女だらけの戦艦大和・総員配置良し!

女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?

「女だらけの戦艦大和」・オトメチャンのお泊り2

「女だらけの戦艦大和」航海科の見張兵曹は、無花果艦長に連れられて行っちゃった――

 

『大和』に接舷していた『無花果』のランチに、菅艦長と見張兵曹が乗り込んだ。上から梨賀艦長や野村副長、森上参謀長そして麻生分隊士の声が降ってくる。

「無花果艦長、いいか。オトメチャンにちょっとでも傷つけやがったら承知しねえからな。覚えとけよ!」――普段の声音とは全く違ったこれは梨賀艦長。

「無花果艦長、オトメチャンの嫌がることなんざさせんじゃねえぞ!ええなあ!」――普段からオトメチャンの事になると怖い森上参謀長。

「無花果艦長、オトメチャンに手を出さんで下さいよ!この子はまだ乙女なんですからねッ!」――必死な声音は野村副長。

「オトメチャ―ン、オトメチャンの手帳に俺の写真をはさんでおいたからさみしくなったらそれ見て頑張れよ~!」――副長以上に必死、いや悲痛な声は麻生分隊士。

「ワンワン、ワン!」――トメキチも必死である。

見上げた無花果艦長は思わず「げっ」となった。そして(俺はとんでもない兵隊を預かってきちゃったんじゃねえかな。ヤッパリ梨賀艦長が言った小泉、とかいうのにしときゃあよかったかな)とものすごい後悔の念が湧いてきた。

しかし、もうランチは進んでいる。

(こうなりゃ預かったもん勝ちだぃ。こっちの流儀でさせてもらうぜ)と無花果艦長は腹をくくった。

見張兵曹は遠ざかる『大和』を少し感傷的な気分で見つめていた。

そして艦上の三人と一匹、防空指揮所のみんなや舷側に何事かとたち並んでいる他の分隊の兵の姿がにじんできたころ、やっとランチの中で一息ついてあらためて無花果艦長を見る余裕を持った。

(え、こんなすごい恰好だったっけこの艦長さん)見張兵曹は少しぎょっとした。菅艦長の軍帽の徽章は青さびているしかたちは崩れている。更によく見れば、軍服さえあまりきれいとは言い難い。そして、兵曹がこっそりランチを漕艇している兵を見ればこれが善行章三本も着けた一等水兵である(善行章は海軍に三年いるごとに一本付く。この兵のように善行賞をたくさん持ちながら進級が遅れることを「お茶をひく」という)。

(うわあ、ずいぶん海軍の飯食ってるなあ。海軍に九年もいてまだ一等水兵ってお茶ひきもいいとこじゃん・・・)

見張兵曹はちょっとげんなりした。自分は下士官ではあるが海軍とは不思議な場所で階級より「飯の数が多い」ほうが威張る場合がある。この兵の場合は完全に見張兵曹より飯の数も多ければ年の数もずっと多いようである。

見張兵曹はその兵の様子をうかがった。なんだかぶっちょうずらでめんどくさそうにしている。しかもこいつのジョンベラ(水兵服のこと)も相当キタナイ。水兵帽など形がないくらいへたれてしまっている。

その時艦長がやおら口を開いた、「おめえ、駆逐艦は初めてかぁ!」。

その物のいい方に見張兵曹は度肝を抜かれた。今までもっと上品な口をきいていたんではないか、このヒト?

驚きのあまりポカンとしている見張兵曹に例の善行章三本が、「艦長が聞いとられるじゃねえか、答えろよこの馬鹿ったれ」とののしる。更に驚いて見張兵曹、しどろもどろで「は、はい。いえ、初めてです」と答えた。善行章三本は、ケッと横を向いて「これだからよ。大戦艦のお嬢さんは困るってんだよ」とつぶやいた。

無花果艦長もふ―っとため息をつく。見張兵曹は困ってしまって下を向いてしまった。

 

そしてランチはとうとう「駆逐艦・無花果」に到着、接舷した。

見張兵曹は無花果艦長にしたがって乗艦した。するとドヤドヤと『無花果』の乗組員が彼女たちを取り巻いた。

口々に、「誰ですこいつ?」「どこのお嬢さんですかぃ。ずいぶんすましてるねえ」「こいつ、うちに乗るのかあ?」と叫んでいる。見張兵曹は一歩二歩とその場を退いてしまった。すると無花果艦長がワハハと豪快に笑って見張兵曹の背中をドカン、と叩いて言った。

「こいつは『大和』から借りてきたんだ。田中兵曹が戻るまでの代役だ。あんまりいじめねえでやってくれよ、何でもあっちの艦長だの副長だの、分隊士の情婦らしいからな。あとで文句言われちゃかなわんからな」

「へええ!艦長と副長と分隊士の情婦!すっげえのをまた、貸してくれたもんですねえ!」

感心する乗組員、見張兵曹は(情婦っていったいなんだろう。そしてわたしはちゃんと何事もなく帰れるんだろうか)とものすごい不安になっていたのだった。

その不安な見張兵曹に一人の兵曹が近づいて、

「おいお前さん。こっちに来な」

と手招いた。見張兵曹は弾かれたようにその兵曹の前に立った――

    (次回に続きます)

 

          ・・・・・・・・・・・・・・

いよいよオトメチャン『無花果』に乗艦。

なんだか勝手の違う人たちばかりでうまくやれるんでしょうか。しかし、「艦長や副長や分隊士の情婦」だなんて、一体何という認識なんでしょうね無花果艦長ったら。


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「女だらけの戦艦大和」・オトメチャンのお泊り1

「女だらけの戦艦大和」は今夜も静かにその身をトレーラ島の海に浮かべている――

 

今夜の見張りの当直は、小泉二等兵曹と亀井一等水兵、そして艦長伝令の石場一等兵曹。今日はそれに麻生分隊士がいる。その麻生少尉は何やら落ち着かない様子で顔色さえよくない。

小泉兵曹が双眼鏡に目を当てたまま、「オトメチャン大丈夫なんでしょうかねえ?」と言う。麻生分隊士が、「・・・大丈夫に決まってるだろうが。お前なあ、人を不安にさせるようなこと言うんじゃねえよ!」と不機嫌そうに唸る。そのそばでトメキチが所在なさげにうずくまっている。

見張二等兵曹は、昨日から五日間ほどの約束で「駆逐艦 無花果」にお手伝いに行っているのだ。

 

昨日の夕方頃、無花果艦長の菅 直子中佐がランチを仕立てて『大和』に来て、梨賀艦長に「無花果(うち)の見張りが一人急性盲腸炎で休みます、誰か見張り員を一人しばらく貸していただきたいんですが」と申し出たのである。

梨賀艦長は最初「じゃあ、小泉兵曹をやろう」と言って無花果艦長に話すと無花果艦長はうんと言わない。

梨賀艦長は「え?いやなの?小泉兵曹いいと思うんだけど。・・仕方ない、じゃ、経験を積ませるために酒井上水を行かせようか」と言った。しかしこれもうんと言わない無花果艦長。

梨賀艦長はほとほと困った。「他に誰がいるのよ、あ!麻生少尉はダメだよ、彼女は分隊士兼分隊長、だからね!」そういう艦長に無花果艦長はにやっと笑うと、「オトメチャン、がいるじゃない」と言って来たのだ。

オトメチャン、という言葉を聞いてそれまでおとなしく梨賀艦長のそばに座っていたトメキチがハッとしたように顔をあげて無花果艦長を見ている。

オトメチャンを、という言葉に驚く梨賀艦長、いったいどうしてこいつはオトメチャンを欲しがるのか。オトメチャンは「大和」の見張り部門の秘蔵っこであるからやたらと貸せるものか。

梨賀艦長の必死の抵抗空しく、オトメチャンを無花果にお手伝いに行かせることに決まってしまったのだ。さあ、それを聞いた麻生少尉・野村副長・森上参謀長の怒りすさまじく、梨賀艦長は一瞬命の危険さえ感じてしまったほどである。

無花果艦長のいる前で、しかしそんな姿ははなっから眼中にないのか、麻生・野村・森上の三人は第一艦橋に飛び込んできて「一体どういうつもりなんですかあ!艦長!」「なんでオトメチャンをよそにやるんだぁ!」「てめえのやってること、わかってんのかあ!」と口々に怒鳴り倒す。

そしてハアハアと息を荒げて梨賀艦長に詰め寄った。

トメキチさえ梨賀艦長に飛びついて抗議しているようである。

梨賀艦長は両手を胸のあたりまで上げて防御の姿勢をとりながら、「だ、だってどうしてもって無花果艦長が言うから」としどろもどろ。

それを聞いて三人の鋭い視線がぎろりと無花果艦長の菅直子中佐をにらんだ。トメキチが喉の奥で唸っている。

「どうしても、だと?無花果艦長がぁ!」

森上参謀長がどすの利いた声で唸った。菅中佐は、ちょっと後ずさりをした。嵩にかかって野村副長が、「無花果艦長が、オトメチャンに何の用だぁ!」とこれも唸る。トメキチが今までないくらい大きな声で吠える。

菅中佐はまた後ずさりしながら、「私は・・・イチジク浣腸じゃないもん・・・」と泣きだしそうな顔で言う。麻生少尉が「あなたは無花果艦長でしょう?どうでもいいですが何故オトメチャンを?」とこれも唸って詰め寄る。菅中佐は梨賀艦長に助けを求めるような瞳を向けた。

さすがにかわいそうになったのか、梨賀艦長は菅中佐と三人と一匹の「オトメチャン親衛隊」の間に割って入った。

そして事の顛末をざっと話した。すると森上参謀長が、

「ならほかのやつでもいいじゃあねえか、オトメチャンは俺たちのものだぞ。梨賀だってわかってんじゃねえか!」

と怒鳴った。ビクつく無花果艦長。それをまあまあ、と制して梨賀艦長は「でももう決めちゃったからここは堪えてつかあされや。『借用書』ももらっちゃったし」と一枚の紙をひらひらさせた。

それには無花果艦長のかな釘流の文字で『見張兵曹をお借りします 無花果艦長 菅直子中佐』と書いてある。「こんなもの・・・」と小さな声で麻生少尉は唸りをあげたが仕方ない。野村副長もさすがにあきらめたようで「全く。私たちに一言も相談なしでこういうことをするんですからねえ。――ところで肝心のオトメチャンを呼ばないと」と言ってオトメチャンを探しに艦橋を出たのだった。

間もなく、野村副長が見張兵曹を伴って艦橋にやってきた。見張兵曹はもう話を聞いたようで、少し不安げな表情である。その兵曹にそっと寄り添うトメキチが可愛い。

艦長の前に兵曹が立つと、艦長は「突然で申し訳ないが、五日間ほど駆逐艦・無花果にお手伝いに行ってほしいの。ちょっと駆逐艦は勝手が違うかもしれないけど、よく菅中佐に頼んでおくから。悪いようにはさせないからね」と言った。森上参謀長が「オトメチャンに悪いことしやがったら主砲ぶち込んでやるぞ」と毒付く。

梨賀艦長はその森上参謀長にたしなめるような視線を送ってから、「いいかな見張兵曹。今から十分以内に用意をして最上甲板に来なさい」と言った。

見張兵曹は艦長たちに敬礼して、「わかりました。『大和』の名に恥じないよう務めを果たしたいと思います」と言ってそこを出た。トメキチがそのあとをついてゆく。

更にそのあとを、麻生少尉がサッと追いかけて行った。

 

居住区へのラッタルを降りたところで麻生少尉は見張兵曹を呼びとめた。

「はい」と立ち止まって振り返ったオトメチャンを麻生少尉は抱きしめた。抱きしめながら少尉は、

「オトメチャン、よくよく気をつけるんだよ。駆逐艦とここでは全然勝手が違うからな。変なことされたり無理言われたら『大和』の麻生の女だと言うんだよ・・」

ととてもおかしなことを話し出した。

さすがに麻生少尉も惑乱しているようだ。思考が乱れているらしい。しかし見張兵曹はそんな少尉の心をわかっているので少尉の両肩にそっと手を伸ばして「大丈夫です、分隊士。私はきちんと任務を努めてまいりますから、帰るまで心配しないでください」と囁いた。

「オトメチャン!」

麻生少尉はオトメチャンを抱きしめる腕の力を強めた。トメキチがその二人を見上げて微笑んでいるように見える。

 

そして見張兵曹が『無花果』でのお泊りの準備を整えて最上甲板に行くと、そこには涙目で見送ろうとする麻生少尉・森上参謀長・野村副長そしてトメキチがいた。梨賀艦長でさえ複雑な表情でオトメチャンを見つめている。

無花果艦長・菅 直子は(なんだか、私は人買いにでもなったような気分だなあ)と少しやりきれない気分。

そんな気分をふっ切るようにいかにも駆逐艦乗りと言うように威勢よく、

「サアっ、オトメチャン。無花果に行こうぜ!」

とその肩を叩いて『大和』の舷側を降りてゆくのであった――

          (次回に続きます)

         ・・・・・・・・・・・・・・・・

 

オトメチャン、他艦にお泊りです。しかも五日ほど、とちょっと長めです。

駆逐艦初体験の見張兵曹ですが、何かまた騒動でも起きなきゃいいんですが・・・次回をお楽しみに。


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「女だらけの戦艦大和」・海軍御用達!?3<解決編>

麻生少尉と見張兵曹、そして小泉兵曹は町の中心に戻って行った――

 

「いったい何の缶詰を作るんでしょうね、早く知りたいであります」

見張兵曹が言った。麻生少尉が笑って「そうだなあ。まあこのへんならクジラが取れるから鯨缶かな。あとはなんだろうなあ、そうだ、天島では牛だの豚だのいるらしいから『牛の大和煮』なんてあるかもなあ」と言う。

小泉兵曹だけは(うちが絡むとあんまりろくなものじゃない気がするよ。牛だのクジラなら上出来だけどさ。そんなことより男性従業員てどんなんが来たんだろうか)と関心は缶詰より男である。

三人は雑談交わしながら炎天下を歩く、道のり半分くらいのところで小泉兵曹は前方から男性が数人、あるいてくるのを見つけた。

「おお!十二時の方向男たち!・・・ってあれ今朝の男性軍か?」

麻生少尉と見張兵曹は、その観察眼の速さに驚いている。流石男性にかけては『大和』艦内でも一、二を争う小泉兵曹だけの事はある。

やがて男性軍が彼女たちのそばまで来た。その中の一人が「あれ」と小さい声をあげた。

「あの、今朝お会いしましたね」小泉兵曹が先んじて声をかける。男性陣が、「ああ、今朝の海軍さんだ」と囁き交わしている。小泉兵曹はまたもや思いっきり気取った格好で彼らの前に立って、

「みなさん方は、こちらではお見かけしないお顔ですが」

と問いかけた。するとその中でもひときわ男前の一人が見張兵曹を見つめながら「私たちは内地の『小泉商店』の者です。今度こちらに来るかもしれないのでその視察です」と言った。

とたんに小泉兵曹の顔が喜びに輝いた。

「なんとぉ!こんな素敵な皆さんがこのトレーラーに!?・・・いや申し遅れましたが私、小泉進次郎の姉で海軍二等兵曹・小泉純子であります。お見知り置きを」

そう自己紹介する小泉兵曹に男性はちょっとだけ気の抜けた顔をした。

「ああ、お嬢様がここにいらっしゃると聞いていましたが。こちらがお嬢様ではないのですね」

皆の視線は見張兵曹に向いている。小泉兵曹は皆の視線を取り戻さんと躍起になって、

「これは私の同期の兵曹で見張とめです。こちらが分隊士の麻生少尉。私こそが小泉純子でありますよ」

と必死になっている。男性たちは少し残念そうな顔で「そうでしたか・・。ともあれどうぞよろしくお願いいたします」と言った。小泉兵曹は彼らに「で、みなさんがこちらに来るのはもう決まりなんでしょう?」と聞いた。

一人が「まだ確定ではないですが、十中八九そうだと思います」と言うのに及んで小泉兵曹は歓喜の声をあげた。

「それはよかった!このトレーラーはいいところですから気に入りますって。またその時お会いしましょう」

そして別れた。

麻生少尉は彼らの目当てがオトメチャンであるのに気が付いていたので機嫌が良くない。むっとして口をひん曲げている。普段から曲がった口がもっと歪んでいる。その口で麻生少尉は、

「おい、小泉兵曹。あの連中が来ることになったらオトメチャンに近づくなとよ~く言っておけ。いいな、指一本でも触れたら容赦しねえぞ」

と脅した。小泉兵曹も彼らがオトメチャンばかり見ているのに気がついて気が気じゃないので、「わかりました。彼らにはよ~く言っておきます。オトメチャンではなく私を見ろ、と」と言ったのでさすがに分隊士も吹きだした。

そして「小泉兵曹は男ならだれでもいいんか?自分の実家の従業員に手を出したらまた親父殿の逆鱗に触れるぞ?」と言ってやった。しかし小泉兵曹はシレっとして、「遊びですよ遊び。本気じゃなきゃいいんですって」とよくわけのわからないことを言っている。

「遊ぶなら、慰安所の男の子でいいじゃないか」と言う分隊士に小泉兵曹は「いや、たまには素人がいいですよ」と言い放ち、分隊士は撃沈寸前。

 

ともあれ町中に無事着いた三人はそれぞれの行き先にわかれた。

小泉兵曹は行きあった長妻兵曹と慰安所に。そして麻生少尉と見張兵曹はいつもの宿に・・・。それぞれの「熱い夜」が始まるのであった。

 

そして。

トレーラー島に小泉商店の「缶詰工場」が進出して来た。海軍御用達の商店であるから工場が開業するときは大変な騒ぎであった。

で、いったい何を作っているかと言えばまあやはり「クジラ肉缶」「牛肉大和煮」やちょっとした野菜の缶詰と、そして。

 

缶のラベルにトレーラーの景色が描かれた缶、それは北方の基地に送られた。アリューシャンなどの守備隊の海軍さんは「なんだろうこれ?なんかカサカサ音がするけどね」と言って開けてみた。するとなんと・・・底に少しの砂と貝殻が入っている。

「???」

目を白黒させるアリューシャン守備隊の兵隊さん、もっとよく缶底を見れば一枚の小さな紙が。

それには「寒い地方で戦う皆さまに、南方トレーラー島の砂浜の砂と貝殻、そして熱い空気をお届けします」と書かれていた。

「・・・」

複雑な表情でその缶を見つめる守備隊員・・・。それに「ありがたいだろう、このために海軍はトレーラー島に新しく工場を持って行ったんだから」と上官のとどめの一言が――。

 

そしてそして、小泉兵曹が心待ちにしていたあの「イケメン男性従業員」たちは諸般の事情で内地の小泉商店に残り、代わりにトレーラーに来たのはもっとずっとオジ様たちであったとか。

開所式でその事実を目の当たりにした小泉兵曹に、進次郎は満面の笑みで「姉さん、そんなに喜んでくれるなんて。私内地に帰ったらお父さんに言っておきますよ、『姉さんは小泉商店の発展を涙流して喜んでくれてます』ってね」と言い、小泉兵曹は涙目のままうなずいたのであった。

海軍御用達商店、小泉商店は絶好調――。


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「女だらけの戦艦大和」・海軍御用達!?2

「おお!すっげえいい男がいるぞ」

 

上陸場を上がってすぐに、小泉兵曹が叫ぶ。何事かと麻生少尉と見張兵曹は小泉兵曹を見た。小泉兵曹の視線の先を見れば数人の「いい男」が談笑してこちらに歩いてくる。麻生少尉が、「なんだあ、この島に日本の男が大挙してくるなんざ今までないことだがな」とちょっと不審げである。

見張兵曹はその男性軍を避けるように麻生少尉の陰に隠れた。少し男性が怖い、と言うのが本音である。

その男性たちとすれ違う時、小泉兵曹は必要以上に気取って歩く。しかし男性たちは小泉兵曹には一瞥もくれない。ばかりか、一人の男性が見張兵曹を見て何事かとなりの男性に耳打ちする。

その耳打ちはやがて男性全員に広がる。

そして男性たちはその場に立ち止まって三人の海軍さんを見送るような格好になった。

小泉兵曹は、(おお。俺を見てるぜ。ヤッパリ目の肥えた男は違うねえ、オトメチャンみたいなおぼこより、分隊士みたいな性別不詳よりこの俺を見て立ち止まってるよ。もしかしたらこの中から俺と・・・うふうふうふ!)と一顧だにされなかったのにも気がつかないで一人で盛り上がる。

しかし、麻生少尉は(この男ども、俺のオトメチャンを見てる!指一本でも触れやがったら承知せんからな)としっかり認識している。

三人と、数人の男性たちはそのまま別れた――

 

三人はいつものレストランに入る。

麻生分隊士は「ここで腹ごなししてから、小泉商店の船とやらを見に行こうじゃないか。それからだぞ小泉、自由行動は」と言ってウエイターを呼んだ。

小泉兵曹はあまり乗り気ではないが分隊士の言いつけなら仕方ない、が、「はい、わかりました。でも分隊士、船を外から眺めるだけでいいでありますよね」と注文をつけた。

麻生分隊士も小泉兵曹と父親の間の出来事を知っているので「ああ、いいよ。万が一親父さまに会ったらいやだろうからな。そのくらい俺にもわかるから大丈夫だ」と安心させてやった。

小泉兵曹はほっとして、注文を取りに来たウエイターにいつものシーフード料理を注文した。

そして三人はしこたま料理を食った後、小泉商店の船が来ていると言う港に向かった。

その道々小泉兵曹は「まさか親父が来てるってことはないだろうなあ、ここで会うのはいやだよなあ。慰安所に入るのを見られるのは気まずいし・・・待てよ、でも親父がここに来ちゃ店が困るし。・・う~ん、どうなんだかなあ」と、赤くなったり青くなったりしながらつぶやいている。それを見ながら見張兵曹は、なんだかおかしくて分隊士の後ろを歩きながらこっそり笑う。

陽盛りの道を歩いていると、後ろからトレーラ―島分駐の陸戦隊のトラックが通りかかった。運転していた少尉が車を止めて、

「どこまで行かれますか?荷台で申し訳ないですがよろしかったらどうぞ」

と言ってくれたので好意に甘えて乗りこんだ。荷台には後二人の陸戦隊員が乗っている。その一人の二等水兵の顔を見て見張兵曹はアッと驚いた。

「・・・花ちゃん、花ちゃんじゃないの!?

花ちゃんと呼ばれた陸戦隊員も見張兵曹の顔を見ていたがこちらもアッと叫んで、「トメチャン?・・・トメチャンだあ!」と叫ぶなり二人は立ち上がって抱き合って歓声を上げた。しばらくして見張兵曹はポカンとしている分隊士・小泉兵曹ともう一人の陸戦隊の兵長に、

「私の故郷の幼ななじみであります。あの日章旗に名前を書いてくれたうちの一人であります」と説明した。

皆、「へえ!ここで会うとはねえ。懐かしかろう」と喜んでくれた。港までの三十分ほど二人は熱心に話しこんで、「おい、着いたぞオトメチャン」と分隊士に言われるまで気がつかないくらいであった。

見張兵曹は花ちゃんと名残惜しげに別れた。その肩をそっと叩いて麻生少尉は「また会えるさ、さあ行こう」と促した。

 

港には数隻の大型船が入港している。

麻生分隊士はきょろきょろしながら「おい小泉。貴様のうちの船っていったいどれなんだよ?」と小泉兵曹に言う。小泉兵曹は「いやあ、私にもわかりませんよ。あ、『行面丸』って名前だそうですから」とこれもきょろきょろウロウロしている。

その時見張兵曹が一隻の大型船を指して、「これでしょうか、『行面丸』?」と言った。

確かに船には「行面丸」と書いてある。その横に、「広島 小泉商店」とも書いてある。見張兵曹はそれを嬉しそうに見上げながら、「ほら小泉兵曹、実家の船だよ。いいねえ、こんなに大きな船を持っててさ~」とはしゃいだ。

小泉兵曹はちょっといやな顔をして、「シーッ、静かにしてったら!」と口に人差し指を当てて注意した。

そのとき、

「あ!姉さん、純子姉さんじゃないですか!?

と声が降ってきた。見上げれば甲板に小泉進次郎がいるではないか。小泉純子兵曹は心底驚いて、「し、進次郎!なんでここにいるの!」

と素っ頓狂な声をあげていた。進次郎は船の舷梯から颯爽と降りてくるなり、「姉さん!」とその前に立った。そして麻生分隊士・見張兵曹に深々と頭を下げた。

そしてやっと顔を上げると「姉がいつもひとかたならぬお世話になっております。不出来な姉ではありますがどうぞよろしくお願いいたします」とまるで保護者のような挨拶をして小泉兵曹は複雑な面持ちでいる。

それを遮るように純子兵曹は、「親父殿はおらんの?まさか、進次郎が?」とせき込んで聞いた。進次郎は笑ってうなずいて「今回は私と大番頭さんの二人で来ました。あと、小泉商店の従業員が何人か。ここに工場を作るなら住まうようになるでしょ、だからどんなところか見るために連れてきました」と言った。

「そうか・・・」と純子は少しほっとした。麻生少尉と見張兵曹はそんな彼女を見て笑う。

純子兵曹は「ここに工場を持ってくるのはもう決まりなんだろう?で、いったい何のかんづめを作るんだ?」と進次郎に尋ねた。

進次郎はちょっとあたりを見てから低い声で、

「他言は無用に願います、工場はここで決定のようです。海軍との話し合いで決まっています。で、なんの缶詰かについては」

「・・・ついては?」

と三人が身を乗り出す。が進次郎はにっこり笑うと、

「しばらくの間は言えません。『軍機』です」

と言った。『軍機』と聞いて三人は乗りだしていた身を引いた。その三人を見て進次郎はちょっといたずらっぽい笑いを浮かべると、「でもこれだけは言ってもいいでしょう、缶詰の種類は複数です」と言った。

「複数、か」

見張兵曹の脳裏には、クジラ肉・牛肉・コンビーフなどが浮かんでいる。そんな兵曹たちを見て進次郎は、

「うちの従業員たちが『大和』を見に行くと言っていましたからもし行き会いましたらどうぞよろしくお願いします」

と言ってその日は別れたのだった。

そして三人は元来た道を戻る――

(次回に続きます)


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大和 | コメント:6 | トラックバック:0 |

「女だらけの戦艦大和」・海軍御用達!?1

「女だらけの戦艦大和」はお盆を済ませ、またいつものように訓練に励む毎日である――

 

ここトレーラーは、海軍の要衝である。近くにゲハルマ油田などもあるので燃料には事欠かないし、豊かな漁場もあるので食料の面でも安泰である。

そのトレーラー群島に日本の商店が缶詰工場を作るらしいとのうわさを、『大和』の野村副長が聞きつけてきた。

「へえ。どこの商店だろうか?缶詰と言ったら『マルヘ』とか『あさぼらけ』が有名だけどねえ」

と梨賀艦長が今日はコーヒーをすすりながら副長の話に聞き入っている。

副長は従兵が淹れてくれたコーヒーを受け取ってすすると、「いや、そういう有名どころじゃないらしいですがね。なんでも新規参入の商店で海軍の委託で始めるらしいですから。近々その商店の船が来て工場の場所を選ぶらしいですよ」と教えた。

艦長は「へえ~。船を仕立ててくるなんて相当な商店だね。どこかなあ」とひとりごちている。

 

そんな頃、防空指揮所では着いたばかりの手紙を開封する兵たちがいた。

常夏の日差しに目を細めつつそれを読む兵たち。亀井一水に来た何通かのうちの一枚には、

「これと同じものを10日以内に10人に出さないと、ひと月以内にあなたの艦は沈みます」

などと言うチェーンメールが来て、亀井一水は「だ―れがこんな非道いことを!縁起でもない!てか、『大和』は不沈艦だから沈まねえけどな!馬鹿かこの野郎」と怒り半分、誇り半分である。

酒井上水は、家で飼っている牛が子牛を産んだという知らせに喜んでいる。

「いやね、牛のお産ッて大変なんですよ本当に。夜通しつきっきりで産ませたことだってありますからねえ。・・・ま、お産に関しては私にお任せあれ」

と胸を張って石川水兵長に「じゃ、見張兵曹が分隊士のお子を産むときは貴様に任せた」と囁かれ「とんでもない、私は牛専門でありますから見張兵曹の時はやはり日野原軍医長でありましょう?」と大慌てしている。

と言うより見張兵曹が麻生分隊士の子を産むなんてことはないと、何回言えばこの連中には理解できるのだろうか?

そんな騒ぎの中、小泉兵曹は弟の進次郎から久々に手紙をもらって嬉しそうである。見張兵曹の隣に座って、封筒を開いた。

しばらく黙って読んでいた小泉兵曹であるが突然、「へええ!」と声をあげて見張兵曹を驚かせた。

「なんなん?どうしたん?」

見張兵曹が驚いて小泉兵曹の顔を見た、すると小泉兵曹は手紙をぎゅっと握って見張兵曹を見た。興奮しているのか頬を紅潮させている。

小泉兵曹は手紙を振りながら「あのね、うちの店が今度トレーラーに工場を作るんだそうだ。で、近々船をこっちによこすんだって!」と興奮しきったような声を出した。

見張兵曹は友人の実家が工場を出すと聞いてこれも興奮気味である。

「ねえ、なんの工場をつくるの?食べ物の工場?ねえ何、教えてよ?」

小泉兵曹を掴んで揺すぶっている。その手を小泉兵曹はそっとほどくと、

「あのね、缶詰の工場だってよ」

と言ってやった。見張兵曹はへええ!と感嘆の声をあげて「缶詰、缶詰かあ!う~ん、小泉印の缶詰。なんの缶詰だろうか?・・・やっぱここに作るんなら魚の缶詰だね。あ!クジラ肉の缶詰とかいいねえ、あとそれからさ・・・」とひとりでしゃべっている。

小泉兵曹はちょっと苦笑して、「まあなんの缶詰になるかは後のお楽しみ。って言うよりまだ工場の場所を選びに来る段階だから、実際に缶詰がつくられるまでにゃもっとかかるぜ?それまでに『大和』がここにいればいいが他に移るようなことがあるかもしれんしよ」と言った。

でも見張兵曹は「かかったにしても『大和』はずっとここが泊地だからね!他には行きませんよ。だから小泉商店の缶詰を食べることができるねぇ」と嬉しそうである。

「しかし、」と小泉兵曹は手紙を見直して言った、「一体うちの誰が船で来るんだろうか」。

父親の孝太郎であろうか、しかし父がいないと店がうまく回らないだろうし、番頭では役不足であるしだからと言って進次郎ではまだ心もとない。まだ学生の身であるし。

「親父だったらちょっとやだなあ」と小泉兵曹は思った。トレーラー島は群島ではあるが、そうした工場に向く島は案外限られている。

『大和』たち連合艦隊の艦が停泊する「水島」は大きいから工場を建設するには良い条件である。船で三十分ほどの『金島』より条件はいいだろう。

小泉兵曹はここ「水島」に父親が来ると自分が上陸した時出くわさないかと心配しているのである。

「いやだろうが、慰安所に入ってく所を見られるのはさ。しかもこの島に工場が出来た日にゃ小泉の連中もちょくちょく来るかもしれん。その連中に見られるのはもっと耐えがたい」

そういう理由である。

「まあ、ここじゃなくって『金島』とか『土島』かなんかにしてくれりゃいいね」小泉兵曹はそう言って手紙を懐に仕舞ったのだった。

 

そしてそれから二週間ほどしたある日。

小泉商店が仕立てた船、「行面丸(いけめんまる)」が「水島」の港に姿を見せたのである。その知らせは森上参謀長が大声で防空指揮所に上がってきて、

「おーい、小泉兵曹。お前の実家の船と言うのが来てるらしいぞ、反対側の港だ。明日にでも行ってこいよ」

とわめいて発覚した。

小泉兵曹は思わず「ああ・・・」とため息をついたのだった。

そして翌日の入湯上陸、小泉兵曹は麻生分隊士・見張兵曹とともに陸に上がった。

その時―――!

 

          ・・・・・・・・・・・・・・・・

ものすごい猛暑でありますね。お元気ですか?

久しぶりの更新となりましたが、夏休みをとっていました。

山にこもって?いろいろ考えましたがあまり良い出来ではないかもしれません。が、がんばります。

またどうぞよろしく!!


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