「女だらけの戦艦大和」 ・ 救急救命講習会<弐>
「女だらけの戦艦大和」では救命救急講習が行われている―――
昼食後、いよいよ講習も後半である。
核心である「人工呼吸」の方法が伝授されることになった。坂本大尉は、一人の衛生兵を使って「人工呼吸はこのようにーー」と言いながら、いわゆるマウスツーマウスのやり方を実践した。真剣に見いる講習員に交じって、石場兵曹は「これみんなするんかな~?私は麻生少尉から止められてるから出来ないかも、、、」などとぶつぶつ言っている。
時々他分隊の講習員が(静かに!)と振り返って睨む。見張兵曹はそのたびに小さくなって(ごめんなさい)と腰をかがめて謝る。
石場兵曹は「何やってんの?」とまさに脳天気なことを言ってる。見張兵曹は「石場さんの声がでかいんですよ、今大尉がお話なすってるんですから静かにしないと」といさめた。
「分かったよ」と石場兵曹は黙った。
「・・・・では各自で人工呼吸を実践してみるように」と坂本大尉が言って、皆おっかなびっくり恐る恐る始めた。
石場兵曹は「麻生分隊士から、貴様に触れるなって言われてるから、形だけな」と言って見張兵曹を横倒しにして人工呼吸の体勢を整えた。
見下ろす石場兵曹の顔つきが、ふっと変わった。じーっと見つめている。
「??」見張兵曹は思わず石場兵曹を見た。その時、石場兵曹はいけないことをつぶやいた。
「うわ、、、。可愛いなあ。これは麻生分隊士が夢中になってもおかしくねえわ」
見張兵曹は思わず飛び起きかけた。とたんに石場兵曹に抑え込まれてしまった。「石場兵曹、、、ちょっと何を!」という見張兵曹に、石場兵曹は「ごめん、、、ちょっと」というなり、人工呼吸ならぬ「口づけ」を始めた。
人工呼吸の体勢じゃあ最早なく、普通に見張兵曹を抱きかかえている石場兵曹。
甲板上を暴れる物音がし、坂本大尉やほかの兵員がふと見た先には信じられない光景があった。
「何やってんだよ!それじゃあ人工呼吸じゃないだろうが!!」坂本大尉は真っ赤になって、石場兵曹を見張兵曹から引き剥がした。
とたんに飛び退く見張兵曹。袖口で、自分の口元をぬぐって、なんだか吐きそうな感じである。坂本大尉は、情けなくなってきた。
何が悲しゅうて、まじめな人工呼吸の講習のさなかに、「口づけ」なんかするんだ?最近この艦はたるんでないか?
坂本大尉は、だんだん怒りが込み上げてきた。こんなことで、この戦争を勝ち抜いてなんかいけないじゃないか!「大和魂」はどこに行った?どこに置き忘れてきたんだ?
そして坂本大尉は、いきなり大きな声で叫んだ。
「ではこれが最後の講習だ!総員まじめに聞けっ!」 みんなが大尉を見た。大尉はちょっと咳払いをすると、「最終的に軍医に見てもらっても、怪我の程度によっては残念ながら助からないこともあるのだ。たとえば、、、」と言いながら、石場兵曹と見張兵曹を集団の中から引っ張り出した。
「いいか。この石場は頭部貫通銃創、見張は内臓損傷だとする。もう助からない、いや、、、もう死んでいる!!」
石場兵曹と見張兵曹はお互いを見合った。・・・・死んでるって、いくらなんでも、これは救命のための講習じゃないの?という感じでお互いを見ている。
大尉は続けた。「死体になったものは、死体安置所に置かれた後最上甲板にて<水葬>にされる。つまり、、、こうだ!」
そういうなり、いきなり数人の衛生兵が二人を抱えあげると、、、やおら舷側に走り寄って、そこから海に投げ込んだ。
「ああーーーーっ!」と叫びを残して、二人は消えた。そして<ドボーン!!>という水音。
息をのむ講習員たちに、坂本大尉は「いいか!!ふまじめな態度で講習に臨む者はこうなるのだ。貴様ら各分隊に戻ったらこのことを皆にしっかり伝えろ!救命講習は遊びではないっ!!」
と言い放ち、「これにて散会!」と怒鳴って、救命救急講習は終わった。
海に投げ込まれた二人の兵曹は、それを見ていた小泉兵曹の通報で麻生分隊士に救われた。
麻生分隊士は「大尉だか何だか知んねえけど、いくらなんでもこういうことしやがって!」と怒りに震えながら医務科にねじ込みに行ったが、事の真相を坂本大尉から知らされて唖然。「あれほどオトメチャンに手を出すなって言っといたのに!」と、取って返し石場兵曹を私室に呼び出して1発、、いや2,3発お見舞いした。石場兵曹はそれでも「いやあ、、、見張兵曹は可愛いですもんねえ、、仕方ないですよこうなるのは」とへらへら笑って艦橋に去って行ったのだった。
麻生分隊士は「オトメチャン、、、なんだひどい目に会っちゃったな。石場に変なことされるわ、海に投げ込まれるわ、、」と見張兵曹を抱きしめて言った。
そしてまた例によって兵曹をベッドに寝かせると、そっと服の前を開いた。
「あの、、分隊士、、まだ時間が早いんですが」と言いかける見張兵曹に分隊士は「我慢できないの」と言ってオトメチャンの胸をあらわにした。
自分はオトメチャンの上に乗っかって「実はねえ~。さっき医務科に行った時、これをねーー」と見張兵曹の目の前に出したのは、<ピンセット>。
黙って一つ持ってきちゃったのだ。これも立派なギンバイ行為である。
「なんでそんなものを?」と聞く見張兵曹の胸を分隊士はつかんだ。そして「こうしたかったんだよ!」というなり、胸の先の桃色の突起をピンセットでつまんだのだった。
「いや、、、。分隊士、それだけは」と喘ぐ見張兵曹に、分隊士は「やっぱりこれはいいんだねえ。そんなにいいかあ?」と言ってさらに―――――(以下自主規制)。
ピンセットの使い方、間違ってる!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
終わりました、講習会。こんな講習会でも役に立つんでしょうか?疑問です。
しかし、、麻生分隊士の目につくところにこう言ったピンセットなど、、置いてはいけませんね。彼女は見れば必ず?悪さに使いますから。
こんなものをギンバイしてはなりませんぞ、分隊士。
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コメントの投稿
matsuyama さんへ
いざ自分の目の前にそういう状況がポンとでてくるともうどうしたらいいかわかんない、というのがある意味普通かもしれません。
実は私は今からもう10年くらい前の正月、一人で雑煮を食べていて、餅がのどに詰まり死にそうになったことがあります。体を逆V字型にして、喉の奥に指突っ込んでやっとの思いで取りました。
本当に怖いことです。
普段からの心構え、大事ですね。
松ちゃんさんへ
いやあ、、それは女とて同じことでございますよ~。
イケメンの男性隊員に人工呼吸をされたらなーんて考えるだけでもう心はハッピー、パラダイス!
…お互い、不謹慎、でいいじゃないですか、、、(汗)。
NoTitle
幸い、たまたま居合わせた救命救急士の機転で一命は取り留めましたが、認識のない人にとって慌てちゃいますよね。講習会の時のように気持ちに余裕がある時でしたらいいんですが。