「女だらけの戦艦大和」・体当たり!

「女だらけの帝国海軍」第八三一水雷戦隊第四駆逐隊は、訓練帰りに敵に遭遇した――

 

第四駆逐隊は四隻からなる。旗艦は『縄張』。駆逐隊は他に、第八、第一六、第二四の各隊。その水雷戦隊は、トレーラーから某所で訓練を行って帰投するところであった。

が、第四駆逐隊の艦「金槌」が機関の不具合で遅れた。駆逐隊長の乗る「烏賊槌」は旗艦「縄張」に「カナヅチ キカンコショウ ヤヤオクレル サキニイカレタシ イカヅチカンチョウ」と発光信号を打って、第四駆逐隊は本隊から少し遅れることになった。

「どうしたんでしょうね、『金槌』。昨日の夜戦訓練で何かあったんでしょうかね」と、「烏賊槌」航海長は言った。艦長の吉田中佐は航海長を見返って

「うん、『金槌』は昨夜大活躍だったからね、そのせいかな?でも実戦でこれだと困るじゃないか。もっときちんと整備をしてもらわんと」

と少々眉間にしわを寄せて言った。

見張り員が「本隊との距離、八〇」「上空、海面ともに不審物なし」と知らせてくる。

艦長はうなずいてから「『金槌』はどうした?付いてきてるか?」と聞く。航海長が双眼鏡で見ていると見張りが、「『金槌』、六時方向にいます。特に遅れはありません」と言って皆はほっとした。

旗艦・「縄張」から無電で護衛にハライタ島航空基地から零戦隊が八機来ると知らせが来た。その知らせを持ってきた通信長は、

「安心ですね。零戦隊は後五〇分で我々に合流出来るそうですから」

と電文を見た。

艦長は「『金槌』の様子を見ながら注意して航行だ。『鼾(いびき)』『淦付(あかつき)』にもしらせよ」というと艦橋の外に出た。

 

たった四隻の駆逐隊はしばらく何事もなく航行していた。零戦隊が来るまでもう少しである。

が。

「右舷方向、敵艦船!」

という叫びが艦長たちの耳をつんざいた。「なに!敵艦船だと!」と食べかけの握り飯をほうりだして双眼鏡を覗くと右舷方向六万メートルほどに確かに帝国海軍のものではない艦が二隻ほどこちらをうかがうように並走している。

「な、なんということだ。訓練帰りに敵に遭遇とは…第一なぜこの海域に敵がいるんだ!?」

航海長は腹を立てて叫ぶ。

艦長は「合戦用意!対潜水艦注意!」を叫び、艦内は砲戦準備にかかる・・・

 

この敵艦と思しきものは、アメリカの輸送船で当然しっかり武装もしている。この輸送船は日本に兵站線を遮断された仲間をすくわんと、オーストラリア海軍の協力を得て物資を東南アジア方面に届ける途中であった。武装船と思われないように、見かけはおとなしげな輸送船のような民間の船を気取ってはいるが。

輸送船・「ショップバッグ」の船長は「う、うわあ!あれはジャップの艦隊じゃなくて!?いや~どうしよう・・・。『オバマ級戦艦』も『空母・レーガンⅡ』もいないと来てるのに」と卒倒寸前だったが、砲術長が「キャプテン。この船は唯の輸送船じゃないね。優秀な砲員がいますからあんなもの一発で沈めますよ。あれはどれも駆逐艦のようですし、そばに巡洋艦も戦艦もいませんから、まあ、楽勝ですね。見ててください」というと、即座に「砲戦用意」を命じる。

 

「金槌」では見張り員が「敵艦は民間船のふりをした『巡洋艦』ですっ!」と見抜いて報告。吉田艦長はそれを受けて駆逐隊に「右砲戦用意、各駆逐艦は適宜砲撃せよ」と命令を下した。

対するアメリカ輸送船、「あんなもの唯の駆逐艦じゃん!?どうってことないね、即刻ドカンと海の底に送ってやろうよ」と息巻いていたが。

 

これらの駆逐艦は、最新の装備をつけていて、そのための訓練に出た帰りだったのだ。だからアメ嬢たちが思っているような「今までの」日本の駆逐艦とは一味違うのである。第八三一水雷戦隊は、新しい装備をつけた水雷戦隊ということで海軍全体の期待も大きい。すべての海軍工廠の優秀な技師が集められ、「新しい装備」を日夜研究し試行錯誤しながら出来たものがこの第八三一戦隊に装備されているのだ。実戦でよい戦果が上がれば、すべての水雷戦隊に装備させると言うことになっている。

 

ともあれ、「海戦」は始まった。ともに航空機の援護もない戦いであるから最初はぶん殴り合いの様相であった。第四駆逐隊としてはそうしながら相手の力量を見ていたのかもしれない。四隻の駆逐艦は、二隻の敵艦を追い込むようにして砲撃。

一隻の輸送船「ショップカート」の船尾に、「鼾」の砲弾が命中し、たちまち行き足が落ちる。それでも砲撃をしてくる敵、「敵ながらあっぱれ」ではある。

しかし行き足が落ちたのが「ショップカート」には不運で、「淦付」の集中砲火と、魚雷であっという間に沈んでしまった。

「ショップバッグ」はそれを見てさすがにまずいと思った。どうやら相手は百戦錬磨の駆逐艦らしい。

「ショップバッグ」艦長のマイ・バッグ大佐はビビる船長を艦橋から追い出して「戦争なら私がプロだね!素人はすっ込んでて頂戴!」と自分が艦橋に陣取った。

マイ・バッグ艦長が艦橋に入ってほどなく、日本駆逐艦からの砲撃が至近で爆発した。大きな水柱が上がり、船が揺れた。

エコ航海長が「艦長、どうしましょう。多勢に無勢です」と艦長に進言、さすがのマイ・バッグ艦長もまずいと思った。航空機の護衛もない、頼めない状態での戦闘など考えられない。

というわけで。

「全速力で退避!」と命じた。ショップ・バッグは機関全開でその海域から離れようとしていた。それを「金槌」の吉田艦長は見て取った。艦長は、これ以上砲戦を仕掛けてもそれほど効果はないと考えた。かと言ってこのまま逃がすわけにが絶対いかない。

「かくなる上は」新しい装備を試してやろうと思い皆に問うた。「あの(・・)装備を使おうと思う・・・」。だがまだ使ったことがないだけに必ずしもその攻撃が成功するとは限らない。

だがやらずに敵輸送船を逃がし、敵を有利に導くことだけは避けたい。避けねばならない。

吉田艦長は、艦橋に集まった要員に自らの覚悟を示すかのように口を開いた。

「身はたとい」・・・皆はそれを聞いて気が引き締まった。艦長が辞世を詠むのか、その覚悟でこの『新しい装備』を試すのなら我々もその覚悟で臨もう。

艦長は皆を見回すと、

「身はたとい 太平洋に朽ちぬとも」

と更に詠んだ。

「留めおかまし 大和魂」・・・

皆は艦長の顔を食い入るように見つめた。おお艦長、それは「吉田松陰」先生の辞世のパクリです・・・!

しかしそれを合図のように「金槌」は全速でショップバッグに突撃した。艦内には突撃ラッパが鳴り響き、機銃が鳴り響く。

ショップバッグは、日本の駆逐艦が血相変えて突っ込んでくるのに衝撃を受け、なんとかこれを回避せんとした。マイ・バッグ艦長は「これが世に言う日本人の『バンザイアタック』なの!?いやー!逃げるわよッ!」と叫び、艦は取り舵を切った。

そこに――

「駆逐艦・金槌」は一直線に突っ込んで行った。

 

それを、後方を守る「烏賊槌」艦長は見て「ああ!やったか!?」と叫んでいた。その叫びは悲痛だった。

はるか前方でものすごい爆発音と発光、目がくらんだ。

駆逐艦三隻の乗組員は、寂として声も出ない。『烏賊槌』の機銃員が、「ああ・・・やっぱり駄目だったのか。敵を道連れにして自分もともに・・・ああ、海軍魂を見た・・・」と言って泣き始めた。大きな感動が全艦を包んだその時。

煙が晴れたその向こうに無傷の「金槌」の姿が浮かび上がった。とたんに歓喜の声をあげる三隻の駆逐艦の乗組員たち、そして駆逐隊司令はその場に立ち尽くしてそれを見守った。

「金槌」は、艦首に仕込んだ新型の合金で敵艦の横っぱらを切り裂いたのだった。この合金は海軍工廠の技師たちが敵を葬るための策を考えに考えた結果である。

艦首に超合金を仕込むことによって艦の強度を増し、体当たりをかますことで敵を切り裂いて鎮めることが可能になると考えられた。

そしてその考えはすさまじい結果となって現れた。しかも最高の結果で。

それをちょうど上空に飛来した零戦隊が目撃し言葉もなかったという・・・。

そのあと四隻の駆逐艦は輸送船の乗組員を救助し、トレーラーの収容所に護送した。そして浮かんだ品物は皆すべて・・・いただいたという・・・。

   ・・・・・・・・・・・・・・・

吉田松陰 天保元年(1830)八月四日~安政六年(1859)一〇月二七日 二九歳で刑死。幕末の志士に大いなる影響を与え、今なお彼の言葉・思想は生きています。

彼の言葉は今の日本を見通していたのではないか、と思うくらいの言葉があります。折々ご紹介したいと思います。

文中に引いた歌の元は

「身はたとひ 武蔵の野辺に朽ちぬとも

留め置かまし 大和魂」

松陰先生辞世の句です。
Yoshida Shoin2.jpg

WIKIより

吉田松陰像(山口県文書館蔵)

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「女だらけの戦艦大和」・サンタと無花果

『女だらけの戦艦大和』他艦艇は、トレーラ環礁で年末を迎えている――

 

「そういえば」と見張兵曹がある晩、麻生分隊士の部屋で言った。麻生分隊士は「んん?」と、兵曹の顔を見た。見張兵曹は可愛くふふっと笑うと「ほら、昨年ですよ。防空指揮所で「赤い服の爺さん」を見たでしょ?」と言った。

「ああ!あの『還暦の爺さん』か!なんかえらい角のでかい鹿にひかせたそりに乗ってたくさんの衣囊(いのう)を積んどったっけな」

麻生分隊士はちょっと懐かしげに言って、見張兵曹を抱き寄せた。抱き寄せられながら見張兵曹は「また来ますかねえ、あの『還暦の爺さん』」と言ったが麻生分隊士は、「もう来ねえだろう。岡沢中尉に聞いたらあれは「栗済ます」とかに出てくる欧米の神様らしいからな。まあ、なんか贈り物持ってきたら歓迎してやらんでもないがな・・・」と言いながらもう、見張兵曹の服の中に手を入れている。

「分隊士・・・」と困ったように言いながらも見張兵曹はそっとその両手を分隊士の背に回す――。

 

1224日の晩である。

『大和』の随伴艦の「駆逐艦・無花果」の見張りが中天に明るい光を見た。その光は『無花果』からは離れた場所にいた『大和』の見張兵曹も見たが、分隊士と「あの光ですね。もう正体わかってるからいいですね」と見向きもしない。

が。

『無花果』の見張り員は大騒ぎで艦長の「菅直子」まで出てくる始末。皆でわあわあ大騒ぎしていると、機銃の兵が「艦長、撃ちましょう!」と言って来たではないか。ここで普通の艦長ならば、何も敵意のないものを撃ってはいけない!・・とかいうのだが菅直子中佐はあのハワイ海戦でも『無花果』はぱっとした戦果をあげられなかった関係からかイラついていた。

思わず口をついて出た言葉が「機銃群、射撃準備!準備出来次第指揮官の指示で適宜攻撃せよ」だった。

光の中には昨年同様にサンタクロースがいたのだが、このサンタクロースは昨年のサンタではなかった。今回は配置換えでここ太平洋地域に来たサンタクロースで道に迷いまくっていた。と言うか、アメリカ軍が敗戦続きのため、サンタクロースが持っている地図と実際の占領国とに大きな差異が出ていたのだ。

しかしサンタクロースはそんなことは知らない。それがこのサンタクロースの大きな悲劇であった。

何も知らないサンタクロース、『無花果』をアメリカ艦艇とすっかり勘違いしてそりを滑らして行った。が、次の瞬間。

「テ―――っ!」

と言う大声とともに、機銃弾がまっすぐにサンタクロースと鹿(トナカイですね)に向かって撃ちこまれていったのだ。

「ノ――!!!」「ぎゃああ――!」

サンタクロースとトナカイは叫んで、そりは平衡を失って墜落して行った。落ちたのは『無花果』のそばの海面。

「やった、やった!」と『無花果』の面々はカッターをこぎ出してサンタクロースとトナカイを収容しに行った。すっかりずぶぬれのサンタクロースとトナカイ、そして見張兵曹たち言うところの「衣囊」を収容した。

明るくされた無花果の甲板で、サンタクロースたちは菅直子艦長たちの尋問を受けることになった。赤い服を着てガタガタ震えているサンタクロースの周りを無花果の乗組員が取り巻いている。

菅直子艦長は、「貴様はどこから来てどこへ行くつもりだったか?正直に言えばよし、言わねばただでは済まんぞ、いいか」と言ったがもとより日本語が通じる相手ではない。

艦長は下手な英語を操ってなんとか話をしようと試みたが、うまくゆかない。千石砲術長も身振り手振りで話をしようとしたが一向に話にならない。

「困った」

と頭を抱えた時、「私が話してみましょう」と言って来た者が。菅直子艦長が顔を上げるとそこには通信科の予備士官がいた。ハワイの高校を出て、在学中はゴルフなんかもしていたと言うハイカラな石川僚子予備少尉。

石川少尉はサンタクロースのそばに座り込んで相手の警戒心を取ってから話し始めた。流暢な英語にサンタクロースの警戒感も解けたようで二人は時折笑い声を上げつつ話をした。

やがて、石川少尉は立ち上がり「艦長、彼は『サンタクロース』と言ってこの時期―クリスマスと言うのですがーに、贈り物を届ける役目をキリストさんから仰せつかっておるんだそうであります。彼はここがアメリカの土地だと思って来たらしいんですが、いかんせん彼らの情報は古すぎますね。アメちゃんはもうここにはおらん、本国に帰ったと言ったら驚いておりますよ」と艦長たちに説明した。

菅艦長は「ほう・・くりすます、ね?でそのキリストさんとは偉い人なんか?」と聞く。石川少尉は「ええ、まあ。キリスト教を信じる人たちにとってはまさに神様、でありますね」と、彼女の知る限りのキリスト教についての説明をした。

艦長はちょっとの間考え込んだ――一応敵方の人間みたいだが、神様のお使いをやたらと殺したり拘束はできない。そんなことをしたら日本人はなんて心の狭い民族なんだろう、と世界の笑いものにならんとも限らない。

菅直子中佐は決断した――「釈放だ」。

 

サンタクロースは、そりを直してもらいトナカイとともに石川少尉の前に立って別れの挨拶をした。

サンタクロースは「あなたのような人が日本人にもいるのですね、優しくて人道的な」と言った、石川予備少尉は苦笑して、「日本人はみんな優しく人道的ですよ、そうでないなどと誰が言ったのでしょうね?キリストさんに会う機会があったらその辺をよーく伝えてくださいね。日本人の中にもキリスト教を信じる人が少なからずいるのですから」と言った。サンタクロースはにっこりと笑うと、「わかりました、そう伝えましょう。・・・では!」というとトナカイを促してそりに乗り込んであっという間に中天に消えて行った。

星くずの光を引きながら――

 

その翌日、どこからか石川予備少尉宛に大きな荷物が届いた。少尉が開くとそこには、「ゴルフクラブ」の上物が一本入っていた。

そのクラブを手に取って柄の部分を見た少尉は思わず微笑んだ。なぜなら柄の部分には

present for youMary Christmas

と文字が彫ってあったのだ。(あのサンタクロース、なかなか・・・だね)

石川予備少尉は嬉しくなってその文字の部分をそっと指でなでた。

 

『大和』防空指揮所では、亀井一水だの酒井上水だのが

「今年は来ないねえ・・あの『赤い服のおじいさん』」

と心待ちにしていたが、残念、もう1226日である。サンタクロースは寒い寒い北の国に帰って過労から高いびきで爆睡中である。

また来年・・・のお楽しみである。


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「女だらけの戦艦大和」・オトメチャンのお泊り7<解決編>

台風の中を翻弄される「駆逐艦・無花果」の前牆の見張り所が――

 

「ああっ!」

と、見張兵曹はその時声をあげていた。激しい風にあおられてなんとあろうことか前牆が折れ曲がったのだ。

見張兵曹にはそれがとてもゆっくりと感じられた。が実際は結構なスピードで見張り所は上甲板に叩きつけられていたのだ。

ものすごい音がしたはずだがそれは波風の音にかき消された。振動もあったはずだがそれは艦の舷側に波がぶち当たる振動でかき消された。しかし、『無花果』にとって幸いなことはアンテナ線が切れなかったから通信その他が生きていたこと・・くらいである。

見張兵曹はどうしたのだろうか?

見張り所は上下逆さの状態で甲板上に落ちた格好になっている。丈夫な鋼鈑で作られていたので丸つぶれは免れていた。

が、中で見張兵曹は気絶している。ふんどしで双眼鏡と自分を繋いでいたため外に放り出されたりすることがなかったのが不幸中の幸いではある。

しかし誰も助けが来ない。

あまりの台風のすごさに誰もが外には出ないし、窓からは何も見えないという状況では致し方ないかもしれない。

見張り所は、甲板を洗う波がその小さな窓から入り込んでいる。海水は今度は出て行く場所がないのか、見張り所の中にたまり始め気を失っている兵曹はその身体を水につけている。

 

「ん!?・・・おい、航海長。何かおかしくないか?」

無花果艦長・菅直子が航海長に言った。航海長は「何か変ですか?」と雨の叩きつける窓を見る。艦長は窓の結露を手のひらで拭ってよく見いると、はっと息をのんだ。そして、「大変だあ、前牆が折れている!み、見張り所がない・・・!」と大声で叫んだ。

「なんですと!」谷航海長、千石副長が正面の窓にとりすがった。

よくよく眼を凝らすと、確かに前牆が折れ曲がり見張り所が見えない。

「しまった、『大和』の兵曹が・・・!」と菅艦長は雨着を着るのもそこそこに外に飛び出して行った。それを谷航海長・千石副長、そして枡床兵曹が追う。

「艦長、危険です」と叫ぶ千石副長の声も聞こえないのか、艦長は風と波に逆らいつつなんとか折れた前牆のところまで行った。そのあとをこれもなんとかかんとか追いついて副長や航海長、枡床兵曹が風にあおられながらやってきた。

「見張り所が・・・オオイッ、トメ公生きてるかあ!」

枡床兵曹が真っ青になって見張り所にとりすがり叫んだ。副長が、「艦長、見張り所内に水がたくさん入っています!」と叫び、谷航海長が「いかん、早くここを開けろ!」と怒鳴って見張り所のドアをひっぱった。

が、開かない。衝撃でドア部分が曲がったのかもしれない。谷航海長は「このやろぉ―」とドアに叫ぶなり、いきなり全身をドアに叩きつけた。

すると、がつっ!と音がしてドアが開いた。

「おいトメ公ッ!」枡床兵曹が中に入ると、海水がたまった中に見張兵曹はうつぶせているではないか。

艦長以下の背中に冷たいものが走った。すぐに見張兵曹はそこから取り出され、大風にあおられ、波に洗われながら谷航海長に担がれて医務室に入ったのである。

医務室で、見張兵曹は診察台の上に寝かされた。彼女の全身から海水が滴り落ちる。それは診察台から更に床に落ちてゆく。

艦長たちは自分たちもずぶぬれの状態で見張兵曹をじっと見つめている。軍医長が、見張兵曹の頬を叩いて大声で呼んだが兵曹は無反応である。

軍医長は、軍医大尉を手招いて「人工呼吸を手伝ってくれ」と言って大尉が兵曹に息を吹き込み、軍医長は手早く兵曹の服を切り開いた。兵曹の身体が少し蒼い。

軍医長はすべてを脱がせると、乾いた布を持ってそれで兵曹の体をごしごしとこすりだした。その間にも人工呼吸が続けられる。

「・・・だめか・・『大和』艦長になんと言ったらいいのだろう」

菅艦長がぼそりと言った。副長も航海長も、枡床兵曹も黙って見張兵曹を見つめている。騒ぎを聞きつけて他の兵たちも医務室にやってきた。

こっそりと、「え?あの『大和』の兵曹が?」「死んだのか?」「どうするんだ、あんな意地悪して死なれたら化けて出てこないかな?」「それより借りものを死なせたんだ、ただじゃ済まねえよ?」などなど、話している。

暗い雰囲気がその場を包みこんだその時、「げほっ!」とせき込む音が聞こえ、軍医長が「おう、しっかりせんか、助かったぞ」と叫ぶ声が聞こえた。

見張兵曹は蘇生した。

顔にやっと赤味がさして、まだ目はうつろではあるが「・・・ここは?分隊士は?」とつぶやいている。

艦長が「おいしっかりしてくれよここは「無花果」だぜ?・・どこも痛くはないのか?苦しくないか?」と心配顔で覗き込んだ。しばらくぼんやりしていた見張兵曹はやがて「ああ・・・」と言ってその目もしっかり見開いた。

「ごめんなさい、前牆を壊してしまって。伝声管に叫んだのですが通じてなかったようで・・」

「なんだって、伝声管が?」と谷航海長が言って艦橋に走って行く。ややあって戻ってきた航海長は「艦長、見張り所を繋ぐ伝声管のふたが閉まってました。揺れで閉まったのだと思います」と報告した。

「悪いことをした、きちんと確認すべきだった。もう少しで兵曹を死なせるところだった。許してほしい」艦長が謝る。航海長も、枡床兵曹も「すまん・・」「ごめんな」と謝る。見張兵曹は恐縮して、「そんな、どうしようもないことですからいいんです。もう私も大丈夫ですから・・」と言ったが、背中を打ったらしく動くと痛い。

それを見てとった艦長は「無理しちゃいかん。もうトレーラーに帰るからここで寝とれ」と言った。そして、思い出したように「軍医長、オトメに何か服を着せてやって?」と言った。見張兵曹がハッとして自分を見れば一糸まとわぬ素っ裸である。

恥じらうオトメチャンの耳に、枡床兵曹が「なんだあ?『分隊士の情婦』とかいうがずいぶん幼くってきれいな体だなあ?」とつぶやく声が聞こえてきた。

そのあと、無花果の艦内で「あれは絶対『ヴァー』だね!」と確信に満ちたうわさが立つのであった――

 

水雷戦隊は、台風に邪魔されながらやっとその日から二日ののちにトレーラー基地に帰投した。『無花果』の無残な姿に今回の台風のすごさの顧みず、訓練を強行した秋葉少将への批判がうずまいたのであった。しかもけが人が出たと言うことで秋葉少将の更迭にも発展しかねない。

 

傷ついた見張兵曹は皆に見送られて『大和』に帰ってきた。

『大和』の舷側を上がる際には菅艦長が背負ってくれた。『大和』ではもうすでにオトメチャンのけがを聞いていたので、梨賀艦長・野村副長・森上参謀長そして麻生少尉が待ち構えている。それから航海科の面々も立ち並んでいる。

麻生少尉など、当然血相が変わっている。

オトメチャンが上がってくるとたまらず分隊士が駆け寄った。「オトメチャン!」と叫んで菅艦長の背中から抱き取った。

「分隊士・・」と、オトメチャンはその額を分隊士の肩に付けた。分隊士は「大丈夫か、エライ怪我したって聞いてもうたまらなかったよ」と言った。オトメチャンは顔をあげて「大丈夫です、ちょっと水飲んだだけ」と笑った。が、背中が痛んで「うっ」と軽くうめいた。

それを見ていた梨賀艦長が「分隊士、早く医務室に」と促して、分隊士は皆に会釈するとオトメチャンを大事に抱きながら医務室に降りて行った。そのあとを航海科の連中がくっついてゆく。

菅艦長は今回の事を平謝りした。オトメチャンを前牆の見張り所に上げたのは『大和』乗組員に対する無章の兵たちのやっかみをそらすためにしたと言うのを告白した。

そして菅艦長は「しかし彼女は本物です。あの大雨と風の中、視界も悪いと言うのに至近に迫った他の駆逐艦の影を見つけて報告したんですから。我々の命の恩人です」と頭を下げた。

梨賀艦長も副長も参謀長も(ほーら、俺たちのオトメチャンはすごいだろっ!)と内心で溜飲を下げたのだった。

 

『大和』を去る際、菅艦長はこっそりと「・・・しかしオトメチャンはまだ『きれい』なんですねえ。早く一人前にしてやんなきゃいけませんよ」とちょっと余計なことを言って降りて行ったのだった。

 

ともあれなんとか無事に『大和』に帰艦したオトメチャンは分隊士とともにすごしながら(やっぱり私は『大和(ここ)』がいい)と実感したのであった――

 

        ・・・・・・・・・・・・・・・・

 

長い話でした。

一時はどうなるかと思いましたがオトメチャンは運が強いです。しかし『無花果』の皆さんに裸を見せる羽目になりました。今後何もなけりゃいいんですが、ね。

早く傷を治して分隊士と・・・ね!


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「女だらけの戦艦大和」・オトメチャンのお泊り6

『女だらけの水雷戦隊』は、台風の中を進んでいたが――

 

見張兵曹の乗った駆逐艦・無花果は台風の起こす波風に激しく動揺させられている。見張兵曹のいる『見張り所』はさっきより大きく左右に振られている。

見張り所の窓から雨と風そして海水さえ吹き込んでくる。床に水がたまるがそれも艦の傾きとともにドアから下に流れて落ちてゆくようだ。

(これはちょっと危ないかもなあ・・)と見張兵曹は考えた。なんだかドアが急に開いてしまいそうな気がして怖い。

(そうだ!)と、兵曹は軍袴のベルトを緩めてふんどしの紐を解いて外し軍袴から引っ張り出した。そして軍袴のベルトを締め直すと、ベルトの後ろにふんどしの一方を結びつけ、もう一方を双眼鏡の架台にしっかりと結びつけた。

(これで一応転落は免れそうだ)

そう思って、再び双眼鏡をのぞく見張兵曹ではあるがいかんせん、風雨が強すぎて何も見えない。でも、無花果艦長から仰せつかった仕事である、『大和』乗組員の意地の見せ所であるからここは頑張ろうと決意した。

ものすごい雨と、波しぶきで視界が落ちてきた。その時兵曹は艦の右舷に何かがいるのを感じた。

双眼鏡を握ったまま肉眼で目を凝らすとなんと、他の駆逐艦が無花果の至近にいて艦どうしが激突しそうになっているのだ。

兵曹は伝声管に向かって、「右舷至近に駆逐艦影あり、衝突するっ!」と叫んだ。

それを艦橋の谷航海長が聞いて、「何っ!見えないが・・」と言ったが艦長が「航海長、取り舵急げ!」と命じ、航海長は操舵室に「とーりかーじ一杯、急げ―!」と叫んだ。無花果は大きくその身を左に転舵。

とたんに。

「おお!航海長・・・」と菅艦長が艦橋の外を指さして叫んだところを見れば、雨と波しぶきの中から駆逐艦の黒い姿が湧いてきたではないか。

「艦長・・危なかったですね」と谷航海長が言うのへ、艦長は「オトメのおかげだね。命拾いしたよ」と笑った。しかし危険は刻一刻と増大している。無花果を始め「黒雲」や「遅霜」なども危険を感じこれ以上の航行は不可能と判断した。

「歯黒」の秋葉少将に「これ以上の訓練航行は不可能なり、艦同士の衝突の危険あり。速やかに帰港したし」と無電を送った。

通信参謀からその無電を受け取った秋葉少将は、その紙に見入っているがずいぶん目から話して読んでいる。

「歯黒」艦長はそれを見ながら(やっぱりこの秋葉少将って「老眼」だよなあ。こんなに離して見るなんざ普通じゃねえし。このヒトもうすぐ五十で孫がいるって噂、本当かも)と、緊張した場面にそぐわないことを思って内心笑っていた。

このうわさは水雷戦隊では知らないものはなく、でもしかし秋葉少将はそれを耳にすると大変激怒して手がつけられない。だから皆、隠語で秋葉少将の事をAKIBAからとって「AKB四十八」と呼んでいる。『四十八』とは、「そのくらいの歳じゃねえの?」と言うところから来てるらしいが。

そんなことはどうでもいい。

秋葉少将は苦虫をかみつぶしたような顔でその通信文に見入っていたが、やがて顔をあげて「歯黒」艦長・小倉智子中佐に、

「全艦に通知。訓練を中止し速やかにトレーラー基地に帰投する」

と厳かに言った。艦長は後ろに待機していた通信参謀にそれを復唱すると通信参謀は敬礼して艦橋を出て行った。

 

かくして、水雷戦隊の訓練は中止となって全艦帰投することになったのだが。

 

台風は更にその猛威をふるいだす。艦橋の窓ガラスに大粒の雨が叩きつけ更にそれに波が混じり何も見えない。艦橋の見張りについていた枡床兵曹は、双眼鏡から目を離して「ああもう、なんも見えねえや!」と癇癪を起した。しかしすぐ、双眼鏡をのぞく。

艦どうしの衝突を避けるため、各艦は適宜発光信号を出しながら相手との距離を測りつつ航行。しかしその発光信号さえ見えにくくする憎い雨風と大波。

「左方向から大波!」と言う見張りの報告に艦長は「波に艦を立て・・」と言いかけたが次の瞬間無花果は横波を食らって大きくかしいだ。

不意をつかれて全員――無花果の乗組員はよろめきあるいは転んでしまった。見張り所にいたオトメチャンはその時、視界の縦半分が黒い海になったのを見た。とたんにドッと大波が無花果の艦上を洗った。見張り所にたくさんの海水が入ってそして出てゆく。

見張兵曹は海水にむせてげほげほと咳をした。すっかり服も体もずぶぬれである。寒くさえなってきた。

ものすごい風の音が見張り所を切ってゆく。見張り所が大きく揺れる。どこかがギシギシと音を立てている。

(倒れるのではないか)と、見張兵曹は少し不安になってきた。こんな大きな台風は今まで経験したことがない。

それは、水雷戦隊の誰もが思っている。あの秋葉少将でさえ。さすがに不安な表情になってきている。「歯黒」も大きく波と風に翻弄されて乗組員は正直不安である。

「戦闘よりいやだな。こんなことで死んだら物笑いじゃないか?秋葉少将はどういうお考えでいるのか?」

秋葉少将に対する不信感が芽生えるのも、ある意味無理のないことかもしれない。

 

「駆逐艦・無花果」ではその時大変な事態が起きようとしていた。

見張兵曹はびしょびしょになりながら見張り所にいるが、ひときわ大きな風と雨が吹いて来た時、「メリッ!」と言うすごい音を聞いた。

ハッ、と思った時見張り所が大きく傾いた。(艦の傾きじゃない!これは・・!)見張兵曹は身の毛がよだつ思いがして見張り窓から風雨に邪魔されながら下を見た。

「!!」

見張所そのものが風で傾いてしまっているようだ。あわてて伝声管を使ってここからの退避を申し出ようとした。が、伝声管の向こうからは何の反応もない。何度も何度も叫んだが、伝声管は沈黙している。

実は、見張り所と艦橋を結ぶ伝声管の、艦橋側のふたが艦の揺れた時閉まってしまったのだ。それを艦橋にいる艦長以下誰も気がつかない・・・

(どうしよう)

見張兵曹は少しの間考えたがここを許可なく去ることはできないと思い、(がんばろう、そのうちトレーラーに帰れるだろうから)と肝を据えた。

と、その時・・・!!

           (次回に続きます)


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「女だらけの戦艦大和」・オトメチャンのお泊り5

「女だらけの駆逐艦・無花果」他の水雷戦隊は、○五○○トレーラー本島の基地を出航した――

 

今回は「前よりは規模は小さいがな。馬鹿にすんじゃねえぞ」と言うくらいの規模らしい、「無花果艦長」に言わせれば。ラインナップは重巡・『歯黒』に軽巡・『陣痛』。駆逐艦はこの『無花果』に「遅霜」「霜焼」「雨雲」「黒雲」である。

そして今回は特別に潜水艦が仮想敵として参加している。堂々たるラインナップであるが見張兵曹はなんだかその駆逐艦の名前が気に入らない。

(なんだかなあ、景気が悪い名前ばっかり!もっといい名前がないのかなあ)

するとその心を読んだかのように枡床兵曹が、「貴様艦の名前が気にいんねえようだがな、最近できた艦はいい名前をとっくに持ってかれちまってこんなのしか残ってねえのよ。だがな、名前は変だが中身は優秀よ。俺たち見てりゃあわかんだろうが?あの「幽霊艦隊」の艦どもの名前に比べりゃずっとまし、って艦スケが言ってたぜ、俺はまだどんな名前だか聞いてねえけどよ」と話しかけてきた。

「ああ、あの幽霊艦隊ですかぁ・・・」と見張兵曹は思いだした。突然の雷雨の中まさに幽鬼のごとく現れた謎の艦隊と不気味な乗組員、確か無花果艦長がそれを垣間見て腰を抜かしたとか何とか聞いたけど?

「え!貴様もあれ見たんだな。怖ぇよな、あれは。俺も始めてみたが足が震えたぜ」枡床兵曹が言うと見張兵曹は「菅艦長が腰を抜かしたって聞きましたよ」と余計なことを言ってしまった。枡床兵曹があわてて見張兵曹の横っ面を思いっきり張り飛ばして「ばーか!腰抜かしたんじゃねえ、『漏らした』んだよっ。てめえヘンなこと言いやがると承知しねえぞ、このバッカやろう!」と怒ったが、御蔭で見張兵曹は菅艦長の真実を知ることになったのだ、ヘンなことを言ったのは枡床兵曹の方だが彼女自身はそれに気がつかないようである。

ともあれ、水雷戦隊はトレーラー環礁の外に向かい始めた。見張兵曹は先だって告げられていた通り「かご」こと前牆の高い高い見張り所に上らされた。

上る前に谷航海長は「まあ気ぃつけていけや。一応伝声管が通ってるから何かあったら使え。それから手旗もあるから使っていいぞ。ただし厠はねえからもう水飲むな。ちびりやがったら絞め技かけるぞ、いいな!」と脅しをかけた。

見張兵曹は下を見ないようにして前牆の細い梯子をのぼりやっと、見張り所の戸をあけた。狭い狭い場所、中は蒸し暑い。

小さな見張り窓が付いている、そこに双眼鏡が据えられていてそこから前方の見張りをするようになっている。床には手旗が置いてある。伝声管のふたを開けると艦橋の声が聞こえてきた、そこで「見張兵曹、配置につきました!」と叫んだ。

伝声管から「よーし。宜しく頼んだ!」と艦長の声がした。何故だかその背後から大笑いが聞こえてきたが、まあ気にしない・・・。

水雷艦隊は粛々と訓練海域に向かって進んで行く・・・

 

その頃『大和』では、麻生少尉が防空指揮所でそわそわしている。

腕時計を見ながら「ああ、もう水雷艦隊は出て行っただろうなあ・・オトメチャンはいじめられてねえだろうなあ。全くあのイチジク浣腸のやろう、何かあったらただじゃおかねえ」と独り言。交代のため、上がってきた酒井上水はそれを見てなんだか吹きだしそうな顔でいる。当直を終えて降りる石場兵曹は「心配なんだよ、わかってやんなさい」と言って酒井上水と交代。その時ふと、石場兵曹は北の空を見て、「あれ、なんだか今日は雲行きが怪しいね。なんだか雲が早いぞ、一雨来るかな」と言いながら降りて行った。

『大和』が朝食を終えて午前の課業が始まるころ、第一艦橋に気象班の天辰中尉がやってきてな梨賀艦長に、

「艦長、トレーラー北方で台風発生しています。早ければ明日の朝にもこのあたり直撃します・・・艦を避難させた方がいいですね」

と進言して来た。なるほど梨賀艦長が窓の外を見やると、すでに黒い雲が足早にこちらに飛んで来ている。

艦長は「分かった、急いで艦をドックに入れよう」と言って副長を呼ぶため伝声管を使った。

トレーラーには台風を避けられるように波静かなアスファルト湾に退避用のドックが設置してある。これは『大和』『武蔵』のような弩級艦用で、ほかの小・中型艦はコンクリ湾と言うところに設置されている。

『大和』は課業をいったん中止して、アスファルト湾のドックにその身を入れるべく抜錨した。

 

さて、水雷戦隊はトレーラー環礁の中間あたりに来ていたが見張り所のオトメチャンは前方にものすごい雲がわき立っているのを見て、「艦長。前方に台風とおぼしき雲あり!」と報告した。その頃にはドンドン雲がすっ飛んでくるから無花果艦長も(これは来たかな)と思ってはいた。見張兵曹の報告の前にも、トレーラー島の『大和』から台風が来ているとの無電を受け取っていた。

その知らせは重巡「歯黒」、軽巡『陣痛』も受け取ってはいたが水雷戦隊司令の秋葉少将は「ここまで来て戻るのはいやだあ!せっかく来たんだから日程を一日短縮してでもいいから訓練しようよ!」とゴネて、ほかの参謀たちの意見をきかない。

仕方がないので訓練を一日だけで引き上げることにしたのだが。

 

朝早くにトレーラーを出た水雷艦隊はその日の午後には訓練海域に到達していた。が案の定風がひどく吹いて雨さえそれにまじり出した。『大和』に比べて格段に小さい駆逐艦は大きく動揺させられて、高い見張り所は左右に大きく振られる羽目になった。小さな見張り窓から雨風が吹き込む。

見張兵曹の上半身は既にびっしょりと濡れ始めていた。双眼鏡から目を離して前方に目を凝らす、先頭を行く軽巡の姿がもうぼやけている。

それでも艦は波と雨と雲を蹴立てて進んで行く。(危なくないかなあ。でも本当の戦闘の時に台風が来てもそんなこと言ってられないし。訓練は大事だからな)見張兵曹は思っているが、その頃潜水艦からは、重巡『歯黒』に無電で「われ航行に支障ありと認む。これより急ぎ基地に引き返す」と打電して来たのだった。海中も大型台風により動揺させられているのである。

秋葉少将一人が「ふん、弱虫が!」と息まいてはいたが――

       (次回に続きます)

 

        ・・・・・・・・・・・・・・・

さあ大変、降ってわいたような台風騒ぎ(まあ「お話」ですからその辺はご寛容のほど)。水雷艦隊は大丈夫なのでしょうか、そして退避中の『大和』は!?

次回をご期待ください。


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プロフィール

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Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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