「女だらけの戦艦大和」・戦闘詳報。

「女だらけの連合艦隊」は、ミッドウエー島攻略作戦を大変な勝利で終えてトレーラー島に集結した――

 

戦闘詳報。

昭和××年6月5日をY日として開始されたミッドウエー島攻略作戦及びアリューシャン攻略作戦。

アリューシャン方面においては角田少将の率いる第二機動部隊はダッチハーバーを攻撃。途中悪天候に阻まれたものの『特別部隊』の援護を受けながら無事、当初の計画であるダッチハーバーを占領、またミッドウエー作戦の成功に伴う敵の士気低下もあり『アッツ』『キスカ』の二島もわが方の被害無く占領を完了せり。

 

ミッドウエー方面においては当初、苦戦も予想されたが敵の守備が手薄であったこともあり、くわえてわが方の『伊号八○○潜水艦』『甲標的』の活動、さらに第一機動部隊とその航空部隊、主隊たる『大和』『武蔵』『長門』のミッドウエー島に対する的確な射撃、および各巡洋艦・駆逐艦から補給艦に至るまでこの作戦に参加せるすべての艦艇の捨て身の攻撃によって、ミッドウエーに展開せる敵守備隊を撃滅せしめたるものなり。

 

なお、ミッドウエー作戦における敵の損害状況は以下の通り。

空母『ヨーダタウン』 『アホ―ネット』撃沈。『エンタープライド』大破航行不能。

その他大小艦艇撃沈、航空機多数撃墜及び地上にて撃破。

ミッドウエー島陸上設備を壊滅。

わが方の損害、駆逐艦『無花果』艦首に被弾セルもその被害はごく軽微なり。人的被害ナシ。

  以上。

 

山本長官の喜びようと言ったらなかった、当初この作戦は軍令部から「えー!こんなことできるわけないじゃん!また山本長官のばくちが始まった。もし、失敗したらその時はいったいどう落とし前付けるおつもりなんでしょうかねえ!」と嫌みたっぷりに言われていただけに溜飲を下げた形になった。

「真珠湾のときだってやつらさんざっぱら反対しやがって、でもあの通りうまく言ったじゃないか。ハワイは今どこが占領してるんだよ、なあ?」

長官室で山本長官は愉快そうに笑った。

 

「女だらけの連合艦隊」の艦艇そのものには大きな被害はないものの、ごく小さな「被害」はあってそれは特に駆逐艦や巡洋艦などの単装機銃に多かった。

それは、あの激戦で機銃が熱を帯びてグンニャリとへたってしまっていたのだ。

とある駆逐艦の機銃員は、

「撃ちまくってるうちにだんだん機銃が真っ赤に焼けてきてさ、時々至近弾があげる水しぶきがかかるから冷えるかなと思ったがそんなんじゃダメ。ついにはグッタリしてきたから架台から外して海にレッコしてしまった。替えの機銃を据えるまでの時間が長く感じたっけなあ」

と回想する。この手の話はどこの駆逐艦でもあったようで、機銃員たちは寄ると触るとその話で盛り上がっている。

 

盛り上がると言えば、例の『馬面』も司令官たちの間で話題になった。

南雲中将は当初、『赤城』仕様の馬面(サルをモチーフにしたもの。ものすごく邪悪な表情)を見てとてもかぶるのを嫌がった。

しかし戦闘が始まるとそばにいた参謀連中に寄ってたかって「南雲長官、かぶってくださらないと困りますっ!」とかぶらされてしまった。

だが、戦闘が終了するころにはすっかりこれの魅力にとり付かれ今度は「脱がない」と言ってずっとかぶったままである。

また、『飛龍』の山口多聞(やまぐち たも)司令官は敵にどれくらい効果があるかを実際自分の目で見たい、と敵が機銃を乱射してくるにもかかわらず『飛龍』仕様の馬面をかぶって加来艦長の止めるのも聞かないで艦橋の上に上がってその面を敵にさらした。

「したらな、敵のやつ驚いて口をポカンと開けたまんまで海に突っ込んで行ったよ。攻撃のし甲斐があるんだかないんだか、ちょっとわかんないけどな」

あとで山口司令官はそう言って首をひねっていた。

ちなみに『飛龍』仕様の馬面は、ナメクジのようなものでそれが光を反射してじつに気味の悪い色に光る、というもの。

また、『武蔵』の馬面は「ハンマーヘッドシャーク」をモチーフにしたものであるがこれがまた効果絶大。敵に対してもであるが、味方に対しても大きかった。

出撃の時、防空指揮所にいた麻生分隊士以下のメンバーは「それ」を目撃して言葉を失った。

「・・・すごい」

かろうじて分隊士は一言発していたが。

『武蔵』艦上の総員が不気味この上ない「ハンマーヘッドシャーク」を装着している様は例の「幽霊艦隊」とどこか似た不気味さを漂わせていた。

『武蔵』の見張り員、小椋兵曹は(ああ、きっと『大和』の見張兵曹はこれ見て笑ってるよ。いやだなあ、私はあの人にだけは笑われたくないっていうのに)と内心泣きそうだった。

当の見張兵曹は笑うどころか呆然としているだけだったが。

 

ともあれ、艦隊はトレーラーで戦塵を落とすこととした。ミッドウエーに巣食う敵を撃破したため、トレーラー島に対する脅威は消え去って心おきなく休み事が出来るのである。

ミッドウエーの大勝を聞いた現地の人たちの表情も明るい。

帰港して翌日の晩にはもう、艦隊のお偉いさんを『大和』に集めて晩さん会。山本長官をはじめとして、南雲中将や山口司令官、各部隊の指揮官が集合している。

そして戦勝を心から祝った。

もちろん各艦艇・航空部隊もこの晩は豪華な食事が出て皆満足。

明後日からはトレーラー在泊の艦の乗組員には交代で休暇も出る。

そして、『武蔵』は山本長官を乗せて内地に帰る予定である。猪田艦長は、梨賀艦長とともにナナとトメキチを迎えに行った。

喜んで飛びついてくるナナとトメキチに艦長二人は思わず涙ぐむ。

「ナナ、心配させてごめんね。さ、一緒に『武蔵』に帰ろう。そして日本に帰るんだよ」

猪田艦長はナナを抱きながら言った。梨賀艦長はトメキチと敬礼をかわしてからトメキチを抱きしめた。

「トメキチ!艦長さみしかったよ。さあ、オトメチャンが待ってるから帰ろうね。いい子だったねえ」

二人ともまるで人間の子に言ってるようで、預かっていた海防艦の乗組員はちょっと笑った。

二人は犬をそれぞれ抱きかかえて、それぞれの艦に戻って行ったのだった。

 

ところで。

あの晩さんの後、山口司令官は「『大和』の飯ってさ、すっごくうまいんだけど量が少ないと思わない?」と『蒼龍』の柳本艦長に耳打ちして柳本艦長をのけぞらせたと言う。同じ量の物を食べて、柳本艦長のおなかはもう一杯だったと言うのに――

 

         ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

戦いすんで。

ヤッパリ戦争は「勝ってなんぼ」の世界、負けたら意味がないのですよ。

さてこの後トレーラーではどんなことが起きるのでしょうか・・・?


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「女だらけの戦艦大和」・ミッドウエー攻略5 解決編

ミッドウエー島攻略戦も、終盤に差し掛かっていた――

 

その夜、敵のカタリナ飛行艇が第一機動部隊のそばを飛行して、あえなく『飛龍』の高角砲に撃墜された。

第二航空戦隊司令官の山口多聞(やまぐち たも)少将は、それを加来艦長とともにビスケットを食べながら見上げて、「ば~か。なに寝ぼけてやんでぃ!お帰りはあちらだよ」と毒づいて大笑いしている。

 

翌日の○三○○ごろ、ミッドウエー島近海に展開中の『伊号八○○潜』の数艇が、敵空母とおぼしき艦影をとらえていた。

潜水艦の見張り員は、「敵空母『ヨーダタウン』と、『エンタープライド』。それに『アホ―ネット』のようであります!」と知らせてきた。

『伊号潜水艦』の総員が色めき立った。ここはかねてからの作戦通り、奇数番号の艇が攻撃をすることになっている。

深度を深くとって、一斉に四十本の魚雷を放つ、という壮大かつ奇想天外な攻撃方法である。

ともあれ、『伊号八○○潜』奇数番の艇は静かに潜航を始めた・・・

 

その頃。

空母「赤城」艦内の医務室では、歴戦の勇者で真珠湾で勇名をとどろかせた「淵田 美津子」中佐が虫垂炎の術後の身体を横たえていた。

時々、「くやしい・・・」とか「飛んでゆきたい」とか「敵をせん滅じゃ!」などとつぶやきが聞こえてきて、医務科の兵は「淵田中佐、お気の毒であります」と同情してもらい泣きしていた。

 

○五○○。

ミッドウエーに近い海域に敵の空母が三隻、接近して来た。

『ヨーダタウン』のトランク・F・プレッシャー少将は、はるかミッドウエー島の上がる砲煙を見て、「なんだあのざまは。たかがジャップの紙飛行機やぼろ船に何をうろたえている?そろそろジャップに朝食のロールパンでも叩きこんでやらないか」と勇ましいことを言っている。

『エンタープライド』では、アーモンド・A・スプレーアンズ少将が夜明けのコーヒーをすすっていた。「みてろ、今日はジャップの艦隊の葬式だ」そういうものの生来の怠け者の彼女、モチベーションを維持するのが大変そうではある。

(早いとこ片づけて、寝たい)

それが本音のようである。

 

○五五○。

『ヨーダタウン』・『エンタープライド』・『アホ―ネット』の見張りが一斉に、

「前方より雷跡!本数、数えきれない!」

と悲鳴に近い声をあげた。

「なんだ、何を寝ぼけてやがる。キッチンに頼んでやつらに濃いコーヒーをのま」

プレッシャー少将がここまで言うか言わないうちに、艦全体がものすごい――いままで経験したことのない――振動と衝撃とに襲われた。

「NOOO!」

三つの空母の乗組員が悲鳴を上げて逃げまどった。甲板上に、もはや発艦を待つだけになって整列していた飛行機――ドーントレスだの、デッパスデーターだの――が傾いた甲板からおもちゃをぶちまけるかのようにこぼれおちてゆく。

更に、たくさんの魚雷が彼女らを襲い『ヨーダタウン』・『アホ―ネット』は火薬庫に命中したのか、大爆発を起こしてその身をミッドウエーの海に沈めて行ったのだった。

『エンタープライド』はそれでもかろうじて浮いてはいたが航行不能に陥り、戦線を離脱して行ったのだった。

 

敵の二空母の撃沈を合図にして、日本側の攻撃が昨日より激しく始まった。

各空母からはものすごい勢いで攻撃機が発艦して、ミッドウエー島に爆撃を仕掛ける。もちろん敵とてその攻撃を黙って受けているわけではない。が、『ヨーダタウン』・『アホ―ネット』が撃沈されるに及んで戦意がなえてきたのも事実である。

しかし、残った攻撃機を以て日本軍に一矢報いんとした。

その時になってアメリカの攻撃機は不思議なことに気がつき始めた。

日本の攻撃機が一斉にミッドウエー島から離れてゆくではないか。

「HA!?ジャップはいったいどうしたってのよ。もう弾切れかしら、ざまあないわねえ!」

しかし、弾切れなどではなかった。ヤンキー嬢ちゃんたちにとってはこの上ない不幸が降りかかってきたのである。

『大和』・『武蔵』・『長門』の主砲が一斉にミッドウエー島に向けて発射された。

その砲弾はまったく正確にミッドウエー島に着弾し、そこにあるすべての物を破壊しつくしたのだった。

それをポカン、として機上で見ていたヤンキー嬢ちゃんたちは錯乱状態になった。帰るべき場所が瞬間にして消えてしまったのである。

「神様!信じられない、いったいどうしたらいいのですか!」

ヤンキー嬢ちゃんたちは算を乱して逃げまくり、やがて燃料切れて海上に不時着して、沈みかけた数少ない味方の駆逐艦に拾われるのであった。

 

ミッドウエー島攻略戦は日本の大勝で終わりを告げた。

しばらくの間、近藤信子中将の攻略部隊がここを守り、その後海軍と陸軍が協力して守備に当たることになった。

アリューシャン攻略も無事に終了し、アッツ・キスカ両島の占領もうまく行った。この戦いで、重巡『高雄』・『摩耶』は不時着して浮かんでいる搭乗員の逃げた敵航空機を何機もロープで引っ張ってきた。

あわよくば、「このまんま使ってやろうか、日の丸に塗り替えてさ」と高雄の乗組員は笑ったが肝心の航空隊の搭乗員が

「こんな変な形の飛行機は嫌だ」

と言ったとかいうので、結局工廠で鋳つぶしてちゃんとした「日本の航空機」を作ることにしたとか。

 

戦いすんだ『大和』の防空指揮所では麻生分隊士が皆をねぎらっている。

「皆けがはないか。よくやってくれた。一発の被弾もなかったのはひとえに皆のおかげだ。分隊士として、礼を言う」

見張兵曹や小泉兵曹、伝令の石場兵曹などがすすけて汚れた顔を見合わせて、初めて心から笑いあった。

 

同じころ『武蔵』の艦上でも、猪田艦長がほっとした顔を見せていた。加東副長が、主計長からコーヒーのカップを受けとると、猪田艦長に差し出した。

艦長は「ありがとう」と言って手に取ると、コーヒーをすすった。

「終わったね」

そう言った猪田艦長の端正な顔にやっと、会心の笑みが浮かんだのだった。

 

見張兵曹は戦場を後にして、心はもうトレーラーに飛んでいた。

(トメキチ、もうすぐ帰るからね。待たせてごめんね)

 

         ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

長い長い戦いでした。

全く史実と違います。史実のほうは今更言うまでもないですが(いいたくもない!)、「女だらけの帝国海軍」はまさに無敵艦隊。

これからも快進撃!!


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「女だらけの戦艦大和」・ミッドウエー攻略4

第一次攻撃隊は引き揚げた――

 

その攻撃隊が母艦に着艦するかしないうちに二次攻撃隊が舞い上がってゆく。それを見て、『大和』『武蔵』『長門』はミッドウエー島に近づいていく。

これは山本長官の発案で、「かくなる上は無理、とかおかしいと言われるような戦法でもするしかない、なり振り構わずミッドウエー島を落とすのだ」というコンセプトの元、これらの大戦艦の主砲でミッドウエー島の陸上基地を吹っ飛ばそう、というものなのだ。

ミッドウエー島が、各戦艦の射程内に入った。

その時『大和』の見張兵曹が、

「敵機直上!急降下ッ!」

と叫んだ、梨賀艦長は「とーりかーじ!」と命じ、艦は左に回頭する。しかし、(間に合わない!)と思うほどの速度で、ドーントレスは突っ込んできた。

その時、数機の零戦が機銃を乱射しながらドーントレスに突っ込んで、見事敵機を撃墜。

「大和」艦上では「やった!やったぜ」と鬨の声を上げる。

 

実際、海軍航空隊の活躍は素晴らしいものである。

零戦隊、艦爆隊、艦攻隊それぞれが連携し的確な攻撃をし、アメリカ軍は正直手も足も出せないと言うのが見て取れる。

しかしそれでも反撃をしてくるところが「かわいい」というのが麻生分隊士のいい分。

 

「なあ、ヤンキー娘どもも健気じゃねえか。あんなに一所懸命でよ。・・・でもこちとらには『大和魂』があるからな。ヤンキー嬢ちゃんたちにゃ負けねえってよ」

麻生分隊士は胸の双眼鏡を目にあてたままで言う。

皆の緊張をほぐそうとしているのだろう、皆がちょっと笑った。麻生分隊士は

「だからみんな張り切って見張ってくれよ。潜水艦にも気をつけろ」

と気を引き締めた。

 

敵の潜水艦は壊滅状態にあった。

なぜならミッドウエー島近海に殺到した『伊号八○○潜水艦』とそれから発射された『甲標的』がことごとく敵潜や、魚雷艇を撃沈したからである。

 

そんななか、『大和』ではハワイの日本軍からの情報として「ハワイ北方方面からアメリカ空母二隻、ミッドウエー島に向かいつつあり」との無電を受信していた。

山本長官は「してやったり」と言ってにやりと笑った。

艦隊司令部の参謀は、長官の作戦の一環が大当たりになるつつあることを確信していた。

このまま、敵空母がミッドウエーに来てくれれば、いずれミッドウエー近海に展開中の『伊号八○○潜水艦』に発見され、魚雷を叩きこまれることは必定である。

(うまく行きますように・・・)

皆の心の祈りが一つになっている。

 

『飛龍』の攻撃隊がミッドウエー島を攻撃のため発艦して行く。攻撃総指揮官は、友永丈子大尉。

『飛龍』航空隊仕様の『馬面』をつけてりりしい女武者振りである。

友永指揮官は九七艦攻の座席に立ちあがって前方をにらんだ。燃え上がるミッドウエー島、逃げまどう敵艦船、それでも果敢に攻撃してくる「敵ながらあっぱれ」なドーントレスやアベンジャー、ワイルドドッグと言った戦闘攻撃機。

友永指揮官は、攻撃隊を一直線にミッドウエー島に突っ込ませてゆく――

 

『蒼龍』が敵機に襲われた。

艦長の柳本柳子は「きやがったなあ!見てろぉ、これが『大和魂』だっ!」と叫んだ。柳本艦長の号令一下、なんと『蒼龍』の飛行甲板の一部が開いたではないか!

次の瞬間、そこから轟音とともに吹きだしたのは「噴進砲」。その「噴進砲」は一直線に迷うことなく敵機の集団に突っ込みそして爆発したのだった。それを見て逃げ出そうとする他の敵機は『蒼龍』の高角砲や機銃の餌食。

 

「す、すごいもの持ってるなあ」

それを目撃した見張兵曹や、梨賀艦長は同時につぶやいていた。梨賀艦長は、

「あんないいものがあるんなら『大和』にもほしいものだよ」

という。同じころ、『武蔵』では猪田艦長が防空指揮所でそれを望見してにやりと笑って

「ほう、「噴進砲」を使ったね。なかなかすごい威力だ。敵のやつ、大慌てで逃げてゆきやがるよ。うちにもあったが、使う余地はあるかね」

とひとりごちた。

そこへ見張り員が「右三十度、雷撃機!」と報告、猪田艦長はうまくこれを回避し敵機は高角砲に撃ち砕かれる。

 

やがて、日没になった。

日没になって、敵の攻撃が止んだ。敵は夜戦が苦手なため一旦兵を引いて次に備えるつもりであろう。

駆逐艦やほかの艦艇は補給艦から燃料などの補給を受ける。

艦艇は適宜、夜食をとっている。

『大和』でも防空指揮所の面々が立ったまま握り飯を食う。『馬面』の下で真っ黒にすすけた顔が握り飯をほおばる。

麻生分隊士が、

「ここ一番の正念場だ、もうちょっとで勝てるから頑張れ」

と、見張り員や伝令を励ます。皆は「はいっ!」と返事をして、引き続き警戒する。

 

『伊号八○○潜水艦』の一隻では、「明日の朝あたり敵の空母がこの先を通るらしい。名の通った空母らしいからうち取って名をあげようじゃないか」と意気軒高である。

 

更に同じころ、アリューシャン列島の戦場では角田少将率いる第二機動部隊が奮戦していた。悪天候のため攻撃がうまくいかないのではないかという懸念があったが、無事ダッチハーバーを攻略出来た。

この成果の陰に、あの「幽霊艦隊」の存在がある。通称「幽霊艦隊」は風雨も雷雨も、台風もものともせず突き進む命知らずの『影の艦隊』であるので、アリューシャンの悪天候くらいどうっていうことはなかった。

すさまじい暗雲をまとって敵の前に現れて敵を恐怖のどん底に陥れ、その混乱に乗じて角田少将の艦隊が突っ込み敵は敗走した。

アリューシャン攻略はミッドウエー攻略より一足先にけりがついたようだ。

 

           ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ああ、なんて長い戦いなんでしょう。

アリューシャンはカタがついたようですが、ミッドウエーはこれから佳境に入ります。『名の通った空母』は帝国海軍を打ち破ってしまうのでしょうか?

見張兵曹、麻生分隊士、猪田艦長たちの運命は!

次回に続きます。


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「女だらけの戦艦大和」・ミッドウエー攻略3

「女だらけの連合艦隊」は、いよいよミッドウエー島攻略の時を迎えていた――

 

「Y日」は六月五日・・・!

 

「Y日」当日――。

アリューシャンから南下した『伊号八○○潜水艦』が粛々と、ミッドウエー島周辺に円陣を描くように展開し終えた。敵はどうやらまだこの「海中の刺客」に気がついてはいないらしい。

敵は自分の足元より、ミッドウエー島攻略と同時に進められたアリューシャン攻略のほうに気を取られているらしい。

実はこの作戦に伴って、「ミッドウエーを目くらま」し、北方の進撃の足掛かりのためにアリューシャン攻略も同時進行させた。

敵は、『ジャップは南方にウエイトを置いてるから北に大規模進撃は当面ないだろう』と妙な確信をしていてそれはある意味帝国海軍にとっては好都合である。しかしミッドウエーのアメリカ軍守備隊は「ジャップは北を責める気満々だな、北から来たかぁ?」などとくだらないことを言いながら無線機なんかをいじくっては本国からのラジオ放送を受信しようと必死のようだ。開戦前まではハワイのホノルル放送を聴けたのだが真珠湾攻撃でハワイが日本の手に落ちてからホノルル放送は日本の国営放送に取って代わられ、彼女らにはつまらない。

背後のハワイの日本軍も気になるが、「ここの守備だって大したもんさ、ハワイからジャップが来てもすぐ叩ける。だからこそ彼女らはここに来ないでしょ?」とこれも妙な自信を見せている。

 

山本いそろ司令長官は『大和』を旗艦とした。そして『大和』『武蔵』『長門』を主隊とした。他に駆逐艦、重巡洋艦が各十隻付く、堂々たる威容。

山本長官は、「主隊であるから、間違っても後方で見てるだけ~、なんてありえない。機動部隊とともにミッドウエーに突っ込んで行くッ。作戦内容は先に言ったとおりだから、これに沿って行動されたい。一水兵に至るまで徹底させてほしい」とこの作戦に対して並々ならぬ自信と、国の威信をかけて出てきたことを匂わせた。

 

第一機動部隊の南雲忠代中将は空母・『赤城』にあって、少し先を行く『利根』から索敵機を飛ばした。

索敵機の搭乗員が低空で『赤城』の艦橋のそばを飛んで、搭乗員は『馬面』飛行帽をかぶってものすごい形相に見える。

南雲中将は初めてみたようで、「なんじゃ、あれは?」と、目をむいた。艦橋にいた司令部の参謀たちが(知らねえの。提督遅れてる)と思ったのか、下を向いて笑いをこらえている。いずれ戦闘が始まれば、この『赤城』も『飛龍』も、そのほかの艦艇一斉に『馬面』をかぶるのだ。

 

ともあれ。

『利根』の索敵機は、ミッドウエー環礁に接近した。敵はまだ、日本軍の攻撃が近いことに気が付いていないのか動きがない。

(チッ、つまらねえ)索敵機の搭乗員は思ったが、必ずや自分の姿がミッドウエー守備隊のレーダーに捉えられることを悟っていた。

(ではヤンキー嬢ちゃんたち、あとで会おうぜ)

索敵機は旋回すると『利根』 に戻るべく去ってゆく。

 

その機影を、ミッドウエー守備隊の見張りが見つけた。

「あれなんだ、変な鳥が飛んでるけど」

見張り台の上でナンシ―軍曹が言うと、後ろでデッキチェアーに座ってさっきからクラッカーをボリボリ食っているアイビー曹長が、

「鳥だって?まさか、コウノトリが飛んで来たんじゃないだろうねえ。ここにベービーを連れてこられてもちょっと困るぜえ」

と言ってナンシーの双眼鏡を取り上げて自分の目にあてた。

じっと目を凝らす、が鳥なんかいやしない。ナンシーは双眼鏡のごみを払っておかないからいつも・・と思いかけてふと、双眼鏡の奥の方、水平線上におかしな物体が点々とあるのに気がついた。

(なんだ、あれは)

ゴマ粒よりもっと小さい。がそれは確実に大きさを増してきている。

次の瞬間曹長は椅子を蹴って双眼鏡を握ったまま大声を発した。

「敵襲、敵襲だああ!」

彼女の口からクラッカーのカスが周囲に飛び散った。

 

第一機動部隊は『利根』索敵機からの報告に、「全軍突撃」を命じた。

山本長官は嬉しそうに「そら来たぞ!機動部隊の後に続け」と言って、主隊も続く。

ここで、機動部隊は空母を前・中・後の三段に分けた陣構えで臨む。これは南雲司令官の創案で、

「攻撃機が帰ってきて、補給をする間に反撃されれば終いだから、前隊が帰艦したらすぐ中隊、そのあと後隊・・・というようにうまく交代させたらいいのではないか」

ということでその構えになったものである。信長の「長篠の合戦」を彷彿とさせる陣構えとでもいおうか。

 

さて、ミッドウエー島守備隊は大騒ぎになった。

「レーダーはどうした、何も映らなかったの!?」基地司令のギンメル少将は泡を食って怒鳴りまくっている。「即刻、カタリナを索敵に出せ。相手の出方がわからん」

そのうえで、戦闘機隊に出撃命令を出した。

カタリナ飛行艇が数機、急いで離陸して行く。

 

そのカタリナを、今は機動部隊の横に展開した主隊の『大和』が発見した。電探に映った影を最初に視認したのは、防空指揮所の見張兵曹。

「カタリナ飛行艇四機、こちらに向かうッ!距離二○○」

梨賀艦長はすでに指揮所に上がっていて、それを聞くとうなずいた。

ここはまず高角砲が出番ではないか。

カタリナに照準が合った・・・・

 

カタリナ飛行艇の乗組員は当初、不満たらたらだった。

「こんなところに何がくるってんだ、基地司令は夢でも見てるんじゃないのか。真珠湾の悪夢から覚めてないようだな。目ざまし時計を増やしてやれよ」

そういいながら舞い上がってゆくうちに、必ずしも基地司令の夢ではないことを思い知ったのだ。

はるか水平線上に、恐ろしい数の艦艇がこちらに向かってくるではないか。

「なんてこった、あれを見てよ。いったい何なんだ!」

しかし、気を取り直したカタリナはその艦艇に一矢報いんとばかりに飛んで行ったのだった。

 

機動部隊では「敵機、突っ込んできます!」との報告に緊張が走った。空母の機銃・高角砲も照準を合わせる。

その時空母『赤城』の先で轟音とともにカタリナがまず二機、撃墜された。続いて右から来たカタリナ二機がこれは『武蔵』の射撃で撃墜された。

これを機に、南雲機動部隊は第一陣の攻撃隊を発進させた。

既に完全に準備完了していた攻撃隊の艦爆、艦攻は一斉に発艦してミッドウエー島に殺到して行く。

 

ミッドウエー島では大混乱に陥っていた。あわてて攻撃機を出動させた。

在泊の駆逐艦、魚雷艇などを急いで出すがそれが突然轟音とともに二つに割れて沈んでいくではないか。

「なんてこった、いったい何が起こった?」

ギンメル少将は頭を抱えてわめいた。

これは前から展開していた『伊号八○○潜水艦』から発射された「甲標的」数隻による雷撃である。

その「甲標的」のうちの一隻は、あの松尾大尉・都竹兵曹のペアである。

司令塔にいて駆逐艦撃沈を確認した松尾大尉は、操縦席の都竹兵曹に

「やったぞ!」

と声をかけた。普段冷静な松尾大尉に似合わない興奮した声に、艇付の都竹兵曹も

「はい!やりましたっ!」

と思わず声を上ずらせたのだった。

 

今や、ミッドウエー島(サンド島・イースタン島)はほんの数時間前の静寂はなく、帝国海軍の艦爆・艦攻の爆撃の音とそれに反撃するアメリカ軍の対空砲火の音ですさまじい様相を呈していた――

 

             ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

始まりました、ミッドウエー攻略戦。

全く史実を無視した展開であります。こんな戦術はありえませんがあくまで架空の物語ですからここは、帝国海軍の活躍を楽しみましょう~。

次回も戦争です。


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「女だらけの戦艦大和」・ミッドウエー攻略2

「女だらけの戦艦大和」・「武蔵」に異常な緊張感がみなぎり始めていた――

 

トレーラー在泊のほとんどの艦艇に、『ミッドウエー攻略戦』の概要が発表され、間もなく山本連合艦隊司令長官がここトレーラー島に来ることが知らされた。

「ミッドウエー、てのは太平洋のど真ん中じゃん。・・・ここを攻略て言うのはちょっと大変じゃないか?」

「いや、今の帝国海軍の勢いを持ってすればどうってことはないだろう」

「待て、あまり敵さんを舐めてかからん方がいいぞ。エライさんたちがどう考えてるかで私たちの命もどうなるかわかったもんではない」

「きさま、臆病風に吹かれるのかこの期に及んで。卑怯な真似はするなよ!」

「臆病風ではない。犬死ならごめんだと言うんだ!」

・・・と、各艦艇では兵員さえ寄ると触ると議論の応酬である。

そして『大和』では、艦長命令として「総員作戦が近いので断髪すべし」との指紙が回ってきた。

麻生分隊士は「へえ、作戦が近いから断髪ってのは初めてだなあ」と言いながら、「航海科は今日だぞ。みんな行くぞ」と言って理髪室に向かった。

各科、順番で切るのだが航海科が一番初め。分隊士も、見張兵曹も髪を切った。そして散髪が済んだ時、理髪手がさっと彼女たちに「あるもの」を手渡した。

「なんでしょう、これ」

と開いた見張兵曹の顔色がちょっと変わった。分隊士は「なんだった?」と覗き込んで、うーん、と唸った。小さな包みの中には切った髪が一つまみほど入っている。

「万が一の際の『遺髪』にせよ、ってことか」

分隊士はそう言って航海科の皆を眺め渡した、皆それを手にして黙りこくっている。しばらく沈黙が支配したがそれを破ったのは見張兵曹。

「そのくらいの覚悟で臨めって、そういうことでありますね。麻生分隊長」

と大きな声で言った。麻生分隊長、と言ったのは彼女が分隊士兼分隊長だからだが、大きな作戦に臨んで再確認という意味もあったのだろう。

麻生分隊士は、大きくうなずいて

「おお、そういうことだ。皆ふんどしを締めてかかろう!」

と言い、みんなも「おう!!」と応えた。

 

それから何日か経って、内地から山本いそろ連合艦隊司令長官がやってきた。長官は、『大和』に乗り組むことになって皆は大騒ぎ。

「どんとなおひとじゃ?長官は」「エライずんぐりなさったお方じゃそうな。あんまり背は高うないというとった」 等々・・・。

そして長官登舷礼を以て山本長官を『大和』にお迎えした。その興奮もさめぬうちに「Y日」が六月のある日、であることを知らされた。

「あと、ひと月半しかない」 機銃分隊や、高角砲では真っ青になって猛訓練をしている。航海科とて例外ではなく、昼夜見張りの訓練等に余念がない。

通信科は、敵の周波数に合わせて敵がこちらの動向に気づいていないかを探知するのに必死である。

そうして月日は流れた――

 

Y日まであと一週間と二日という日、いよいよ出撃命令が出た。

見張兵曹はトメキチをどうするか迷ったが、今回出撃しない艦の友人に預けることにした。『武蔵』のナナも同様で、トメキチと同じ艦に預けられる。

見張兵曹はしっかりとトメキチを抱きしめると、「トメキチ、いい子にしててね。私はきっと戻ってくるからね」とその耳元に囁いた。

トメキチは「く―ン」と鳴いてうなずくと、兵曹のほほを舐めた。

 

そんな頃。

アリューシャン列島のキスカ島より『伊号八○○潜水艦』が十五隻ほど、日付け変更線に沿うようにして南下を始めていた。『伊号八○○潜水艦』は、帝国海軍の秘蔵っこで「海中の『大和』」とすらうわさされる超大型潜水艦である。

魚雷の本数はなんと四十本。搭載可能な甲標的は十隻というつわものである。実際、甲標的は十隻積んでいる。

その弩級潜水艦が十五隻、ミッドウエー攻略のために粛々と海の中を進んでいる。彼女らは、『Y日』という日付だけを頼りに、進んでいる。

万が一を考え無線は封鎖している。

(無線が再開するときは、航空部隊がミッドウエー島に攻撃を始めたその時だ)

『伊号八○○潜』の、一隻の艇長は妙に静かな艦内を見返りながら思っている。緊張が身体を支配している。

 

『大和』他の出撃前夜、酒保が開かれ無礼講の宴会となった。

もしかしたらこれが最後の酒宴となるかもしれない、と思うと皆つい深酒になった。機関科の松本兵曹長は、班員の一人一人と握手を交わし「明日はよろしく」と言って回った。

そして麻生分隊士のいる航海科、見張り部――

麻生分隊士が、「訓練通りやればいい。どんなに大きな作戦でも基本は変わらん。落ち着いて見張り員は敵の動向、敵機の種類・数・方向を見張れ。伝令は耳に全神経を集中せよ。決してあわてるな。万が一、敵の弾にやられてもあわてるな。やられたものの交代を近くの者が務めよ。死ぬことを恐れるな、敵も必死で来るのは変わりはない。――そして皆死んだなら――」

皆がのどをごくり、と鳴らした。

小泉兵曹が静かに、

「死んだなら?」

と問うた。麻生分隊士は笑って、

「九段の靖国神社で皆会おう。拝殿の前で俺は待ってるからな」

と言った。それを聞くと皆は口々に、「私が先かもしれませんよ」「いや、道案内は俺の方が美味いから、俺が一番だな」などとわめき合っている。

麻生分隊士はそんな皆を見渡して、ふと見張兵曹に目を止めた。妙に沈んだ顔つきである。

そっと彼女のそばに寄って行った分隊士は、見張兵曹の体が小刻みに震えているのを見た。

「どうしたんだ、オトメチャン」

もしかして、怖くなったのか?いわゆる臆病風に吹かれた、というものだろうか。

すると見張兵曹は、ちょっと涙のたまったような瞳をあげて分隊士を見つめた。分隊士はこんな大ごとの前夜だと言うのに、胸がときめいてしまった。

が、それをおくびにも出さずに「・・・どうしたんだ?」と聞いてやった。

「あの、分隊士」と、見張兵曹は言った。

「私は『靖国神社』がどこにあるのか全然わかりません、ですから拝殿前に集まれ、と言われてもそこに行けるかどうか心配でなりません・・・」

声を震わせている。そんなことが心配だったのか、と麻生分隊士は可愛くてたまらなくなった。

「大丈夫だよ、オトメチャン。ちゃんと道案内がいるから迷わず行ける。そんなこと心配すんなって」

その肩を抱いてやった。するとオトメチャンはほっとしたように微笑み、震えが止まったのだった。

「では」

と麻生分隊士が盃を持って高く差し上げた。皆も習った。

「皇国の興廃、この一戦にあり。各員一層奮励努力せよ!――この精神で行こう。明日はよろしく!」

力強い分隊士の声に皆が「お――ッ!」と叫んで、杯を飲み干した――

 

           ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

いよいよ次回、ミッドウエー島攻略戦開始!!


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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