女だらけの戦艦大和・総員配置良し!

女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?

「女だらけの戦艦大和」・トメキチとナナ 

「女だらけの戦艦大和」に珍しい闖入者が来た。

 

その日、半舷上陸から帰ってきた兵の最後の一人が舷側から上がってきて上陸札を持っていこうとした。その時、舷側のラッタルから見慣れないものが上がってくるのを発見した。

「あれ、なんだろう?」

よく見ればそれは犬だった。しかしトメキチとは違う。もっと大きくてちょっとかわいくない。

兵は困って、甲板士官にその犬を連れて行って見せた。甲板士官は「なんだろうこの犬、見かけないねえ。どこから紛れ込んできたんだろうか?」とこれも困っている。

そこに梨賀艦長がトメキチを連れて通りかかった。トメキチが、目ざとくその犬を見つけ吠えた。梨賀艦長は「どうしたの?・・あれ?そのワンちゃんどうしたの?」と士官に聞いた。甲板士官は困り切って「さっき半舷上陸から帰ってきた兵にくっついてきたらしいんです。どこの犬なのか、わからないのであります」と言った。

梨賀艦長は「これ、<武蔵>の猪田艦長の飼い犬だよ、ほらここの首輪のここに名前が書いてあるよ」と言って犬をひっぱって首輪を見せた。

その首輪には、<軍艦武蔵 猪田艦長附 ナナ>と書いてある。甲板士官は「ほお、、猪田艦長の飼い犬でしたか」とやっと納得した。「でも、こんなとこにいるのをあちらの艦長は御存じなんでしょうか」

梨賀艦長はちょっと心配になって「そうだねえ、じゃ、信号で聞いてみようかね」と<武蔵>に向けて発光信号を出した。

その信号を受けた<武蔵>では、ナナの行方が分からないのでちょっとした騒ぎであったが所在が分かって猪田艦長はほっとして、返信として<しばらくトメキチと遊ばせてやってください>とした。<あとで迎えをやります>。

梨賀艦長はそれを受信したので「ナナ、しばらくここで遊んで行きなさい」と言ってトメキチと一緒にさせた。

 

さて。

トメキチと一緒にされたナナであるがこの犬は<武蔵>でもグウタラ犬としてつとに有名である。動くのが嫌いで、訓練中でも猪田艦長の足元にうずくまって動こうとしない、だから猪田艦長はナナに躓いて転ぶことさえあったのだ。そのくせ、食うことだけは5人前くらいで、まあ良く食うこと!

猪田艦長の食事をくすねるは、加東副長の部屋に忍び込んでは副長が酒保で買ったお菓子を食ってしまうは、兵員の食缶からじかにご飯を食べてしまうなど、もうはっきり言ってどうしようもない。

しかしいったん飼った以上無責任に放りだすのも出来ない。猪田艦長は実際、困り果てていたのだ。

で、トメキチ。彼はこの犬、ナナのしょうもない性格に気が付いていた。

自分より年上の犬ではあるが、(ここは一発、喝を入れ直して猪田艦長に御恩返しをしたい)と思った。御恩返し、とは先日<武蔵>に招待された際たくさんお土産をいただいて<大和>に帰ってきたからである。

トメキチは「おい」とナナに声をかけた。ナナはゴロゴロしたままで「あ?」と言った。振り向きもしない。

トメキチは「あんた、<大和>に来たらここの流儀にしたがってもらわないと困るんだよ。ほら、起きろ。起きて僕と一緒に来い!」と言った。

ナナは「め―ンどくせえ!大体、来たくって来たんじゃねえよ。間違って船に乗っちゃったんだもの」と、尻をボリボリ掻いた。

トメキチは「それでもテーコクカイグンの犬かっ!」と叫んでナナを蹴っ飛ばした。

ナナは「ギャン!!」と叫んで飛び上がった。ナナは生まれてこのかた他人から蹴っ飛ばされたことなどなかったのだ。驚いた。

「蹴ったね!親父にも蹴られたことないのに」

ナナは泣きそうになって言った。トメキチは「そんなこと自慢になるかい!貴様の腐った性根を今ここで叩き直してやる。いいから来い!」と言って、ナナの尻を噛んだ。

「ギャン!」とナナは目を白黒させて「・・・はい」とおとなしくトメキチの後をついて行った。

トメキチは、最上甲板にナナと出た。

「どうするの?トメキチさん」と、ナナは年下のトメキチに敬語を使った。トメキチは砲塔の陰に置いてあったソーフをくわえてきて「これで甲板の端から端まで掃除だ!やり方は分かってんだろうな!」と、ナナの前に放り出した。

「ヒエっ!この長い甲板の端から、、、端まで、ですか??」ナナは恐怖の表情を浮かべた。ナナは、普段体を動かさないのでこういうことにはめっぽう弱い。怖くさえある。

「そうだよ。早くせんか!」トメキチは怒鳴った。歯をむき出して噛みつくようなそぶりを見せた。

「ハイハイ!!分かりました、では行きますよ、、」ナナは、おっかなびっくりソーフを持って艦首に向かった。ナナが艦首についたのを見計らって、トメキチは「かかれ!!」と叫んだ。

ナナは必死になってソーフを前足で押さえると、まるで国民学校の少国民が雑巾がけをするように、甲板上を走りだした。いや、少国民のそれよりうんと下手である。

 

その様子を、防空指揮所で見張兵曹と小泉兵曹が見ていた。

「ねえ、、トメキチが知らない犬と何かしてる」小泉兵曹がまず言った。

「え、トメキチが?どれどれ、、、。ああ、本当だ。あの犬はどこの犬かなあ?見たことないねえ。でもさ、なんだかトメキチが先任下士官みたいでかっこいいね」と見張兵曹は嬉しそうだ。

そう言われればなんだかトメキチは指導的立場のようだ。まるで新兵を教育する教班長みたい。見張兵曹はトメキチが誇らしかった。もちろん保護者として。

 

そんなことも知らないトメキチはなおもナナをしごく。「遅いっ!もっと早く走れ。遅い遅い!」ナナは、もうすでにはあはあと息を切らしている。

「お前本当に運動不足だな。これくらいで音を上げる水兵さんはまずいないよ。ほら、もっと腰を上げろ!」

ナナの後ろからトメキチは発破をかける。ナナはいつトメキチに尻をかまれるかと気が気でない。一生懸命、ソーフを掛ける。トメキチ、「まわれ、まわれーーー!」と大声を上げる。

やっと壱往復して精根尽き果てた感のナナにトメキチは次の課題を言い渡す。

「ここから最下甲板まで行って、更にそこからここまで、5分以内に戻って来い。<大和>と<武蔵>は同じだから分かるはずだ。壱秒でも遅れたら罰直だ!」

「ええっ、、5分ですか!?そんな、、、」とナナはマジで泣きそうになった。しかしトメキチも壱週間もここにいたら5分ほどで楽に上がれたのだ。

「出来ないとは言わせない。さあ、いけっ!!」トメキチはまた歯をむき出して叫んだ。

「はいーーー!」とナナはすっ飛んで行った。

トメキチはなんで時間が分かるのか?それは、かつて梨賀艦長から「これ艦長の古い時計、トメキチにあげるね」と腕時計をもらっている。だから、分かる。

 

トメキチは時間を測った。待った。やっとナナがふらふらになって現れたのはあれから10分以上過ぎてからだった。

「トメキチさん、、、私、疲れました。おなかすいた」とナナは情けないくらいへろへろになっている。

トメキチは怖い顔で「情けない、、、それでも<武蔵>の飼い犬か!?恥を知れ!」と叫んだ。「そんなことじゃ<武蔵>のマスコットとは言えんぞ。しっかりせんか」と怒鳴った。

「はい、、、」とナナは泣きそうだ。

トメキチは「食ってばっか、寝てばっかじゃダメなんだよ。テーコクカイグンは、<武蔵>や<大和>はいつ、戦闘に会うかもしれないんだから、気を張ってないと。せめて訓練の時くらいしっかりできないの?あんた、<武蔵>の艦長さんに迷惑かけてるんじゃないの?」と言った。

ナナは「はい。・・・猪田艦長さんのそばで寝っ転がってて艦長さんをころばしちゃいました。悪いことしちゃいました、反省はしてるんです、これでも」と頭を垂れてしまった。

トメキチはその場の床を前足で叩きながら、「艦長さんが怪我しちゃたら大変なんだよ?戦闘の時指揮を執る人がいないと副長さんとかほかの人たちが困るんだから、ちょっと考えなおしてくんないと。ちょっとやる気を出してごらんよ?気分いいよ?」と諭すように言った。「そうやって頑張って食べるご飯はおいしいんだから」

ナナはじっと考えている。

ややあってナナは顔をあげた、そして「僕が間違ってました。今からやり直します。間に合いますか?」とトメキチに訊いた。

トメキチは笑って、「君にその気があるんなら大丈夫。絶対やりなおせるし、全然間に合うよ」と言ってやった。 ナナは嬉しそうに笑った。

 

そのあと、トメキチとナナは梨賀艦長にお昼をもらって食べた。ナナは「おいしい!ヤッパリたくさん動けばご飯もおいしく頂けますね」と感激している。

トメキチは「武蔵に帰っても忘れるなよ。時々うわさを聞きに行くから」と脅かした。ナナは「やだなあ、もう大丈夫ですよ」と言って二人は笑いあったのだった。

 

そのあと、<武蔵>から迎えが来てナナは名残惜しそうに<武蔵>に帰って行った。

猪田艦長から緊急の発光信号が梨賀艦長宛に来たのはそれからたいして時間が経っていなかった。

内容は、<ナナ大変身!とてもいいワンちゃんになって艦長感激!一体どうしたの?誰のおかげ?>というもので、それに対し梨賀艦長は<すべてトメキチのおかげ。ナナの今後の健闘を祈ります>と返信したのだった。

 

それを聞いた見張兵曹はトメキチを抱きしめ「トメキチ!!なんていい子なんだろう。可愛い子!」と言って、夜には一寸多い目にご飯をくれたのだった。

教班長のようなトメキチ君。

君は大した犬である――犬にしとくのはもったいないくらい。

 

          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

トメキチ大活躍でしたね。

ナナは当初、どうしようもない駄犬で<武蔵>の恥さらしでしたが、もうそんなことは言わせない!

万一、グータラに戻ったら、トメキチのおっかない攻撃が待ってますからね。


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「女だらけの戦艦大和」・腹が減っては・・

「女だらけの戦艦大和」は今日も暑い中、がんばっている。

 

皆の元気の源は、なんといってもその食事にある。もともと、帝国海軍の食事はよいという定評があるが、その中においても<大和>の食事はすごい!というのがその評判である。

士官以上の食事はもちろん、この先来るであろう司令長官などをおもてなしするために専用のコックさんもいるし、そのための厨房もある。

兵員の食事だって、バラエテイーに富んでいて皆食事に関しては文句は言わない。

・・・・のだが。

とある日、主計科の福島大尉はふと思いついて主計長に兵員の食事の朝・昼の主食を<パン>にしてみてはどうだろう、と進言した。

主計長は「パン!?一体どうしてさ?」とちょっと怪訝だったが、福島大尉は、

「この先<大和>は進撃してアメリカに上陸するかもしれないじゃないですか?その時現地で米が調達できるとは限りませんよ?そしたら勢い<パン食>になるでしょう?だからまず、兵員からパン食にならした方がいいと思って、しばらくの間パン食にしたらどうでしょう?」

と自信満々な言い方で主計長を納得させた。

兵員はあんまりパン食に慣れたものはいないだろうから、ここでアメリカに上陸してかの地でしばらく暮らす際の食事を想定しといたほうがいいかもしれない。

そう、主計長も考えた。

とりあえず、一カ月兵員の朝・昼の食事の主食はパン食にしよう。主計長は艦長・副長の意見も聞いて賛成を得たので「明日からだ!」と決めた。

まあ、パンにすればしたで烹炊所は大変な目に会うのだが、そこは「任務」であるから表だって文句を言うものはいない。

が、内心(米の飯のほうが面倒なくっていいのにな)と思うこともあったが。

 

次の朝。

食事当番は、食事を受け取りに行って驚いた。いつもなら食缶にご飯をもらうのだが今朝はパンがごろごろっと乗っている。

「・・・・・」受け取りに来た兵は皆一様に目を丸くしている。多くの兵員はあまりパンになじみがなく、(何、、、これ?)と不審に思っている。古参の烹炊員が「今日から朝と昼はパン食だ。皆に伝えておけよ!」と大声で叫ぶ。

一応全艦に艦長の名で布告はしてあるが万一知らないものがいて「これってなに?」と大騒ぎになってはいけない。

食事番の兵員は物珍しそうにパンを見つめ「いいにおいだなあ~」と言いながら各分隊に持ってゆく。

機関科の松本兵曹長などは、「なんじゃ、これは?パンに味噌汁か?なんか変だなあ」と文句タラタラだったが食わなきゃ仕事にならない、仕方なくパンを味噌汁につけて食べてみた。

「うーーん。飯のようにはいかんが、、、まあ面白い味だな。アメリカに行ったら毎日こればっからしいから、貴様らちゃんと食えよ。残したら罰直だ」松本兵曹長は部下をにらんで言った。

「はい、わかりました。兵曹長」松本兵曹の部下はおとなしく従った。

見張兵曹や小泉兵曹の航海科の分隊では、あまりパンを見たことがない兵が多かったので大騒ぎである。

「なんでありますか!これ」

「パンってこんなものなんですか?」

「パン、でありますか?どうやって食えばいいのでありますか?」etc

見張兵曹もパンは見たことがなかったので、そっと小泉兵曹を見やるとお嬢様育ちの小泉兵曹は「知らねえの!?・・・マジか!あのね、パンってのは小麦粉を丸めて焼いたもんだと思えばいいのよ。こうやってちぎって食うのよ」

と実演して見せた。いかにも上品にパンを小さくちぎって、口に運ぶ。その口元を眺めていた兵員や、見張兵曹は「ほお~~」と歓声を上げた。

小泉兵曹は、ゆっくり飲み下してから味噌汁をすすり「ああ、、、おいしい」と言って笑った。

みんな、「よくわかりました!」と言って、小泉兵曹のマネして食べ始めた。

見張兵曹は、食べながらしかし(なーんか、物足りない。ご飯のほうがいいんだけどな~)と思った。

ほかの皆は、物珍しさが先だって何も言うものはいない。

 

朝・昼のパン主食はそのあとも続いた。流石に二食パンだと、夕食のご飯がみんな待ち遠しい。ご飯の消費量が驚くほど伸びている。

さらに。

パン主食が半月続いた時、運用科だとか機関科から朝昼のパン食に対する不満が出始めた。いわく「あんなオヤツじゃ、力が出ない」。

特に力仕事やきつい労働の部署の兵員の不満はすごかった。しかしそれも、当該の分隊長の「食えるだけ幸せではないか、貴様らは何を考えておる。アメリカに上陸したら連日パン食である。いまから慣れておいて悪いことなどない。四の五の言わずに黙って食え!」という言葉に、黙らざるを得なかった。

そしてその頃と時を同じくして、烹炊所への<ギンバイ>行為も頻発し始め、さらに酒保の菓子の売り上げがそれまでの3倍になった。

その程度ならまだよかったのだが。

 

パン食開始からもうそろそろ一カ月になるころであった。機関科の兵員も運用科の兵員も、いや、そればかりではない、<大和>の全艦の兵員が疲れ果てているように艦長や副長には見えた。

「一体どうしたってゆうのぉ?みんな元気がないじゃない?艦長心配!」

艦長は心底心配し、周りの伝令とか見張りとかの様子を見始めた。

すると、驚くことに彼女らの腹から<ぎゅーーーー><ぐるるるる>と言ったいわゆる腹の虫が鳴いているのだ。

(何なんだろう?あれほど一杯パンを食べてるのに)と、艦長は不思議であった。更に防空指揮所でも同様に、みんな顔色も良くなくどこか動きが鈍い。

見張兵曹も小泉兵曹も、亀井一水、酒井上水ほかの兵員も目の色さえうつろである。艦長はそっと麻生分隊士を呼んで「どうしたの、みんな。前みたいな覇気がないねえ」と聞いてみた。

麻生分隊士は困った顔で「それがですね艦長。例のパン食の主食が始まってしばらくしたらこのざまなんですよ。夕飯のときはみんな異常に元気なんですがね。艦長、あのパン食どうにかなりませんか?」と言った。

艦長は「そうかあ。他も見てそれによって考えよう。麻生少尉、みんなの様子をよく見ててね」というとほかの分隊を参謀長とも手分けして見に回ることにした。

 

翌日、機関科で騒ぎは起きた。

いつものように訓練が終わった時、衛生兵や軍医たちがドタドタと機関科に降りてゆくのを見た航海科の兵が「下で何かあったようですよ!」と知らせに来た。

麻生少尉と見張兵曹は「なんだろう?」と不安になった。

 

しばらくすると担架に乗せられた兵や、衛生兵に背負われた機関科の兵曹などが続々と医務科の病室に運ばれてきた。

彼女らは口々に「腹が減った、、、。コメが食いたい」と言っている。それを見守る他分隊の兵員も「そうだよね、、、私たちも米、食いたいよ」と力なくつぶやいた。

「おなかすいたね」「お米のご飯食べたい」「オヤツはもういやだ」「パンはいらない」

そのつぶやきはやがて怒涛のように叫びに変わって行ったのであった。

 

見張兵曹はその晩、防空指揮所で「おなかすいたなあ。お米のご飯のほうがいいや。アメリカに上陸したらアメリカに田んぼ作ればいいんじゃない?」などと言いながら腹の虫の声を聞いている。

酒井上水がそばに来て「見張兵曹。明日もまたパンなんでしょうか?こういってはいけないかもしれませんが、、、私はもう、パンの主食はいやであります」とこれも力なく言う。

みな相当、パン食には力を奪われたようである。

見張兵曹も、目の下に隈を作って「ホント。もういやだよね。たまに食べるからパンはおいしいんだけど毎日毎日じゃあね、、、あ!毎日パンばっか食ってるとそのうち目が青くなっちゃうかもよ!」と半分冗談、半分本気で言った。

酒井上水と、見張兵曹は双眼鏡に体を預けるようにしてため息をついた。

――――その時、「お疲れ。ほら、これ、、、」と声がした。振り向けば麻生分隊士が何か持って立っている。

「分隊士、、」と見張兵曹が言った。酒井上水が敬礼した。

分隊士は、手にした包みを二人に差し出して、「ほら、夜食だ。パンじゃないよ、正真正銘の米の飯だ。さあ、食べろ」と笑った。

「米の飯!」と酒井上水が叫んで、見張兵曹は「分隊士、、、ありがとうございます」と言って受け取った。

そして包みを開くと食べ始めた。

その様子を満足そうに見ていた麻生分隊士は「あのな、パンの主食は止めになったよ」と言った。見張兵曹と酒井上水はハッとして顔をあげた。「やめ、でありますか!」

分隊士は、「そう、止めになった。機関科の連中が空腹が極限になっちゃって倒れちゃったんだ。他の分隊でもそういう患者が出たらしい。いくらなんでも食わなきゃ働けん。これじゃあいざって時役に立たないよ。で、艦長の決断でやめになったんだよ」と話した。

「そうでありますか、、、それはよかった」

ほっとする見張兵曹であった。

 

当直が明けた時、また麻生分隊士は例のラッタルの下で見張兵曹を待って、自分の部屋に連れて行った。

「腹、減ってないか?」と言ってまず、冷たいお茶を出してくれた。そのあと、いきなり分隊士は兵曹を抱きしめると兵曹の防暑服を脱がし始めた。

「あ、、、分隊士、、」とつぶやく兵曹に、麻生分隊士は「そこに寝て」とベッドに寝かせた。すべて――下帯以外――ぬがせて、その体を見つめる分隊士。兵曹は恥ずかしげに顔を横に向けた。

「オトメチャン、、、こんなに痩せちゃって。かわいそうに」

麻生分隊士はそういいながら兵曹の上に重なった。「でもこれからはまた飯が出るから大丈夫だ。もうちょっと太って、、ここを大きくしてほしいなあ」

そう言って分隊士は兵曹の胸を揉みしだいたのであった。

兵曹は、(ご飯のほうがいいけど、胸が大きくなったら何をされるんだか)と、ちょっとだけ不安になったのだった。

いずれにしろ、<女だらけの大和>の空腹騒動はなんとか治まったのだった――――

 

             ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

この話は、明治の日本海軍で起きた話をモチーフにしています。

日本人はやはり、米の飯が一番だということですね。確かにパン、はなんか<おやつ>っぽい感じがしないでもない。

ここ一番にはやっぱり米だ!

日本人よ、コメを食えーーーー!!(笑)


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「女だらけの戦艦大和」 ・若き副長の怒り 弐

「女だらけの戦艦大和」第一艦橋に、不穏な空気がみなぎり出した―――

 

野村副長は、ポケットから件の封筒を引っ張りだすと、それを小刻みに振りながらつかつかと、艦長に向かって歩き出した。

まなじりを決してちょっと普通じゃない様子に、梨賀艦長はひるんだ。そしてちょっと逃げかけた。

「逃げないでくださいッ!」と副長の大音声に、艦長はその場に固まってしまった。艦長だけでなくその場に居合わせた見張り員たちも固まっている。そして、一瞬の後そそくさと去ってしまった。

副長は艦長の前に立つと、封筒を振りかざし「艦長、いったいこれは何事ですか!?」と叫んだ。艦長は「え、、何事って、、何?」としどろもどろである。驚いている。

副長は封筒からあの写真を引き出すとそれを海図台に叩きつけた、そして、

「これですよこれ!!あなたはあの日、<武蔵>で何をしたんですか!こんな、、こんな写真を撮られて、、私は、、私は、、、」というなり泣きだした。

艦長はその写真を見て、ゲッ、となった。いつの間にこんな写真を撮られていたんだろうか?記憶がない。

「副長、これはあの、、」と言い訳しようとした艦長に副長は「私は今まで艦長を信頼し、お慕い申し上げてここまで来ました。なのに!艦長はこんな形で我々の信頼を裏切るんですか?」と、最後のほうは、ちからなく言った。

艦長はあわてて、「裏切るなんてそんなとんでもない!・・あの、なんて言ったらいいのかこれは、あの晩<武蔵>で無礼講があったんだよね、それでちょっと盛り上がり過ぎちゃって。

―――副長、申し訳ない!これは私の不徳の致すところだ。GF司令部でも軍令部でもどこにでもこのことを言って、私を<大和艦長>から罷免してもらってくれ」と言い切った。

罷免、という言葉が出るに至って流石に野村副長はハッとして顔をあげた。「そんな、、、そこまで私は望んでおりません、、、」

「でも、私が<大和>の名を汚したことには変わりないでしょう?いいんだよ、罷免も受け入れるし、海軍を辞めろというなら辞める」

艦長は静かに言った。

副長は、「艦長、、、私は」というなりその場に両膝と両手をついてしまった。

そこに森上参謀長が入ってきた。異様な雰囲気に驚いたようであるが、海図台の上にあの封筒と写真が散らばってるのを見て、大体何があったか悟った。

参謀長はそっと封筒と写真を手にとった。そして、副長の肩にもう片方の手を当てると「なあ、副長。副長はまじめだからこういうのが許せなかったんだろ?艦長には<艦長らしさ>を求めていたんだよね?でもねえ、副長。艦長は日々、大変なんだよ、わかってるだろう?だからああいうときはちょっとでも羽目外さないとやってられない部分もあるんだよ。 副長だっていつも真面目じゃあ息が詰まるだろ?副長も何か息抜き見つけたらどうだ?」

と優しく言ってやった。

「・・・息抜き、でありますか」

副長は、言った。森上参謀長はうなずくと「そう。何か探してよ。自分が心休まるものをさ。少しは自分を解放してやっていいんじゃないか?そしたらこんなにヒリヒリしなくって済むと思うんだけどな」と言った。

副長は自分が一時の感情でカッとなったのが恥ずかしくなってきた。・・・そうか、私は息抜きが必要だったのか。そうかそうだったのか。

副長は、艦長に向き直ると「艦長、申し訳ありませんでした。ついカッとしてしまって。どうか後生ですから今回の事は水にしていただけませんか?」と謝った。

艦長は「もちろん。副長の怒りももっともだよね。艦長これからちょっと自重するから、許してくれる?」とこれも謝った。

森上参謀長はほっとした笑みを浮かべた。そして、「ロエ島の航空司令にこの写真のネガフィルムをよこせと言っておきましょう。こんなものを撒かれたら困るからね」と言って、艦長と副長の二人の肩をポンポンと叩いたのだった。

 

さて、副長はそのあとなんだか人が変わったように軽い足取りで艦内を歩いた。そして、いつの間にか防空指揮所に上って来ていた。

見張兵曹がこの時はひとりで立っていた。副長に気づくと「副長」と笑って敬礼した。その笑顔がたまらなくなってきた。

副長は「これが私の<息抜き>なんだ!!」と叫ぶなり、見張兵曹にいきなり抱きついた。

とっさのことでよけられなかった見張兵曹は、後ろに倒れてしまった。「副長っ!何をなさいます!?」と叫んだ。

副長が兵曹の上に重なるような格好になりーーー副長は「オトメチャンが、好きだあっ!」と叫ぶなり、その唇に自分のそれを重ねてしまっていた。

それを間の悪いことに入ってきた麻生分隊士がしっかり見てしまった。はっ!と息をのんだ。

次の瞬間、「副長――ーッ!」とでかい声で叫んだ。副長が、兵曹の上から振り向くと麻生分隊士はワナワナと震えながら、二人を指さして「ふ、、副長。私のオトメチャンなんですが、どうして、、??」と言った。

見張兵曹が、「分隊士ぃ、、、」と小声で助けを求める。倒れた時ぶつけた後頭部が少し痛い。

副長はシレっとして、「ああ、私の<息抜き>を見つけたの。オトメチャンは、<私のオトメチャン>でもあるからね。麻生少尉、そこんとこよろしくね~」と言って、起き上がると「さ、オトメチャン私の部屋に来て」と兵曹の手を引っ張った。

「副長いけませんよ!」と麻生分隊士が兵曹の反対の手を引っ張る。両方から思いっきり引っ張られて見張兵曹は「痛い、痛いであります!分隊士、、、痛い」と泣きそうになった。

思わず「ごめん!」と手を放した分隊士であったがそのすきを衝かれ、あわれオトメチャンは副長の部屋に連れてかれてしまったのだった。

「オトメチャ―ン!」と叫ぶ分隊士。

その様子を、主砲射撃指揮所で見ていた毛利少尉は、「あーらあら。こりゃ大変だ。麻生少尉、ライバルが3人に増えちゃったね~」と、ニヤついていた。

本当に大変なのは見張兵曹で、艦長・参謀長・麻生分隊士に加え今度は副長というすごいラインナップになってしまった。

副長は、<まじめ>という自らを縛るタガを外し、なんだかとても今までより生き生きしてきらめいて見えた―――とは、副長従兵の談。

その従兵でさえ、副長がオトメチャンと部屋に入って何をしてるか「分かんないですぅ」というコメントで、麻生分隊士をやきもきさせている―――――

 

それからあの写真は<武蔵>にもとどいたのだが、こちらでも加東副長に「艦長、いい加減になさいませ!」としかられて猪田艦長は「分かったよ、、、反省しますよ」と言い捨ててその晩、月光の下、主砲塔の上で座禅を組んでいたという―――――

 

           ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

副長は大変です。

でも艦長も大変ですね。どの階級も任務も、、、大変じゃないものなんかないんです。でもだからこそやりがいあり。

たまには息抜きしながら、女だらけの<大和>も<武蔵>もお国のために頑張ってください。

みんなが凱旋のその日を待ってるぞ!


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「女だらけの戦艦大和」 若き副長の怒り・壱

「女だらけの戦艦大和」では、ちょっと不機嫌な人が1人―――

 

一昨日、梨賀艦長は<武蔵>にトメキチとともにお泊りに行った。そこで乱痴気騒ぎがあったのはもう皆さんお読みになったとおりである。

が、肝心の<大和>乗組員はそのことを知らなかった。半舷上陸などで<武蔵>乗組員と通りすがっても彼らは何にも言わない。なぜならあの日あの晩は無礼講だったから、何も言う必要などないと思っていたからだ。

確かにそうである。

でもしかし、そのことを別な形で知らされたとしたら?

 

野村副長は梨賀艦長が<武蔵>からこそこそと帰って来たのを見て(ははん。またなんかしたな?)と直感した。きっと艦長の事だから<武蔵>から「乗艦記念!」とか言ってどっかの床のリノリュームをひっぺがしてきたとか、あるいは豪華な内装の一部を切り取ってきたとか、まあそんなもんだろうと思っていたのだ。

その程度なら可愛いもんで、かつて<大和>にお泊りに来たほかの艦の艦長だの、GF(連合艦隊)の司令だのにも<大和>のタイルをはがしていったり、スプーンとフォークを持ち帰っちゃったりした人はいたのだ。彼らはそれを同僚や部下に「いいだろー!<大和>の備品だぜえ!」とか言って見せびらかしていたのだ。

そのくらいかわいいもんだと、てっきり思っていた。

しかし。

今日の昼ごろ、一隻の艀が来て、たくさんの慰問品や手紙のほかに野村副長宛の封筒を持ってきた。副長はそれを、第一艦橋で受け取った。

「なんだあ?これ?」と見れば、ここから少し離れた島の基地の航空隊からの封筒である。

「ロエ島の航空隊?何の用だ」とちょっと不審に思いながら、副長はその封筒を開いた。中には一葉の写真が入っていた。

その写真を見た副長の心臓が、<ドクン!>と大きく鳴ってしかも鎖骨に当たるくらい跳ねあがった(様に感じた)。

「なんだ!これは!」

自分でも信じらんないくらいの大声を発していた。周りの見張りや通信の兵員がそれは驚いて副長を見た。森上参謀長もびっくりして、飲んでいた紅茶を吹きだした。

「副長、どうした?」と、森上参謀長は口をぬぐいながら近寄って行きながら、参謀長は副長の様子がおかしいのに気がついた。

顔色が青くなって、手が震えている。

「副長、具合悪いのか、、、」と言いかけた参謀長の目の前に、副長は手にした写真を突き出した。そして、「これ見てくださいよ」と消え入りそうな声で言った。

「なんなんだ、、、」とそれを手に取った参謀長も見るなり「うっ、、、、!」とうめいた。

その写真には、<武蔵>主砲塔の上で素っ裸で大の字になっている梨賀艦長と、猪田艦長がはっきり写っていた。しかも梨賀艦長の腹には、あの「かくし芸」の変な顔らしきものが書いてあるようだ。

同封の手紙には、

>これってお宅の艦長でしょ?猪田艦長と一緒に裸で何してんでしょうか?まあなんでもいいけどあんまり恥ずかしいことしないでよね、帝国海軍の名折れだしーーー!云々―――

と、ロエ島航空隊司令の名でやんわりとくぎを刺してある。作戦帰りか何かでたまたまこの上空をとおりかかった時偵察員が見かけて、撮影したものだろう。

・・・・やられてしまった。

野村副長は唇をかんだ。だから、行く前にあれほど変なことしないでくださいよ、って言ったんだ。そしたら艦長「ダイジョーブ。今日はおとなしく猪田艦長とお話しする日だから、お酒も飲まないし。何を変なことすんのよ、野村副長のほうが変ですよっ!」と、啖呵切ったんだ。

なのに。

こんな恥ずかしい写真取られて、いったいどういうつもりなんだろう、あの艦長。

そう思って更に唇をかみしめた時、だしぬけに森上参謀長が大笑いしたのだ。副長は思わず参謀長をにらんでしまった。

「・・・参謀長、可笑しいですか?」副長は、真っ青な顔で参謀長の前に立った。その雰囲気はもう十分に怒りに満ちていた。

参謀長はあわてて笑いを引っ込めて「、、悪かった。でもまあ、このくらいの事があってもいいじゃないか?たまには息抜きだって必要だろう、艦長だって」と艦長のためにとりなしてやった。しかし副長は、噛みつきそうな勢いで「いえ!今日という今日はもう許せません。こんな、、、こんな、恥ずかしい写真を撮られて、、、参謀長はなんとも思わないんでありますか!?」

副長は、声が涙でかすれてきた。

「私は情けないであります。兵がやったことなら私はまだ許せます。しかし、、、艦長ですよ?どういういきさつがあったか知れませんが、もうちょっと――――」

副長は、そこまでやっと言うと封筒と写真をひっつかむなりその場を飛び出して行ってしまった。

「おい、副長!」と参謀長が叫んだが、副長の姿はもう消えていた。

その場の兵たちはどんな顔をしていいのか分からない、皆、シンと静まってしまった。

「副長、、、」と参謀長は言って、自分も副長の後を追うように艦橋を出て行った。

残された兵員は「ねえ、何があったの?」「知らないけど、艦長<武蔵>で何かしたらしいよ?」「ええ、、いったい何を?」「分かんないからあんまり変なこと言わないほうがいいよ、軍法会議だよ」と囁き合った。

 

副長は、艦内をさまよいあるいた。なんだか分かんないが妙な気分に支配され落ち着けなかった。

(艦長のせいですよ、きっとこの話はGF全体に広がるんでしょう、、女はこういう話が好きだし。へたすりゃ<大和>の顔に泥を塗るだけじゃ済みませんよ。私たちは<大和>に恥をかかせた咎で自決せねばなりません、、、)

思いは乱れた。しかも参謀長はあれを見て笑った、それにも腹が立った。

(参謀長も自覚がなさすぎる。私もそうだけど、参謀長も艦長をもっときちんと補佐してくださらなきゃいけないのに、、大笑いしやがった)

怒りは<武蔵>の猪田艦長にも向いた、(あの人もなにをお考えなのか?一緒になってあんな痴態をさらすなんざ、艦長の資格ないよ)。

心が重い。

副長は、その心を引きずって歩き、気がついたら防空指揮所に来ていた。右舷に小泉兵曹が、左舷側に見張兵曹がいた。

副長は、見張兵曹に近寄っていた。見張兵曹が気がついて、敬礼し「副長」と笑った。副長は(この子の笑顔には、救われる)とほっとした。

「どうなさったんですか?お顔の色が優れませんね、副長」見張兵曹が、双眼鏡から離れて副長に言った。

野村副長は「そう?ちょっといやなことがあって」と言った。見張兵曹は「いやなこと、ですか。では、副長。ここで双眼鏡をのぞいてきれいな景色を見たら忘れられませんか?」と、双眼鏡を示した。

「きれいな景色、ね、、」と副長は言われるままに双眼鏡をのぞいた。その視界に美しい水平線が見えた。水平線上を、帝国海軍の輸送船だろうか、ゆっくり動いてゆく。

次の瞬間、いきなり目の前を黒いものが横切って副長は思わず「敵機!?」と叫んでいた。が、見張兵曹が笑って「いえ、今のは海鳥ですよ。――ほら」と主砲射撃指揮所のさらに上を指さした。

なるほど、一羽の海鳥が<大和>のトップを輪を描いて飛んでいる。

「美しい眺めだな、、、」と副長はひとりごちた。しばらくして気がつくと、自分のそばに見張兵曹が立って、見つめている。

ふいに野村副長は(なんてかわいい子なんだろう、、。これは麻生少尉が夢中になるのもよくわかる)と思ってたまらなくなった。

 

交代で、見張兵曹が下に降りて行ったあと、副長はやっと第一艦橋に戻って行った。憂鬱な気分は少し、軽いものにはなっていた。

が、その場に梨賀艦長がいるのを見た瞬間。

副長はわき上がる思いをどうにも抑えきれなくなっていた。胸ポケットに入れたあの写真の入った封筒を引っ張り出した、そして――――

                                (次回に続く)

 

             ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

サアどうなる!

副長VS艦長の激突か!?・・・だいたい艦長も羽目外し過ぎだし、副長は融通利かない??いろんな見解もあるでしょうが、それぞれの言い分はどんなでしょう?

波乱含みの次回を待っててちょ!



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「女だらけの戦艦大和」 ・ トメキチ<武蔵>に乗る 弐

「女だらけの戦艦武蔵」に、トメキチがいる!!

 

梨賀艦長とともに<武蔵>にやってきたトメキチはもうその瞬間から人気者になってしまった。トメキチは猪田艦長とともに<武蔵>艦内をあちこち歩いた、そのたびそこの兵員から「可愛い!艦長待ってください、、、記念写真を撮りますから!」と言われてなかなか先に進まない。

トメキチ、いったい何枚の写真に収まったのだろう?

いい加減疲れた猪田艦長、やっと防空指揮所に上がった時はさすがにへとへとだった。

防空指揮所に上がると、トメキチは急に落ち着きがなくなった。まるで誰かを探すように走り回り、そこにいる見張り員たちをのぞいている。

「ん?誰だあ?」と見張り員の1人が気がついて見下ろした。その顔を見たトメキチはなんだかがっかりしたように下を向いてしまった。

「どうしたの、ワンちゃん?」と見張り員――谷垣兵曹――が優しく言った。この谷垣兵曹は<大和>の谷垣兵曹の同年のいとこである。

猪田艦長は「あ、そうか。トメキチ君の御主人は<大和>の見張り員だってな。思い出しちゃったんだね」と言ってそっとその頭をなでてやった。トメキチは猪田艦長を見てその手を舐める。

「明日には会えるんだから、さ。今日はここで遊ぼうよ、ね」と猪田艦長は元気づけた。

トメキチはその言葉がわかったようで、元気に「ワン!」と吠えた。

そのあと、トメキチは艦長、谷垣兵曹とともに防空指揮所で過ごしたのだった。

 

その晩、<武蔵>では最上甲板で<梨賀艦長・トメキチ君歓迎会>が急きょ開催された。全艦の兵員が最上甲板で梨賀艦長とトメキチとともに大騒ぎするのだ。大体がこういう大騒ぎが大好きな梨賀艦長は大喜びである。「猪田艦長、今日は無礼講ね!」「よし来た!」

酒は飲むは、食うは、、、果ては加東副長など酔った兵に海にたたき込まれてしまった。が、今日は無礼講なので文句は言えない。――副長悲しい。

トメキチは、あちこちからお呼びがかかって忙しく動き回る。でもまんざらでもなさそうだ。さりげにポーズをとったりして、皆にウケまくっている。

梨賀艦長はそれを見ながら猪田艦長と食いまくるのであった。

 

その頃、、、見張兵曹は麻生少尉と例のホテルに(またもや)いた。

麻生少尉は例によって、シャワーを浴びた兵曹をベッドに押し倒して抱きしめた。そして彼女の耳元で「・・・オトメチャン、そろそろ本気で<ヴァ―>をレッコしようじゃないか?」と聞いてきた。ちなみに、「レッコ」とは、海軍用語で『捨てる』というほどの意味である。語源は英語の<let’s go>から来てるらしい。

なんで今日は少尉は「レッコ」なんて言うんだろう?兵曹はちょっと不思議だったが、それだけ少尉が本気で兵曹の<ヴァ―>喪失を望んでいるのだ、ということが分かって複雑な気になった。麻生少尉は「こないだみたいにオトメチャンが<ヴァ―>ってだけで襲われたり誘拐されるのはもういやだよ。それならいっそ、<ヴァ―>でなくなればそんなこともないだろ?・・どう?そろそろ考えてみない?」と、兵曹を荒く扱いながら囁く。

見張兵曹は悶えながらも、「でも・・こわいもん、、、」と子供のようにつぶやくのだった。それを聞いた麻生少尉は「ああ、、、可愛い!」と叫ぶように言って、兵曹を固く抱き締め更に、攻めまくるのであった―――

 

二人がそんなお定まりのコトに没頭しているその時、<武蔵>艦上ではクライマックスが訪れようとしていた。

すっかり酔ってしまって気分良くなった猪田艦長と、梨賀艦長はなんと主砲塔の上に乗って肩を組んで歌い出したではないか!

そこに海水にぬれた体を洗って来た加東副長が、トメキチを抱いてこれまた乗ってきた。

<武蔵>乗組員は、もう盛り上がりっぱなしである。皆の間から「猪田艦長!」「梨賀艦長!」「加東副長!」の声がわき上がる。

トメキチが興奮して、「キャン!キャン!」と吠えて副長の腕から降りると、後足で立って、その場をくるくると回り出した。

「トメキチ可愛い!可愛い――!」

<武蔵>の皆が絶叫した。そして期せずして、乗組員の間から「む・さ・し!む・さ・し!」と、<武蔵>コールさえ起こってもう大変な状態、トランス状態と言っても過言ではない。

猪田艦長も、梨賀艦長もすっかり雰囲気に酔って、酒にも酔って<武蔵>乗組員とともに「武蔵コール」に加わっていた。

その時、唐突に梨賀艦長がトメキチに向かって、それはそれはでかい声で、

    「ハイっ!!」

と叫んだ。しかも、トメキチをビシッと指さして。

その次の瞬間、トメキチは自分の白いジョンベラをたくしあげた。そして間髪を入れず梨賀艦長も自分の防暑服の上着をたくしあげた。

二人―――いや、1人と一匹の腹には、<変な顔>が描かれていた。そして梨賀艦長は酔って音程の外れた<変な歌>をがなり始めた。

トメキチが、妙な踊りを始める。

最初、シ―――ン、と水を打ったようだった<武蔵>最上甲板だったが、、、一瞬の後万雷の拍手と歓声に包まれた。

「梨賀艦長かっこいい!トメキチかっこいい!」

それを見た猪田艦長も「私もやるっ!」というなり、自分の服をたくしあげ踊り出した。

われるような拍手と歓声。それは鳴りやむことなく、いつ果てるともなく続いていた。

・・・・一人、海にたたき込まれて酔いの冷めた加東副長のみが冷静にこの場を見つめて「ああ、なんてこったい!これが<大戦艦>の艦長のすることかね?」と情けなさげにつぶやいたのは誰も知らない。

そしてその歓声は怒涛のように麻生少尉と見張兵曹の元にも聞こえてきた。兵曹は少尉の腕の中で身をこわばらせ「あれ、なんでしょうか、分隊士?」と聞いた。少尉は「何だろう、、、遠雷のようだが、、でも外は晴れてるよなあ?スコールでも来るんかい?」とあまり関心ないようである。「そんなことどうだっていいじゃん?」と言いながら、兵曹の胸の桜色の突起を吸って<乙女>の部分を触るのに夢中である。

見張兵曹も「ああ、、、分隊士ぃ、、、」ともうその音のことなど忘れてしまって麻生少尉にしがみついている。

 

それぞれの、夜は更けて行った――――

 

翌日、白々と夜が明けるころ目覚めた猪田艦長と梨賀艦長は自分がどこにいるのか最初わからなかった。ハッとして見ればそこは<武蔵>主砲塔の上、しかも二人とも素っ裸である。

服はその辺に脱ぎ棄てられとっちらかっている。下着さえ、どこかに行ってしまい行方知れずである。

二人はお互いを見合った、その時猪田艦長が思いっきり笑いだした。梨賀艦長が指さすところを見れば、腹に書かれた変な顔が汗で歪んでもっと変な顔に変化していた。

二人は起き上がると、朝日がさし始めた主砲塔の上でお互いを意味なく指さしあいながら大笑いしたのであった。

―――というか、あまりにばつが悪くって笑うしかなかったのだ。

で。

トメキチと加東副長は一体どうしたのか?

加東副長は、踊りで酔いが完全に回って、その場に倒れこんでしまった二人の艦長をなんとか正気に戻そうと努力はしたが、結局無理だった。

で、もういたしかたない、と決断し二人を砲塔の上に残しトメキチを抱いて自分は自室に帰ってトメキチとゆっくり眠ったのだ。久しぶりにほのぼのとした気分の一夜であった。

しかし今日の加東副長はちょっと喉が痛んだ。そう、昨晩の無礼講で兵員に海にたたき込まれたその<後遺症>である。

加東副長は思ったーーー(もう梨賀艦長には泊まってほしくないな。あんな下品なことする人は、<武蔵>には合わない。でも、またそれに乗っちゃう猪田艦長も、どうかと思うよ?うちの乗組員も悪い子じゃないけど、悪乗りしすぎさなあ。ここでちょっと引き締めないとマジで<大和>に負けるぜ?)

 

そして間もなく、梨賀艦長はトメキチを抱えてまるで逃げるように<武蔵>を後にした。その姿を<武蔵>の乗組員は見ていなかったので「よっぽどばつ悪かったんだねえ。いいじゃん、昨日は無礼講だったんだし?」と乗組員は却って気の毒がったとか???

 

更にそのあと、トメキチを羨んだ猪田艦長は「うちもマスコットワンちゃん欲しいから誰か見つけてきて!」と命じた、そして一匹の雄犬を谷垣兵曹が見つけてきたものの、これがまったくの<駄犬>で、寝てばっか・食ってばっかで兵員泣かせの代物であった。

しかも、退艦させたくてもその気配を感じるとサッと逃げてしまうというどうしようもないワンコであったそうな。

そのワンコ、、、今も猪田艦長のそばでねっ転がっているという―――――

 

      ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

<武蔵>でのトメキチでした。

というより猪田艦長と梨賀艦長の乱痴気騒ぎが主役のようでありました。酒は飲んでも飲まれるな、であります。厳守しませう。

<武蔵>に来たショーもないワンコは一体何という名前なんでしょうか?名をつけるほどの事もないというので『名無しの権兵衛』からとって<ナナ>だってさ、、、。

ふーーーん!


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