えてくれば森上参謀長は「正月と言えばおせち料理じゃないか!昆布巻きに伊達巻。それに田作り。おう、雑煮の準備はいいかあ!?」とお重を抱えてくるし梨賀艦長はエヘンと威張って入口に立って

「これをお忘れではないかい?」

とニヤついている。

「へ?何をだね?」

と振り向いた復調と参謀長にほらっ、と梨賀艦長が突き出したのは「海軍きゃんきゃん」新年号付録の『初笑い!連合艦隊司令官福笑い』である。

「おお!それは!」

と副長も参謀長も駆け寄ってそれを手に取った。「ほう、これは山本いそ長官だ・・・これはウワハハハ、宇柿さんだよお!?オハハハハ!!!」と腹を抱えてバカ笑いの副長・参謀長に梨賀艦長は両手を腰に当てて、

「どうだ、今からこいつらをめちゃめちゃな顔にして笑ってやるんだ。面白いぞぉ!」

という。副長と参謀長は手を叩いて大笑いしてさっそく福笑いをテーブルの上に・・・

 

三人はおせちをつまみながら福笑いに興じた。まず山本長官を攻略、そのあと宇柿連合艦隊参謀長を撃沈、そして伊藤整子軍令部総長を、最後は小沢冶三(はるみ、と読んでね)中将を総攻撃して大笑いのうちに終了。

「ああ・・・可笑しい。しかしすげえ物を『海きゃん』も付録に付けたなあ。こんなもん付けて大丈夫なのかなあ、GFの逆鱗に触れて発禁とかにならんかなあ、心配だ」

という参謀長に梨賀艦長はチッチッと右手の人差し指を立てて左右に振って見せた。そして、

「大丈夫なんだな、それが。この企画は山本長官直々に『海きゃん』編集部に持って行ったらしいんだから。まあ、宇柿さんや伊藤さんは嫌がってたらしいけど長官の企画じゃあ文句言えないよ」

と言い二人は呵々大笑した。そのあと、「じゃ、ゆっくり酒でも飲もうかね」ということになった。

 

月経冠を艦長のコップに注ぎ入れながら参謀長は「なあ、梨賀」と言った。梨賀艦長はこぼれそうに注がれた酒をおっとっと、と言いながらすすってから「なんだ」と言った。

参謀長は「梨賀は今回は家に帰らんのかね」と言って今度は副長のコップに酒を注ぐ。副長はちょっと頭を下げてそれを飲む。

艦長は「帰んない」と言った。酒をあおってから「帰ってもおふくろさん忙しいし、寒いからいやだ」という。副長はちょっと意外そうな顔つきで艦長を見た、そして「いつだったか呉に帰った時艦長のお母様がいらして、一緒に食事をごちそうになりましたっけ。あの時のお返しをしなきゃいけないと思っているんですが、いつか是非お会いさせてくださいよ」と言った。

艦長は

「ああ!そんな事があったけねえ。いや別にお返しなんかいいから!・・・てか母親なんていつになっても口うるさいだけだから嫌なんだよね、会いたいは会いたいんだけどさ」

と言って笑った。

参謀長は「確かに、母親は口うるさい」と静かに言った、「でもありがたいものでもあるがね。私は最近自分のしぐさが母親にそっくりになってきていいような悪いような・・・」。

副長が顔をあげて、

「それ私もありますよ!ちょっとしたしぐさが似てきて、いつだったか上陸のときに会った父親に『次子は母さんそっくりのことをするなあ。その手つきは母さんそのものじゃないか』と言われましたよ」

と言い三人はなんだか気恥ずかしいのか、ふんわり笑った。

「そういえば」と副長が言葉をつづけた。

「昔ですがね、私が子供のころ私の母方のじいさんが私の母に『お前、しぐさまで母さんに似てきたじゃないか、顔だけじゃないんだなあ女ってものは』って言っててその時はどういうことかよくわからなかったですが・・・こういうことだったんですかねえ」

艦長がうなずいて、「そうだね。女ってものはこうして次世代に命を繋いでゆくんだろうね。それがわかってくるころには・・人生そろそろ真ん中あたりに掛ってきてるんだろうねえ」と言った。珍しくしみじみとした艦長の言葉と声音にほかの二人もしんみりとした。

「人生・・・真ん中あたり。てことはもう若くはないってことでしょうかねえ」と副長がため息つくとやおら参謀長がいきり立ち、

「否!まだまだ人生真ん中ではないか。ものは考えようだ。<もう>ではなく<まだ>と思えば人生もまだ先は長いぞ。それに」

「それに?」と艦長と副長が声をそろえて聞くと参謀長は

艦艇―ズは船出したばかりだ!この先戦争に勝ったらアメリカのカーネギーホールやフランスのオペラ座で公演をしなけりゃいかん。しんみりしてる暇はねえぞ、いいか!」

と檄を飛ばした。

とたんに、

「おお、そうだった。私たちは艦艇―ズナッシーツッチーモッチーだ!おおう、今年もやるぞお。艦艇―ズ万歳、天皇陛下万歳、帝国海軍ばんざーい!!」

と大盛り上がりな艦長と副長・・・

それに唱和する参謀長も・・・本人たちは知る由もないが・・・その姿はそれぞれの母親にそっくりの喜びようだったのだ。

これを遺伝というのだろうか。いずれにせよ、こうして遺伝子は次代へと紡がれてゆくのだろう。

そしてこの事実は「人生中ほど」になるまで気がつかない――

         ・・・・・・・・・・・・・・

人間、男でも女でも年をとると自分の親にそっくりなしぐさを見出すようです。私も時折「こういうところ似てるなあ」と思います。

が、一番似たくないのは性格でしょうか・・・(苦笑)。

 

中牟田俊男さん(海援隊)のソロ曲「人生真ん中あたり」。私の好きな歌の一つです。最近しみるなあ、この歌が・・・。





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大和 | コメント:6 | トラックバック:0 |
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