女だらけの戦艦大和・総員配置良し!

女だらけの「帝国海軍」、大和や武蔵、飛龍や赤城そのほかの艦艇や飛行隊・潜水艦で生きる女の子たちの日常生活を描いています。どんな毎日があるのか、ちょっと覗いてみませんか?

「女だらけの戦艦大和」・穴と雪の大王1

 ――北方艦隊の守備・停泊する某島基地は、真冬の今どこもかしこも雪と氷だらけである…

 

そんな中空母「雪龍」の主計科員三名は「御苦労だが上陸して軍需部に行って至急買いつけてきて欲しいものがある」と衣糧主計長からのお言いつけで防寒具に身をしっかり包んで上陸して行った。

一人の主計兵曹――中野上等主計兵曹――は島の向こうの空を見て

「なんだか嵐が来そうだな…まったく主計長が行けばいいのにさ。早いところ済ませて帰らないとランチも動かなくなるよ。段取りよく行こう、で?なにを買いつけろって?

とぼやき半分で言った。その中野兵曹に霧島一等主計兵曹が防寒帽をしっかりかぶり直しながら

「気象班、今日明日に嵐が来るとは言っては居りませんでしたが…買い付けるものは褌と<待ち受け一番>です。こないだの暴風雪の時けっこう長いこと艦内に閉じ込められたから酒保の分が売り切れて衣糧倉庫の在庫も昨日で底をついたそうです」

と説明した。中野兵曹が「なんだよきちんと調べとけってのよ」とまたぼやき、もう一人萱野二等主計兵曹が

「その前も吹雪で買い付けに行けませんでしたものね。このところ多いですよね天気の悪い日が。――例の<幽霊艦隊>が近くにいるんですかねえ」

と言って笑った。中野も霧島も笑った。

ランチを降りた三人は雪と氷で固まった地面を踏みながら軍需部の建物を目指して歩く。

目指す建物は港から歩いて十五分程度の場所にあって、三人は褌と<待ち受け一番>をそれぞれ二千五百枚に三千袋買い付けた。

軍需部の担当兵曹長は「運が良かったですね、昨日輸送艦がやってきて衣料品やらなにやらたくさん荷揚げして行きましたから。生鮮品も入っていますから当分心配ないですよ。ここに停泊中の艦船の数ヶ月分は確保できてますからね」と言って笑った。

「雪龍」の三人の主計科員もほっとした笑いを浮かべた。兵曹長は帳簿を繰りながら

「では、あすの〇九〇〇(午前九時)には納品できるよう手配しましょうね、お急ぎでしょうから」

と言ってちょうどそこに入ってきた軍需部の大尉嬢に「おお、御苦労さま。ねえちょっと時間あるでしょう?寒いところ来てくれたんだからあったかい紅茶でも飲んで行かない?」と言われ、びっくりしながらも遠慮なくご馳走になる三人。

三人は温かい事務室の一角の応接セットで紅茶と菓子を御馳走になった。

蠣崎大尉は「こうするとロシア風になるんですよ」と言って紅茶にジャムを入れて見せた。「よかったらやってみませんか」

新しい物好きの三人はさっそく紅茶にジャムを入れて飲んだ、「おお、これは美味い」「初めての味です」「これはなんというものですか」と口々に問う。蠣崎大尉は

「これはロシアンティーっていうんですよ。ちょっと洒落てるでしょ」

と言って三人に菓子を勧めてくれた。蠣崎大尉は話し相手に不自由していたのか三人の話を次々に引き出しては興味深そうに聞きいって笑ったり考え込んだりした。

やがて中野主計兵曹が「ではお名残惜しいですが我々はこれで」とやっと腰を上げたのはここに来てから三時間もたってから。蠣崎大尉は「ひきとめてしまって申し訳ない。艦の主計長に叱られるかな?蠣崎が引きとめたのだから叱らないでと連絡しておくから安心してね」と言って菓子を綺麗な紙に包んだものをくれた。三人は

「いやそんな…ありがとうございます」

と言って紅茶と菓子の礼を言って軍需部の建物を出た―――

 

三人はハッと息をのんだ。

目の前に展開していたのはたいへんな地吹雪。いつの間にこんな天気になったのだろう、息ができないほどの風が吹きつけている。

さっき帳簿をつけていた兵曹長がやってきて「ひどい吹き降りになっちゃったね。こんな中帰れないよ、しばらく中で待っていたらいいよ」と言ってくれた。

が、中野兵曹は「港は近くですから平気ですよ」と言って兵曹長は「そうかあ?でも何も見えないから危ないよ。悪いことは言わない、中に入ってな」と念を押すように言ったところで、なにやら奥から呼ばれたようで「ほ―い、今行く!」と返事をして中に引っ込んだ。

萱野二等兵曹が「ほんとにすごいな…港がどっちだったかこれじゃわからないですよ…吹雪が止むまで待った方がよかないですか?」と言ったが霧島一等兵曹は

「このくらいどうってこたあないでしょう?それに港はここから見て十時の方向です。それよか早いところ帰らないとそれこそ大目玉食らっちゃいます。蠣崎大尉のお口添えがあったとしてもあまりに遅れては。――ねえ、中野兵曹?」

と反対意見を述べた。中野上等兵曹は吹き倒されそうな風雪が叩きつけるように荒れ狂う様を目前にしてしばらく考え込んだ。

(どうすべきか)

このまま暫く風雪がやむまでここの事務所内に置いてもらうことは可能だろう。しかしこの風雪がいつやむかというのはまったく皆目わからない。もしかしたら明日まで吹き荒れるかもしれない、帰れなくなったらそれこそ主計の仲間たちに迷惑をかけることになりかねない。それに第一、衣糧倉庫を整理しておく仕事が残っている。

中野兵曹は

「決めた。行くぞ!」

というなり防寒帽を目深にかぶり外套の襟を立ててふたりに言った。霧島兵曹は「はいっ」と言ってこれも外套の襟を立て中に仕込んできた襟巻を目の下まで引き上げた。萱野兵曹は気が進まないと言った表情ではあったがこれも防寒帽を確かめ外套の襟を立ててその部分をつかんだ。彼女の背中で蠣崎大尉から頂いた菓子の入ったリュックが揺れた。

そして中野兵曹を先頭にして霧島兵曹・萱野兵曹は吹雪の中を歩きだした。その姿はあっという間に激しい吹雪の中に消えて行った。

 

それからほんの少しあと、兵曹長がやってきたが「あれっ!あの空母の連中どこ行ったんだ!?」と大きな声を上げた。中には居なかった、となると…

「あの空母連中、この地吹雪の中歩いて行きやがった!おい、誰か、誰かいないか!!

軍需部の中はこの叫びで上を下への大騒ぎになったのだった。

 

三人はまともに顔をあげられないまま必死に歩いた。すさまじい風が三人をふっ飛ばさんほどに吹き付けそのたびに立ち止まっては互いに「居るか!」「居ます!」「行くぞ」「行きます!」と声を掛け合いながらさらに歩く。

少しずつ歩くせいか随分長い時間さまよっているような気さえしてくる。そこにひときわ強い風が、雪とともに叩きつけるように吹いて、足が止まる。

中野兵曹は、吹雪をすかして見て(間違いない、ここをずっと歩いてゆけば港に着く)と確信した。吹き付ける雪がビシビシと顔にあたり痛い。中野兵曹は顔を振り向けて後ろにいる霧島兵曹を呼んだ。

霧島兵曹が返事をし、霧島兵曹は自分の後ろにいるはずの萱野二等兵曹を呼んだ。

「萱野、萱野大丈夫か!?

霧島兵曹はごうごうたる風の中後ろを向くこともできず、だが必死で耳を澄ました、が、返事が聞こえない。もう一度大声で「萱野、貴様大丈夫かあ!」とよばった。

返事がない。

霧島兵曹の背筋がぞっとした。やっとの思いで吹雪をすかして見たが萱野兵曹の姿は、もはや彼女の後ろにはなかった。

「中野兵曹ー!萱野が、萱野兵曹がいませんーッ!」

霧島兵曹の絶叫が吹雪の中を響き渡った――

    (次回に続きます)

 

            ・・・・・・・・・・・・・・・・

なんだか聞いたことがあるようなタイトルですがどうぞお気になさらず(^_^;)

しかし萱野兵曹どうしちゃったんでしょう。激しい吹雪は収まりそうにありません…気になる次回をお楽しみに。


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