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「女だらけの戦艦大和」番外編・連合艦隊連合運動会4

「連合艦隊連合運動会」は二日目の海上運動会に決戦の場を移した――

 

今日は空母『加賀』・『赤城』がメイン会場になり、この二隻はぎりぎりまで接舷している。その周りをU字型に中・小型空母が取り巻く。

皆は防暑服を着込み『美白』を体や顔に塗って参加。いったいこれだけの大人数が二隻に乗りきれたのだろうか?と思うがまあその辺は突っ込まないでほしい。

ともあれ、放送席から美声の兵曹の声が流れだした。

「本日は競技に先立ち『水着』ファッションショーを行います」

皆は「え!?ファッションショー!?しかも水着のってどういうことさ?」とぼそぼそ話し出したが、『赤城』の中央部分に設営されたステージを注目した。やがて軍楽隊の「椰子の実」の演奏とともにひとり目が登壇。実況員が「我々海軍軍人は普段の訓練ではふんどしを締めて水泳をしていますが休暇で海水浴をする時、下はふんどしで胸は丸出しというのではちょっとという声にこたえここに連合艦隊制定の水着の数々をご紹介いたします」と放送、皆は「わ―っ!」と狂喜。

ひとり目は、海防艦の一等水兵で黄色の無地のセパレーツ水着。胸の部分は前で縛るようになっている。下は「西洋ふんどし」と皆が呼びならわす「ショーツ」。介添えは彼女の班長。他にも九七艦攻の搭乗員のペア(海軍では三人でも四人でも『ペア』と呼びます。九七艦攻は三人組のペアです)だとか、ニヒルな零戦搭乗員と整備員、機関兵や衛生兵が登場。皆おとなしめの水着で好感が持てる。

数組目に出てきたのが『大和』の見張兵曹、介添えは当然麻生分隊士である。皆は「ギャーッ!可愛い!」と大絶叫。

オトメチャン自身もちょっとヘアカットをしてますます可愛いのだが、オトメチャンの着ている水着は可愛いピンク地に色とりどりの花が散らしてあるもので、胸当ては前縛り。ショーツの上にひざ丈のパレオを巻いている。いかにも南方風の水着のそのパレオが、吹きつけてきた風にまくれ上がってショーツに包まれた股の部分がちらっと見えた。とたんに「おおーっ!萌えちゃう~~!」と叫ぶ皆。これには宇柿参謀長も山本いそ長官も唾を飲む。高級将校たちの心をオトメチャンはわしづかみにしたようだ。他の将兵たちも「萌え!萌え!」と叫んでいる。

麻生分隊士はそれを見て「萌えるな!俺のオトメチャンだっ!」と一喝。余計に盛り上がるギャラリー。興奮はなかなか冷めない。

ファッションショーの雲行きがあやしくなってきたのはその直後だった。オトメチャンで兵・下士官の水着は終わりそのあとから士官以上の水着のお披露目になったのだが、そのデザインとモデルが比例していないと言う惨事が起き始めたのだ。

まずは『大和』機関長・浜口大尉のハイビスカス柄『ワンピース』スタイルだが、でっかいだけの体の大尉のワンピース姿ははっきり言って醜悪。皆は黙ってしまった。

そのあと、『武蔵』の猪田艦長の椰子の木柄ワンピース水着姿ではその均整のとれた体に羨望のため息が皆の間から漏れたが、次からはもういけなかった。山口たも少将・福田赳子航空司令・南雲忠代中将・梨賀『大和』艦長・同森上参謀長・駆逐艦『無花果』菅直子艦長などが次々出てきたのだがその皆がつけている水着は思いっきりの『ビキニ』。どうやらこの『ビキニ』に関しては高級将校用のようだ。

「おえっ・・・なんだあの体。あれにあの水着はねえんじゃないの?ひでえよ、あれは」「なんでオランウータンが水着着てるの?」「ばあさんのビキニなんかみたくねえってのよ。キモッ」

伊号八〇〇潜の乗組員たちが吐きそうになって言うと、そのそばに居た特殊潜航艇の乗員が「死ぬ前にあんなものを見せられた日にゃ、死にきれないなあ」と言ってその場にうずくまってしまう。なんだか厭世感にとらわれてしまったようだ。良くない傾向である。

落胆はやがて怒りに変わる。軍楽隊の演奏に乗せてステージを跳ねまわる連中に、どこからともなくモノが投げつけられる。空薬莢、模擬砲弾、立て看板、古ふんどし、くさった魚・・・そして怒号も投げつけられる。

「ひっこめ!見苦しいー!」「オトメチャンを出せ!」「そうだ、あの兵曹を出せ!」

その剣幕に山口司令官たちは恐れをなして引っ込み、実況員は「物を投げないでください!・・・わかりました、もういっぺん下士官以下を登場させます」と言って、オトメチャンほかの兵が再び登壇して皆は沈静化。

 

♪「・・・気を取り直して、プログラム十番。砲術科員による機銃・砲塔弾込め競争です」

まずは機銃員が『加賀』の飛行甲板に特設された機銃座で行う。壱レース六組で行われその速さを競うのだがどこも早い。

ほとんど0コンマを競った。

同じように砲塔も行われたがこれも腕に覚えのある砲術員の手によるもので同着が続出。

その様子に山本いそ長官は満足そうにうなずいている。先ほどの宇柿参謀長の『ビキニ』姿でいやな汗をかいたが今はすがすがしい思いである。(これなら、連合軍撃滅も間近だな)

 

♪「プログラム十一番。ラッタルかけ上り駈け降り競争です」

『赤城』の飛行甲板上、それはそれはでかいラッタルが作られている。合計六基。腕に、いや足に覚えのある各艦の乗員たちが今や遅しと号令を待っている。階級は関係ないので、『長門』からは昆野副長。『大和』からは野村副長、『武蔵』からは加東副長と、第一レースは因縁の?副長対決の様相である。二人は真っ向から見つめあって「負けないよ」「ええ負けるもんですか」といいあって火花を散らす。他の三基の選手は「うわあ。怖いなあ」とビビっている。

いよいよ「スタート」。副長たちは鬼のような形相でラッタルに取りつくと駆け上がり始める。だが。まず加東副長が「うう。足に来たあ!」とペースが落ち始める。それを見て、野村副長が「チャンス!今だあ」と一気に攻勢をかける。が、ラッタルに足が引っ掛かり数段落下。昆野副長は頂点を見つめてただひた走る。他の兵と、体勢を立て直した二人の副長がそのあとを必死に追うが丸で羽が生えたような昆野副長にはかなわない。第一レースは文句なく『長門』の昆野副長が勝った。

野村副長は捻挫しかかった足をかばいつつ言った。・・・「仕方ないね、国の誇りの『長門』にゃ勝てんよ」。

 

♪「プログラム12番。主計科員による樽担ぎです」

放送員の声に「なんなんだ?樽かつぎって?」と首をかしげる皆だが、この競技はある意味一番過酷な競技と言っていいだろう。

『大和』主計科の福島大尉と、「航海科」の松岡分隊長は今日は応援団であるから無責任にノセ回る。

「主計科の諸君、熱くなれよ~~!いいか、あきらめちゃダメだあきらめたらもう、そこで終わりなんだからね。いいかい、熱くなるんだぞ―っ」

しかし、レースに出場の主計科員たちはなんだか元気がない。

それもそのはず、彼らのスタート地点にはあるものが鎮座していたからである。しかもこれは、単なる樽ではなかったのだ・・・

 (次回に続きます)

 

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

主計科の階級章です。下士官用。
 

主計科階級章、士官以上用。(画像はすべてお借りしました)



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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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