「女だらけの戦艦大和」・宇宙戦艦大和4 解決編
梨賀親父の操縦する「梅花」はあわれにも、天の川に墜落し梨賀親父はほうほうの体で脱出した――
梨賀親父は敵味方の別なく救助してくれる「平和の船」に助けられ手元の駆逐艦に戻った。もうこの『天の川』も艦首はめちゃくちゃに破壊され、どうにもこうにもならない。
体中に星くずをくっつけて艦橋に入ってきた梨賀親父を見て、森上・野村・助平の三親父が一斉に「ダメじゃん!」と叫んだ。
梨賀親父は三人をじろっと睨んだが、結果が結果であるからそのにらみも迫力に欠ける。
梨賀親父は、すっくと立つと「機関は?機関はまだ動くか?」と聞いた。野村親父が、
「動くけど、艦首をやられてるからあんまり無理できないね。機関停止になるかもしれないよ」
と言った。それを聞くと梨賀親父はうなずいて、
「では最後の手段だ。機関全速であの『宇宙戦艦大和』に突っ込んで力ずくでオトメチャンを奪還し、『大和』も奪う。麻生が抵抗したら射殺しても良い!」
と言い放った。とたんに盛り上がるオヤジども。
駆逐艦・『天の川』は、その機関を全開にしてフルスピードで航行し始めた。
「分隊士。あの駆逐艦がこちらに向かって突進してきます!」
防空指揮所で双眼鏡をのぞいていたオトメチャンが、麻生牽牛分隊士に叫ぶ。麻生分隊士も双眼鏡をのぞいて、
「何なんだ、まだ懲りてねえのか。しかし…ちょっと避け切れるかどうか・・・」
と言う。傍らのトメキチ艦長が「キャン!」と叫ぶ。『取り舵』である。なんとかあの親父どもを回避して逃げ切りたい。
だが、もうオトメチャンしか眼中にないあの連中は駆逐艦『天の川』の機関が真っ赤になるくらいフル回転させて突進してくる。
「見ろ~~、これが愛の力だあ~~!」
と、森上親父の叫び。艦首の壊れた『天の川』は今や、燃える火の玉のようになっている。ものすごい気迫である。
「避け切れません!分隊士!艦長ッ!」
オトメチャンが叫んだその時――
皆の背後から、「どげんかせんといかん!」と言う声がした。分隊士がハッとして振り向くとそこにはあの『西国原』宮崎県知事が立っていた。
「西国原さん!」と思わず麻生分隊士は叫んでいた。どうしてこのヒトがここに?という疑問は今は消し飛んでいる。西国原さんは、分隊士とオトメチャン、そしてトメキチ艦長に
「あの牛のおかげで宮崎の畜産は助かりました、今度は『宇宙戦艦大和』の危機を私がすくう番です。見ていてください・・・」
と言うと、全身力を入れて真っ赤な顔で唸り始めた。
トメキチ艦長と麻生分隊士、それにオトメチャンは何事が始まるのかとひと塊りになってことに行方を見守っている。
だんだん西国原さんの全身が発光し始めてきた。不思議な丸い光が西国原さんの体に吸い込まれてゆくようである。
そしてその光は西国原さんのあの、広い額に集約された。
「おお!」と、分隊士は声をあげていた。西国原さんの額がもう見ていられないくらいの眩しさに輝いたその時、西国原さんは「西国原宮崎ひむかの波動砲!!」と叫んだ。
その瞬間。
西国原さんの額から一本の太い光が発射された。その光は駆逐艦・『天の川』に吸い込まれるように走って行った。
「わあああ!」
と叫んだのは、『宇宙戦艦大和』の面々か、それとも『天の川』の親父だったか――?
駆逐艦・『天の川』は破壊され四人の親父たちは「平和の船」によってM79星雲に護送されていったのだった。
「やった、やったぞオトメチャン。もうこれでオトメチャンは自由の身だ。もう離さないよ」
分隊士はそう言って、オトメチャンを抱きしめる。オトメチャンは抱きしめられながら「分隊士、ありがとうございます。嬉しい・・」と囁いた。
分隊士は西国原さんを見返って、「知事、本当にありがとうございました。あなたがいらっしゃらなかったら我々は危なかったです。なんとお礼を言っていいやら」と礼を言った。オトメチャンも分隊士の腕から出て頭を下げた。
西国原さんは大いに照れて、広い額を掻きながら「いやいや、そんな。これと言うのも元はあなたの御親切からです。お二人が幸せになられるのが私にとって一番嬉しいことです」と言った。
三人は笑いあった。
その時トメキチ艦長が「ワンワン、ワン!」と吠えた。そしてデッキチェアーの上に立ちあがって右舷方向を前足で指している。
皆がそちらを見ると、そこには『宇宙空母・飛龍』がいて加来艦長と山口司令官が飛行甲板で手を振っている。
「御目出と―っ!さあ、早くこっちで披露宴をしようよ~」
と叫んでいる。飛行甲板には何かが並んでいる、艦爆かそれとも艦攻か・・・とよく見ればそれはなんと。
大きな大きな握り寿司、であった――
「分隊士!」
と呼ばれて麻生分隊士はハッとして目をあけた。気がつけばそこは「軍艦大和」の防空指揮所である。
「あれ・・西国原さんはどこに?飛龍の飛行甲板の寿司はまだ食ってない・・」
寝ぼけ眼でおかしなことを言う分隊士に、見張兵曹はちょっと笑って「分隊士、お疲れですね。こんなところでお休みになっては風邪をひきますよ。もう時間ですから降りましょう」と床に座り込んでいた分隊士の腕をとって立たせた。
「夢を見てらしたんですか?」
「うん、面白い夢だったよ」
「教えてください、聞きたいですぅ」
分隊士の私室にと向かいながら、麻生分隊士は思っていた。
(あの飛龍の握り寿司だけは、本当であってほしかったなあ)・・と。
トレーラ島の夜空には天の川が横たわりキラキラと光っている――
・・・・・・・・・・・・・・
長い割には大した落ちもない話ですみません。
空母の本を見ていたら飛行甲板に乗っかった飛行機がなぜかお寿司に見えてきましたので最後はこうしました。山口司令官、でかいお寿司に満足でしょう。
宮崎の口蹄疫、終息に向かっているようですね。畜産農家の皆さん、がんばれ!!
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