2010-03

「女だらけの戦艦大和」・桜の押し花 - 2010.03.30 Tue

「女だらけの戦艦大和」は、日本の春を思いながらも訓練中――

 

そんなある日のこと、修理なった『間宮』が久しぶりのトレーラー島寄港である。皆は例によって熱狂して迎えたが、その『間宮』が麻生分隊士と見張兵曹には、とても懐かしい人からの便りをもたらしてくれた。

 

「オトメチャン」

と、麻生分隊士が亀井一水と交代して来た見張兵曹に声をかけた。はい?と麻生分隊士のそばに行った兵曹に、分隊士は一通の封筒を差し出して

「覚えてるよね、小渕少尉。前に分隊長兼分隊士だった人」

と言った。見張兵曹は、懐かしそうな顔になって

「ああ!小渕少尉、覚えていますとも。・・・懐かしいですね、お元気なんでしょうか」

と言った、その兵曹に分隊士は

「その小渕少尉、いや今はもう大尉だけど。お手紙だよ」

と言って封書から手紙をひっぱりだした。そして、「読んであげよう」と、言って読んでくれた。

 

小渕少尉は見張兵曹が『大和』に乗艦して来た時の航海科の分隊長兼分隊士で、ちょうど今の麻生少尉と同じ位置づけであった。

兵学校出の少尉で優秀な成績で卒業して艦隊勤務に就いた人であったがそれを鼻にかけることもなく、とても人望の厚い優しくしかし厳しさもある分隊士であった。

見張兵曹たちが『大和』に乗艦してきて、航海科に配置になった際とても喜んでくれた人で見張兵曹には忘れがたい人である。

「小さいトメちゃん」

と見張兵曹を呼んでことのほか可愛がってくれたのである。兵曹が(当時はまだ上水だった)、麻生兵曹に因縁つけられてどつかれたり蹴っ飛ばされて来た後、必ず、

「麻生も悪気があってしてるんじゃないから怨んじゃいけないよ?みんなこうやって一人前になるんだからね。でもあんまりなことされたら、私に言いなさい」

と慰めてくれたのだった。

この小渕少尉は心優しい人で行きすぎた体罰をひどく嫌った。だからあんまり麻生兵曹の体罰、しかも『小さいトメちゃん』限定の体罰をとても嫌がった。

時に、

「麻生兵曹は何故あんなに見張上水を目の敵にするのか?何か個人的に恨みがあるのか?」

と問い詰めることがあった。

そんな時、麻生兵曹は小声でしどろもどろに弁解していたが、何を言っていたのかは当時の見張上水は知らない。

 

そんな人望厚い小渕少尉であったが、見張兵曹が水兵長になるころ体調を崩した。肋膜炎になって、泣く泣く『大和』を降りることになったのだ。

泣いたのは小渕少尉だけではなかった、見張上水も泣く。小泉上水も泣く。航海科の兵たちは皆泣いていた。

しかも後任に、どうやら麻生兵曹がつく公算が大きいと聞いた兵たちの落胆は大変なものであった。

「小渕少尉、早く良くなって戻ってきてください」

見張上水や小泉上水は泣きながら小渕少尉にすがった。小渕少尉は笑って、

「大丈夫、しっかり療養して戻ってくるからそれまで麻生兵曹のいうことを聞いて頑張るように。私が戻ってきたころ君たちがどんな優秀な航海科員になってるか、楽しみにしてるからね」

と言って後ろを振り返り振り返りして退艦して行ったのだった。

 

麻生少尉が読み上げた内容によれば、肋膜炎の治療にちょっと時間はかかったものの、完治した小渕少尉は再度『大和』への乗務を希望したらしい。が。

「小渕大尉は兵学校での出来が良かったから、本当は艦に乗る予定じゃあなかったらしいんだよな。でも現場を知るのはいいことだと『大和』に来たんだってよ。でもちょうど艦を降りてきたからいいタイミングとばっかりに上が小渕大尉が治ってから軍令部に勤務にさせちゃったんだって」

と手紙を読んでわかりやすく解説してくれた。

「そうだったんですか」

と、見張兵曹はちょっとがっかりした。

と言って麻生分隊士が嫌いなわけじゃない、が、乗艦して初めて出会って優しくしてくれた人はどこまでも懐かしくいとおしい気がしてならない。

そんな見張兵曹をちょっと苦笑して見た麻生分隊士は手紙を兵曹に押し出して、

「ほらここ。読んでみろよ」

兵曹がそれを受け取って読んでみると

 

・・・小さいトメちゃんは元気でしょうか?

風のうわさにトメちゃんの姉妹にずいぶんエライ目にあわされたと聞きましたが。

でも、何があっても麻生君がいるから大丈夫だよね。麻生君、小さいトメちゃんが『大和』に乗って来た時からもうあの子に夢中だったものね。

だから逆にあんなにトメちゃんにいじわるしたんでしょう?

トメちゃん、可愛いものねえ!ライバルが多いんじゃないのかなあ、がんばれ麻生君。

でもあの小さいトメちゃんももう今頃は一人前の『大和』乗組員になったことでしょうね。いつかその姿を見にゆきたいと思うのです・・・

 

と書かれていた。

「分隊士・・・」

と思わず麻生少尉の顔を見るとなんだかちょっとばつが悪げである。変な笑いを浮かべながら、

「まあ、そんなことだよ。小渕大尉も頑張っておられるから、俺たちも頑張らんとな」

と言った。

「はい。いつか小渕大尉にお会いした時、恥ずかしくないような海軍軍人になります」

と見張兵曹は誓った。

「それで、な」

と麻生少尉は手のひらに入るくらいの小さな封筒をそっと見張兵曹に差し出した。

「小渕大尉が特別に俺と、オトメチャンにって」

見張兵曹はそれを受け取って中を見た。和紙に挟まれたのは、桜の押し花。

麻生少尉が嬉しそうに、

「これな、大尉がきれいな桜を拾って押し花にしてくれたんだよ。あのな、『靖国神社』の桜だぞ」

と言った。

兵曹も思わず笑みを浮かべて、

「わあ、靖国の。私はまだ行ったことがありませんので嬉しいです。分隊士、小渕大尉にお手紙を書くときは、私からもよろしくと書いておいてくださいね」

と言って、押し花の入った封筒を手帳に挟んで大事に懐に入れた。

 

見張兵曹の脳裏に、桜花爛漫な靖国神社の社頭に立って参拝する、懐かしい小渕大尉の姿が浮かんだ。

――が、兵曹は靖国に行ったことがないので神社の風景はあくまで想像ではあるが。

 

その晩当直が明けた兵曹を、麻生分隊士はまたもや待ち構えていて「オトメチャン、小渕大尉のほうがいいとか言わないでくれよ」と抱きしめたのであった。

まあいくら小渕大尉のほうがいいとしても、もう軍令部のエライさんの仲間入りをしてる人に一介の下士官がどうこう出来はしないのだが。

そんなことを心配するくらい、麻生分隊士のオトメチャンに対する愛は深い――そういうことなのだと兵曹は嬉しく思うのであった――。

 

              ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

優しい上司の思い出はその人が移動や退職した後もずっと残るものです。

でも、いやな上司の思い出もちょっとだけ残りますが、時が経てばどちらも結局「いい思いで」になるのですよね。


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「女だらけの戦艦大和」・ウサギじゃないもん! - 2010.03.27 Sat

「女だらけの戦艦大和」は、今日も激しい訓練を行った――

 

常夏の日差しの下、訓練は決して生易しいものではないがそこは帝国海軍の軍人たる彼女ら、弱音など吐いたりはしない。

が。

亀井一水が、訓練終了後眼をこすりながら、見張兵曹に

「班長、なんだか私最近視力が落ちたような気がしますが」

と訴えた。すると酒井上水や石川水兵長たちも同じように訴え出した。見張兵曹は、

「それはいけないなあ。見張りは目が命だからな。そうだ、医務科に行って視力検査をしてもらった方がいいんじゃないか?」

と提案した。それを小泉兵曹が聞きつけて寄って来た。そして、

「この日差しのなかじゃ、無理もないかもしれんよね。私たちはもう慣れてるからいいが、亀井ちゃんたちは慣れるってとこまで行ってないからね」

といい、二人は皆に、「すぐ医務室に行ってこいよ」と勧めた。

亀井一水や酒井上水たちは連れだってぞろぞろと医務科に降りて行った。

 

医務科に彼女らが行くとほかの配置の見張り員たちが今日は大勢いるではないか?

「あれ、どうしたの?」と、酒井上水が同期の兵を見つけて話しかけた。その兵は、

「ああ!うん、実はねえ、このところ視力が落ちてきたような気がしてなんないのよ。分隊士に言ったら、検査して来いって」

と、目をこすりながら言う。

「やっぱり、そうなんだ」

酒井上水はうなずいた。医務科では、見張り員がぞろぞろと来たのでちょっと驚いている。しかもきたのは水兵長以下の経験の浅い兵が多い。

日野原軍医長は彼女らに視力検査のほか、眼底検査等施してみた。万が一、大きな眼病などがあっては大ごとだからだ。

しかし・・人数おおいなあ。

 

麻生分隊士は防空指揮所に上がってきた。

そこで見張兵曹から酒井上水たちの件を聞かされた。分隊士もさっき、ほかの配置の見張り員たちを医務室に行かせたばかりである。

「そうか、ここでもか!」

麻生分隊士はちょっと驚いている。見張兵曹は、

「分隊士に無断でごめんなさい。しかし緊急と判断しましたので。お咎めは受けます」

と謝った。分隊士は、いやいやと手を横に振って、

「いいんだよ。それでいいんだよ、だってもし変な目の病気だったら困るからな。・・・さすがオトメチャン」と言ってまた抱きしめようとした。兵曹は小泉がそばにいるので恥ずかしく、さりげなく避けようとしたが、分隊士はガッと抱きしめて離してくれない。

小泉兵曹が笑いながら「では邪魔ものは消えまーす」といいながらそこを離れる。

分隊士はオトメチャンを抱きしめながら、

「で、オトメチャンは目は大丈夫なのか?視力が落ちてきたということはないのかい」

と尋ねる。兵曹は、

「はい。私は大丈夫でありますが」

と答えた。分隊士は抱きしめる腕に力を込めると、

「変だと思ったらすぐに言わなきゃいけないよ。俺はねえ、オトメチャンが大事なんだからね」

と言って、唇を奪う。

あたりに暮色が広がりだして来た。

その様子を、ちょっと離れた場所に停泊している『武蔵』と駆逐艦『雪風』、それに『無花果』の艦橋から双眼鏡で見られていることに二人は気がつかない。

 

医務科。

日野原軍医長は見張り員たちの診察を終えた。診察の結果では重篤な眼病はいなかった。三人ほどが結膜炎の軽症でこれは一週間ほどの点眼薬の処方で何とかなるし、一人ものもらいの兆候がある程度。これも点眼薬で治る。

そして、肝心の視力低下の件は「まあ、一時的なものではあろうからもっと目にいいと思われる栄養を取った方がいいだろう」ということになった。なんてったって見張り員の仕事は過酷である。

日野原軍医長は、主計科に出かけてゆき主計長に

「目にいい栄養のあるものを見張り員たちに食わしてほしい」

と頼んだ。主計長は喜んで栄養辞典と首っ引きで研究した。

まずは、キモ料理。いろんな魚の肝を料理したものを数人の見張り員にモニターになってもらい食わせたが、

「ぐえ!苦い!!」

「うわあ、これは苦手であります」

「気持ちが悪いであります」

・・・などとすこぶる評判が悪い。挙句に、「こんなものばっか食うんだったら配置換えを希望します」とさえいわれる始末。

更に辞典をめくると、

「ブルーベリーは目にいい」と書いてあったが、そんなものをどうやって手に入れるというのだ?大体このクソ暑い島では栽培は難しそうだ。

あきらめた。

更に、主計長の研究は続いた。

ウナギがいいようだ、と聞いたがこれは他の分隊員もきっと食いたがるだろうし、三千人近くのウナギを手配するのは容易ではないということで一応断念。

「どうしたらいいのかなあ。何が目にいいんだろう・・・」

とぶつぶつ言いながら辞典をめくると、そこには。

「ニンジンは目に良い」

と書いてあるではないか!!

「こ、これだあ!」と主計長は大声を出して、福島大尉を呼んだ。福島大尉は何事かとすっ飛んできたが、主計長に辞典を突き出され、

「ほらこれこれ、ニンジンだよニンジン!」

と叫ばれやっと理解。福島大尉は冷静に、

「では明後日あたりから見張りにはニンジン料理ですね」

と言って、ふたりはではそれをどんな料理にするか、相談し始めた――

 

二日後。

航海科の専科の見張り員に特別料理が出された。

最初皆はその華やかな色合いに喜んだ。ご飯もニンジンが混ぜ込んであるし、おかずもニンジンの煮物、グラッセ、きんぴらなどである。

「あまーい」

「いやこれはおいしい」

などと好評である。見張兵曹も「どんなものが出るのかと思ってびくびくしてた」そうだが、おいしいのでほっと一安心。

 

最初の二、三日はなんとか無事に過ぎた。

 

だがしかし。しょっちゅう同じモノばっかり食っていると飽きが来るのは必定である。しかも兵員の楽しみは寝ることと食うこと。

その食うことが毎日同じメニューの繰り返しでは、いくらなんでも嫌になろうというものである。

「あんまりぜいたくは言えねえけどさあ、こう毎日ニンジンの同じメニューばっかりじゃあ、飽きちゃうよね」

ある晩、小泉兵曹が見張兵曹や酒井上水たちと話しこんでいる。

「そうだねえ。最初はおいしかったんだけど、同じモノが連日じゃ、ちょっとねえ」

見張兵曹もこぼす。酒井上水が、

「分隊士はこれを食べてないんでしょうか?」

というと小泉兵曹は、手を横に振って

「食う訳ねえだろう?士官だぜ、分隊士は。士官は別の食事だもん」

とちょっと腹立たしげに言った。見張兵曹は「でもねえ」と口の中で言って、

「分隊士に言っても、きっと『お前たちの事を思ってのメニューだから、がまんせい』って言うに決まってるし」

とこれはあきらめムードで言う。酒井上水が、なんだか悲しげに、

「でもこんな毎日じゃやり切れませんよ、せめて一週間に三回とかならいいのに。見張り員はウサギじゃありません」

と言った。

その時、小泉兵曹が

「貴様今何て言った!」

と大声を出した。酒井上水はびくっとして、「ごめんなさい、つい口が滑って――」と言ったが、小泉兵曹はとがめたわけではない。

「ウサギ、かあ。貴様いいこと言ってくれたな。ちょっと皆耳貸せ」

小泉兵曹は、見張兵曹と酒井上水を引き寄せて何やらひそひそ・・・。

 

二日後。

またもや朝から見張り員たちにはニンジンずくしのご飯である。いい加減みんなは飽きてしまって、残すものが続出している。が、主計長と軍医長が点検に来ては

「残すんじゃない!しっかり食わないと目がよくなんないぞ!」

と怒鳴るので、無理やり食ってるのが現状。みんな涙目。

小泉兵曹は、小声で「いいか、この後実行に移すぞ」と見張兵曹と酒井上水に囁く。二人はうなずく。

 

食事が終わり、かたずけが済んだ後小泉兵曹は、主計長と軍医長が第一艦橋に行くのを見た。

「おい、行くぞ!」

三人は艦橋へ駆け上がる、そして防空指揮所に入って小泉兵曹は、そこで大声をあげたのだ。

「大変だあ!み、見張兵曹が・・誰か来てえ!」

その声は伝声管を伝わって、主計長たちのいる艦橋にも響いた。そこには麻生分隊士もいたので、『見張兵曹』と聞いてぶっ飛んできた。

 

主計長、軍医長、麻生分隊士、そして参謀長が指揮所に飛び込んできた。

「どうしたあ!?

するとそこには、ぶるぶる震える小泉兵曹と酒井上水がいて、見張兵曹は頭を抱えて座り込んでいる。

参謀長が、見張兵曹を覗き込むようにして、「一体どうしたんだ?」とたずねる。

小泉兵曹は、震えながら

「最近私たちはニンジンの料理ばかり食べています。――いや、目のためにいいのは分かっているんですが、あまり毎日なのでついにオトメチャンが」

と言って、見張兵曹を立たせて皆の方に向かせた。

「ギャー!!!」

麻生分隊士、主計長、軍医長そして森上参謀長が真っ青になって叫んだ。

「お、オトメチャン・・・」

四人が指さす先には、頭から白い兎の耳が生えて、お尻にはやはり白いふわふわのウサギのしっぽの生えた見張兵曹が立っていた。

小泉兵曹は、「ニンジンの食い過ぎで、こんなになってしまったであります」と泣きそうな声を出した。

軍医長が、真っ青になって「うわああ、まさか。オトメチャン・・・」といいかけてはたと気がついた。

「馬鹿言うんじゃない!いくら毎日ニンジン食ってたからってこんなになるもんか、いい加減にしろこの野郎!」

やはり冷静な軍医長、だまされなかった。

そこに騒ぎを聞きつけて梨賀艦長が上がってきた、「ねえ何の騒ぎ、って、うわ―!オトメチャン可愛い~~!」

別の騒ぎになってしまった。

 

そのあと、三人は事の顛末を主計長、軍医長に話した。

「そうか、それは悪かった。そうだな、よくがんがえりゃ毎日ニンジンばっかじゃいやにもなるよな」

と、主計長も軍医長も笑ってくれたので三人はほっとした。

主計長は、

「まあ目にいいものだからこれからも出すけど、ああいう形じゃもう出さないから安心せいよ」

と言ってくれた。軍医長は、見張兵曹がつけているウサギの耳としっぽを見て、

「しっかし、よくこんなことを考えついたものだよ」

と感心しきりである。

 

その晩。

麻生分隊士と森上参謀長が珍しく二人で見張兵曹の当直明けを待っている。

ラッタルを降りてきた兵曹は二人が雁首そろえているのに驚いた、すると参謀長がやにわに見張兵曹をひっぱって、

「ちょっとこっちに」

と参謀長の部屋に引き込んだ。後ろを麻生分隊士が押して。

部屋には例のウサギの耳としっぽが置いてある。参謀長が「早く、これを・・」とせかす。分隊士は「待ってくださいよ、順番があるんですから・・・」と言ってまず服を脱がし、それから耳をつけさせ、アメリカの下着に着替えさせてそのお尻に白い尻尾をつけた。。

 

「か―わいい!!」

参謀長と麻生分隊士は一緒になって叫ぶ。見張兵曹はいったい何でこんな恰好をさせられるのか分からず呆然としている。

「オトメチャンのウサギちゃん、可愛い~。今夜はおれんとこでネンネだよ」

という参謀長に分隊士が、

「ずるいであります、もともとオトメチャンは私のものでありますよ!」

と軽く抗議。

すると参謀長はニタ―ッと笑って、

「まあいいか、今夜は三人で過ごそうねえ~」

真っ青になる見張兵曹。

二人はオトメチャンをその場に押さえつけて――

 

 

           ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ニンジンの乱。

しかしどうして最後はこういう馬鹿騒ぎになるんだか?

まあ、これに艦長や副長が参戦してこなかっただけいいとするか。してきたら大混戦間違いなし、ですからね。

皆さまも、目は大切に。


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「女だらけの戦艦大和」・衛生講話 - 2010.03.25 Thu

「女だらけの戦艦大和」は、言うなれば専門家の集まりである――

 

砲術の専門、医務の専門、機関の専門、見張りの専門等々が集まって一つの艦を動かしている、と言って過言ではないかもしれない。

 

しかし。

みんなが専門外とするものだってあるかもしれない。

 

ある日。

腕組をして、考え込みながら最上甲板を歩く麻生少尉の姿があった。時々立ち止まっては、空を見上げて首と肩でも凝ったのか、片手で肩をもむようなしぐさをしてはまた考えこんでいる。

(いったいどうなってるんだ?あんなに一所懸命しているというのに)

麻生少尉は、考え込んでいる。

(いったいどうして出ないんだろう?何がいけないんだろうか)

そして、次の瞬間。思わず声に出した。

「ああ、そうだ。こういうことは専門家に聞けばいいんだった!」

言うなり走り出す麻生少尉。いったいどこへ行こうというのか・・・。

 

その頃、見張兵曹は亀井一水と交代して指揮所から降りていた。

なんだか・・・胸が痛い。と言っても心臓がおかしいとか、恋の病とかいうのではない。昨晩も麻生少尉と過ごした際、(すごいきつく胸を揉むんだもの。痛いよ)と、言う訳である。

なんであんなに少尉はまなじりを決してひとの乳を揉んだりするんだろうか?

見張兵曹も腕組をして考え込む。

そばでトメキチがその様子をじっと見ている。

 

麻生少尉は、意を決して診察室に来ていた。

ノックをして、

「十三分隊の麻生少尉であります」

と申告した。衛生兵に、日野原軍医長の所在を聞くと私室に今いるはずだ、と教えてくれた。急いで軍医長の私室に行く麻生少尉。

日野原軍医長は在室で、

「オオ。麻生少尉じゃないか、どうした、どっか悪いのか?」

と言って部屋の中にいざなった。麻生少尉は、すすめられた椅子に座りながら

「いえ。私ではないのであります。・・・じつは」

と深刻な顔つきで話し始めた――

 

「何だって!?・・・オトメチャンの、ち、乳が出ないだって!?

日野原軍医長は素っ頓狂な声をあげた。普段この軍医長は取り乱したりしたことはない。医師という職業柄、やたらと取り乱してはならないのだ。

しかし、今は違う。

麻生少尉は神妙な顔つきでこう言ったのだ。

「軍医長。私はオトメチャンの乳を一所懸命揉んできました。でも、一向にオトメチャンの乳は出てこないのであります。どこが悪いのでありますか」

日野原軍医長はあんぐりと口を開けてしまった。しかもその口がふさがらなくなってしまったではないか。

・・・こいつ、乳を揉んだだけで母乳が出るとでも思ってんのか!?・・・

しばらくしてやっと口がふさがるようになった軍医長は、はぁ~とため息をついて麻生少尉の顔をまじまじと見てから言った。

「あのねえ、麻生少尉」

「はい!なんでしょうかっ!」

と、食いつきそうな勢いで返事をする少尉を手で制して軍医長は、

「いくらオトメチャンのお乳を必死で揉んだって・・・出ないよ」

といいきった。麻生少尉は、瞬間(心外な!)という顔をしたが、冷静になって質問した。

「どうしてでありますか?乳は揉んだら出るものだと聞きましたが?」

自信満々でいう麻生少尉に、日野原軍医長はもうお手上げ状態であった、が医師として間違ったことをそのままにしておくわけにはいかないのである。

エヘン、と咳払いをして軍医長は話しだした。

「あのねえ。お乳ってのはさ、だれが飲むのよ?」

すると、麻生少尉は顔を真っ赤にして小声で、「あの・・・私です」と言った。

日野原軍医長はまさにKO寸前だったがなんとか気を取り直して、椅子に座り直すと

「じゃあなくってさ!一般論を言ってんの、私は。少尉の個人的趣味のことは今は聞いてないのよ!」

とちょっと声を荒げた。その端正な顔が今は羞恥で真っ赤になっている。首にかけた聴診器が大きく揺れた。麻生少尉はびっくりして、

「は!申し訳ございません。・・・一般論で申し上げるなら、それは赤ちゃんであります」

と答えた。日野原軍医長はやっとまともな答えが出たのにほっとして、

「そうでしょう?赤ちゃんだよねえ。てこたあさあ、赤ちゃん産まないとお乳は出ないってことだよ、簡単に言うとさ。お乳って赤ちゃんのためのものだからね?わかるでしょ?」

と言った。

麻生少尉は、「赤ちゃんのもの、でありますか?私のものじゃないんですか?」とまたもや頓珍漢な事を言って、日野原軍医長はほとほと嫌になってきた。

「だからさ!少尉の個人的趣味はこの際忘れてくれよ!一般論で言ってんのよ私は。お乳は一般論では赤ちゃんの物なのよ!」

やけくそである。

この期に及んでやっと理解したような顔つきの麻生少尉に日野原軍医長は

「だからね、いっくら少尉が必死になってオトメチャンの乳を揉んだところで、オトメチャンが赤ちゃん生んでない限り・・・出やしないのよ!」

といいきった。

とたんに。

麻生少尉が「ああ!」と大声をあげて手を叩いた。日野原軍医長は驚いた。

「そうなんですか、出ないんですねこのままじゃ。てことは、オトメチャンが・・・」と少尉が言いかけて日野原軍医長はあわてて遮った、

「ちょっと待て。少尉変なこと考えてるんじゃないだろうな!」・・・まさかオトメチャンに誰かの子を孕ませて、とか。危険すぎる!

しかし麻生少尉は、「変なことですか?オトメチャンの体のどこかが悪いんじゃないかと心配することが、変なんですか?」と不審そうである。

日野原軍医長はあわてた、思わず思考だけが先走って勝手にとんでもないことを口に出してしまうところだった。いやあ、それこそあぶない・・・。

「イヤ悪くない。ってかオトメチャンの体が悪いとかいうんじゃないから大丈夫だ。揉んだだけで出たとしたらそっちの方が悪いかも、だ」

日野原軍医長はそう言って安心させてやった。心なしか麻生少尉も安心したような表情である。

 

麻生少尉が退出した後、日野原軍医長はすっかり頭を抱えてしまった。

((うちはもっと大人の艦だと思っていたのに、体はオトナのオンナかもしれないが中身はオトメチャン並みのおぼこじゃないか。これじゃあいろいろとまずいことが起きないとも限らん)

そう思った日野原軍医長は、艦長室に梨賀艦長を訪ねてさっきのことなどを話した。そして「衛生講話」を開催したい、と申し出た。

流石に艦長は、乗組員の性的無知に驚愕しその意見に賛同した。副長・参謀長も流石にびっくりして、

「へええ!あの麻生少尉がそんなことを真剣に思ってたんだ。――意外!可愛いねぇ」

と顔を見合わせた。その後大爆笑してしまった。

 

翌日、全艦対象に最上甲板で衛生講話が開催された。日野原軍医長はメガホン使っての講義である。

体は『大人の女』でも知識的には子供並みの乗組員に日野原軍医長は最初からお手上げ状態であった。

「赤ちゃんは、お母さんのおなかがポーンとわれて出てくる」というのを信じているものが多数を占めていて、日野原軍医長は頭を抱えている。

そこできちんと真実を黒板に図解して説明すると、皆の間から「ギャーッ!」という叫びが噴出。何事か、と軍医長が驚けば「そんなところから出られるんでありますか!」とか「あんな大きなもの、生むには大きすぎます!」とか、「体が裂けてしまいませんか!」などと興奮気味である。

日野原軍医長は「だから!人間の体というのはこうなって・・・」と、黒板の図をげんこつで叩いて怒鳴った。

しばらくして皆の興奮が冷めた頃、次の話に移る。

男性と女性の体の違いである。これには皆興味津津で静かに聞いてくれた。

 

講義はおよそ三時間ほどかかってしまった。途中皆が興奮したり絶叫して、話の腰が折られたからである。

日野原軍医長はどっと疲れを感じながらも最後に、

「・・・であるから、母乳というものは出産を経験して数カ月、あるいは一年ぐらいまでの間、赤ちゃんを養うために出るのである。間違っても出産してないものの乳を揉んでも、出ないのである!」

と言って締めくくった。

日野原軍医長としては、話の順番がずいぶん入れ替わってしまったりしたのが心残りではあったが、梨賀艦長が「軍医長。素晴らしい講義でありました!」と称賛してくれたのが救いであった。

そのあと、日野原軍医長は急性の過労に陥って倒れてしまった――。

 

そしてその晩。

麻生分隊士の部屋に見張兵曹がいる。これはいつもの光景。

で、兵曹は下帯だけの裸にされて、分隊士のベッドに座らされている。兵曹は、「分隊士、何をなさるんですかあ?」とちょっと不安げである。

分隊士は、その隣に座りながら

「なあ、オトメチャン。今日の軍医長の講話はわかったかな?」

と聞いた。見張兵曹は胸を両腕でそっと隠しながら、

「私にはちょっと難しかったです。あんまり経験のないことばかりだったので驚いちゃって」

と言った。その腕を無理やり解きながら分隊士は、

「そうかあ、やっぱりオトメチャンはおぼこで可愛いなあ。もうちょっとそのまんまでいてくれてもいいかなあ。で、さあ」

と言って、兵曹の胸のふくらみをつかんだ。いきなりベッドに突き倒した。

「分隊士?」というオトメチャンの乳に、分隊士はちょっと曲がった口を近寄せて

「揉んでダメなら、こうしたらもしかしたら出ないかなあ~」

というなり乳首を口に含んで吸い始めた。

「いやあ、分隊士ぃ・・・」オトメチャンが身悶えた。それを抑え込みながら分隊士は、(もしかしたら。もしかして)の期待に身を焦がしつつ、その行為を続けたそうな――

 

                ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

揉んでダメなら吸ってみろ。

まさかです。あれほど日野原軍医長が身の細る思いで講義をした意味がありません。一体分隊士は何を聞いていたのでしょうか?

わかりません私には。

それより日野原軍医長の体調は大丈夫なんでしょうかねえ・・・?


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「女だらけの戦艦大和」・衛生講話 - 2010.03.25 Thu

「女だらけの戦艦大和」は、言うなれば専門家の集まりである――

 

砲術の専門、医務の専門、機関の専門、見張りの専門等々が集まって一つの艦を動かしている、と言って過言ではないかもしれない。

 

しかし。

みんなが専門外とするものだってあるかもしれない。

 

ある日。

腕組をして、考え込みながら最上甲板を歩く麻生少尉の姿があった。時々立ち止まっては、空を見上げて首と肩でも凝ったのか、片手で肩をもむようなしぐさをしてはまた考えこんでいる。

(いったいどうなってるんだ?あんなに一所懸命しているというのに)

麻生少尉は、考え込んでいる。

(いったいどうして出ないんだろう?何がいけないんだろうか)

そして、次の瞬間。思わず声に出した。

「ああ、そうだ。こういうことは専門家に聞けばいいんだった!」

言うなり走り出す麻生少尉。いったいどこへ行こうというのか・・・。

 

その頃、見張兵曹は亀井一水と交代して指揮所から降りていた。

なんだか・・・胸が痛い。と言っても心臓がおかしいとか、恋の病とかいうのではない。昨晩も麻生少尉と過ごした際、(すごいきつく胸を揉むんだもの。痛いよ)と、言う訳である。

なんであんなに少尉はまなじりを決してひとの乳を揉んだりするんだろうか?

見張兵曹も腕組をして考え込む。

そばでトメキチがその様子をじっと見ている。

 

麻生少尉は、意を決して診察室に来ていた。

ノックをして、

「十三分隊の麻生少尉であります」

と申告した。衛生兵に、日野原軍医長の所在を聞くと私室に今いるはずだ、と教えてくれた。急いで軍医長の私室に行く麻生少尉。

日野原軍医長は在室で、

「オオ。麻生少尉じゃないか、どうした、どっか悪いのか?」

と言って部屋の中にいざなった。麻生少尉は、すすめられた椅子に座りながら

「いえ。私ではないのであります。・・・じつは」

と深刻な顔つきで話し始めた――

 

「何だって!?・・・オトメチャンの、ち、乳が出ないだって!?

日野原軍医長は素っ頓狂な声をあげた。普段この軍医長は取り乱したりしたことはない。医師という職業柄、やたらと取り乱してはならないのだ。

しかし、今は違う。

麻生少尉は神妙な顔つきでこう言ったのだ。

「軍医長。私はオトメチャンの乳を一所懸命揉んできました。でも、一向にオトメチャンの乳は出てこないのであります。どこが悪いのでありますか」

日野原軍医長はあんぐりと口を開けてしまった。しかもその口がふさがらなくなってしまったではないか。

・・・こいつ、乳を揉んだだけで母乳が出るとでも思ってんのか!?・・・

しばらくしてやっと口がふさがるようになった軍医長は、はぁ~とため息をついて麻生少尉の顔をまじまじと見てから言った。

「あのねえ、麻生少尉」

「はい!なんでしょうかっ!」

と、食いつきそうな勢いで返事をする少尉を手で制して軍医長は、

「いくらオトメチャンのお乳を必死で揉んだって・・・出ないよ」

といいきった。麻生少尉は、瞬間(心外な!)という顔をしたが、冷静になって質問した。

「どうしてでありますか?乳は揉んだら出るものだと聞きましたが?」

自信満々でいう麻生少尉に、日野原軍医長はもうお手上げ状態であった、が医師として間違ったことをそのままにしておくわけにはいかないのである。

エヘン、と咳払いをして軍医長は話しだした。

「あのねえ。お乳ってのはさ、だれが飲むのよ?」

すると、麻生少尉は顔を真っ赤にして小声で、「あの・・・私です」と言った。

日野原軍医長はまさにKO寸前だったがなんとか気を取り直して、椅子に座り直すと

「じゃあなくってさ!一般論を言ってんの、私は。少尉の個人的趣味のことは今は聞いてないのよ!」

とちょっと声を荒げた。その端正な顔が今は羞恥で真っ赤になっている。首にかけた聴診器が大きく揺れた。麻生少尉はびっくりして、

「は!申し訳ございません。・・・一般論で申し上げるなら、それは赤ちゃんであります」

と答えた。日野原軍医長はやっとまともな答えが出たのにほっとして、

「そうでしょう?赤ちゃんだよねえ。てこたあさあ、赤ちゃん産まないとお乳は出ないってことだよ、簡単に言うとさ。お乳って赤ちゃんのためのものだからね?わかるでしょ?」

と言った。

麻生少尉は、「赤ちゃんのもの、でありますか?私のものじゃないんですか?」とまたもや頓珍漢な事を言って、日野原軍医長はほとほと嫌になってきた。

「だからさ!少尉の個人的趣味はこの際忘れてくれよ!一般論で言ってんのよ私は。お乳は一般論では赤ちゃんの物なのよ!」

やけくそである。

この期に及んでやっと理解したような顔つきの麻生少尉に日野原軍医長は

「だからね、いっくら少尉が必死になってオトメチャンの乳を揉んだところで、オトメチャンが赤ちゃん生んでない限り・・・出やしないのよ!」

といいきった。

とたんに。

麻生少尉が「ああ!」と大声をあげて手を叩いた。日野原軍医長は驚いた。

「そうなんですか、出ないんですねこのままじゃ。てことは、オトメチャンが・・・」と少尉が言いかけて日野原軍医長はあわてて遮った、

「ちょっと待て。少尉変なこと考えてるんじゃないだろうな!」・・・まさかオトメチャンに誰かの子を孕ませて、とか。危険すぎる!

しかし麻生少尉は、「変なことですか?オトメチャンの体のどこかが悪いんじゃないかと心配することが、変なんですか?」と不審そうである。

日野原軍医長はあわてた、思わず思考だけが先走って勝手にとんでもないことを口に出してしまうところだった。いやあ、それこそあぶない・・・。

「イヤ悪くない。ってかオトメチャンの体が悪いとかいうんじゃないから大丈夫だ。揉んだだけで出たとしたらそっちの方が悪いかも、だ」

日野原軍医長はそう言って安心させてやった。心なしか麻生少尉も安心したような表情である。

 

麻生少尉が退出した後、日野原軍医長はすっかり頭を抱えてしまった。

((うちはもっと大人の艦だと思っていたのに、体はオトナのオンナかもしれないが中身はオトメチャン並みのおぼこじゃないか。これじゃあいろいろとまずいことが起きないとも限らん)

そう思った日野原軍医長は、艦長室に梨賀艦長を訪ねてさっきのことなどを話した。そして「衛生講話」を開催したい、と申し出た。

流石に艦長は、乗組員の性的無知に驚愕しその意見に賛同した。副長・参謀長も流石にびっくりして、

「へええ!あの麻生少尉がそんなことを真剣に思ってたんだ。――意外!可愛いねぇ」

と顔を見合わせた。その後大爆笑してしまった。

 

翌日、全艦対象に最上甲板で衛生講話が開催された。日野原軍医長はメガホン使っての講義である。

体は『大人の女』でも知識的には子供並みの乗組員に日野原軍医長は最初からお手上げ状態であった。

「赤ちゃんは、お母さんのおなかがポーンとわれて出てくる」というのを信じているものが多数を占めていて、日野原軍医長は頭を抱えている。

そこできちんと真実を黒板に図解して説明すると、皆の間から「ギャーッ!」という叫びが噴出。何事か、と軍医長が驚けば「そんなところから出られるんでありますか!」とか「あんな大きなもの、生むには大きすぎます!」とか、「体が裂けてしまいませんか!」などと興奮気味である。

日野原軍医長は「だから!人間の体というのはこうなって・・・」と、黒板の図をげんこつで叩いて怒鳴った。

しばらくして皆の興奮が冷めた頃、次の話に移る。

男性と女性の体の違いである。これには皆興味津津で静かに聞いてくれた。

 

講義はおよそ三時間ほどかかってしまった。途中皆が興奮したり絶叫して、話の腰が折られたからである。

日野原軍医長はどっと疲れを感じながらも最後に、

「・・・であるから、母乳というものは出産を経験して数カ月、あるいは一年ぐらいまでの間、赤ちゃんを養うために出るのである。間違っても出産してないものの乳を揉んでも、出ないのである!」

と言って締めくくった。

日野原軍医長としては、話の順番がずいぶん入れ替わってしまったりしたのが心残りではあったが、梨賀艦長が「軍医長。素晴らしい講義でありました!」と称賛してくれたのが救いであった。

そのあと、日野原軍医長は急性の過労に陥って倒れてしまった――。

 

そしてその晩。

麻生分隊士の部屋に見張兵曹がいる。これはいつもの光景。

で、兵曹は下帯だけの裸にされて、分隊士のベッドに座らされている。兵曹は、「分隊士、何をなさるんですかあ?」とちょっと不安げである。

分隊士は、その隣に座りながら

「なあ、オトメチャン。今日の軍医長の講話はわかったかな?」

と聞いた。見張兵曹は胸を両腕でそっと隠しながら、

「私にはちょっと難しかったです。あんまり経験のないことばかりだったので驚いちゃって」

と言った。その腕を無理やり解きながら分隊士は、

「そうかあ、やっぱりオトメチャンはおぼこで可愛いなあ。もうちょっとそのまんまでいてくれてもいいかなあ。で、さあ」

と言って、兵曹の胸のふくらみをつかんだ。いきなりベッドに突き倒した。

「分隊士?」というオトメチャンの乳に、分隊士はちょっと曲がった口を近寄せて

「揉んでダメなら、こうしたらもしかしたら出ないかなあ~」

というなり乳首を口に含んで吸い始めた。

「いやあ、分隊士ぃ・・・」オトメチャンが身悶えた。それを抑え込みながら分隊士は、(もしかしたら。もしかして)の期待に身を焦がしつつ、その行為を続けたそうな――

 

                ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

揉んでダメなら吸ってみろ。

まさかです。あれほど日野原軍医長が身の細る思いで講義をした意味がありません。一体分隊士は何を聞いていたのでしょうか?

わかりません私には。

それより日野原軍医長の体調は大丈夫なんでしょうかねえ・・・?


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「女だらけの戦艦大和」・桜来たる! - 2010.03.23 Tue

「女だらけの戦艦大和」は、常夏の中――

 

「もう内地は桜のころなんだろうねえ・・」

そう言ったのは、『大和』の梨賀艦長である。今艦長室で『武蔵』の猪田艦長と歓談中である。猪田艦長が、懐かしげな口調で言った。

「そうだよね、懐かしいなあ。内地の桜が。ここにはあんなにきれいな桜みたいなものはないからねえ」

梨賀艦長がうなずいて、

「そうそう。南洋桜はあるけどありゃあ桜じゃないよ。形が似てるってだけだし、色が濃すぎだよね。日本の桜が懐かしいよ」

と言って紅茶を飲みほした。

そこに副長が入ってきた。なんだかにこやかである。梨賀艦長がそれを見て、

「副長なんか嬉しそうだねえ。どうしたの?」

と問いかけると、副長は嬉しそうな顔つきのままで、

「森上参謀長が呉の鎮守府に掛け合って、鎮守府が桜の枝をたくさんおくってくれるそうなんですよ。参謀長が、最近みんながちょっと元気がないようだから内地の桜でも、って」

という。副長も待ちきれないようである。

「うわあ。内地の桜ぁ!」

梨賀艦長と猪田艦長が一緒に声をあげた。

桜桜、と嬉しそうな梨賀艦長に猪田艦長が待ったをかけた。梨賀艦長がちょっと不審げに猪田艦長を見た。猪田艦長は、

「ねえ、それが来たら武蔵(うち)にもちょっとだけ、一本か二本でいいから分けてくんない?」

と少しいいにくげに言った。梨賀艦長は、猪田艦長の背中をバーン!と叩いて、

「やだあ、そんなこと心配してたのぉ?大丈夫分けてあげるって。艦長そんなに意地悪じゃないもん!」

と笑った。

猪田艦長も、ほっとしたような顔で笑った。

 

それを聞いた日から梨賀艦長は連日、防空指揮所に上がっては見張り用の双眼鏡で海上を見張っている。

石川水兵長が、そっと麻生分隊士に

「分隊士。艦長は何を見張ってるのでありますか?」

と聞いた。麻生分隊士もわけがわからないと見えて首を横に振って

「わからないなあ。ここんとこ毎日だろう?聞いても艦長何にも言ってくんないんだぜ」

とふくれた。艦長は、みんなを驚かすために副長と参謀長にかん口令を敷いたのだ。だからこの話を知っている三人以外、知るすべもない。

そこに交代でやってきた見張兵曹、やはり艦長をじっと見て首をかしげている。

「オトメチャン、なんで艦長あんなに最近熱心なんだか知ってるかあ?」

麻生分隊士が、兵曹の肩を抱いて聞いた。が、兵曹だって知るわけがない。石川水兵長の手前ちょっと気恥ずかしいのか、さりげなく分隊士の手を外そうとしながら、

「私には分かりかねますが。でもこの頃朝も昼も夜も、でありますからきっと何か重大なことがあるのではないでしょうか」

と言った。分隊士は兵曹の後ろに回って背中側から抱きながら「そうかあ。いったいなんだろうなあ」とひとりごちた。

石川水兵長は、気を利かしてそっとその場を離れる。

艦長はそんな二人には目もくれずに、双眼鏡をのぞき続ける。

 

艦長は、駆逐艦を待っていた。

なぜなら、呉鎮守府からの「桜」を駆逐艦がその冷蔵庫に入れて持ってくる手はずになっているからである。

本当なら『間宮』のほうが適任ではあるが『間宮』は今、修理中でドック入りし、同じ給糧艦の『伊良湖』はしばらくの間『間宮』の分も仕事があるので大忙しで、余計なものを積む暇も時間もないのである。

だから、冷蔵庫は小さいが駆逐艦に積んでくることになって、艦長はその訪れを今か今かと待っているのである。

(どの駆逐艦が持ってくるんだろう?それが分かればこんなにいつもいつもここにいなくたっていいんだけどね)

艦長も大変である。

 

その思いは『武蔵』の艦長の猪田も同じで、やはり梨賀艦長と同じに防空指揮所に入り浸りである。

加東副長が、

「猪田艦長、いったい何がおありなんですか?」

と尋ねても、適当に答えを濁してしまう。加東副長は、(私にも言えないことがあるのか?)とちょっとさみしくなった。

そんな加東副長の様子に猪田艦長はちょっとあわてた。加東副長の前で、自分の口に人差し指を当てて、

「今だけ内緒。そのうちわかりますよ、すっごいいいこと」

と言って笑ってやった。加東副長は「すっごいいいこと、でありますか。では、心待ちにいたします」と言って彼女も笑った。

 

そして。

それから数日して呉から駆逐艦『雪風』がやってきた。『雪風』は『大和』に接舷すると、艦長が出てきた。そして何か、持ちきれないくらい大きな包みを抱えて『大和』からのランチに乗り込んだ。

寺内艦長がその大きな包みを抱えて『大和』に乗ってくると、梨賀艦長が両手放しで迎えた。

寺内艦長は、大汗をかきながら

「さあ、梨賀艦長、お待ちかねの桜ですぞ」

と言ってその包みを手渡した。梨賀艦長は、それを大げさなしぐさで受け取って、

「ありがとうございました、大変だったでしょう?」

と言った。寺内艦長は、手ぬぐいで額の汗を拭きながら

「冷蔵庫が小さいから、枝が折れやせんかと気が気じゃなかったです。でも何とか無事のようで、よかった」

とほっとしたようだ。

 

そして前々からの約束なので『武蔵』の猪田艦長が呼ばれて、包みを開いた。

中からちょっと冷たい空気が出た、と思うのもつかの間トレーラー島の暑い空気が桜を包んだ。桜は、今は固いつぼみである。

しかし五分ほどでそれもほころび始める。

「いやあ、咲いちゃう!早く『武蔵』に持ってかなきゃ、みんなに見せなきゃあ!」

猪田艦長はそう叫んで急いで『武蔵』に取って返す。梨賀艦長も、「これは大変だ」と、急いで総員最上甲板の号令をかけた。

 

最上甲板に何事かと集まった『大和』の総員は、そこに内地の春を見て思わず息をのんだ。

「内地の桜だ・・・」

美しい桜、日本の桜の枝がそこにあってもう、満開になりつつあった。

「やっぱりきれいだねえ。日本の桜は」

皆はしばらく桜を見ながら言葉を無くしていた。

 

麻生分隊士と見張兵曹もそれを見ながら懐かしい思いに浸っていた。兵曹は故郷の桜、そして父親の事を思い出していた。

「これだったんですね。艦長、桜が来るのを待っていたんですね」

兵曹の囁きに、麻生分隊士は「ああ、そうだね。これは内緒にしたくなるよなあ」と言った。

 

同じころ、『武蔵』で総員が最上甲板にいた。

ほろほろと枝に咲く桜の花に皆、見入っている。言葉の要らない世界である。加東副長は、

「猪田艦長、これだったんですね。すごいいいこと。本当にすごいいいことですね、みんなの顔を見てください、生き生きとしていますよ。これは『大和』の艦長や参謀長にお礼を言わねばなりませんね」

と、そっと言った。そっと言ったのはあんまり大声を出すと、桜が散ってしまいそうな気がしたからである。

猪田艦長は黙って、しかし満足そうにうなずいている。

 

その後、両艦ではその桜を押し花にして皆それぞれ、保存したそうである。

そして時々それを見ては、内地を偲んだのである。

 

この次内地の土を踏むのは、いつになるのだろうか――

 

            ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

東京でもいよいよ桜が開花ですね。

私は開花の前日(三月二十一日)に靖国神社にいました。標準木の下にカメラのようなものを持った人が見えましたが・・・開花は翌日でちょっと残念。代わりに、と言ってはなんですが「桜まんじゅう」というのを買ってきました。

 

森上参謀長、いきな計らいですね。梨賀艦長も、『武蔵』に桜を分けていいことをしました。こういう喜びこそみんなで分け合いたいものですね。

 

さあ、いよいよ桜の季節。春も本番ですね。


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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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