「女だらけの戦艦大和」・ふーチャンの過去3

乙女・麻生太は、その男の下敷きになりながらも、自分の膝で以て男の股間を思いっきり蹴り上げた――

 

 

起死回生の一発とでもいおうか、そのひざ蹴りはあまりにも見事に太郎左衛門の大事な部分にヒットした。

ウグウ~~、と悶絶する太郎左衛門に麻生少尉はちょっと振り返って、

「ごめんなさい、でもうちはやっぱりあなたと一緒にはなれんです」

と言ってちょっと頭を下げるとその部屋を出た。太郎左衛門は悶絶しつつも、「ふ、太ちゃん。そんなに恥ずかしいんかあ?なんて可愛いんじゃ」と何か勘違いしているようだ。

さあ。

麻生少尉はここを逃げねばならない。しかし着てきた着物はここには無いし、花嫁衣装は村長夫人が持ち去ってしまった。(どうしよう・・・)この寝巻のような着物では目立つのではないか、と思ったが(ええい、ままよ。夜陰に乗じてまずはうちまで行こう)と決心して離れをそっと抜け出した。

もしかして離れの外に見張りがいやしないかと思ったがそこまで野暮なことはしていないようで、母屋からものすごい酒宴の喧騒が聞こえるだけである。

麻生少尉は、そっと裏に回って村長宅を抜け出したのだった。

 

麻生少尉は自宅に着くと大急ぎで風呂敷に自分の着物や下着、そのほか大事なものを包んで納屋の奥深くに隠れた。

今夜はとりあえず、ここで過ごして明日の朝早くこの村から出てゆくつもりである。納屋の奥深く、少尉は風呂敷包みをしっかり抱いて眠りの中に落ち込んで行った。

 

翌朝、ものすごい怒号が聞こえ麻生少尉は目を覚ました。怒号の主は、自分の父と母である。

「太!何処へ消えた!出てこんか!」

あちこちの戸をあけて探しているようだ。少尉は息をひそめてその場で小さくなっている。ここをしのげれば、あとはなんとかなるのに。

その時納屋の扉が荒々しく開かれた――というより蹴り倒されたと言うほうが正解だろう。早朝の光が少尉のいるあたりまで差し込んできた。

(うええ、見つかるか!?

じっとその場にうずくまる少尉を父親は見つけてしまった。

外に引きずり出された。少尉をその場に引き倒して父親は、「この親不孝者、村長さんになんと申し開きするんじゃ、この野郎が!」と怒鳴って少尉を殴った。「なんでいやなら嫌と言わんかったんじゃ、杯までかわしといてから!」

それを聞いて少尉も怒りがあふれた、父親の手を思い切り振り払うと立ち上がり

「いやって言えんかったんじゃ、お母さんが一方的に話してうちになんも言わせんかったんじゃ。なのに嫌なら嫌と言えなんか変じゃ。だいたいあんなふうにされてどうして口をはさめるんじゃ、何時挟むんじゃ?うちをみんなでおもちゃにしとるとしか、思えん!」

そういうと少尉は風呂敷包みを胸に抱き直して、宣言した。

「うちは太郎左衛門さんて人には悪い思うが、あの人と結婚する気にはなれんです。うちは海軍に入るつもりでおります」

母親が少尉を睨みつけた。父親は怒りで拳を激しくふるわせて、そして言った。

「太、貴様勘当じゃ!貴様のような娘なんぞうちにはもういらん!」

少尉はそれを聞くともう後ろを振り返ることなく自宅を走り出ていた。早朝の村を、ひたすら走った。

海軍目指して。

 

そのあと少尉は夢中で駅に走り込み、汽車に飛び乗り気がつけば呉の町にいた。不案内な呉の町に降り立ったが心細いなんて言うものではない。怖くさえあった。

(飛び出したはええが、これからどうしたらええんじゃろう)

境川にかかる橋の上で、呆然として包みを抱えて川の流れを見ていた。

一体何時間そうしていたのだろう、ふいに背後から声を掛けられた。

「あんた、どうしたん?ずっとそこにたっとりんさるが?」

その声の主こそ、「下宿のおばさん」であった――

 

・・・そこまで話し終わって、麻生分隊士は見張兵曹の顔を見て

「で、そのあと俺はおばさんに連れられておばさんのうちに行き、そこに下宿させてもらって海兵団に入った、という訳。だからおばさんは俺の親も同然なんだよ」

と言って笑った。

見張兵曹は、はああ、と息をついてから

「そうだったんですか。でも分隊士も親御さんとすごい喧嘩をしんさって出ていらしたんですねえ。それ以来、お家には帰っとらんのですか?」

となんだか心配そうな口ぶりである。麻生分隊士はちょっと兵曹のほほを指先でつっついてから「うん、帰らんよ。勘当されてまで帰るようなアホと違うし。第一帰ればまだあの男がまっとる、言うしなあ。恐ろしゅうて帰れんよ」と言って笑った。

兵曹も少し笑ったが、

「分隊士にも恐ろしゅうてならんもんがあるんでありますね」

と真面目な顔つきで言った。分隊士は、「まあなあ。あの男に追い回されるんはもういやじゃけん。うっとうしくてかなわん」と言った。

そして、真顔で「追い回されるより・・・俺はオトメチャンを追い回したいんだよ」というなり、兵曹を抱きしめた。

見張兵曹は抱きしめられながら「分隊士・・・あの」と、囁いた。分隊士はしっかり抱きしめながら兵曹の耳元で「ん?どうした」という。兵曹はちょっと分隊士から身を離すようにして艦首方向をそっと指差して言った。

「工廠の人たちが、向こうからこっちを双眼鏡で見ているであります」

ああ、気がつけば最上甲板艦首方向には黒山の人だかり。それ皆こちらを見てため息をついている。

彼女らは言っている、「やっぱりあの噂は本当だったんじゃ!こんなとこで見られるなんて、なんてラッキーなんじゃ!!」――と。

 

ともあれ分隊士の過去を知った見張兵曹は(不幸なんは私だけじゃない。分隊士も不幸な境遇で頑張ってる!)と、励みになったようである。一層二人のきずなも強まったようだ。

 

そして。

麻生分隊士の故郷では、あの太郎左衛門が今も「麻生太」ちゃんの帰りをひとり身をかこちながら待っているのだと言う――

 

              ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

こんな話でした。

こんな出会いじゃなきゃ二人はうまく言ったんでしょうか、と思えばそうでもないみたい。麻生太は、あくまでも海軍に入りたかったのですから。

そして今更故郷に帰ったとしても結婚は無理ですね。

・・・だって、オトメチャンがいるもん!


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「女だらけの戦艦大和」・ふーチャンの過去2

麻生少尉は見張兵曹に語り続ける――

 

・・・その相手とはなんでも村長の甥っ子だと言う。なんでそんな奴が私を見染めるんだろう、と麻生少尉は不思議だった。

その少尉に、母親は言った。

「もう五、六年も前の鎮守様のお祭りのときじゃそうな。日暮れ前にあんたを見て、それ以来あんたに恋焦がれとってじゃと。まああんた、いいお話じゃね。これを受けんで何を受けるんよ。さ、はようこれを着て、村長さんのうち行くよ」

麻生少尉はもう、抵抗する力もなくしていた。なんだか出来過ぎのような話だが、こういうのを「事実は小説より奇なり」とか何とかいうんだろう。

麻生少尉は手慣れた母親によってさっさと和服に着替えさせられ「さ、お父さんたちまっとりんさる」とせかされて村長宅に歩き出した。

道々、村の人たちが「太ちゃんええねえ、玉の輿じゃ」とか「ええ嫁さんじゃ、太郎左衛門さんも嬉しかろう」などと声を掛けられた。

――太郎左衛門、誰だそれ?

ヘンな顔をする少尉に母親はそっと、「お相手のお名前じゃ、しっかり覚えとかんといけんよ。太郎左衛門さん、ええね?」と囁いた。

はあ、と口の中で言いながら少尉は(ずいぶん時代がかった名前じゃねえ、どんとな奴なんじゃろう)と不安が増大して行くのを感じていた。

そして村長のでかい家に着く。

玄関にもう数人の村議会議員が待ち構えていて二人を中にいざなった。

「新婦はこちらへ」

麻生少尉は母親とは別の部屋に入れられ、そこで花嫁衣装に着替える。黒地に裾模様も素晴らしい家紋付、これを祝言の後袖を短くして「留め袖」にするんだと聞いた。

そして少尉の支度が終わり、披露宴の支度が済むと既に外は日が傾き始めている。

いよいよ祝言の始まり。媒酌人の村長夫婦以下緊張している。

金屏風の前に新夫婦となる二人が座る。しかし少尉は目深にかぶった綿帽子のせいで相手がよく見えない。

(どんとな男なんじゃ、見たい)

心は焦るがそんな焦りも無関係に盃ごとは進む。三三九度を、交わしてしまった。

末席で麻生少尉の父親と母親はなんだかほっとしたようである。二人は(最初っからこうしとけば太は黙って嫁に行ったんだ)と思ったがまあ、自分たちの思惑が今回は上首尾で終わりそうなので嬉しそうである。

その場にはたくさんの村の人――主に地主だの議員だのと言ったいわゆる有力者――が列席して重々しい雰囲気である。

盃ごとが終わるとそのまま、披露宴になる。この披露宴は夜通しつづくのである。もちろん新夫婦はそれなりの時間には「お床入り」となるのだが。

ともかく、綿帽子を外されて初めて麻生少尉は相手の顔を見ることが出来た。

(ウワッ、なんじゃこれは!)

驚きと不快感で、思わず口をひん曲げた麻生少尉。しかし相手は嬉しそうに少尉を見ると、

「太ちゃん、きれいじゃ・・。俺の目に狂いはなかった。俺、嬉しい」

と笑う。麻生少尉は相変わらず口を曲げている。

その相手、太郎左衛門は年の頃なら四十ちょっと前。すごい巨体、しかも脂肪が腹のあたりにてんこ盛り。顔は当然脂ぎってテカテカ。いやらしい目つきで麻生少尉の体を見回してニタニタ笑っている。

(オエッ、これはしてやられた。畜生、ここの全員グルじゃな。野壺に落としてやろうか・・・)

麻生少尉はこの場の皆に対する不信感・不審感・不快感がのど元に衝きあげてくるのを感じていた。

拳をグッ、と握った。怒りがだんだん込み上げてきた。それも知らずに太郎左衛門は更に話しかけてきた。なんだか息が妙に荒い。

「ね、ねえ太ちゃん。俺のことどう思う?」

ニタニタとして薄気味が悪い、少尉はそれでも愛想笑いを浮かべながら太郎左衛門に

「あの、私はその、今日初めてあなたにお会いしましたもんで、その、まだようわからんのです」

と本当の事を言った。少尉の口がますます曲がる。

すると太郎左衛門は「うふうふうふ~~~」と笑うと、見悶えて「可愛い、太ちゃん。・・・俺、もうたまらない」と少尉の耳元で囁いた。

悶える太郎左衛門を見て、媒酌人の村長が何やら彼に耳打ち。村長はなぜか満足げにうなずくと、自分の右隣の列席者に耳打ち、その耳打ちは末席の太郎左衛門の両親まで届く。村長夫人も何やらうなずくと自分の左隣の列席者に耳打ち。これも同じく末席の麻生少尉の両親まで届く。

二人の両親は酒で顔を紅潮させながら、お互いに見合って嬉しそうにうなずき合っている。

(何だ、これ?)麻生少尉は分からなくなってきた。

その時村長が立ちあがると列席者に向かい、

「え―、ではここで新婦にはお色直しということでちょっと外させていただきます。新郎も少しの間緊張を解くため席をはずしますが・・ええですね」

と言った。皆が「ええですとも!ごゆっくりなさいまし」と杯をあげて大騒ぎ。

二人が時間差で退出すると、もう酒宴は盛り上がってすごいことになっている。

(これを朝までやるつもりかねえ)

麻生少尉はいい加減うんざりして来た。

少尉は、村長夫人に家の離れに連れて行かれた。ふた間ほどあるらしい離れの一室で、少尉は花嫁衣装を脱いだ。

帯が緩んでちょっとほっとした。ほっとすると同時に(エライことになってるじゃないか、逃げる機会はあるんかねえ)と不安になってきた。このままでは確実に少尉はあの脂ぎった男の嫁になってしまう。

「これを着んさいな」と村長夫人が差し出す着物をろくに見もせず考え込みながら、そでを通す少尉。夫人は、微笑んで少尉の手を取って

「じゃ、太ちゃん。こっちの部屋へ」

と、ふすまの閉まった部屋に連れて行った。そして、「では私はここまでじゃから」というなりそそくさと去ってしまった。

(なんじゃあ、人をこんなとこにおきざって)と、少尉はちょっと不満だったが疲れてもいた。着せられたものを見れば、白い寝巻のようだ。

(ちょっと寝かせてもらえるんじゃな、そういや風邪ひいて頭痛かったんじゃ)と、少尉はふすまを開けた。

そこに。

ふた組の布団が敷かれ、その一つに太郎左衛門が座っていた。太郎左衛門は満面の笑みで少尉を手招きした。

「うへっ!?」とおかしな声を出した麻生少尉に、太郎左衛門は布団から立ち上がって少尉のそばに行ってその手を取った。

「さ、太ちゃん。さっそくだけど頃合いだからね。俺と夫婦になるよ~」

言うなりものすごい力で少尉を布団に投げ出した。驚いたのは麻生少尉。こんな時間にこんなことをしなきゃいけないのか?しかもまだみんな宴会の最中じゃないか。

「いやじゃあ、何するん!」

少尉は抵抗した。太郎左衛門は品のないいやらしい顔で少尉に迫った。そして少尉を布団に力ずくで押し倒しねじ伏せると自分は少尉の上に重なった。

(うう・・。重い!)

少尉は息が出来なくなりそうだった。その時太郎左衛門はエヘエヘと笑いながら少尉の胸元に手を突っ込んだ。胸をまさぐりながら、太郎左衛門は「俺、でかいんじゃ。太ちゃんはデカイのが好きじゃって聞いたんじゃ。きっとおれたちうまくいく・・」と変なことを囁く。

「はあ!?」と、麻生少尉はデカイ身体の下敷きになりながらあきれた。一体誰がそんなことをこいつに吹き込んだんだ?

デカかろうがそうでなかろうが、うちはこんなやつとは願い下げじゃ!

怒りがまたもや込み上げて来て、思わず少尉はその膝で相手の股間を蹴りあげていた――

 

            ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

さあ大変。

麻生少尉は窮地を脱することが出来るんでしょうか?風雲急を告げる次回を待っててね。


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「女だらけの戦艦大和」・ふーチャンの過去。

「女だらけの戦艦大和」はいまだ修理中である――

 

麻生分隊士は海軍工廠のドック内にいる大和艦上で工事の音を聞いている。バリバリと鉄板をはがしたり、溶接を施す音なども聞こえてきていかにも大きな工事をしていると言った感がある。

『大和』は、屋根つきのドックに収まって他からは見えないようにされている、これは艤装当時からそうである。

「やまと、かあ・・・。やっぱりデカイなあ」

麻生分隊士はひとりごとを言った。指揮所には今自分ひとりである。

なんだか、「デカイ」と言った瞬間、昔のことがふいに頭をよぎった――

 

・・・麻生少尉が海軍に入るきっかけになったのは、親による無謀(?)な見合いである。

その前から麻生太(あそう ふとし)には、親がやたらと見合い写真を持ってきてはいた。そのたびに少女・太は「いやですったら!こういう人は、いやじゃ!」と言っては逃げ回っていた。

母親は最初の数回は(乙女らしい羞恥だろう)と思ってはいたが、村の有力者の親せきの男性と見合いをした時その態度の悪さに、キレた。

「太!貴様は一体どういうつもりじゃ!」

母親は家に帰るなり棍棒を振り上げて麻生少尉を追いまわした。

「どういうって、いやだから断ったんじゃ!それのどこがいかんのじゃ!?

麻生少尉は棍棒をよけながら叫んだ。母親は激昂して、

「断り方があろうが!『イチモツが小さそうじゃけんいやじゃ』って失礼だと思わんのか!それ以前に乙女の言うことか!」

とブンブン棍棒を振った。

麻生少尉は、身体を美しくそらして

「だって、それは大事なことじゃと言うとった・・」

と弁解した。母親は棍棒を麻生少尉に突き付けた。そしてすごい目つきで睨みつけると、

「誰が言うたんじゃ!名前を言わんかい!」

と怒鳴った。が、麻生少尉はシレっとして「さあ・・誰じゃったかな?」とうそぶいている。母親は、「貴様は乙女じゃろうが、ようそんな恥ずかしいことを口にできるもんじゃ」と一瞬戦意喪失したかに見えた。

麻生少尉は勢いづいて

「乙女じゃろうがなかろうが、大事なことじゃもん。優秀な子孫を残すんはお国のためじゃ。そのためにも大きいモノをもっとる男がええんよ」

と言った。母親は再び棍棒を振り回した。そして、

「男のモノのでかいこまいをどうしてわかるんじゃ、貴様はやっぱ・・・!」

と叫んで再び追い回し始めた。

麻生少尉はあかんべえを母親にして、

「ヘン!向こうの土手の下におったらそんなのなんもせんとわかるわい!」

というなり濡れ縁を蹴って外に逃げて行った。

向こうの土手、とはこのへんの子供たちの『のぞき見スポット』でそこには大きな木があってそこに隠れてみていると村の男性たちが「立ち小便」をする。それを見て、悪ガキどもは「どこそこの誰それのモノはでかい、こまい」とこっそり笑いあうのだ。

麻生少尉ももうすこし小さい時分に近所のお姉ちゃんがたに誘われてそこの常連になって大きさの見分け方を教えてもらった、という訳である。(・・・経験するには麻生少尉はまだ若すぎると言うのを血迷った母親は忘れていた。)

その日も日が暮れてからこっそり家に戻った麻生少尉は仕事から帰った父親に、母が怒りながら訴えているのを聞きながら台所に忍び込んで特大の握り飯を作って部屋に帰って食ったのだった。

 

――とそこまで思い出した時、指揮所に見張兵曹が上がってきた。

「あれ、分隊士。お1人でありますか?」

という見張兵曹に麻生少尉は、

「ああ今はね。ここで工事の音なんか聞いてた、そしたら昔の事を思い出した」

と言った。兵曹は興味深げに、「昔の事、でありますか」とそばに寄ってきた。麻生少尉は今までの事をざっと話してやった。

「はあ、私にはちょっとわかりかねますが、そういうものなんでありますかあ」

見張兵曹は例の「デカイ」話を聞いても今一つピンとは来ていないようだ。麻生少尉は苦笑して「まあ、そのうちわかるから」と言って続きを語り出した。

 

・・・それから半月ほどは何事もなく過ぎた。

しかしある日その時は来た。麻生少尉はその日は朝から気分がよくなく寝込んでいた。ちょっと熱っぽい、流行の風邪かもしれないと思いながら熱い茶を湯呑に入れてきて布団にくるまった。

すると、「太。ちょっと来なさい」と母親の声。

「何ですか?うちはちょっと調子ようないんですが」

麻生少尉は物憂さげに言った。とたんにふすまがパーン!と音を立ててひらいた。流石に驚く麻生少尉に母親がズカズカと部屋に入るなり、布団を引っぺがして彼女を引き起こした。

「やめろって!風邪ひいてるんだよ!」

流石の少尉も怒った。とたんに頭ががんがんと痛みだす。母親はそんな少尉の言葉には耳をかさずに、

「こっち来い?着替えんか、これに」

と声だけは荒げないで、力ずくで少尉を居間にひっぱりだした。そこにはきれいな和服が用意してあった。

「なんです、これは」

と痛む頭を抱えながら麻生少尉は母に聞く。すると母親はにっこりと笑って、

「今日はあなたの祝言ですよ」

と言うではないか。祝言、結婚式である。

「まさか、大体相手はいったい誰ですね?私は見合いは断っとるのに」

麻生少尉は全くわけがわからない。和服と母親を交互に見比べている少尉に母親は勝ち誇ったように、

「あなたを気に入ってくれている方が居るのよ。もうずっと前からなんじゃと。はよう言ってくれればよかったのにその人も恥ずかしがりじゃもんで今まで言えんかったらしいよ。でももう待ってられんと言って一昨日お父さんに申し込んでくださったんじゃ」

麻生少尉は衝撃を受けた、手がわなわなとふるえる。声までも震えて、

「そんななんで大事なこと、うちに言わないんですね?うちの事なのに」

と母親に訴えた。しかし母親は全く意に介さずに、「あんたに言ったら逃げるかぶち壊すかだから、言わんかった」とさらりと言ってのけた。

麻生少尉はもう脱力してしまった。

「うちはね、お母さん。海軍に入りたいんじゃ」

前々から思っていたことを告白した。が、母親は一笑に付した。

「あんたに務まるもんかね、無理じゃ」

 

・・・とここまで語り終えて少尉はちょっと心配そうに兵曹を見た。かつて兵曹も「見合い」で散々な目に会っている、それを思い出させたのではないかと思ったのだ。

でも兵曹は目を輝かせて、

「分隊士もそんな目に会われたんですか!無理やりの見合いは嫌でありますねえ」

と次を聞きたそうだ。

麻生少尉は咳払いをして喉を落ち着かせると、続きを話し出した――

 

              ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

なんと麻生少尉にもこんな衝撃見合い(祝言?)があったのか!

さあ、この後麻生少尉の見合い(祝言?)の顛末が語られます、いったいどうなるこの話。


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プロフィール

見張り員

Author:見張り員
ごあいさつ・「女だらけの帝国海軍」へようこそ!ここでは戦艦・空母・巡洋艦駆逐艦などから航空隊・陸戦隊などの将兵はすべて女の子です。といっても萌え要素はほとんどありません。女の子ばかりの海軍ではありますがすることは男性並み。勇ましい女の子ばかりです。女の子ばかりの『軍艦大和』をお読みになって、かつての帝国海軍にも興味をもっていただければと思います。時折戦史関係の話も書きます。
尚、文章の無断転載は固くお断りいたします。
(平成二十七年四月「見張りんの大和の国は桜花爛漫」を改題しました。)

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